◇第百二十三話◇パパとママにさようなら
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空が白くなり始めた、朝方5時。
医療兵に離乳食というものを教えてもらって、寝る前にミルクと一緒にドロドロに溶かした食事を与えるようにしてからは、朝方までは寝てくれるようになって、私の睡眠不足はだいぶ解消された。
でも、リヴァイ兵長が、献身的に手伝ってくれているのがとても大きい。
なかなか出来上がらないミルクが待ちきれず、お腹を空かせたヨシュカが泣き出してしまい、私はソファから立ち上がり窓の外を見せながらあやす。
宿舎の最上階からの景色が好きなヨシュカは、ピタリと涙を止めて、窓を叩き始めた。
どうやら、お散歩に連れて行けということのようだ。
今日こそは、この子の母親は本当に迎えに来てくれるだろうか。
約束の1週間が、今日で3日過ぎてしまった。
「待たせたな。」
ようやく出来上がったようで、ホッとして振り返る。
普段は超硬質スチールを逆手で持つリヴァイ兵長が、哺乳瓶を持っているなんてー。
一生、見慣れそうにない。
だって、誰が想像しただろう。
人類最強の兵士が、赤ちゃんのためにミルクを作ってくれるなんて。
あの冷たい印象しか与えない切れ長の瞳で、お湯の温度とミルクの粉の量を真剣に計っている姿なんて。
基本的に、適当でいいや、の私を見ていられなかったリヴァイ兵長は、今ではミルク作りの達人だ。
慎重すぎて時間がかかるので、ヨシュカはいつも待ちきれずに泣いてしまうのだけれどー。
「ありがとうございます。いつも助かります。
-ほら、ヨシュカ~。
今日も美味しいミルクを作ってもらえたよ~。」
礼を言って哺乳瓶を受け取り、ソファに腰を降ろした私は、早くくれとせがむように手を伸ばして口をあけるヨシュカにミルクを飲ませる。
ゴクゴクと音が聞こえてきそうな飲みっぷりは、何度見ても、本当にすごいと感心する。
まだ喋れないのに、生きたい!と大声で叫んでいるみたいだ。
「今日、迎えが来なかったら本当に…。」
「あぁ、乳児院に連れて行く。」
「お母さんに何かあったのかもしれないですし、もう少しだけ待ってあげましょうよ。
私、1人で頑張りますよ。リヴァイ兵長には迷惑かけません。」
「そういうことじゃねぇ。壁外調査前の大事な時期に、
いつまでもお前を赤ん坊につきっきりにするわけにはいかねぇんだ。
生きて帰るためには、訓練が必要だ。それに俺達は、もうだいぶ待った。」
「…そうですね。」
リヴァイ兵長の言う通りだ。私も分かっている。
ヨシュカと散歩に出て、訓練をしている仲間達を見る度に、焦りを感じていた。
それでもー。
人類最強の兵士が作ってくれたミルクを勢いよく飲み干そうとしているヨシュカを見つめながら、私はため息を飲み込む。
私が悲しい顔をしたら、なぜか泣き出してしまうヨシュカのために、無理に作った笑顔で頬を撫でた。
最初から、母親は、迎えに来るつもりはなかったのだろうか。
こんな混沌とした世界で、母親1人で赤ちゃんを育てるのは大変だっただろう。
1週間と少し、ママの真似事をしただけの私だけれど、その苦労は少しくらいは理解したつもりだ。
逃げ出したいと苦しくなる気持ちが生まれるのも仕方がないのかもしれない。
でも、それ以上に、この子はこんなに可愛いのにー。
生命力に溢れたこの子を見ていたら、今日も生きよう、明日も生きよう、そう、思えるのにー。
リヴァイ兵長の優しい手が撫でたのは、母親に捨てられたかもしれないヨシュカではなくて、私の方だった。
ミルクを飲み終えたヨシュカを抱きしめる。
私の胸元にしがみつく小さな手。小さいのに力強い、可愛らしい手。
