◇第百二十一話◇迷子の天使
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談話室のソファで赤ちゃんを抱く私は、ペトラと一緒に必死にあやしていた。
抱き心地にも慣れてきてくれたのか、漸く笑顔が出てきてホッとしているところだ。
なぜか調査兵団の兵門の前に置かれた木箱の中で寝かされていた赤ちゃんは、男の子だった。
名前は、ヨシュカ。
一応診てくれた医療兵によると、ハイハイも出来るようだし、生後7、8か月くらいではないかということだった。
「でも、ヒドイことする男がいるもんだよね~。」
ペトラが赤ちゃんをあやしながらも、顰めた眉に嫌悪感を醸し出す。
でも、本当にそう思う。
この子が調査兵団の兵門に置かれることになってしまった経緯は、洋服に縫い付けてあったメモにしっかりと書かれてあった。
『あなたの子です。1人で産みました。
1人で育てようと思いましたが、疲れました。
必ず迎えに行くので、1週間だけ、休みをください。
それくらいの父親らしいことは、この子のためにしてください。』
そう書かれたメモには、母親の名前と子供の名前も書かれていた。
子供の名前には聞き覚えはなくても、母親の名前を聞けば、父親が誰か分かるだろう。
今、エルヴィン団長とリヴァイ兵長は、調査兵団の男性陣を集めて、父親探しをしている。
その間、この子を見ておくのが私の今の任務だ。
「おーっ!談話室に赤ん坊がいるぞっ!!」
談話室に入ってくるなり走ってやってきたのは、コニーだった。
その後ろから、騒がしい声を聞きつけて、104期の新兵達もやってくる。
夕飯を食べ終えたところのようで、サシャの機嫌もすこぶるいい。
「本当ですねっ!なまえさん、いつの間に赤ちゃんを産んだんですか!?
人類最強の兵士の二世ですか!?」
サシャが興奮気味に赤ちゃんの顔を覗き込む。
それに驚いて、泣き出してしまった赤ちゃんだったが、慌てたサシャが変な顔をして必死にあやせば、すぐに笑顔に戻ってくれた。
「とっても可愛いけど、リヴァイ兵長には似てませんね。 」
「なまえに似たんじゃねぇの?」
「リヴァイ兵長に似た赤ちゃんって、怖ぇな。」
「私は、すごくチビなところが似てると思った。」
「おい、ミカサ。それ、リヴァイ兵長に聞かれないようにしてくれよ。
お願いだから。」
「いつ産まれたんですか?お誕生日プレゼントしなくちゃ。」
クリスタが可愛らしく首を傾げる。
彼女達は、本気でそんなことを言っているのだろうか。
代わりにツッコんでくれたのは、ユミルだった。
「毎晩ヤり過ぎてあっという間に出来ちまってても、まだ産まれねぇよ。
赤ん坊は、10か月母親の腹ん中で育つんだぜ。
それに、今産んだにしちゃデカすぎる。」
「あ、そっか。」
気づくのが遅すぎるクリスタ達に、あっという間に出来ていないことも一応伝えつつ、兵門の前に置かれていた赤ちゃんであることを説明する。
反応はそれぞれで、でもやっぱり、子供の父親の調査兵に対して何かしらの文句は出てきた。
どんな状況で、この子の母親と別れたのかは分からないけれど、赤ちゃんが産まれたことは知っているのだろうか。
もし、知らないのなら、とても驚くだろうなー。
「ォギャ…っ、オギャァァアッ。」
また赤ちゃんが泣きだした。
抱き直してみたりして必死にあやすが、泣き止まない。
最終的に、ペトラだけではなく104期のみんなも一緒になって、必死にあやす。
あのライナーですら、ベロベロバ~、なんて可愛らしいことをしてくれたが無理だった。
むしろ怖かったのか、大泣きしてしまって収拾がつかなくなる。
「お腹が空いてるんじゃないですかね?
ほら、さっきからずっと指を舐めてるんですよ。」
サシャが赤ちゃんを見ながら言う。
そう言われてみれば、そうだ。
いつから兵門の前にいたのかは分からないけれど、少なくとも私達が見つけてからは一度も母乳もミルクも飲んでいない。
赤ちゃんがどれくらいの頻度で食事をとるのかは知らないけれど、そろそろお腹が空きだしてもおかしくないのかもしれない。
「確か、母親が置いて行った荷物の中に…。
あったっ!ミルク作ってくるから待っててっ!」
「ありがとう~っ。」
哺乳瓶とミルクの粉を見つけたペトラが、談話室の給湯室に走る。
もう少し待ってねー、必死に泣き止まそうと抱っこする腕を優しく揺らしてあやしてみるが、お腹が空いた赤ちゃんが泣き止むことはない。
「なぁ、なんで、ミルク作るんだ?
