◇第九十二話◇美しい世界を貴方と生きる
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自分の執務室兼自室に戻ったリヴァイ兵長は、私をソファに座らせた。
盗み聞きしてしまったミケ分隊長の話とか、ジーニー達の怒りの言葉とか、さっきのリヴァイ兵長の言動とかー。
頭がうまく回転していなくて、テーブルの上に置いてある食事が手つかずの状態なことに気が付いて、まだお腹空いてないのかな、なんて空気を読まないことを考えていた。
「怪我はねぇか?」
「え?あ、はい。大丈夫です、ありがとうございました。」
隣に座ったリヴァイ兵長に訊ねられて、私は少し早口で答え頭を下げた。
背中が痛い気がするけど、それもよくわからないくらい、頭が真っ白だった。
でも、聞きたいと恋心が疼いていた。
さっきの言葉の、続きをー。
「リヴァイ兵長、さっきのは…、いつもの、冗談ですか?
それとも、私を守るために吐いた嘘、ですか?恋人のフリ、ですか?」
隣に座るリヴァイ兵長の顔をまっすぐに見て、私は訊ねる。
その表情の小さな変化も逃したくなくて、この恋を実らせるためにも、終わらせる、ためにもー。
それに、私はきっと、リヴァイ兵長にフラれ続け過ぎたんだと思う。
どんなに嬉しい言葉も、もう信じられなかった。
それでも、ほんのわずかな希望に賭けた恋心が、リヴァイ兵長が頷かないことを願っていた。
「俺は、」
リヴァイ兵長が口を開く。
私の目を見て、そして、気持ちを話そうとしてくれている。
これでフラれたら、私はもう本当に諦める。
今度こそ、諦める。
そして、罰を受けよう。ルーカスと一緒にー。
だから、どうかー。この恋に、ハッピーエンドをー。どうかー。
私は静かに、答えを待った。
自分の心臓の音が耳の奥で五月蠅い。
これでは、リヴァイ兵長の声が聞こえないと思ってしまうくらい。
「俺は、お前に幸せになってほしい。」
リヴァイ兵長は、私をまっすぐに見て、迷いなく告げた。
あぁ、恋が終わったー。
「そう、ですか。ありがとうござます。」
そっと、目を伏せて、私は心にもない礼を言う。
胸が苦しい。
何を期待していたのかと、自分が滑稽で可哀想でー。
「ちゃんと愛してくれる男のそばで、幸せになってほしい。
そう思ってるのは、嘘じゃねぇ。」
「分かりました。もう大丈夫ですよ。
私、リヴァイ兵長にそう思ってもらえるだけで、幸せですから。」
精一杯、微笑んだ。
私は何度、好きな人に嘘を吐くんだろう。
本当は今、すごく傷ついているくせに。
私の嘘つきな微笑みは、リヴァイ兵長を傷つけてしまったみたいだった。
「嘘じゃ、ねぇんだ。もう、大切なヤツを失うのは御免だ。あのときみたいな、地獄はもう…。
だから、誰も愛さねぇと決めてる。そんな男、なまえは早く忘れた方がいい。
いつ死ぬか分からねぇ上、未来もねぇ男に、なまえが傷つけられていいわけが、ねぇ。」
リヴァイ兵長は頭を抱えるみたいに顔を伏せ、膝の上に肘を立てた手で自分の頭を支えた。
そしてー。
「それなのに、お前を、他の男にとられると考えるだけで、頭がおかしくなりそうになる。
だから、お前がまだ俺に惚れてるか確かめて、俺に傷つけられてるお前を見ては安心して。
その度、俺は自分が嫌いになる。」
リヴァイ兵長は言いながら、自分の前髪をクシャリと引っ張るように握りしめた。
まるで、自分を痛めつけているようなその仕草がとても、痛々しい。
私の気持ちを聞いたリヴァイ兵長が、そんなに悲しいことを考えているなんて、知らなかった。
そんな悲しい決断を、していたなんてー。
そうやってずっと、大切な人を失ってからずっと、1人で戦っていたなんてー。
おずおずと、小さく震える背中に手を伸ばす。
そっと、包むように抱きしめれば、張り裂けそうな胸の痛みが、リヴァイ兵長のものなのか、私のものなのかも分からなくなった。
