◇第八十三話◇愛しい騎士を悲劇から救って
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リヴァイ兵長が膝を床につけ見守る中で、モーリの側近が、私の両手を縛っていた紐を切った。
もう何時間も繋がれたままだった感覚の身体は少し痺れていたけれど、自由になった瞬間、私はリヴァイ兵長のシャツの胸元を握りしめていた。
雨の中、ここまで探しに来てくれたリヴァイ兵長は、頭の先からブーツの先までびしょ濡れだった。
雨が滴る黒髪の向こうで、切れ長の瞳が安心したように私を見るから、パーティー会場では凛々しかったタキシードは泥水が跳ねて汚れているし、白いシャツも濡れて肌にはりついていて、ひどく寒そうだからー。
悲しいのか、悔しいのか、それとも、来てくれて私も安心したのか。分からない感情が一度に湧きあがってきて、リヴァイ兵長のシャツを握りしめる手に力がこもった。
「帰ってください…っ!
あんな馬鹿げた条件なんてのまないでください…っ!」
私は懇願した。
リヴァイ兵長の瞳を見つめて、必死に、懇願した。
だって、きっとモーリは、私のこともリヴァイ兵長のことも助ける気なんてない。
それなら、私は、リヴァイ兵長だけでも助かってほしいー。
『今から、コイツらがお前の女を好きにする。
それが嫌なら、身体を張って守ってみろよ。
夜明けまでお前が生きてたら、俺はこの女だけは助けてやると約束してやる。』
そんなの嘘に決まってるー。
モーリが出した交換条件は、最低で、信じる価値もない。
それなのにー。
「絶対動くなよ。」
リヴァイ兵長が身体を丸めるようにして私を腕の中に閉じ込めた。
しっとり濡れた冷たい身体が私の肌に触れる。
私を守るために、今からリヴァイ兵長が暴行を受けるなんてそんなの耐えられない。
「離してくださいっ!やめてくださいっ!!」
「動くなって言ってるだろーが。」
必死に身体を離そうとするけれど、私なんかの力では筋肉質な硬い胸板はピクリともしなかった。
動くなーそう言うのは、自分の手が離れてしまうかもしれないのにからという理由ではないのだろう。
きっと、彼らの足や手が、私に触れてしまうのを心配しているだけでー。
必死に抵抗する私を見下ろし、モーリが最後の確認をする。
「その女は、ソイツらにどうしても犯されてぇみてぇだが。いいのか?」
「コイツには死んでも触れさせねぇ。」
「あぁ、そうか。じゃあ、死ね。」
モーリのその言葉が合図だったみたいに、私を抱きしめるリヴァイ兵長の身体に衝撃が加わった。
金髪の男達の歓喜の雄叫びが響く中、不規則な衝撃をリヴァイ兵長の身体越しに感じる。
「リヴァイ兵長…っ!離してくださいっ!」
私は必死に叫んで、リヴァイ兵長の胸を両手で押し返すくらいしか出来なかった。
それでも、リヴァイ兵長の身体は私を守って、背中や腕に暴行を受け続けていた。
私を守ることさえしなければ、リヴァイ兵長ならこんなやつら簡単に倒せるのに。捕まえて、憲兵団に突き出すことだって出来るし、爆弾犯の捜査を任されていた調査兵団の任務を完了出来る。
私を守ることさえ、しなければー。
「お願いです…っ!もう、やめてください…っ!」
「大丈夫だ。」
私の耳元で聞こえたリヴァイ兵長の声は、いつも通りだった。
たとえば、朝、食事室で会ったときに、ちゃんと食べてるかって聞いてくるときの声。
