◇第九十話◇愛されるより愛したい、嘘、本当?
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リヴァイ兵長には先に部屋に戻ってもらい、私は食事室に夕食を取りに向かった。
ダイに告白をされたところも、抱き合っていたところも、リヴァイ兵長が見ていたと知って、どんな顔をすればいいのか分からなかった。
別に浮気をしたところを見られたわけでもないし、そもそも恋人でもないのに、なぜかすごく、やましいところを見られたような気分だ。
必死に頭の中をグルグル回る、必要のない言い訳達が滑稽だった。
食事を乗せたトレイを片手に持って、リヴァイ兵長の執務室兼自室の扉をノックして名前を告げる。
リヴァイ兵長の声が返ってきて、部屋に入る許可を貰う。
いつもよりも緊張しながら、私はゆっくりと部屋の扉を開いた。
リヴァイ兵長は、ベッドに寝ているかと思ったが、ソファに座ってグリム童話の本を適当にペラペラとめくっていた。
「食事、ここに置きますね。」
「あぁ。」
テーブルの上に食事を置くと、リヴァイ兵長はページが変わり続ける本に視線を落としたままで返事をした。
まだお腹は空いていないようだ。
「また本を読みますか?昨日はどこまで読みましたっけ?」
そう言いながら私が隣に座った途端、リヴァイ兵長は本をパタンと閉じてしまった。
そしてー。
「俺は、お前に幸せになってほしいと思ってる。」
「何ですか、急に?私は幸せですよ。こうしてリヴァイ兵長と一緒にいられますから。」
すごく、嫌な予感がして、私は誤魔化すように笑顔を貼り付けた。
でも、せっかく作った笑顔も、リヴァイ兵長は見てくれない。
自分が閉じた童話の本を見下ろしたままで、長めの前髪が顔を隠すから、どんな表情をしているのかまでは、私には分からなかった。
それが、私にはとても都合が良かったのかもしれない。
「お前は、しっかり愛してくれる男のそばで、幸せになるべき女だ。」
「…それは、私はもう、ここにいちゃダメってことですか?」
「そうは言ってねぇ。お前がここにいてぇなら、ここにいてくれ。
ただ、俺はお前に幸せになってほしい。俺なんかより、好きだと言ってくれる男のそばにいた方が、
きっと、お前のためになると、思っただけだ。」
「どうしてー。」
どうしてそんなことを言うのー。
言いかけた言葉を口を噤んで飲み込んだ。
唇を噛んで目を伏せ、涙を堪える。
あぁ、やっぱり、ダメだー。
「ソファに座っても平気なら、食事はとれそうですね。
私、まだ仕事が残ってるので、部屋に戻りますね。
食事は後で取りに来るので、そのままにしててください。」
出来るだけ早口で言って、私は立ち上がった。
息を吸ったら、涙が落ちてしまいそうだった。
それなのに、リヴァイ兵長は私の手を掴んで引き留めた。
「待て、まだ話は終わってー。」
リヴァイ兵長は、振り向いた私の顔を見て、驚いたように目を見開き、言葉を切った。
泣いてしまっていたことに気づいて、私は慌てて涙を拭う。
「ゴミが、入っただけですっ!おやすみなさいっ!」
誤魔化せるわけのない言い訳を告げて、私は、リヴァイ兵長から、拒絶されることしか知らない恋から、逃げるように部屋を出た。
廊下を走り給湯室まで逃げ込んで、そこでようやく私は恋心に涙を流す許可を出す。
「…っ、苦しい…っ。」
壁に背中で寄り掛かり、ズルズルと落ちていく。
座り込んで、両手で目を隠した。
それでも、流れる涙は頬を伝るから、とても苦い。
リヴァイ兵長が生きているだけで幸せだ。嘘じゃない。嘘じゃないのにー。
どうして、涙が止まらないのだろう。
リヴァイ兵長が生きているだけで、いいのにー。
ダイに告白をされたところも、抱き合っていたところも、リヴァイ兵長が見ていたと知って、どんな顔をすればいいのか分からなかった。
別に浮気をしたところを見られたわけでもないし、そもそも恋人でもないのに、なぜかすごく、やましいところを見られたような気分だ。
必死に頭の中をグルグル回る、必要のない言い訳達が滑稽だった。
食事を乗せたトレイを片手に持って、リヴァイ兵長の執務室兼自室の扉をノックして名前を告げる。
リヴァイ兵長の声が返ってきて、部屋に入る許可を貰う。
いつもよりも緊張しながら、私はゆっくりと部屋の扉を開いた。
リヴァイ兵長は、ベッドに寝ているかと思ったが、ソファに座ってグリム童話の本を適当にペラペラとめくっていた。
「食事、ここに置きますね。」
「あぁ。」
テーブルの上に食事を置くと、リヴァイ兵長はページが変わり続ける本に視線を落としたままで返事をした。
まだお腹は空いていないようだ。
「また本を読みますか?昨日はどこまで読みましたっけ?」
そう言いながら私が隣に座った途端、リヴァイ兵長は本をパタンと閉じてしまった。
そしてー。
「俺は、お前に幸せになってほしいと思ってる。」
「何ですか、急に?私は幸せですよ。こうしてリヴァイ兵長と一緒にいられますから。」
すごく、嫌な予感がして、私は誤魔化すように笑顔を貼り付けた。
でも、せっかく作った笑顔も、リヴァイ兵長は見てくれない。
自分が閉じた童話の本を見下ろしたままで、長めの前髪が顔を隠すから、どんな表情をしているのかまでは、私には分からなかった。
それが、私にはとても都合が良かったのかもしれない。
「お前は、しっかり愛してくれる男のそばで、幸せになるべき女だ。」
「…それは、私はもう、ここにいちゃダメってことですか?」
「そうは言ってねぇ。お前がここにいてぇなら、ここにいてくれ。
ただ、俺はお前に幸せになってほしい。俺なんかより、好きだと言ってくれる男のそばにいた方が、
きっと、お前のためになると、思っただけだ。」
「どうしてー。」
どうしてそんなことを言うのー。
言いかけた言葉を口を噤んで飲み込んだ。
唇を噛んで目を伏せ、涙を堪える。
あぁ、やっぱり、ダメだー。
「ソファに座っても平気なら、食事はとれそうですね。
私、まだ仕事が残ってるので、部屋に戻りますね。
食事は後で取りに来るので、そのままにしててください。」
出来るだけ早口で言って、私は立ち上がった。
息を吸ったら、涙が落ちてしまいそうだった。
それなのに、リヴァイ兵長は私の手を掴んで引き留めた。
「待て、まだ話は終わってー。」
リヴァイ兵長は、振り向いた私の顔を見て、驚いたように目を見開き、言葉を切った。
泣いてしまっていたことに気づいて、私は慌てて涙を拭う。
「ゴミが、入っただけですっ!おやすみなさいっ!」
誤魔化せるわけのない言い訳を告げて、私は、リヴァイ兵長から、拒絶されることしか知らない恋から、逃げるように部屋を出た。
廊下を走り給湯室まで逃げ込んで、そこでようやく私は恋心に涙を流す許可を出す。
「…っ、苦しい…っ。」
壁に背中で寄り掛かり、ズルズルと落ちていく。
座り込んで、両手で目を隠した。
それでも、流れる涙は頬を伝るから、とても苦い。
リヴァイ兵長が生きているだけで幸せだ。嘘じゃない。嘘じゃないのにー。
どうして、涙が止まらないのだろう。
リヴァイ兵長が生きているだけで、いいのにー。