そうしていると、リヴァイ兵長も私を抱きしめ返してきた。
背中にまわる手は痛いくらいに強くて、まるでこのまま、身体をひとつにくっつけようとしているみたいだった。
小さく震える身体は、愛を求めているように思えるのに、それでも、リヴァイ兵長は、悲しい決断を抱えて生きて行こうと、そう決めてしまっているの。
そんなの、悲しいー。
誰よりも、優しい愛を、持っている人なのにー。
「バカ、ですね…。
私は、何度フラれたって、ずっとリヴァイ兵長を好きだったじゃないですか。
これからだってずっと、私はリヴァイ兵長だけが好きですよ。誰のものにも、なりません。」
「バカはてめぇだ。聞いてなかったのか、俺はお前を幸せには出来ねぇんだ。」
「勝手に、私の幸せを決めつけないでください。
私は、幸せです。こうして、リヴァイ兵長が生きててくれる。
それだけでいい…。リヴァイ兵長が望まない未来なら、いりません。」
リヴァイ兵長の胸に埋められていた顔を上げた。
すぐ近くに見つけたリヴァイ兵長の瞳は、遠い昔に負った悲しい傷に今も震えていた。
それが、ひどく痛々しくて、私は初めて、リヴァイ兵長の弱さを見た気がした。
それがすごく、嬉しかったことだって、リヴァイ兵長は知らないのだろう。
「でも、もしも、リヴァイ兵長が、私の生きる未来を願うのなら、
私をリヴァイ兵長の大切な人にしてください。
そうすれば、私は絶対に、リヴァイ兵長を悲しみに突き落とさないと約束します。」
未来にあるどうしても避けられない別れー。
悲しい、残酷すぎる、永遠の別れに怯える瞳に、私はそっと触れる。
頬を撫でて、私は精一杯の、愛のすべてを、伝える。
「だって、もしも、リヴァイ兵長が、私を愛してくれて、抱きしめてくれる世界があるのなら、
私は、そんな幸せ過ぎる世界を残して絶対に死んだりしないから。
どんな困難も乗り越えて、絶対に生きて、いつまでもリヴァイ兵長のそばにいます。」
頬に触れる私の手を、リヴァイ兵長の手が包む。
絡む視線が、もう二度と、離れないことを願ってー。
「ねぇ、リヴァイ兵長、教えてください…。
私のこと、好き…?」
想いが溢れて、止まらなくなって、涙になった。
震える声が、どれくらい、リヴァイ兵長に届いたか、分からない。
でもー。
優しい手が、私の頬に触れる。涙を拭ってくれて、涙で揺れていたリヴァイ兵長の顔が良く見える。
優しく、私を見つめてくれる、瞳がー。
「あぁ。なまえのためなら死んでもいいくらい、愛してるー。」
リヴァイ兵長の優しい手を頬に添えられ、運命に惹かれあうように、嘘ばかりを吐き続けた唇が、漸く重なる。
もう何度目のキスだろう。
でも、こんなに幸せなのは、初めてで、閉じた瞳から、温かい涙が零れた。
愛してるー。
リヴァイ兵長からそんな風に言ってもらえたらどんなに幸せだろう。
何度も眠りに着く前に想像した夢が叶った今、私は想像を遥かに超えた幸せの中を生きていた。
心から愛おしい人から聞くその言葉が、こんなにも胸を震わせるなんて、リヴァイ兵長に出逢わなければ知らずにいたのだろう。
この世界を、私は愛している。
愛おしい人と出逢わせてくれたこの世界を、私は初めて、心から美しいと思えた。
盗み聞きしてしまったミケ分隊長の話とか、ジーニー達の怒りの言葉とか、さっきのリヴァイ兵長の言動とかー。
頭がうまく回転していなくて、テーブルの上に置いてある食事が手つかずの状態なことに気が付いて、まだお腹空いてないのかな、なんて空気を読まないことを考えていた。
「怪我はねぇか?」
「え?あ、はい。大丈夫です、ありがとうございました。」
隣に座ったリヴァイ兵長に訊ねられて、私は少し早口で答え頭を下げた。
背中が痛い気がするけど、それもよくわからないくらい、頭が真っ白だった。
でも、聞きたいと恋心が疼いていた。
さっきの言葉の、続きをー。
「リヴァイ兵長、さっきのは…、いつもの、冗談ですか?
