ゆっくり目を開けると、綺麗な睫毛が太陽の光を反射させていた。
朝が来てしまったようだ。
チラリと時計を確認すると、まだ起きるには早い時間だということがわかる。
せっかく幸せな時間を満喫して気持ちよく寝ていたのだから、こんなに早く起きなくてもいいのに、と自分を心の中で叱りつける。
どうせなら寝坊して、もっと、一緒にいたかったのにー。
でも、リヴァイ兵長はまだ眠っているみたいだから、起きるまではこうして一緒にいられる。
リヴァイ兵長が寝坊することはないだろうから、もうそろそろ起きてしまうのだろう。
だから、それまではもう少しー。

(綺麗な黒髪…。)

起こしてしまわないように、そっと髪に触れる。
直毛なせいで硬く見えがちだけれど、リヴァイ兵長の髪は意外と猫っ毛だ。
柔らかくて、触れているこっちが気持ちよくなる。
長い前髪をそっとかきあげれば、リヴァイ兵長の寝顔がよく見える。
リヴァイ班のみんなだけではなくて、ハンジさんも、リヴァイ兵長の寝顔は見たことがないと言っていた。
私だけの、特権のようで得意な気分になる。
それなのにー。

「…つまらねぇな。髪触るだけか。
　寝込みでも襲えば、ヤり返してやろうと思ってたのに。」
「え？」

不服そうな声がした後、長くて綺麗な睫毛が上を向いた。
切れ長の瞳と視線が重なって、漸く気づく。

「寝たフリしてたんですかっ。」
「俺がなまえより遅く起きるわけがねぇ。」
「…だから、今日は勝ったと思って嬉しかったのに。」
「残念だったな。」

頬を膨らませる私に、意地悪く言ってリヴァイ兵長がキスをする。
恋人同士が一緒に朝を迎えたとき、恒例のおはようのキスだ。

「おはようございます。」

嬉しい声を笑顔に乗せて伝えれば、リヴァイ兵長が私の頬をひと撫でしてからベッドから起き上がった。