◇第百二十四話◇兵士達の結婚観
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「いただいまぁーーーすっ!」
ワクワクした挨拶で、食事が始まった。
朝から続いた掃除で疲労困憊の身体は、食事という癒しを求めていたらしい。
みんな、食事に夢中だ。
「うんめぇぇぇぇえッ!!」
「こんな豪華な飯、久しぶりだ…!」
「掃除で疲れた身体にシミるぅぅぅうっ。」
「なまえ、本当に美味しいよっ。」
久しぶりの料理で、味に自信がなかったが、好評で安心した。
夢中で食べている仲間の顔を見ていると、私も嬉しくなってくる。
「ありがとう。
口に合わなかったらどうしようかと思ってたから、本当によかったよ。」
「安心してくれっ、なまえ!
ミカサとアルミン達にも食わせたいくらい、美味いぜ。」
エレンの感想がとても優しくてホッコリする。
でも、隣に座っているリヴァイ兵長は、料理をじーっと見ているだけで口にしようとしない。
嫌いなものでもあったのだろうか。
それとも、私が作った料理は食べたくないとかー。
「あの…、食べないんですか?」
「いや、食う。」
おずおずと声をかければ、ようやくリヴァイ兵長がスプーンを手に取った。
そして、すくったスープをゆっくりと口に運ぶ。
味はどうだっただろう。
口に合わなかったらどうしようー。
料理当番に決まった時から、リヴァイ兵長に美味しいと思ってもらいたいとそればかり考えていた私は、緊張が続いている。
テストの結果を返されるみたいに、ドキドキする。
「美味ぇな。」
「よかったぁ。」
スープを飲んだリヴァイ兵長の感想を聞いて、心からホッとする。
良くも悪くも嘘を吐かない人だし、端正な横顔がお世辞を言ったようにも見えなかった。
緊張から解き放たれた私は、漸く食欲を取り戻す。
久しぶりに食べた自分の手料理は、調査兵団に入団する前によく食べていたそのままだった。
「なまえの母親の味に似てるな。」
「母に教わりましたから。」
リヴァイ兵長と母の料理のことを話していると、ハンジさんとモブリットさんも会話に加わった。
ストヘス区の実家に2人で泊まったことを知っている2人は、どんなものを食べたのか、リヴァイ兵長は家族と仲良くできたのか、と興味津々に聞いてくる。
それに、リヴァイ兵長が面倒くさそうに答えているのが、なんだかほのぼのとしていて楽しい。
普段とは違う雰囲気だから余計なのか、仲間とこうしてワイワイとお喋りをしながら食事をとるのは良いものだなと改めて思う。
「なまえのご両親もリヴァイのこと気に入ってくれるなんてなぁ。
むしろ、私は2人のキューピッドっていうことにー。」
「それはなりませんよ、ハンジさん。
あなたが驚きの嘘をなまえのご両親にしてる隣で
僕がどれだけ恐怖に慄いたかわかりますか。」
「だって、誰もが知ってる男が相手の方が、ご両親も安心するかと思ってさ。
リヴァイなら、娘を残して死ぬ男とも思われないだろうしさ。」
「あぁ、それでリヴァイ兵長だったんですねっ。
私もまさか嘘の結婚相手がリヴァイ兵長だとは思わなかったので、ビックリしました。」
「でもさ、もう本当に付き合ってるんだし、ご両親にもそろそろ言ってもいいんじゃないかい?
やっぱり、私は調査兵として壁外に行くことは伝えておくのが良いと思うんだ。
な?リヴァイだって、その方がいいと思うだろう?」
前にも聞いたことのあるハンジさんのセリフで、楽しかった雰囲気が少しだけ変わる。
それは、私が放った空気のせいだったのだと思う。
私の方をチラリと見た後、リヴァイ兵長が口を開く。
「俺は、どっちでも構わねぇ。
どっちにしろ、俺がこいつを死なせはしねぇ。
あとは、なまえの判断に任せる。」
「ほら!リヴァイもそう言ってくれてることだしさっ。
ご両親にそろそろ本当のことをー。」
「それは嫌です。」
「なんで?!きっとご両親も本当のことを知りたいだろうし、
リヴァイがそばにいるならってきっとー。」
「きっと、壁外に行く度に気が狂っていくと思います。
ズルいけど、知らずにいてもらえるのなら、私はそうしたい。」
「…そう。君がそう決めているなら、私はもう何も言わないよ。」
「ごめんなさい。ハンジさんは私の家族のためを思ってくれてるのに…。」
「いいんだよ。ご両親のことを一番よく知っているのは、なまえなんだからね。」
ハンジさんが優しく微笑む。
でも、眉尻は少し下がっていて、納得できていないとまでは言わないものの、あまり良い決断だとは思っていないようだった。
この雰囲気をどうにか明るくしようと思ったのか、グンタが楽し気に話し出す。
それに続いて、エルド達も話題に乗って話し始めた。
「それにしても、なまえの母さんは料理上手なんだなぁっ。
こんな美味い飯を毎日食えるなんて、羨ましいっ。」
「そうだなぁ。毎日、なまえの料理が食べられたらいいのにな。
帰ったら兵団の味気ない食事に戻ると思うと、残念でならないよ。」
「なまえは絶対に良いお嫁さんになるねっ。」
