◇第百十七話◇いつか地平線を眺めるなら
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もう朝かと思ったら、漸く夜が明ける頃だったようだ。
道理で、部屋がまだ薄暗いと思った。
まだ眠っても良かったのだけれど、すっかり目が覚めてしまった私とリヴァイ兵長は、ソファに並んで腰かけて、お揃いのティーカップで紅茶を飲んでいた。
少し肌寒くて、2人で一枚のブランケットを肩から掛けて、ピタッと身体を寄せ合う。
それだけで、どんな凍える冬が訪れたって、暖かいねって言いながら越えていけそうな気がする。
私はきっと、もう、リヴァイ兵長のいない世界は生きていけないのだと思う。
「ねぇ、リヴァイ兵長。」
「ん?」
「私達は、何度も命を繰り返してるらしいですよ。」
「突拍子もねぇ話だな。」
「だから、死んだ人とも、必ずまた会えるんです。
今出逢っている人も、生まれる前に逢ったことがある人らしいですよ。」
「そりゃ、面白ぇな。」
「信じてないでしょう?」
「お前の話じゃなけりゃな。」
適当に聞いていそうだけれど、私の髪をクシャリと撫でた手が優しかったから、それで良しとしよう。
こんな他愛もない雑談を、夜明け前に2人で出来るなんて、幸せだなぁ、ってそんなことで心が満たされているから。
「死んで、また生まれ直して、やり直しながら、
私達の命は何処に行きつこうとしてるんでしょうね。」
「さぁな。」
「でも、ひとつだけ、分かるんです。」
「なんだ。」
「私の命の行きつくところはきっと、リヴァイ兵長です。」
そっと身体を離し、ティーカップを持っていない方の手で、リヴァイ兵長の胸に触れる。
規則的な心臓の鼓動が、一緒にこの世界に生きているという事実をこの世で一番美しい音色で教えてくれる。
「俺は、お前だな。」
リヴァイ兵長の手が、私の胸に触れる。
そして、揉むもんだから、笑ってしまう。
ふざけないでくださいよーと頬を膨らませながら、それでも、一緒にふざけるのが楽しくて仕方がないのは、きっと私の方だ。
「私、よく見る夢があるんです。さっきもその夢を見てました。」
「あぁ、泣きながら美味いもん食った夢か。」
「違います。美味しいもの食べたのは、たぶん…、
私じゃなくてあの子です。」
「あの子?」
「リヴァイ兵長、海って知ってますか?」
「話があちこち飛ぶな。」
「アルミンが教えてくれたんです。壁の外の世界には、商人が一生かけても
取り尽くせないほどの巨大な塩の湖があって地平線にずーっと青が広がるんです。」
「それは、見てみてぇな。」
「私の夢に出てくるのが、その海だと思うんです。」
「夢の話に戻ったのか。」
「地平線の向こうにも続く大きな湖と白い砂の絨毯があって、
隣にはいつも、私の手を握ってくれる人がいるんです。
目が覚めると、いつも、その人は誰なんだろうって思ってたんですけどー。」
テーブルの上にティーカップを置いて、私はリヴァイ兵長の手を両手で包んだ。
この大きさで、細さで、感触でー。
絶対にこの手だ。
私がいつも、安心して、懐かしくて、愛おしいと感じていた手。
「今日見た夢で、私が握ってたのはリヴァイ兵長の手でした。」
「そりゃ、よかった。他の男だったら、夢の中にまで行って
そのクソ野郎をぶん殴ってたところだ。」
冗談交じりな気もするけれど、ほんの少し目に本気が混ざっていて、私は苦笑する。
リヴァイ兵長なら、本当に夢の中にまで入ってこれそうだ。
凄く不思議だけれど、リヴァイ兵長に出来ないことなんてないって、信じているのだと思う。