たとえば、昼、訓練のときに、体幹が大事だと立体起動装置の基礎を叩きこんでくれてるときの声。
たとえば、夜、談話室で星を見てる私に、作りすぎたからと紅茶を持ってきてくれるときのー。
金髪の男達の耳障りな笑い声と共に、リヴァイ兵長の身体は次々と衝撃を受けているのに、それなのにー。
「これくらい、どうってことねぇ。」
「私は平気ですっ!死んだっていいから、だからー。」
「いいから、お前はおとなしく俺に守られてろ。」
拒絶する私を、リヴァイ兵長がきつく抱く。
どうして、そんな風に言うのー。
言葉にならず、せめて泣くまいと、私は唇を噛んだ。
リヴァイ兵長が傷つかずに済むのなら、私はどうなったっていいと思っている。
最低な男達に身体を弄ばれたって、銃で心臓を撃ち抜かれたって構わない。
リヴァイ兵長さえ、傷つかずに済むのならー。
それなのにー。
「なぁ、コイツって本当に死ぬのか?」
「人間じゃねぇって聞いたぞ、化け物だって。」
「コレ使ってみようぜ。さすがに、コレで殴れば死ぬだろ。」
物騒な会話が聞こえてきた。
金髪の男達が、コレと呼んだものが何か、リヴァイ兵長の腕の中に閉じ込められている私には分からなかった。
でも、それからすぐに、リヴァイ兵長の身体に今までとは比べものにならない大きな衝撃が落ちてきた。
「くっ…っ。」
初めて、リヴァイ兵長から小さくくぐもった声が漏れた。
それに喜んだ金髪の男達の雄叫びの後、大きな衝撃が不規則に落ちてくるようになった。
何が起こっているのか分からなくて、私は怖くて怖くて仕方がなかった。
でも、鉄が石の床にあたる音が聞こえて、怖ろしい現実を知った。
金髪の男達は、鉄パイプを使って、リヴァイ兵長の背中を、腕を殴ってー。
「頭だけはやめろよ。じわじわ嬲り殺してやるんだ。」
リヴァイ兵長の身体の向こうから、モーリの声が聞こえた。
最初から、私達を助ける気なんて欠片だって持っていないのだ。
そんなこと、リヴァイ兵長だって分かっているはずなのに、どうしてー。
必死に握りしめたリヴァイ兵長のシャツの胸元に、背中から流れてきた赤い血が染みを作っていき、私の恐怖心を煽った。
「やめて…っ!お願い、もうやめて…っ!
リヴァイ兵長が、死んじゃう…っ!死んじゃうよ…っ!」
堪えようとしていた涙が溢れて、雨と血が染みたリヴァイ兵長のシャツをさらに濡らしていく。
どうして助けに来てくれたのー。
会いたかった、すごく。怖くて怖くて仕方がないとき、リヴァイ兵長に会いたくてたまらなかった。
私が、リヴァイ兵長を求めてしまったせいなのだろうか。
だから、誰よりも強くて優しいリヴァイ兵長がこんな目にー。
会いたかったし、リヴァイ兵長が助けに来てくれたらーと願った。
でも、もういい。
リヴァイ兵長は来てくれた、助けようとしてくれた。
もう充分、守ってくれた。
だから、もう、いいー。
死んでも、いいー。
「離してよっ!リヴァイ兵長なんて大嫌いなんだからっ!
戦うことも出来ない弱虫なんて大嫌い!!離してってばっ!!」
息継ぎもしないで、私は口が裂けても言いたくなんかないヒドイ嘘を叫び続けた。
ずっと、どうにか助けてくれと泣き喚いていた私の急変に、金髪の男達は驚いたようではあったが、次第に面白そうに笑い出した。
「可哀想になぁ。
せーっかく女を守ろうとしてんのに、今すぐ消えろってよ?」
「女ってのは勝手だよなぁ。助けてくれっつったり、捨てたりよぉ。」
「どうする?あんな最低な女置いて、逃げちまう?
