◇第百五話◇悪い予感
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デスクの上の本棚には、巨人に対する戦闘術をまとめた資料や本が幾つも並んでいた。
誰も死なせない兵士はもう死んだー。
そんなことを言っていたなまえだったけれど、命の選別をする覚悟は出来ただけで、根本的なものは変わっていないのだろう。
彼女はきっと今も、壁外で、出来るだけ誰も死なないように戦おうとしているはずだ。
それが、自分がリスクを背負う危険な選択になろうとも、躊躇いも、迷いもせずにー。
それを知っているから、リヴァイは自分の目の届かない場所になまえが行くことを許したくなかったのだと思う。
「絵本?」
巨人やこの世界についての難しそうな本が並ぶ中に、ハンジは、一冊だけ毛色の違う背表紙を見つけた。
手に取って見れば、絵本のようだった。
表紙には、可愛らしいお姫様が星にお祈りをしているような絵が描かれている。
「わぁ、懐かしいですね。
子供の頃、母親によく読んでもらってました。
最後が悲しくて、あんまり好きではなかったですけどね。」
ニファがやってきて、ハンジの手元の本を覗き込む。
「へぇ~、そうなんだ。」
「ハンジさんは、子供の頃から巨人の絵本読んでそうですもんね。」
さすがにそれはないーと言おうとしたが、ニファはデスクの中のものを整理し始めたので、苦笑に変えた。
(悲しい最後って、どんなんだろう?)
好奇心旺盛のハンジは、適当に絵本のページをパラパラとめくる。
そして、最後のページ。
騎士に抱きしめられながら眠るお姫様の絵を見つけると、なぜか、すごく嫌な予感がした。
それが何かは分からない。
でも、とてつもなく悪いことが起こるようなー。
「わぁ、可愛いっ。
なまえってこんな可愛いことするところもあるんだ。」
楽しそうなニファの声が聞こえて、ハンジの思考はそちらに移動してしまう。
「なに?」
「ほら、見てください。押し花の栞、手作りみたいですよ。
こういう可愛らしいところもリヴァイ兵長の好みなんでしょうか。」
デスクの中からニファが見つけたのは、白い花の押し花だった。
栞として使っているようで、上の方にあけた穴に赤いリボンを結んでいる。
「それ、私達が作ってあげたんです。」
クローゼットから服を取り出しながら、フロリアンが苦笑する。
そのそばで服をたたんでいるマレーネ達も顔を合わせてクスクスと笑っていた。
「フロリアン達が?」
「リヴァイ兵長からもらったお花で押し花を作るって
言い出したのはなまえなんですけど、引くほど不器用なんです、あのコ。」
「最初は綺麗だった花もなまえが触る度に面影なくしていって、
押し花になる前に無残な姿になりそうだったので、私達が救出したんです。」
「そうそう、それ本当は花弁もバラバラどころか破れてて
それを私達がひとつひとつ元の姿に見えるように必死に繋げたんですよ。」
「可愛らしいどころか、デストロイヤーなまえですよ。」
押し花の栞がきっかけで、フロリアン達はデストロイヤーと名付けた友人の破壊者っぷりを面白おかしく話し始めた。
それを見ていると、彼女達と一緒に笑ったり怒ったりしているなまえの姿が目に浮かぶようだった。
もう、独りぼっちで調査兵団にやってきたなまえはいないのか。
1人で戦い、必死に生きて、決して優しさを忘れず、そうして手に入れた友人や恋人が、今のなまえにはいる。
もうなまえは独りじゃないのだと改めて思い知る。
ついさっき感じた悪い予感は、ハンジの胸からスーッと消えて行こうとしていた。
はずだったー。
棚の中から、なまえが特に大切にしている天使の羽のティーカップに手を伸ばしたハンジは、誤って落としてしまう。
マズいと思ったときには、大きな音を立てて、ティーカップが真っ二つに割れた。
