◇第八十八話◇ほんのひとときのハッピーエンド
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新聞社が一斉に報じたことで、パーティー会場の爆弾事件のことは世界中に知れ渡った。
貴族に死者5名、貴族と調査兵に多くの負傷者を出した事件は、主犯のモーリと手下の自爆によって死亡で解決。
しかし、モーリの目的が、王都地下街にいた頃のリヴァイ兵長への逆恨みだったことまで報じられてしまったせいで、世間の目は一気に調査兵団に対して冷たいものになった。
数日が経っても、世間の関心は薄れることはなく、人類最強の兵士の持つ黒い過去の話でもちきりだ。
調査兵団の周りも騒がしくなり、取材だという五月蠅い記者が兵門の前に居座っているから、兵士達が毎日追い払っている。
リヴァイ兵長の身体が元に戻る頃に、進退についての会議がストヘス区で行われるそうだ。
『人類最強の兵士の正体は、王都地下街の人殺しである。
共に地下街から調査兵に成りあがった仲間を巨人に喰わせ、
兵長の座に着いた悪魔なのだ。』
リヴァイ兵長の部屋に向かう途中、給湯室で拾った新聞の一文に、私は顔を顰めた。
今まではリヴァイ兵長を英雄と称えていた世間は、手のひらを返したように、悪魔だと罵りだした。
王都地下街のゴロツキを兵士になんかにするから、こんな事件が起きたー、だそうだ。
今まで幾度も、幾度も、そのゴロツキ兵士に助けられたくせにー。
そして、こうやって、後追い記事を出しては、リヴァイ兵長の名誉を傷つけ、人格を否定するようなヒドイ文章を面白おかしく書き連ねていく。
吐き気がする。
リヴァイ兵長のことを、何もー。
何も知らないくせにー。
「あー、いたいた。なまえ、何してんの?
背中からすごい黒いオーラ出てるけど。」
最後まで読む気も失せた新聞を乱暴に破っていると、後ろからハンジさんに声を掛けられた。
悪意だらけの新聞をゴミ箱に押し込み、振り返る。
「ゴミが落ちてたので、捨ててただけですよ。
どうかしたんですか?」
「今朝、医療兵から今日は包帯の交換日だって聞いてさ。
リヴァイを医療棟まで連れて行ける?」
「それなら、さっき私が医療棟に行って包帯と薬を貰ってきました。
やり方も聞いてきたんで、大丈夫ですよ。」
私は、ジャケットのポケットから薬と包帯を取り出して見せた。
ハンジさんは、それならよかった、とホッと息を吐いた。
リヴァイ兵長が動けるようになるまで、そばにいて世話をしたいという私の願いを、ハンジさんは聞いてくれた。
だから、通常の任務に戻っている兵士達のそばで、私だけ、部屋で出来るような書類仕事を行っている。
特別扱いを快く思っていない兵士もいるだろうとは思うけれど、今は人の目よりも、ただリヴァイ兵長のそばにいたかった。
私にできる限りのお礼とお詫びを、させてほしかった。
今、リヴァイ兵長は、執務室兼自室に戻っている。
病室にはいたくないと希望したからだ。容態も落ち着いてきているし、とりあえず、急変はないだろうということで、医療兵からも許可が出た。
だが、ベッドから出ることを、医療兵だけではなくエルヴィン団長にも禁止されている。
きっと、身体のことだけではなく、リヴァイ兵長の心の為だろう。
今の冷たい世間の目から守らないといけない。
私も、部屋から出てあの胸糞悪い新聞記事を読んでほしくないと切に思う。
「それとさ、もうすぐお昼だろう?
ちゃんと薬を飲むように、なまえから言ってくれないか?