ペトラがニコッと笑った。
両親を騙していることを良くないと一番わかっているのは、誰でもなく私だ。
そんな私の気持ちをよくわかってくれているのが、ここにいる仲間だと感じて、言葉よりもその気持ちが嬉しかった。
褒め過ぎだと本気で謙遜する私に、ペトラの発言が起爆剤になって、空気を読むのが苦手なエレンが爆弾を落とすまではー。
「そうなんすよねぇ。この前も赤ん坊に誰より懐かれてたし、料理も上手で
絶対に良いお嫁さんになるのに、結婚を諦めて
結婚とは縁遠い人類最強の兵士を選んだってすごいですよねっ。」
「は?エレンくん、君は一体何を言ってるんだい?」
「ライナー達に、リヴァイ兵長は一生結婚しない男だって聞いて、
クリスタが本気で落ち込んでたんですよ。
なまえさんの花嫁姿見たかったらしいです。俺も綺麗だっただろうなぁって思います。」
ニッと笑ったエレンもまた、きっと私を笑顔にしたかったのだと思う。
彼なりに、褒めてくれたんだと思う。
でも、「ありがとう。」と微笑んだ私の笑顔は、とても下手くそだった自信がある。
途中でエレンの空気を読まない発言を止めようとしたハンジさんが、私の反応を見て、片手で頭を抱えていたから。
「でも、エレンが一番見たい花嫁姿はミカサでしょう?」
「なッ!?俺とアイツはそんなんじゃねぇからっ!!」
「ふ~ん。」
「信じてないだろっ!?」
「だって、顔が赤いんだもん。」
私は、リヴァイ兵長を見ることが出来なくて、ただ下手クソな笑顔を貼り付け続けた。
そうだよな。みんな、そう思ってるんだよな。
リヴァイ兵長は、絶対に結婚なんてしないし、私は結婚を諦めて恋を選んだ女なんだってー。
そんなことを思いながら、味のしなくなった料理を口に運んで、ただひたすら自分の気持ちに蓋をした。
兵士になったくせに、リヴァイ兵長を選んだくせに、後悔もないくせに、平凡な幸せを願おうとする、我儘な心に重たい蓋をー。
ワクワクした挨拶で、食事が始まった。
朝から続いた掃除で疲労困憊の身体は、食事という癒しを求めていたらしい。
みんな、食事に夢中だ。
「うんめぇぇぇぇえッ!!」
「こんな豪華な飯、久しぶりだ…!」
「掃除で疲れた身体にシミるぅぅぅうっ。」
「なまえ、本当に美味しいよっ。」
久しぶりの料理で、味に自信がなかったが、好評で安心した。
夢中で食べている仲間の顔を見ていると、私も嬉しくなってくる。
「ありがとう。
口に合わなかったらどうしようかと思ってたから、本当によかったよ。」
「安心してくれっ、なまえ!
ミカサとアルミン達にも食わせたいくらい、美味いぜ。」
エレンの感想がとても優しくてホッコリする。
でも、隣に座っているリヴァイ兵長は、料理をじーっと見ているだけで口にしようとしない。
嫌いなものでもあったのだろうか。
それとも、私が作った料理は食べたくないとかー。
「あの…、食べないんですか?」
「いや、食う。」
おずおずと声をかければ、ようやくリヴァイ兵長がスプーンを手に取った。
そして、すくったスープをゆっくりと口に運ぶ。
味はどうだっただろう。
口に合わなかったらどうしようー。
料理当番に決まった時から、リヴァイ兵長に美味しいと思ってもらいたいとそればかり考えていた私は、緊張が続いている。
テストの結果を返されるみたいに、ドキドキする。
「美味ぇな。」
「よかったぁ。」
スープを飲んだリヴァイ兵長の感想を聞いて、心からホッとする。
良くも悪くも嘘を吐かない人だし、端正な横顔がお世辞を言ったようにも見えなかった。
緊張から解き放たれた私は、漸く食欲を取り戻す。
久しぶりに食べた自分の手料理は、調査兵団に入団する前によく食べていたそのままだった。
「なまえの母親の味に似てるな。」
「母に教わりましたから。」
リヴァイ兵長と母の料理のことを話していると、ハンジさんとモブリットさんも会話に加わった。
ストヘス区の実家に2人で泊まったことを知っている2人は、どんなものを食べたのか、リヴァイ兵長は家族と仲良くできたのか、と興味津々に聞いてくる。
それに、リヴァイ兵長が面倒くさそうに答えているのが、なんだかほのぼのとしていて楽しい。
普段とは違う雰囲気だから余計なのか、仲間とこうしてワイワイとお喋りをしながら食事をとるのは良いものだなと改めて思う。
「なまえのご両親もリヴァイのこと気に入ってくれるなんてなぁ。
むしろ、私は2人のキューピッドっていうことにー。」
「それはなりませんよ、ハンジさん。
あなたが驚きの嘘をなまえのご両親にしてる隣で
僕がどれだけ恐怖に慄いたかわかりますか。」
「だって、誰もが知ってる男が相手の方が、ご両親も安心するかと思ってさ。
リヴァイなら、娘を残して死ぬ男とも思われないだろうしさ。」
「あぁ、それでリヴァイ兵長だったんですねっ。
私もまさか嘘の結婚相手がリヴァイ兵長だとは思わなかったので、ビックリしました。」
「でもさ、もう本当に付き合ってるんだし、ご両親にもそろそろ言ってもいいんじゃないかい?
