◇第九十四話◇幸せな一日の、最初の日
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昼食を片付けて宿舎に戻る途中、ジャンに会った。
午後からは座学の授業なのか、ノートとペンケースを片手に持っている。
目が合って、なんとなく気まずい気持ちになりながらも、どちらからともなく、近くのベンチで話すことを望んだ。
「昨日は、私のために怒ってくれてありがとうね。」
「あ、いえ。あれはどう考えても言いがかりっすから。
なまえさんは、何も悪くねぇのに。」
昨日のジーニー達に対する怒りが蘇ってきたのか、ジャンは苛立った様子で足元の小石を睨みつけた。
なまえさんは何も悪くないー、そう信じているジャンの気持ちに胸が痛んだ。
あの事件を起こしたのは、ルーカスで、ルーカスにそうさせたのは私。
ジーニー達の怒りは、真相を知らないにしても、あながち間違ってはいないのだ。
「どうかしました?」
「え?あ、ううん、なんでもないの。」
慌てて笑顔で誤魔化して、首を横に振る。
ジャンとこうしてちゃんと話すのは、あの雨の日に告白されて以来だった。
何を話せばいいのか、ジャンも分からないようで、それから少し、気まずい沈黙が流れた。
先に口を開いたのは、ジャンだった。
「リヴァイ兵長とうまくいってるみたいっすね。」
「え…っ。私、また変な顔してたっ!?」
慌てて、私は自分の頬を両手で押さえる。
また頬が緩んで、だらしない顔をしていたのだろうか。
ちゃんと話そうとしているときに、情けない。恥ずかしい。
そんな私を見て、ジャンが困ったような笑みを浮かべる。
「はい、さっきもすげぇ幸せそうな顔でスキップしてたんで。」
「うそっ!?」
「嘘です。」
「もう、やめてよ~。」
前のめりに倒れて両手で顔を隠す私を、ジャンはやっぱり可笑しそうに笑った。
そしてー。
「リヴァイ兵長が、なまえさんを命懸けで守って帰ってきた姿を見たとき、
俺は完敗どころか、勝負にもなってなかったんだなって、やっと気づきました。
昨日のリヴァイ兵長もカッコよかったですし。」
ジャンは少し悲しそうに、でも、どこか清々しそうに言う。
そして、立ち上がるとー。
「これからは、ほぼ同時期に調査兵団に入団した、ほぼ同期で仲間で
頼りになる弟として、よろしくお願いしますっ!」
頭を下げて、ジャンは私に握手を求めてきた。
真っすぐに伸びたその手が、恋の終わりを求めているように思えた。
「頼りになるって自分で言っちゃうんだ。」
「はい、事実なんでっ!」
クスッと笑って、私はジャンの手を握る。
「頼りにならないお姉さんだけど、よろしくね。」
「はい…!」
顔を上げたジャンのハニかむ表情が、どこか切なさも残していて、それは私にも伝染する。
でも、受け止められない気持ちを、私もジャンも、どうすることも出来ない。
それから、郵便所と教室が同じ方向だった私達は、話しながら目的地へと向かった。
「あ、それからあの雨の日の傘なんですけどー。」
「ん?傘がどうしたの?」
途中で話すのをやめてしまったジャンに、私は訊ねた。
少し考えるようにしていたジャンだったけれど、すぐに少し意地悪な笑みを浮かべて、私を見て口を開いた。
「やっぱり、それは最後の仕返しとして秘密にしておきます。」
意地悪く言うジャンが、今日の空みたいに、とても晴れ晴れとしていたからー。
「えー?なにそれー?」
困ったように言ったけれど、ジャンが話したくないのならそれでいいかな、と思った。
恋の相手としては、好きにはなれなかったけれど、でも、私は、ジャンが好きだから。
強がりで、意地っ張りなところが、私に少し似ている弟としてー。
午後からは座学の授業なのか、ノートとペンケースを片手に持っている。
目が合って、なんとなく気まずい気持ちになりながらも、どちらからともなく、近くのベンチで話すことを望んだ。
「昨日は、私のために怒ってくれてありがとうね。」
「あ、いえ。あれはどう考えても言いがかりっすから。
なまえさんは、何も悪くねぇのに。」
昨日のジーニー達に対する怒りが蘇ってきたのか、ジャンは苛立った様子で足元の小石を睨みつけた。
なまえさんは何も悪くないー、そう信じているジャンの気持ちに胸が痛んだ。
あの事件を起こしたのは、ルーカスで、ルーカスにそうさせたのは私。
ジーニー達の怒りは、真相を知らないにしても、あながち間違ってはいないのだ。
「どうかしました?」
「え?あ、ううん、なんでもないの。」
慌てて笑顔で誤魔化して、首を横に振る。
ジャンとこうしてちゃんと話すのは、あの雨の日に告白されて以来だった。
何を話せばいいのか、ジャンも分からないようで、それから少し、気まずい沈黙が流れた。
先に口を開いたのは、ジャンだった。
「リヴァイ兵長とうまくいってるみたいっすね。」
「え…っ。私、また変な顔してたっ!?」
慌てて、私は自分の頬を両手で押さえる。
また頬が緩んで、だらしない顔をしていたのだろうか。
ちゃんと話そうとしているときに、情けない。恥ずかしい。
そんな私を見て、ジャンが困ったような笑みを浮かべる。
「はい、さっきもすげぇ幸せそうな顔でスキップしてたんで。」
「うそっ!?」
「嘘です。」
「もう、やめてよ~。」
前のめりに倒れて両手で顔を隠す私を、ジャンはやっぱり可笑しそうに笑った。
そしてー。
「リヴァイ兵長が、なまえさんを命懸けで守って帰ってきた姿を見たとき、
俺は完敗どころか、勝負にもなってなかったんだなって、やっと気づきました。
昨日のリヴァイ兵長もカッコよかったですし。」
ジャンは少し悲しそうに、でも、どこか清々しそうに言う。
そして、立ち上がるとー。
「これからは、ほぼ同時期に調査兵団に入団した、ほぼ同期で仲間で
頼りになる弟として、よろしくお願いしますっ!」
頭を下げて、ジャンは私に握手を求めてきた。
真っすぐに伸びたその手が、恋の終わりを求めているように思えた。
「頼りになるって自分で言っちゃうんだ。」
「はい、事実なんでっ!」
クスッと笑って、私はジャンの手を握る。
「頼りにならないお姉さんだけど、よろしくね。」
「はい…!」
顔を上げたジャンのハニかむ表情が、どこか切なさも残していて、それは私にも伝染する。
でも、受け止められない気持ちを、私もジャンも、どうすることも出来ない。
それから、郵便所と教室が同じ方向だった私達は、話しながら目的地へと向かった。
「あ、それからあの雨の日の傘なんですけどー。」
「ん?傘がどうしたの?」
途中で話すのをやめてしまったジャンに、私は訊ねた。
少し考えるようにしていたジャンだったけれど、すぐに少し意地悪な笑みを浮かべて、私を見て口を開いた。
「やっぱり、それは最後の仕返しとして秘密にしておきます。」
意地悪く言うジャンが、今日の空みたいに、とても晴れ晴れとしていたからー。
「えー?なにそれー?」
困ったように言ったけれど、ジャンが話したくないのならそれでいいかな、と思った。
恋の相手としては、好きにはなれなかったけれど、でも、私は、ジャンが好きだから。
強がりで、意地っ張りなところが、私に少し似ている弟としてー。