この手を、どうして離してしまったのー。
この子が掴みたいのは、掴んでほしいのは、きっと、パパとママなのにー。
医療兵に離乳食というものを教えてもらって、寝る前にミルクと一緒にドロドロに溶かした食事を与えるようにしてからは、朝方までは寝てくれるようになって、私の睡眠不足はだいぶ解消された。
でも、リヴァイ兵長が、献身的に手伝ってくれているのがとても大きい。
なかなか出来上がらないミルクが待ちきれず、お腹を空かせたヨシュカが泣き出してしまい、私はソファから立ち上がり窓の外を見せながらあやす。
宿舎の最上階からの景色が好きなヨシュカは、ピタリと涙を止めて、窓を叩き始めた。
どうやら、お散歩に連れて行けということのようだ。
今日こそは、この子の母親は本当に迎えに来てくれるだろうか。
約束の1週間が、今日で3日過ぎてしまった。
「待たせたな。」
ようやく出来上がったようで、ホッとして振り返る。
普段は超硬質スチールを逆手で持つリヴァイ兵長が、哺乳瓶を持っているなんてー。
一生、見慣れそうにない。
だって、誰が想像しただろう。
人類最強の兵士が、赤ちゃんのためにミルクを作ってくれるなんて。
あの冷たい印象しか与えない切れ長の瞳で、お湯の温度とミルクの粉の量を真剣に計っている姿なんて。
基本的に、適当でいいや、の私を見ていられなかったリヴァイ兵長は、今ではミルク作りの達人だ。
慎重すぎて時間がかかるので、ヨシュカはいつも待ちきれずに泣いてしまうのだけれどー。
「ありがとうございます。いつも助かります。
-ほら、ヨシュカ~。
今日も美味しいミルクを作ってもらえたよ~。」
礼を言って哺乳瓶を受け取り、ソファに腰を降ろした私は、早くくれとせがむように手を伸ばして口をあけるヨシュカにミルクを飲ませる。
ゴクゴクと音が聞こえてきそうな飲みっぷりは、何度見ても、本当にすごいと感心する。
まだ喋れないのに、生きたい!と大声で叫んでいるみたいだ。
「今日、迎えが来なかったら本当に…。」
「あぁ、乳児院に連れて行く。」
「お母さんに何かあったのかもしれないですし、もう少しだけ待ってあげましょうよ。
私、1人で頑張りますよ。リヴァイ兵長には迷惑かけません。」
「そういうことじゃねぇ。壁外調査前の大事な時期に、
いつまでもお前を赤ん坊につきっきりにするわけにはいかねぇんだ。
生きて帰るためには、訓練が必要だ。それに俺達は、もうだいぶ待った。」
「…そうですね。」
リヴァイ兵長の言う通りだ。私も分かっている。
ヨシュカと散歩に出て、訓練をしている仲間達を見る度に、焦りを感じていた。
それでもー。
人類最強の兵士が作ってくれたミルクを勢いよく飲み干そうとしているヨシュカを見つめながら、私はため息を飲み込む。
私が悲しい顔をしたら、なぜか泣き出してしまうヨシュカのために、無理に作った笑顔で頬を撫でた。
最初から、母親は、迎えに来るつもりはなかったのだろうか。
こんな混沌とした世界で、母親1人で赤ちゃんを育てるのは大変だっただろう。
1週間と少し、ママの真似事をしただけの私だけれど、その苦労は少しくらいは理解したつもりだ。
逃げ出したいと苦しくなる気持ちが生まれるのも仕方がないのかもしれない。
でも、それ以上に、この子はこんなに可愛いのにー。
生命力に溢れたこの子を見ていたら、今日も生きよう、明日も生きよう、そう、思えるのにー。
リヴァイ兵長の優しい手が撫でたのは、母親に捨てられたかもしれないヨシュカではなくて、私の方だった。
ミルクを飲み終えたヨシュカを抱きしめる。
私の胸元にしがみつく小さな手。小さいのに力強い、可愛らしい手。
この手を、どうして離してしまったのー。
この子が掴みたいのは、掴んでほしいのは、きっと、パパとママなのにー。