それこそ、この世界を救うのは、リヴァイ兵長だと確信している。
私は、そんなリヴァイ兵長を、ほんの少しでも支えられる存在になりたい。
兵士としても、恋人としてもー。
「あれは、夢じゃないと思うんです。
私はいつかきっと、リヴァイ兵長と地平線の向こうまで続く
綺麗な海を一緒に見るんです。いつか、きっと。」
「あぁ、そうだな。必ず、一緒に見よう。」
リヴァイ兵長が、私の手を強く握る。
ほら、やっぱり、この手だ。
暗闇から私を救って、美しい世界に導いてくれる優しくて強い手。
一緒に、地平線を眺めていたのは、リヴァイ兵長だったんだ。
「約束ですよ。私、リヴァイ兵長が地平線を眺めるとき、隣にいたいです。」
「あぁ、約束する。必ず、俺がお前を守って、連れてってやる。」
「ありがとうございます。」
リヴァイ兵長はきっと、本当に私を守ってくれるのだろう。
何と言っても、世界で一番強くて、とても深い愛をくれる人だから。
でもー。
「私にも、リヴァイ兵長のこと守らせてくださいね。」
「無茶しねぇ程度にならな。」
リヴァイ兵長がクシャリと私の髪を撫でる。
調査兵団に入団して、調査兵として公に心臓を捧げることを誓って、ただがむしゃらに壁の外を目指してきた。
夢なんて、なかった。
私はただ、大切な人達の隣に立っていたかっただけー。
でも今、漸く、私にも、壁の外で戦う理由が、夢が出来た。
それが、きっと私をこれからもっともっと強くする。
リヴァイ兵長はいつも、こうやって私に、いろんなものを与えてくれる。
「リヴァイ兵長の隣で見る青い海は、きっとすごく綺麗なんでしょうね。」
海に夢を馳せる私をリヴァイ兵長が優しく見つめる。
そんな私達を、カーテンの隙間から差す眩しい光が包み込む。
いつか地平線を眺めるなら、貴方の隣でー。
窓の外の景色は、いつの間にか、白と青が混ざって明るくなり始めていた。
道理で、部屋がまだ薄暗いと思った。
まだ眠っても良かったのだけれど、すっかり目が覚めてしまった私とリヴァイ兵長は、ソファに並んで腰かけて、お揃いのティーカップで紅茶を飲んでいた。
少し肌寒くて、2人で一枚のブランケットを肩から掛けて、ピタッと身体を寄せ合う。
それだけで、どんな凍える冬が訪れたって、暖かいねって言いながら越えていけそうな気がする。
私はきっと、もう、リヴァイ兵長のいない世界は生きていけないのだと思う。
「ねぇ、リヴァイ兵長。」
「ん?」
「私達は、何度も命を繰り返してるらしいですよ。」
「突拍子もねぇ話だな。」
「だから、死んだ人とも、必ずまた会えるんです。
今出逢っている人も、生まれる前に逢ったことがある人らしいですよ。」
「そりゃ、面白ぇな。」
「信じてないでしょう?」
「お前の話じゃなけりゃな。」
適当に聞いていそうだけれど、私の髪をクシャリと撫でた手が優しかったから、それで良しとしよう。
こんな他愛もない雑談を、夜明け前に2人で出来るなんて、幸せだなぁ、ってそんなことで心が満たされているから。
「死んで、また生まれ直して、やり直しながら、
私達の命は何処に行きつこうとしてるんでしょうね。」
「さぁな。」
「でも、ひとつだけ、分かるんです。」
「なんだ。」
「私の命の行きつくところはきっと、リヴァイ兵長です。」
そっと身体を離し、ティーカップを持っていない方の手で、リヴァイ兵長の胸に触れる。
規則的な心臓の鼓動が、一緒にこの世界に生きているという事実をこの世で一番美しい音色で教えてくれる。
「俺は、お前だな。」
リヴァイ兵長の手が、私の胸に触れる。