なまえの母乳、やればいいんじゃねぇの?」
なんとか泣き止まそうとしてる私に、コニーがアドバイスをくれる。
だがー。
「出ないよっ。」
「気合で吸ったら出るかも?」
コニーは本当にバカなのかもしれない、と思った。
とりあえず無視して、赤ちゃんを泣き止まそうとあやす私の代わりに、ユミルが、母乳というのは赤ちゃんを産んだ母親のホルモンによって出るものであって、気合で出るとか出ないとか、そんな簡単なものではないのだと教えてあげていた。
なんだかんだと、そういうところは、ユミルは仲間に優しいと思う。
とても馬鹿にしたように、だったけれどー。
「へぇ~、そうなのか。
でもよ、とりあえず、泣き止ませたいなら、おっぱい吸わせときゃ安心するんじゃねぇの?
弟がチビのときは、俺の母親はそうしてたぜ?それが早いっつって。」
一応、コニーも自分の経験談から本気でアドバイスをくれていたのだと分かった。
でも、それは我が子だから出来ることであって、それに何より、私にここで、乳を丸出しにしろーと言っているのだろうか。
いや、きっと、コニーのことだから深く考えていない。
ただ純粋に、赤ちゃんを泣き止ませるためにはどうすればいいのか、だけに頭をまわしているのだろう。
「何言ってんだよ、コニー。
こんなところでなまえが他人の赤ん坊にそこまで出来るわけねぇだろ。」
「そうだよ。僕たちもいるし…。」
ライナーとベルトルトに窘められて、コニーもさすがに、赤ちゃんに私の乳を吸わせるのはダメだと気づいたらしかった。
但し、それがー。
「あ~、そっか。そうだよな。
なまえの乳を吸ってもいいのは、リヴァイ兵長だけだもんな。
リヴァイ兵長の許可もないのに、勝手にその赤ん坊に吸わせるわけにはー。」
どこか遠くに吹っ飛んでいったコニーを見送りながら、あぁ、本当にバカだったんだな、と思う。
それはたぶん、私だけじゃなかったはずだ。
サシャでさえも、呆れた顔で吹っ飛んでいったコニーを見送っていたからー。
「一週間、お前が世話をすることになった。」
コニーを蹴り飛ばした張本人であるリヴァイ兵長は、何事もなかったような顔で、とんでもないことを報告してくれた。
抱き心地にも慣れてきてくれたのか、漸く笑顔が出てきてホッとしているところだ。
なぜか調査兵団の兵門の前に置かれた木箱の中で寝かされていた赤ちゃんは、男の子だった。
名前は、ヨシュカ。
一応診てくれた医療兵によると、ハイハイも出来るようだし、生後7、8か月くらいではないかということだった。
「でも、ヒドイことする男がいるもんだよね~。」
ペトラが赤ちゃんをあやしながらも、顰めた眉に嫌悪感を醸し出す。
でも、本当にそう思う。
この子が調査兵団の兵門に置かれることになってしまった経緯は、洋服に縫い付けてあったメモにしっかりと書かれてあった。
『あなたの子です。1人で産みました。
1人で育てようと思いましたが、疲れました。
必ず迎えに行くので、1週間だけ、休みをください。
それくらいの父親らしいことは、この子のためにしてください。』
そう書かれたメモには、母親の名前と子供の名前も書かれていた。
子供の名前には聞き覚えはなくても、母親の名前を聞けば、父親が誰か分かるだろう。
今、エルヴィン団長とリヴァイ兵長は、調査兵団の男性陣を集めて、父親探しをしている。
その間、この子を見ておくのが私の今の任務だ。
「おーっ!談話室に赤ん坊がいるぞっ!!」
談話室に入ってくるなり走ってやってきたのは、コニーだった。
その後ろから、騒がしい声を聞きつけて、104期の新兵達もやってくる。
夕飯を食べ終えたところのようで、サシャの機嫌もすこぶるいい。
「本当ですねっ!なまえさん、いつの間に赤ちゃんを産んだんですか!?