人類最強の男をいたぶれるのも楽しいけど、あっちの女も楽しめそうだし、
俺達はどっちでもいいんだぜ?」
金髪の男達が、からかうように言う。
お願いー、逃げると言ってくれー。
私は心の中で必死に願った。
すると、リヴァイ兵長の腕が少し動いた。
このまま離してくれる、最低な女だと捨てていってくれる―そう思った。
不思議と怖くもなくて、不安も悲しみもなくて、ただただ安心した。
これで、リヴァイ兵長が傷つけられることはないと、強張っていた私の身体からは力が抜けていくのが分かった。
それなのにー。
「おい、俺は、まだ、死んじゃいねぇぞ。
勝手に、やめんじゃねぇ。」
緩んだはずのリヴァイ兵長の腕は、私をさらに強く自分の胸に押し付けるように抱き直しただけだった。
「どう、して…?」
「泣いちまうくらいなら、嘘なんか吐くんじゃねーよ。」
「ちが…っ。本当に…、嫌いなんですっ。だから…っ!」
「あぁ、分かった。分かったから、おとなしくしてろ。」
リヴァイ兵長はそう言って、また抱きしめる腕の力を強めた。
何も、分かってないー。
だって、まだ、堪える気だ。
身体がボロボロで、背中を鉄パイプで殴られて、無事なはずない。
きっと、息をするのだってやっとだー。
それなのにー。
金髪の男達も、死んでもおかしくない身体でまだ堪えようとしているリヴァイ兵長の気迫に押されているようだった。
それでも、人類最強の男を殴れるのは今しかないーと引きつった笑みを浮かべて鉄パイプを振り上げる。
「お願いです…っ、やめてください…っ。
大嫌いだから…、私みたいな部下、早く見捨ててください…っ。」
泣きながら懇願しても、金髪の男達は無抵抗の身体をいたぶることを止めないし、リヴァイ兵長も抵抗しようとはしてくれない。
惨い拷問に、涙が止まらなかった。
リヴァイ兵長の命の火は、今、奇跡的にほんの少し灯っているだけだ。
それは、天井に空いた穴から、ときどき落ちてくる雨水たった一滴で消えてしまうくらいに、脆い火。
もうー、本当に死んでしまうー。
その時、唐突に、私は思い出した。
あの大好きだった物語の結末をー。大好きな騎士がどうなったのかをー。
「私を殺してっ!!!!」
私の命を懸けた叫びが、廃工場に響いた。
もう何時間も繋がれたままだった感覚の身体は少し痺れていたけれど、自由になった瞬間、私はリヴァイ兵長のシャツの胸元を握りしめていた。
雨の中、ここまで探しに来てくれたリヴァイ兵長は、頭の先からブーツの先までびしょ濡れだった。
雨が滴る黒髪の向こうで、切れ長の瞳が安心したように私を見るから、パーティー会場では凛々しかったタキシードは泥水が跳ねて汚れているし、白いシャツも濡れて肌にはりついていて、ひどく寒そうだからー。
悲しいのか、悔しいのか、それとも、来てくれて私も安心したのか。分からない感情が一度に湧きあがってきて、リヴァイ兵長のシャツを握りしめる手に力がこもった。
「帰ってください…っ!