そして、揉むもんだから、笑ってしまう。
ふざけないでくださいよーと頬を膨らませながら、それでも、一緒にふざけるのが楽しくて仕方がないのは、きっと私の方だ。
「私、よく見る夢があるんです。さっきもその夢を見てました。」
「あぁ、泣きながら美味いもん食った夢か。」
「違います。美味しいもの食べたのは、たぶん…、
私じゃなくてあの子です。」
「あの子?」
「リヴァイ兵長、海って知ってますか?」
「話があちこち飛ぶな。」
「アルミンが教えてくれたんです。壁の外の世界には、商人が一生かけても
取り尽くせないほどの巨大な塩の湖があって地平線にずーっと青が広がるんです。」
「それは、見てみてぇな。」
「私の夢に出てくるのが、その海だと思うんです。」
「夢の話に戻ったのか。」
「地平線の向こうにも続く大きな湖と白い砂の絨毯があって、
隣にはいつも、私の手を握ってくれる人がいるんです。
目が覚めると、いつも、その人は誰なんだろうって思ってたんですけどー。」
テーブルの上にティーカップを置いて、私はリヴァイ兵長の手を両手で包んだ。
この大きさで、細さで、感触でー。
絶対にこの手だ。
私がいつも、安心して、懐かしくて、愛おしいと感じていた手。
「今日見た夢で、私が握ってたのはリヴァイ兵長の手でした。」
「そりゃ、よかった。他の男だったら、夢の中にまで行って
そのクソ野郎をぶん殴ってたところだ。」
冗談交じりな気もするけれど、ほんの少し目に本気が混ざっていて、私は苦笑する。
リヴァイ兵長なら、本当に夢の中にまで入ってこれそうだ。
凄く不思議だけれど、リヴァイ兵長に出来ないことなんてないって、信じているのだと思う。
それこそ、この世界を救うのは、リヴァイ兵長だと確信している。
私は、そんなリヴァイ兵長を、ほんの少しでも支えられる存在になりたい。
兵士としても、恋人としてもー。
「あれは、夢じゃないと思うんです。
私はいつかきっと、リヴァイ兵長と地平線の向こうまで続く
綺麗な海を一緒に見るんです。いつか、きっと。」
「あぁ、そうだな。必ず、一緒に見よう。」
リヴァイ兵長が、私の手を強く握る。
ほら、やっぱり、この手だ。
暗闇から私を救って、美しい世界に導いてくれる優しくて強い手。
一緒に、地平線を眺めていたのは、リヴァイ兵長だったんだ。
「約束ですよ。私、リヴァイ兵長が地平線を眺めるとき、隣にいたいです。」
「あぁ、約束する。必ず、俺がお前を守って、連れてってやる。」
「ありがとうございます。」
リヴァイ兵長はきっと、本当に私を守ってくれるのだろう。
何と言っても、世界で一番強くて、とても深い愛をくれる人だから。
でもー。
「私にも、リヴァイ兵長のこと守らせてくださいね。」
「無茶しねぇ程度にならな。」
リヴァイ兵長がクシャリと私の髪を撫でる。
調査兵団に入団して、調査兵として公に心臓を捧げることを誓って、ただがむしゃらに壁の外を目指してきた。
夢なんて、なかった。
私はただ、大切な人達の隣に立っていたかっただけー。
でも今、漸く、私にも、壁の外で戦う理由が、夢が出来た。
それが、きっと私をこれからもっともっと強くする。
リヴァイ兵長はいつも、こうやって私に、いろんなものを与えてくれる。
「リヴァイ兵長の隣で見る青い海は、きっとすごく綺麗なんでしょうね。」
海に夢を馳せる私をリヴァイ兵長が優しく見つめる。
そんな私達を、カーテンの隙間から差す眩しい光が包み込む。
いつか地平線を眺めるなら、貴方の隣でー。
窓の外の景色は、いつの間にか、白と青が混ざって明るくなり始めていた。