それとも、私を守るために吐いた嘘、ですか?恋人のフリ、ですか?」
隣に座るリヴァイ兵長の顔をまっすぐに見て、私は訊ねる。
その表情の小さな変化も逃したくなくて、この恋を実らせるためにも、終わらせる、ためにもー。
それに、私はきっと、リヴァイ兵長にフラれ続け過ぎたんだと思う。
どんなに嬉しい言葉も、もう信じられなかった。
それでも、ほんのわずかな希望に賭けた恋心が、リヴァイ兵長が頷かないことを願っていた。
「俺は、」
リヴァイ兵長が口を開く。
私の目を見て、そして、気持ちを話そうとしてくれている。
これでフラれたら、私はもう本当に諦める。
今度こそ、諦める。
そして、罰を受けよう。ルーカスと一緒にー。
だから、どうかー。この恋に、ハッピーエンドをー。どうかー。
私は静かに、答えを待った。
自分の心臓の音が耳の奥で五月蠅い。
これでは、リヴァイ兵長の声が聞こえないと思ってしまうくらい。
「俺は、お前に幸せになってほしい。」
リヴァイ兵長は、私をまっすぐに見て、迷いなく告げた。
あぁ、恋が終わったー。
「そう、ですか。ありがとうござます。」
そっと、目を伏せて、私は心にもない礼を言う。
胸が苦しい。
何を期待していたのかと、自分が滑稽で可哀想でー。
「ちゃんと愛してくれる男のそばで、幸せになってほしい。
そう思ってるのは、嘘じゃねぇ。」
「分かりました。もう大丈夫ですよ。
私、リヴァイ兵長にそう思ってもらえるだけで、幸せですから。」
精一杯、微笑んだ。
私は何度、好きな人に嘘を吐くんだろう。
本当は今、すごく傷ついているくせに。
私の嘘つきな微笑みは、リヴァイ兵長を傷つけてしまったみたいだった。
「嘘じゃ、ねぇんだ。もう、大切なヤツを失うのは御免だ。あのときみたいな、地獄はもう…。
だから、誰も愛さねぇと決めてる。そんな男、なまえは早く忘れた方がいい。
いつ死ぬか分からねぇ上、未来もねぇ男に、なまえが傷つけられていいわけが、ねぇ。」
リヴァイ兵長は頭を抱えるみたいに顔を伏せ、膝の上に肘を立てた手で自分の頭を支えた。
そしてー。
「それなのに、お前を、他の男にとられると考えるだけで、頭がおかしくなりそうになる。
だから、お前がまだ俺に惚れてるか確かめて、俺に傷つけられてるお前を見ては安心して。
その度、俺は自分が嫌いになる。」
リヴァイ兵長は言いながら、自分の前髪をクシャリと引っ張るように握りしめた。
まるで、自分を痛めつけているようなその仕草がとても、痛々しい。
私の気持ちを聞いたリヴァイ兵長が、そんなに悲しいことを考えているなんて、知らなかった。
そんな悲しい決断を、していたなんてー。
そうやってずっと、大切な人を失ってからずっと、1人で戦っていたなんてー。
おずおずと、小さく震える背中に手を伸ばす。
そっと、包むように抱きしめれば、張り裂けそうな胸の痛みが、リヴァイ兵長のものなのか、私のものなのかも分からなくなった。
そうしていると、リヴァイ兵長も私を抱きしめ返してきた。
背中にまわる手は痛いくらいに強くて、まるでこのまま、身体をひとつにくっつけようとしているみたいだった。
