◇第百十話◇ただひたすら、信じた
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テュランの鞍に括りつけてあった停留所の番号札は、ウォール・マリアの貴族の住む街のものだということが分かった。
どうせ言っても聞かないだろうと観念していたのか、愛馬に乗って兵舎を飛び出していったリヴァイをエルヴィンが止めることはなかった。
雨は止んだが、まだ白い霧は濃く、二次被害を避けるためにも、最少人数での捜索は、リヴァイを筆頭に、ハンジ班と数名の精鋭兵が来ただけだ。
目的地の街に辿り着いてからは、手分けして探している。
見つかれば、信煙弾を撃つことになっているが、嬉しい音は聞こえてこない。
(クソ…ッ!どこだ…!?)
行く手を阻む巨人を一瞬で片付け、リヴァイは愛馬に飛び乗る。
忙しなく左右に目を動かし、なまえの姿を探し続けているが、見つかるのは巨人ばかりだー。
正直、焦っていた。
なまえがテュランに託してくれたメッセージのおかげで、明日の朝を待たずして助けに来れたといっても、時間のロスは否めない。
きっともう、立体起動装置のガスは切れているだろう。
替刃が足りているかもわからない。
そもそも、なまえは戦えるだけの体力が残っているのか。
腕が、足が、残っているのかー。
(なまえ…っ。)
あのとき、信じたりなんかするからー。
信じなければよかったー。
頭の中でそればかりが繰り返される。
後悔なんて、いつぶりだろうか。
ちゃんと、知っていた。
この世界に、絶対、なんてものはないことを嫌というほどに今までこの目で見てきたはずだった。
それなのにー。
『あったかい。』
寝る前にそっと抱きしめてやれば、なまえは肩に頬を寄せて嬉しそうにしていた。
そんな彼女が今頃、雨に打たれて、寒さに凍えているかもしれない。
早く見つけてやりたい。そして、抱きしめてやりたい。
だって、きっと彼女は、絶対に、生きているからー!
この状況でも、馬鹿みたいに、リヴァイは信じていた。
なまえを信じた自分のことではない。
絶対に生きて帰ると微笑んでくれたなまえのことを、誰よりも信じているー。
≪アニキ!どこ行ってんだよっ!こっちだよ、こっち!≫
不意に聞こえてきた、懐かしい声に、リヴァイは思わず手綱を引っ張った。
濡れた地面を滑りながら馬が止まる。
振り向いて見たが、もちろん、イザベルの姿なんてあるはずはない。
いるはずがないのに、気づけば、馬を旋回させていた。
どのあたりから声がしたのか、分からない。
でも、こっちでー。
≪なぁ、リヴァイ。少しは俺達のことも頼ってくれよ。
-俺達を、信じてくれ。≫
必死になまえを探すリヴァイの耳に、今度はファーランの声が聞こえてくる。
これは過去の記憶が聞かせている声なのだろうか。
それともー。
いや、まさかー。
でも、もし、そうならー。
そこにいるのならー。
(なら、教えてくれ…!なまえは何処にいる…!)
ギリッと唇を噛む、でも、不安はもうない。
強い味方がそばにいるような、そんな不思議な感覚だ。
懐かしいその声は、まるで、自分をなまえの元へ導いてくれているような気がしていた。
(女?)
建物の角に女の姿を見た気がした。
愛馬の腹を蹴り追いかければ、2つ向こうの角で長い金髪が揺れて、こっちだと手招きするように赤い爪をチラつかせる。
ここは、巨人に奪われた人間の領域、ウォール・マリアで、人が住めるような場所ではない。
幻だと頭で分かっていながら、心が追いかけろとリヴァイを急かした。
消えては現れる不思議な赤い爪に手招きされてすぐ、辿り着いたのは、貴族の街を抜けた先にある廃墟となった教会だった。
壊れた扉の向こうに金髪を見つけて、リヴァイは愛場から飛び降りた。
教会の中は、巨人に踏み荒らされたのか、元々は整然と並んであったはずの長椅子は壊れて、散らばっていた。
その奥に、柔らかい光を見た。
そういえば、もう夜だ。
屋根が壊れて出来た大きな穴から、月明かりが差しているようだった。
その光に照らされるように、見覚えのある横顔があった。
≪大丈夫、大丈夫よ。≫
彼女は、聞き覚えのある声で、腕の中で眠るなまえの頭を撫でていた。
その隣には、さっき見た金髪の女が立っている。
自分は今、夢を見ているのだろうか。
何を、見ているのだろうー。
≪なぁ、アニキ!俺も結構頑張ったんだぜっ!褒めてくれよな!!≫
≪いいや、頑張ったのは俺だ。俺の誘導でここまでこれたんだからな。
リヴァイ、貸しイチだからな。忘れるなよ。≫
すぐ隣から、懐かしいやり取りが聞こえた。
肩を叩く手の感触が蘇ってくる。いや、実際に感じたのかー。
分からない。
ー顔を上げたルルが、俺達を見て嬉しそうに微笑んだ。
どうせ言っても聞かないだろうと観念していたのか、愛馬に乗って兵舎を飛び出していったリヴァイをエルヴィンが止めることはなかった。
雨は止んだが、まだ白い霧は濃く、二次被害を避けるためにも、最少人数での捜索は、リヴァイを筆頭に、ハンジ班と数名の精鋭兵が来ただけだ。
目的地の街に辿り着いてからは、手分けして探している。
見つかれば、信煙弾を撃つことになっているが、嬉しい音は聞こえてこない。
(クソ…ッ!どこだ…!?)
