◇第百三十七話◇大きな犠牲を連れて、帰還する
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リヴァイ兵長とミカサのおかげで、エレンの奪還には成功したが、やはり女型の巨人の捕獲は諦めるしかなかった。
リヴァイ班の精鋭兵達も戻り、女型の巨人はリヴァイ兵長によって動けない状況にある。
でも、エレン奪還時に、リヴァイ兵長が足を負傷してしまったこともあり、これ以上の深追いは犠牲を増やすだけだとエルヴィン団長が判断した。
そして今、今回の壁外調査で多大の犠牲を出した調査兵達は、巨人の姿が見えないことを確認した上で、大草原の中で馬を休めていた。
遠くに、私の友人を二度も奪った巨大樹の森が見えている。
この世で最も嫌いな場所から背を向け、私はエレンの元へ向かった。
荷馬車の上で、ミカサの膝に頭を乗せて横たわるエレンは、巨人化した影響で意識を失っていた。
外傷はないようだったので、いつものようにじきに目を覚ますだろうということだった。
「ごめんね、ミカサ。エレンを守れなくて。」
荷馬車の隣に立ち、ミカサに声をかけた。
女型の巨人は、エレンを口にふくんで逃げていたらしい。
そして、ミカサは、エレンが女型の巨人に食われるのを見たのだと、クリスタから聞いた。
怖かっただろう。きっと、すごく怖かった。
地面が崩れ落ちるようなそんな感覚を、私は知っているー。
エレンの寝顔を心配そうに見下ろしていたミカサは、ゆっくりと顔を上げると、小さく首を横に振った。
「ペトラさん達から聞きました。エレンを守るために1人で戦ってくれて、ありがとうございました。」
「何も、出来なかった。」
「自分達が生きているのは、なまえさんのおかげだと言っていました。
彼らはエレンを守るために必要な人達です。だからー。」
ありがとうございましたー。
ミカサに頭を下げられて、胸が苦しくなった。
また、エレンの頭を撫で始めたミカサと別れた私が、次に足を向けたのは、フロリアンの元だった。
そこでは、血の染まった白い布に覆われた大勢の仲間達が並べられていた。
白い布から覗いた細く綺麗な指に、何度も何度も自慢された婚約指輪を見つけて、私はすぐにそれがフロリアンだと分かる。
膝をつき腰をおろし、その手をそっと握る。
巨大樹の森に体温を置き忘れたその身体は、ひんやりと冷たくて、もう二度と、フロリアンと軽口を叩き合えないことを無言で教えてくれる。
運が良かったと言ってもいいのか分からないし、そういう言葉で犠牲になった調査兵達のことを思ってもいないけれど、私の友人達は左翼側に配置されていたおかげで、犠牲になったのはフロリアンだけだった。
でもー。
「フロリアンか。」
隣から聞こえてきた愛おしい人の声に、私は力なく頷く。
今回の作戦を知らされていたのは、初めて壁を壊された5年前のあの日よりも前から調査兵団に身を置いていた調査兵達だけだったらしい。
エルヴィン団長は、あの混乱の中で、人類を滅ぼそうとする敵がこの世界に潜り込んできたと考えたようだった。
でも、せめて、この作戦のことを犠牲になった兵士達が知っていたのなら、もっと違う戦い方が出来たはずだ。
そうすれば、フロリアンも、他の仲間も、死なずに済んだかもしれない。
目を閉じる。
結婚することになったから、と照れ臭さを隠すように強がりながら教えてくれたフロリアンの顔が蘇る。
分かっている。
調査兵団の中に敵が、もしくは諜報員がいるかもしれない状況で、エルヴィン団長が選んだのが、人類の命だったということだ。
100人の仲間を切り捨て、人類の未来を選んだー。
「エルヴィンが呼んでいる。」
「…はい。」
それが、勝手な行動をとった部下への説教ではないことを、私は知っていた。
リヴァイ班の精鋭兵達も戻り、女型の巨人はリヴァイ兵長によって動けない状況にある。
でも、エレン奪還時に、リヴァイ兵長が足を負傷してしまったこともあり、これ以上の深追いは犠牲を増やすだけだとエルヴィン団長が判断した。
そして今、今回の壁外調査で多大の犠牲を出した調査兵達は、巨人の姿が見えないことを確認した上で、大草原の中で馬を休めていた。
遠くに、私の友人を二度も奪った巨大樹の森が見えている。
この世で最も嫌いな場所から背を向け、私はエレンの元へ向かった。
荷馬車の上で、ミカサの膝に頭を乗せて横たわるエレンは、巨人化した影響で意識を失っていた。
外傷はないようだったので、いつものようにじきに目を覚ますだろうということだった。
「ごめんね、ミカサ。エレンを守れなくて。」
荷馬車の隣に立ち、ミカサに声をかけた。
女型の巨人は、エレンを口にふくんで逃げていたらしい。
そして、ミカサは、エレンが女型の巨人に食われるのを見たのだと、クリスタから聞いた。
怖かっただろう。きっと、すごく怖かった。
地面が崩れ落ちるようなそんな感覚を、私は知っているー。
エレンの寝顔を心配そうに見下ろしていたミカサは、ゆっくりと顔を上げると、小さく首を横に振った。
「ペトラさん達から聞きました。エレンを守るために1人で戦ってくれて、ありがとうございました。」
「何も、出来なかった。」
「自分達が生きているのは、なまえさんのおかげだと言っていました。
彼らはエレンを守るために必要な人達です。だからー。」
ありがとうございましたー。
ミカサに頭を下げられて、胸が苦しくなった。
また、エレンの頭を撫で始めたミカサと別れた私が、次に足を向けたのは、フロリアンの元だった。
そこでは、血の染まった白い布に覆われた大勢の仲間達が並べられていた。
白い布から覗いた細く綺麗な指に、何度も何度も自慢された婚約指輪を見つけて、私はすぐにそれがフロリアンだと分かる。
膝をつき腰をおろし、その手をそっと握る。
巨大樹の森に体温を置き忘れたその身体は、ひんやりと冷たくて、もう二度と、フロリアンと軽口を叩き合えないことを無言で教えてくれる。
運が良かったと言ってもいいのか分からないし、そういう言葉で犠牲になった調査兵達のことを思ってもいないけれど、私の友人達は左翼側に配置されていたおかげで、犠牲になったのはフロリアンだけだった。
でもー。
「フロリアンか。」
隣から聞こえてきた愛おしい人の声に、私は力なく頷く。
今回の作戦を知らされていたのは、初めて壁を壊された5年前のあの日よりも前から調査兵団に身を置いていた調査兵達だけだったらしい。
エルヴィン団長は、あの混乱の中で、人類を滅ぼそうとする敵がこの世界に潜り込んできたと考えたようだった。
でも、せめて、この作戦のことを犠牲になった兵士達が知っていたのなら、もっと違う戦い方が出来たはずだ。
そうすれば、フロリアンも、他の仲間も、死なずに済んだかもしれない。
目を閉じる。
結婚することになったから、と照れ臭さを隠すように強がりながら教えてくれたフロリアンの顔が蘇る。
分かっている。
調査兵団の中に敵が、もしくは諜報員がいるかもしれない状況で、エルヴィン団長が選んだのが、人類の命だったということだ。
100人の仲間を切り捨て、人類の未来を選んだー。
「エルヴィンが呼んでいる。」
「…はい。」
それが、勝手な行動をとった部下への説教ではないことを、私は知っていた。