それはまるで、これから起こる悪夢を暗示しているみたいで、ハンジの顔色は真っ青になっていた。
誰も死なせない兵士はもう死んだー。
そんなことを言っていたなまえだったけれど、命の選別をする覚悟は出来ただけで、根本的なものは変わっていないのだろう。
彼女はきっと今も、壁外で、出来るだけ誰も死なないように戦おうとしているはずだ。
それが、自分がリスクを背負う危険な選択になろうとも、躊躇いも、迷いもせずにー。
それを知っているから、リヴァイは自分の目の届かない場所になまえが行くことを許したくなかったのだと思う。
「絵本?」
巨人やこの世界についての難しそうな本が並ぶ中に、ハンジは、一冊だけ毛色の違う背表紙を見つけた。
手に取って見れば、絵本のようだった。
表紙には、可愛らしいお姫様が星にお祈りをしているような絵が描かれている。
「わぁ、懐かしいですね。
子供の頃、母親によく読んでもらってました。
最後が悲しくて、あんまり好きではなかったですけどね。」
ニファがやってきて、ハンジの手元の本を覗き込む。
「へぇ~、そうなんだ。」
「ハンジさんは、子供の頃から巨人の絵本読んでそうですもんね。」
さすがにそれはないーと言おうとしたが、ニファはデスクの中のものを整理し始めたので、苦笑に変えた。
(悲しい最後って、どんなんだろう?)
好奇心旺盛のハンジは、適当に絵本のページをパラパラとめくる。
そして、最後のページ。
騎士に抱きしめられながら眠るお姫様の絵を見つけると、なぜか、すごく嫌な予感がした。
それが何かは分からない。
でも、とてつもなく悪いことが起こるようなー。
「わぁ、可愛いっ。
なまえってこんな可愛いことするところもあるんだ。」
楽しそうなニファの声が聞こえて、ハンジの思考はそちらに移動してしまう。
「なに?」
「ほら、見てください。押し花の栞、手作りみたいですよ。
こういう可愛らしいところもリヴァイ兵長の好みなんでしょうか。」
デスクの中からニファが見つけたのは、白い花の押し花だった。
栞として使っているようで、上の方にあけた穴に赤いリボンを結んでいる。
「それ、私達が作ってあげたんです。」
クローゼットから服を取り出しながら、フロリアンが苦笑する。
そのそばで服をたたんでいるマレーネ達も顔を合わせてクスクスと笑っていた。
「フロリアン達が?」
「リヴァイ兵長からもらったお花で押し花を作るって
言い出したのはなまえなんですけど、引くほど不器用なんです、あのコ。」
「最初は綺麗だった花もなまえが触る度に面影なくしていって、
押し花になる前に無残な姿になりそうだったので、私達が救出したんです。」
「そうそう、それ本当は花弁もバラバラどころか破れてて
それを私達がひとつひとつ元の姿に見えるように必死に繋げたんですよ。」
「可愛らしいどころか、デストロイヤーなまえですよ。」
押し花の栞がきっかけで、フロリアン達はデストロイヤーと名付けた友人の破壊者っぷりを面白おかしく話し始めた。
それを見ていると、彼女達と一緒に笑ったり怒ったりしているなまえの姿が目に浮かぶようだった。
もう、独りぼっちで調査兵団にやってきたなまえはいないのか。
1人で戦い、必死に生きて、決して優しさを忘れず、そうして手に入れた友人や恋人が、今のなまえにはいる。
もうなまえは独りじゃないのだと改めて思い知る。
ついさっき感じた悪い予感は、ハンジの胸からスーッと消えて行こうとしていた。
はずだったー。
棚の中から、なまえが特に大切にしている天使の羽のティーカップに手を伸ばしたハンジは、誤って落としてしまう。
マズいと思ったときには、大きな音を立てて、ティーカップが真っ二つに割れた。
それはまるで、これから起こる悪夢を暗示しているみたいで、ハンジの顔色は真っ青になっていた。