行く手を阻む巨人を一瞬で片付け、リヴァイは愛馬に飛び乗る。
忙しなく左右に目を動かし、なまえの姿を探し続けているが、見つかるのは巨人ばかりだー。
正直、焦っていた。
なまえがテュランに託してくれたメッセージのおかげで、明日の朝を待たずして助けに来れたといっても、時間のロスは否めない。
きっともう、立体起動装置のガスは切れているだろう。
替刃が足りているかもわからない。
そもそも、なまえは戦えるだけの体力が残っているのか。
腕が、足が、残っているのかー。
(なまえ…っ。)
あのとき、信じたりなんかするからー。
信じなければよかったー。
頭の中でそればかりが繰り返される。
後悔なんて、いつぶりだろうか。
ちゃんと、知っていた。
この世界に、絶対、なんてものはないことを嫌というほどに今までこの目で見てきたはずだった。
それなのにー。
『あったかい。』
寝る前にそっと抱きしめてやれば、なまえは肩に頬を寄せて嬉しそうにしていた。
そんな彼女が今頃、雨に打たれて、寒さに凍えているかもしれない。
早く見つけてやりたい。そして、抱きしめてやりたい。
だって、きっと彼女は、絶対に、生きているからー!
この状況でも、馬鹿みたいに、リヴァイは信じていた。
なまえを信じた自分のことではない。
絶対に生きて帰ると微笑んでくれたなまえのことを、誰よりも信じているー。
≪アニキ!どこ行ってんだよっ!こっちだよ、こっち!≫
不意に聞こえてきた、懐かしい声に、リヴァイは思わず手綱を引っ張った。
濡れた地面を滑りながら馬が止まる。
振り向いて見たが、もちろん、イザベルの姿なんてあるはずはない。
いるはずがないのに、気づけば、馬を旋回させていた。
どのあたりから声がしたのか、分からない。
でも、こっちでー。
≪なぁ、リヴァイ。少しは俺達のことも頼ってくれよ。
-俺達を、信じてくれ。≫
必死になまえを探すリヴァイの耳に、今度はファーランの声が聞こえてくる。
これは過去の記憶が聞かせている声なのだろうか。
それともー。
いや、まさかー。
でも、もし、そうならー。
そこにいるのならー。
(なら、教えてくれ…!なまえは何処にいる…!)
ギリッと唇を噛む、でも、不安はもうない。
強い味方がそばにいるような、そんな不思議な感覚だ。
懐かしいその声は、まるで、自分をなまえの元へ導いてくれているような気がしていた。
(女?)
建物の角に女の姿を見た気がした。
愛馬の腹を蹴り追いかければ、2つ向こうの角で長い金髪が揺れて、こっちだと手招きするように赤い爪をチラつかせる。
ここは、巨人に奪われた人間の領域、ウォール・マリアで、人が住めるような場所ではない。
幻だと頭で分かっていながら、心が追いかけろとリヴァイを急かした。
消えては現れる不思議な赤い爪に手招きされてすぐ、辿り着いたのは、貴族の街を抜けた先にある廃墟となった教会だった。
壊れた扉の向こうに金髪を見つけて、リヴァイは愛場から飛び降りた。
教会の中は、巨人に踏み荒らされたのか、元々は整然と並んであったはずの長椅子は壊れて、散らばっていた。
その奥に、柔らかい光を見た。
そういえば、もう夜だ。
屋根が壊れて出来た大きな穴から、月明かりが差しているようだった。
その光に照らされるように、見覚えのある横顔があった。
≪大丈夫、大丈夫よ。≫
彼女は、聞き覚えのある声で、腕の中で眠るなまえの頭を撫でていた。
その隣には、さっき見た金髪の女が立っている。
自分は今、夢を見ているのだろうか。
何を、見ているのだろうー。
≪なぁ、アニキ!俺も結構頑張ったんだぜっ!褒めてくれよな!!≫
≪いいや、頑張ったのは俺だ。俺の誘導でここまでこれたんだからな。
リヴァイ、貸しイチだからな。忘れるなよ。≫
すぐ隣から、懐かしいやり取りが聞こえた。
肩を叩く手の感触が蘇ってくる。いや、実際に感じたのかー。
分からない。
ー顔を上げたルルが、俺達を見て嬉しそうに微笑んだ。