人類最強の兵士の二世ですか!?」
サシャが興奮気味に赤ちゃんの顔を覗き込む。
それに驚いて、泣き出してしまった赤ちゃんだったが、慌てたサシャが変な顔をして必死にあやせば、すぐに笑顔に戻ってくれた。
「とっても可愛いけど、リヴァイ兵長には似てませんね。 」
「なまえに似たんじゃねぇの?」
「リヴァイ兵長に似た赤ちゃんって、怖ぇな。」
「私は、すごくチビなところが似てると思った。」
「おい、ミカサ。それ、リヴァイ兵長に聞かれないようにしてくれよ。
お願いだから。」
「いつ産まれたんですか?お誕生日プレゼントしなくちゃ。」
クリスタが可愛らしく首を傾げる。
彼女達は、本気でそんなことを言っているのだろうか。
代わりにツッコんでくれたのは、ユミルだった。
「毎晩ヤり過ぎてあっという間に出来ちまってても、まだ産まれねぇよ。
赤ん坊は、10か月母親の腹ん中で育つんだぜ。
それに、今産んだにしちゃデカすぎる。」
「あ、そっか。」
気づくのが遅すぎるクリスタ達に、あっという間に出来ていないことも一応伝えつつ、兵門の前に置かれていた赤ちゃんであることを説明する。
反応はそれぞれで、でもやっぱり、子供の父親の調査兵に対して何かしらの文句は出てきた。
どんな状況で、この子の母親と別れたのかは分からないけれど、赤ちゃんが産まれたことは知っているのだろうか。
もし、知らないのなら、とても驚くだろうなー。
「ォギャ…っ、オギャァァアッ。」
また赤ちゃんが泣きだした。
抱き直してみたりして必死にあやすが、泣き止まない。
最終的に、ペトラだけではなく104期のみんなも一緒になって、必死にあやす。
あのライナーですら、ベロベロバ~、なんて可愛らしいことをしてくれたが無理だった。
むしろ怖かったのか、大泣きしてしまって収拾がつかなくなる。
「お腹が空いてるんじゃないですかね?
ほら、さっきからずっと指を舐めてるんですよ。」
サシャが赤ちゃんを見ながら言う。
そう言われてみれば、そうだ。
いつから兵門の前にいたのかは分からないけれど、少なくとも私達が見つけてからは一度も母乳もミルクも飲んでいない。
赤ちゃんがどれくらいの頻度で食事をとるのかは知らないけれど、そろそろお腹が空きだしてもおかしくないのかもしれない。
「確か、母親が置いて行った荷物の中に…。
あったっ!ミルク作ってくるから待っててっ!」
「ありがとう~っ。」
哺乳瓶とミルクの粉を見つけたペトラが、談話室の給湯室に走る。
もう少し待ってねー、必死に泣き止まそうと抱っこする腕を優しく揺らしてあやしてみるが、お腹が空いた赤ちゃんが泣き止むことはない。
「なぁ、なんで、ミルク作るんだ?
なまえの母乳、やればいいんじゃねぇの?」
なんとか泣き止まそうとしてる私に、コニーがアドバイスをくれる。
だがー。
「出ないよっ。」
「気合で吸ったら出るかも?」
コニーは本当にバカなのかもしれない、と思った。
とりあえず無視して、赤ちゃんを泣き止まそうとあやす私の代わりに、ユミルが、母乳というのは赤ちゃんを産んだ母親のホルモンによって出るものであって、気合で出るとか出ないとか、そんな簡単なものではないのだと教えてあげていた。
なんだかんだと、そういうところは、ユミルは仲間に優しいと思う。
とても馬鹿にしたように、だったけれどー。
「へぇ~、そうなのか。
でもよ、とりあえず、泣き止ませたいなら、おっぱい吸わせときゃ安心するんじゃねぇの?
弟がチビのときは、俺の母親はそうしてたぜ?それが早いっつって。」
一応、コニーも自分の経験談から本気でアドバイスをくれていたのだと分かった。
でも、それは我が子だから出来ることであって、それに何より、私にここで、乳を丸出しにしろーと言っているのだろうか。
いや、きっと、コニーのことだから深く考えていない。
ただ純粋に、赤ちゃんを泣き止ませるためにはどうすればいいのか、だけに頭をまわしているのだろう。
「何言ってんだよ、コニー。
こんなところでなまえが他人の赤ん坊にそこまで出来るわけねぇだろ。」
「そうだよ。僕たちもいるし…。」
ライナーとベルトルトに窘められて、コニーもさすがに、赤ちゃんに私の乳を吸わせるのはダメだと気づいたらしかった。
但し、それがー。
「あ~、そっか。そうだよな。
なまえの乳を吸ってもいいのは、リヴァイ兵長だけだもんな。
リヴァイ兵長の許可もないのに、勝手にその赤ん坊に吸わせるわけにはー。」
どこか遠くに吹っ飛んでいったコニーを見送りながら、あぁ、本当にバカだったんだな、と思う。
それはたぶん、私だけじゃなかったはずだ。
サシャでさえも、呆れた顔で吹っ飛んでいったコニーを見送っていたからー。
「一週間、お前が世話をすることになった。」
コニーを蹴り飛ばした張本人であるリヴァイ兵長は、何事もなかったような顔で、とんでもないことを報告してくれた。