小さく震える身体は、愛を求めているように思えるのに、それでも、リヴァイ兵長は、悲しい決断を抱えて生きて行こうと、そう決めてしまっているの。
そんなの、悲しいー。
誰よりも、優しい愛を、持っている人なのにー。
「バカ、ですね…。
私は、何度フラれたって、ずっとリヴァイ兵長を好きだったじゃないですか。
これからだってずっと、私はリヴァイ兵長だけが好きですよ。誰のものにも、なりません。」
「バカはてめぇだ。聞いてなかったのか、俺はお前を幸せには出来ねぇんだ。」
「勝手に、私の幸せを決めつけないでください。
私は、幸せです。こうして、リヴァイ兵長が生きててくれる。
それだけでいい…。リヴァイ兵長が望まない未来なら、いりません。」
リヴァイ兵長の胸に埋められていた顔を上げた。
すぐ近くに見つけたリヴァイ兵長の瞳は、遠い昔に負った悲しい傷に今も震えていた。
それが、ひどく痛々しくて、私は初めて、リヴァイ兵長の弱さを見た気がした。
それがすごく、嬉しかったことだって、リヴァイ兵長は知らないのだろう。
「でも、もしも、リヴァイ兵長が、私の生きる未来を願うのなら、
私をリヴァイ兵長の大切な人にしてください。
そうすれば、私は絶対に、リヴァイ兵長を悲しみに突き落とさないと約束します。」
未来にあるどうしても避けられない別れー。
悲しい、残酷すぎる、永遠の別れに怯える瞳に、私はそっと触れる。
頬を撫でて、私は精一杯の、愛のすべてを、伝える。
「だって、もしも、リヴァイ兵長が、私を愛してくれて、抱きしめてくれる世界があるのなら、
私は、そんな幸せ過ぎる世界を残して絶対に死んだりしないから。
どんな困難も乗り越えて、絶対に生きて、いつまでもリヴァイ兵長のそばにいます。」
頬に触れる私の手を、リヴァイ兵長の手が包む。
絡む視線が、もう二度と、離れないことを願ってー。
「ねぇ、リヴァイ兵長、教えてください…。
私のこと、好き…?」
想いが溢れて、止まらなくなって、涙になった。
震える声が、どれくらい、リヴァイ兵長に届いたか、分からない。
でもー。
優しい手が、私の頬に触れる。涙を拭ってくれて、涙で揺れていたリヴァイ兵長の顔が良く見える。
優しく、私を見つめてくれる、瞳がー。
「あぁ。なまえのためなら死んでもいいくらい、愛してるー。」
リヴァイ兵長の優しい手を頬に添えられ、運命に惹かれあうように、嘘ばかりを吐き続けた唇が、漸く重なる。
もう何度目のキスだろう。
でも、こんなに幸せなのは、初めてで、閉じた瞳から、温かい涙が零れた。
愛してるー。
リヴァイ兵長からそんな風に言ってもらえたらどんなに幸せだろう。
何度も眠りに着く前に想像した夢が叶った今、私は想像を遥かに超えた幸せの中を生きていた。
心から愛おしい人から聞くその言葉が、こんなにも胸を震わせるなんて、リヴァイ兵長に出逢わなければ知らずにいたのだろう。
この世界を、私は愛している。
愛おしい人と出逢わせてくれたこの世界を、私は初めて、心から美しいと思えた。