あんな馬鹿げた条件なんてのまないでください…っ!」
私は懇願した。
リヴァイ兵長の瞳を見つめて、必死に、懇願した。
だって、きっとモーリは、私のこともリヴァイ兵長のことも助ける気なんてない。
それなら、私は、リヴァイ兵長だけでも助かってほしいー。
『今から、コイツらがお前の女を好きにする。
それが嫌なら、身体を張って守ってみろよ。
夜明けまでお前が生きてたら、俺はこの女だけは助けてやると約束してやる。』
そんなの嘘に決まってるー。
モーリが出した交換条件は、最低で、信じる価値もない。
それなのにー。
「絶対動くなよ。」
リヴァイ兵長が身体を丸めるようにして私を腕の中に閉じ込めた。
しっとり濡れた冷たい身体が私の肌に触れる。
私を守るために、今からリヴァイ兵長が暴行を受けるなんてそんなの耐えられない。
「離してくださいっ!やめてくださいっ!!」
「動くなって言ってるだろーが。」
必死に身体を離そうとするけれど、私なんかの力では筋肉質な硬い胸板はピクリともしなかった。
動くなーそう言うのは、自分の手が離れてしまうかもしれないのにからという理由ではないのだろう。
きっと、彼らの足や手が、私に触れてしまうのを心配しているだけでー。
必死に抵抗する私を見下ろし、モーリが最後の確認をする。
「その女は、ソイツらにどうしても犯されてぇみてぇだが。いいのか?」
「コイツには死んでも触れさせねぇ。」
「あぁ、そうか。じゃあ、死ね。」
モーリのその言葉が合図だったみたいに、私を抱きしめるリヴァイ兵長の身体に衝撃が加わった。
金髪の男達の歓喜の雄叫びが響く中、不規則な衝撃をリヴァイ兵長の身体越しに感じる。
「リヴァイ兵長…っ!離してくださいっ!」
私は必死に叫んで、リヴァイ兵長の胸を両手で押し返すくらいしか出来なかった。
それでも、リヴァイ兵長の身体は私を守って、背中や腕に暴行を受け続けていた。
私を守ることさえしなければ、リヴァイ兵長ならこんなやつら簡単に倒せるのに。捕まえて、憲兵団に突き出すことだって出来るし、爆弾犯の捜査を任されていた調査兵団の任務を完了出来る。
私を守ることさえ、しなければー。
「お願いです…っ!もう、やめてください…っ!」
「大丈夫だ。」
私の耳元で聞こえたリヴァイ兵長の声は、いつも通りだった。
たとえば、朝、食事室で会ったときに、ちゃんと食べてるかって聞いてくるときの声。
たとえば、昼、訓練のときに、体幹が大事だと立体起動装置の基礎を叩きこんでくれてるときの声。
たとえば、夜、談話室で星を見てる私に、作りすぎたからと紅茶を持ってきてくれるときのー。
金髪の男達の耳障りな笑い声と共に、リヴァイ兵長の身体は次々と衝撃を受けているのに、それなのにー。
「これくらい、どうってことねぇ。」
「私は平気ですっ!死んだっていいから、だからー。」
「いいから、お前はおとなしく俺に守られてろ。」
拒絶する私を、リヴァイ兵長がきつく抱く。
どうして、そんな風に言うのー。
言葉にならず、せめて泣くまいと、私は唇を噛んだ。
リヴァイ兵長が傷つかずに済むのなら、私はどうなったっていいと思っている。
最低な男達に身体を弄ばれたって、銃で心臓を撃ち抜かれたって構わない。
リヴァイ兵長さえ、傷つかずに済むのならー。
それなのにー。
「なぁ、コイツって本当に死ぬのか?」
「人間じゃねぇって聞いたぞ、化け物だって。」
「コレ使ってみようぜ。さすがに、コレで殴れば死ぬだろ。」
物騒な会話が聞こえてきた。
金髪の男達が、コレと呼んだものが何か、リヴァイ兵長の腕の中に閉じ込められている私には分からなかった。
でも、それからすぐに、リヴァイ兵長の身体に今までとは比べものにならない大きな衝撃が落ちてきた。
「くっ…っ。」
初めて、リヴァイ兵長から小さくくぐもった声が漏れた。
それに喜んだ金髪の男達の雄叫びの後、大きな衝撃が不規則に落ちてくるようになった。
何が起こっているのか分からなくて、私は怖くて怖くて仕方がなかった。
でも、鉄が石の床にあたる音が聞こえて、怖ろしい現実を知った。
金髪の男達は、鉄パイプを使って、リヴァイ兵長の背中を、腕を殴ってー。
「頭だけはやめろよ。じわじわ嬲り殺してやるんだ。」
リヴァイ兵長の身体の向こうから、モーリの声が聞こえた。
最初から、私達を助ける気なんて欠片だって持っていないのだ。
そんなこと、リヴァイ兵長だって分かっているはずなのに、どうしてー。
必死に握りしめたリヴァイ兵長のシャツの胸元に、背中から流れてきた赤い血が染みを作っていき、私の恐怖心を煽った。
「やめて…っ!お願い、もうやめて…っ!