やっぱり、私は調査兵として壁外に行くことは伝えておくのが良いと思うんだ。
な?リヴァイだって、その方がいいと思うだろう?」
前にも聞いたことのあるハンジさんのセリフで、楽しかった雰囲気が少しだけ変わる。
それは、私が放った空気のせいだったのだと思う。
私の方をチラリと見た後、リヴァイ兵長が口を開く。
「俺は、どっちでも構わねぇ。
どっちにしろ、俺がこいつを死なせはしねぇ。
あとは、なまえの判断に任せる。」
「ほら!リヴァイもそう言ってくれてることだしさっ。
ご両親にそろそろ本当のことをー。」
「それは嫌です。」
「なんで?!きっとご両親も本当のことを知りたいだろうし、
リヴァイがそばにいるならってきっとー。」
「きっと、壁外に行く度に気が狂っていくと思います。
ズルいけど、知らずにいてもらえるのなら、私はそうしたい。」
「…そう。君がそう決めているなら、私はもう何も言わないよ。」
「ごめんなさい。ハンジさんは私の家族のためを思ってくれてるのに…。」
「いいんだよ。ご両親のことを一番よく知っているのは、なまえなんだからね。」
ハンジさんが優しく微笑む。
でも、眉尻は少し下がっていて、納得できていないとまでは言わないものの、あまり良い決断だとは思っていないようだった。
この雰囲気をどうにか明るくしようと思ったのか、グンタが楽し気に話し出す。
それに続いて、エルド達も話題に乗って話し始めた。
「それにしても、なまえの母さんは料理上手なんだなぁっ。
こんな美味い飯を毎日食えるなんて、羨ましいっ。」
「そうだなぁ。毎日、なまえの料理が食べられたらいいのにな。
帰ったら兵団の味気ない食事に戻ると思うと、残念でならないよ。」
「なまえは絶対に良いお嫁さんになるねっ。」
ペトラがニコッと笑った。
両親を騙していることを良くないと一番わかっているのは、誰でもなく私だ。
そんな私の気持ちをよくわかってくれているのが、ここにいる仲間だと感じて、言葉よりもその気持ちが嬉しかった。
褒め過ぎだと本気で謙遜する私に、ペトラの発言が起爆剤になって、空気を読むのが苦手なエレンが爆弾を落とすまではー。
「そうなんすよねぇ。この前も赤ん坊に誰より懐かれてたし、料理も上手で
絶対に良いお嫁さんになるのに、結婚を諦めて
結婚とは縁遠い人類最強の兵士を選んだってすごいですよねっ。」
「は?エレンくん、君は一体何を言ってるんだい?」
「ライナー達に、リヴァイ兵長は一生結婚しない男だって聞いて、
クリスタが本気で落ち込んでたんですよ。
なまえさんの花嫁姿見たかったらしいです。俺も綺麗だっただろうなぁって思います。」
ニッと笑ったエレンもまた、きっと私を笑顔にしたかったのだと思う。
彼なりに、褒めてくれたんだと思う。
でも、「ありがとう。」と微笑んだ私の笑顔は、とても下手くそだった自信がある。
途中でエレンの空気を読まない発言を止めようとしたハンジさんが、私の反応を見て、片手で頭を抱えていたから。
「でも、エレンが一番見たい花嫁姿はミカサでしょう?」
「なッ!?俺とアイツはそんなんじゃねぇからっ!!」
「ふ~ん。」
「信じてないだろっ!?」
「だって、顔が赤いんだもん。」
私は、リヴァイ兵長を見ることが出来なくて、ただ下手クソな笑顔を貼り付け続けた。
そうだよな。みんな、そう思ってるんだよな。
リヴァイ兵長は、絶対に結婚なんてしないし、私は結婚を諦めて恋を選んだ女なんだってー。
そんなことを思いながら、味のしなくなった料理を口に運んで、ただひたすら自分の気持ちに蓋をした。
兵士になったくせに、リヴァイ兵長を選んだくせに、後悔もないくせに、平凡な幸せを願おうとする、我儘な心に重たい蓋をー。