子供みたいに、薬飲むの嫌がるからさ。」
ハンジさんは、心底困ったようにため息を吐いた。
傷が深かったせいか、まだ傷が原因の熱が下がっていない。
そのため、リヴァイ兵長には医療兵から薬がたくさん出されている。
でも、ハンジさんの言うように、薬がなくても自力で治せるとリヴァイ兵長は信じているようで、なかなか飲んでくれない。
たぶん、本当に自力で治せるのだろう。リヴァイ兵長なら。
でも、薬を飲んだ方が良いに決まっているのだ。
「それならバッチリです。
薬を飲まないと、紅茶も飲ませないと脅しておきました。」
私は、親指を立てて、ニッと笑った。
すると、一瞬、呆気にとられたようにポカンとしたハンジさんが、思い切り吹き出して笑い出した。
「そりゃあいいっ。そんな脅し文句が効くのは、リヴァイだけだよっ。アハハハっ。」
ハンジさんは本当に嬉しそうに笑った。
それから、今日の任務として任されていた書類を、さっきモブリットさんに提出したことを報告してから別れた。
私の背中が小さくなった頃、ハンジさんが、乱暴に破られた新聞紙をゴミ箱から取り出したことを、私は知らなかった。
貴族に死者5名、貴族と調査兵に多くの負傷者を出した事件は、主犯のモーリと手下の自爆によって死亡で解決。
しかし、モーリの目的が、王都地下街にいた頃のリヴァイ兵長への逆恨みだったことまで報じられてしまったせいで、世間の目は一気に調査兵団に対して冷たいものになった。
数日が経っても、世間の関心は薄れることはなく、人類最強の兵士の持つ黒い過去の話でもちきりだ。
調査兵団の周りも騒がしくなり、取材だという五月蠅い記者が兵門の前に居座っているから、兵士達が毎日追い払っている。
リヴァイ兵長の身体が元に戻る頃に、進退についての会議がストヘス区で行われるそうだ。
『人類最強の兵士の正体は、王都地下街の人殺しである。
共に地下街から調査兵に成りあがった仲間を巨人に喰わせ、
兵長の座に着いた悪魔なのだ。』
リヴァイ兵長の部屋に向かう途中、給湯室で拾った新聞の一文に、私は顔を顰めた。
今まではリヴァイ兵長を英雄と称えていた世間は、手のひらを返したように、悪魔だと罵りだした。
王都地下街のゴロツキを兵士になんかにするから、こんな事件が起きたー、だそうだ。
今まで幾度も、幾度も、そのゴロツキ兵士に助けられたくせにー。
そして、こうやって、後追い記事を出しては、リヴァイ兵長の名誉を傷つけ、人格を否定するようなヒドイ文章を面白おかしく書き連ねていく。
吐き気がする。
リヴァイ兵長のことを、何もー。
何も知らないくせにー。
「あー、いたいた。なまえ、何してんの?
背中からすごい黒いオーラ出てるけど。」
最後まで読む気も失せた新聞を乱暴に破っていると、後ろからハンジさんに声を掛けられた。
悪意だらけの新聞をゴミ箱に押し込み、振り返る。
「ゴミが落ちてたので、捨ててただけですよ。
どうかしたんですか?」
「今朝、医療兵から今日は包帯の交換日だって聞いてさ。
リヴァイを医療棟まで連れて行ける?」
「それなら、さっき私が医療棟に行って包帯と薬を貰ってきました。
やり方も聞いてきたんで、大丈夫ですよ。」
私は、ジャケットのポケットから薬と包帯を取り出して見せた。
ハンジさんは、それならよかった、とホッと息を吐いた。
リヴァイ兵長が動けるようになるまで、そばにいて世話をしたいという私の願いを、ハンジさんは聞いてくれた。
だから、通常の任務に戻っている兵士達のそばで、私だけ、部屋で出来るような書類仕事を行っている。
特別扱いを快く思っていない兵士もいるだろうとは思うけれど、今は人の目よりも、ただリヴァイ兵長のそばにいたかった。
私にできる限りのお礼とお詫びを、させてほしかった。
今、リヴァイ兵長は、執務室兼自室に戻っている。
病室にはいたくないと希望したからだ。容態も落ち着いてきているし、とりあえず、急変はないだろうということで、医療兵からも許可が出た。
だが、ベッドから出ることを、医療兵だけではなくエルヴィン団長にも禁止されている。
きっと、身体のことだけではなく、リヴァイ兵長の心の為だろう。
今の冷たい世間の目から守らないといけない。
私も、部屋から出てあの胸糞悪い新聞記事を読んでほしくないと切に思う。
「それとさ、もうすぐお昼だろう?
ちゃんと薬を飲むように、なまえから言ってくれないか?
子供みたいに、薬飲むの嫌がるからさ。」
ハンジさんは、心底困ったようにため息を吐いた。
傷が深かったせいか、まだ傷が原因の熱が下がっていない。
そのため、リヴァイ兵長には医療兵から薬がたくさん出されている。
でも、ハンジさんの言うように、薬がなくても自力で治せるとリヴァイ兵長は信じているようで、なかなか飲んでくれない。
たぶん、本当に自力で治せるのだろう。リヴァイ兵長なら。
でも、薬を飲んだ方が良いに決まっているのだ。
「それならバッチリです。
薬を飲まないと、紅茶も飲ませないと脅しておきました。」
私は、親指を立てて、ニッと笑った。
すると、一瞬、呆気にとられたようにポカンとしたハンジさんが、思い切り吹き出して笑い出した。
「そりゃあいいっ。そんな脅し文句が効くのは、リヴァイだけだよっ。アハハハっ。」
ハンジさんは本当に嬉しそうに笑った。
それから、今日の任務として任されていた書類を、さっきモブリットさんに提出したことを報告してから別れた。
私の背中が小さくなった頃、ハンジさんが、乱暴に破られた新聞紙をゴミ箱から取り出したことを、私は知らなかった。