リヴァイ兵長が、死んじゃう…っ!死んじゃうよ…っ!」
堪えようとしていた涙が溢れて、雨と血が染みたリヴァイ兵長のシャツをさらに濡らしていく。
どうして助けに来てくれたのー。
会いたかった、すごく。怖くて怖くて仕方がないとき、リヴァイ兵長に会いたくてたまらなかった。
私が、リヴァイ兵長を求めてしまったせいなのだろうか。
だから、誰よりも強くて優しいリヴァイ兵長がこんな目にー。
会いたかったし、リヴァイ兵長が助けに来てくれたらーと願った。
でも、もういい。
リヴァイ兵長は来てくれた、助けようとしてくれた。
もう充分、守ってくれた。
だから、もう、いいー。
死んでも、いいー。
「離してよっ!リヴァイ兵長なんて大嫌いなんだからっ!
戦うことも出来ない弱虫なんて大嫌い!!離してってばっ!!」
息継ぎもしないで、私は口が裂けても言いたくなんかないヒドイ嘘を叫び続けた。
ずっと、どうにか助けてくれと泣き喚いていた私の急変に、金髪の男達は驚いたようではあったが、次第に面白そうに笑い出した。
「可哀想になぁ。
せーっかく女を守ろうとしてんのに、今すぐ消えろってよ?」
「女ってのは勝手だよなぁ。助けてくれっつったり、捨てたりよぉ。」
「どうする?あんな最低な女置いて、逃げちまう?
人類最強の男をいたぶれるのも楽しいけど、あっちの女も楽しめそうだし、
俺達はどっちでもいいんだぜ?」
金髪の男達が、からかうように言う。
お願いー、逃げると言ってくれー。
私は心の中で必死に願った。
すると、リヴァイ兵長の腕が少し動いた。
このまま離してくれる、最低な女だと捨てていってくれる―そう思った。
不思議と怖くもなくて、不安も悲しみもなくて、ただただ安心した。
これで、リヴァイ兵長が傷つけられることはないと、強張っていた私の身体からは力が抜けていくのが分かった。
それなのにー。
「おい、俺は、まだ、死んじゃいねぇぞ。
勝手に、やめんじゃねぇ。」
緩んだはずのリヴァイ兵長の腕は、私をさらに強く自分の胸に押し付けるように抱き直しただけだった。
「どう、して…?」
「泣いちまうくらいなら、嘘なんか吐くんじゃねーよ。」
「ちが…っ。本当に…、嫌いなんですっ。だから…っ!」
「あぁ、分かった。分かったから、おとなしくしてろ。」
リヴァイ兵長はそう言って、また抱きしめる腕の力を強めた。
何も、分かってないー。
だって、まだ、堪える気だ。
身体がボロボロで、背中を鉄パイプで殴られて、無事なはずない。
きっと、息をするのだってやっとだー。
それなのにー。
金髪の男達も、死んでもおかしくない身体でまだ堪えようとしているリヴァイ兵長の気迫に押されているようだった。
それでも、人類最強の男を殴れるのは今しかないーと引きつった笑みを浮かべて鉄パイプを振り上げる。
「お願いです…っ、やめてください…っ。
大嫌いだから…、私みたいな部下、早く見捨ててください…っ。」
泣きながら懇願しても、金髪の男達は無抵抗の身体をいたぶることを止めないし、リヴァイ兵長も抵抗しようとはしてくれない。
惨い拷問に、涙が止まらなかった。
リヴァイ兵長の命の火は、今、奇跡的にほんの少し灯っているだけだ。
それは、天井に空いた穴から、ときどき落ちてくる雨水たった一滴で消えてしまうくらいに、脆い火。
もうー、本当に死んでしまうー。
その時、唐突に、私は思い出した。
あの大好きだった物語の結末をー。大好きな騎士がどうなったのかをー。
「私を殺してっ!!!!」
私の命を懸けた叫びが、廃工場に響いた。