◇第七十七話◇絵本の世界へようこそ
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「おい、どうした。」
リヴァイ兵長の声にハッとして、私はようやくチークタイムを踊る貴族たちの中で呆然と立ち尽くしていることに気づく。
リヴァイ兵長の顔を見ると、私を襲っていた恐怖が幻だったように思えてきた。
そうだ、そうに違いない。
だって、どうして、ルーカスの笑みを見て怖くなるなんて、そんなのおかしい。
「…なんでも、ないです。」
私は首を横に振った。
ルーカスに感じた恐怖心が嘘だと、信じたかった。
今もなぜか消えない、得体の知れない不安も、嫌な予感も、ただの考え過ぎだとー。
でも、そんな願いはすぐに打ち砕かれることになる。
「逃げろ!」
唐突にリヴァイ兵長が鬼の形相で叫んだ。
わけもわからないまま、私はリヴァイ兵長に腕を引かれた。
それと同時に広い会場を揺らすほどの大きな爆発が起きた。
体勢を崩した私を抱きとめてくれたリヴァイ兵長の肩越しに、さっきまで私が居た場所に、天井で輝いていた巨大なシャンデリアが落ちたのが見えた。
ガシャーンッという大きな音と共に、中央のフロアで身体を寄せ合い踊っていた男女の姿が消え、シャンデリアの下に大きな赤い血だまりを作っていくー。
「キャーーーーーッ!!」
一瞬の沈黙の後、女性の悲鳴をきっかけに、会場がパニックに包まれる。
我先に逃げようとする人達が一度に、パーティー会場の入口へと押し寄せていく。
リヴァイ兵長はチッと舌打ちすると、私の手を握りしめた。
「来いっ!絶対に俺の手を離すなっ!!」
リヴァイ兵長は、私の手を引いて人の群れとは反対方向へと走り出した。
恐怖に振り乱して、入口へ向かう人達の身体が、リヴァイ兵長と私の行く手を阻む。
どんなに避けても、逃げようとする人達の身体が当たるから、ほんの少しの距離も前に進むのに時間がかかった。
少しすると、警備にあたっていた調査兵達が、必死に誘導しようとしている声がし始めた。
爆弾騒ぎが本当にパーティー会場で起こってしまうなんてー。
でも、念のためにと、調査兵団の兵士が警備をしてくれていてよかった。
よかったけれどー。
聞いていた爆弾騒ぎよりも大きな爆発、そして、血の海ー。
初めて、負傷者が出た。おそらく、犠牲者もー。
あのとき、リヴァイ兵長が手を引いてくれなかったら、私もあのシャンデリアの下敷きにー。
「リヴァイ兵長…っ。」
一気に不安に襲われた。
思わず名前を呼んでしまえば、リヴァイ兵長は握る手に力を込めた。
「大丈夫だ、心配するな。」
ただただ前を見て、振り返って顔を見てくれたわけじゃない。
でも、私の手を強く握って、逃がそうとしてくれているリヴァイ兵長のその声だけで、ほんの一瞬、ただそれだけで、私は大丈夫だと思えた。
それなのにー。
「あッ!!」
ドンッとぶつかってきた誰かの身体が、手を握り合う私とリヴァイ兵長の間に強引に割り込んできた。
離れるしかなかった手を、すぐに握り直そうとしたリヴァイ兵長の指が、一瞬だけ触れた気がした。
でも、人の波が私とリヴァイ兵長を引き離していく。
「リヴァイ兵長っ!!」
「なまえっ!!」
名前を呼び合って、お互いの場所を確認し合う。
人の波の中にリヴァイ兵長を見つけた。目が合った。
まだ、手を伸ばせば届く距離にいた。
でも、その距離はどんどん離れていく。
近づこうとしているはずなのに、逃げ惑うたくさんの人達が、私がリヴァイ兵長の元へ行くことを許してくれない。
「掴まれっ!!」
リヴァイ兵長が叫んだ。
必死に手を伸ばした。
リヴァイ兵長が伸ばす手を掴もうとした。
でもー、無情にも届かないまま、人の波がリヴァイ兵長を消していくー。
あの日、ルルに届かなかった手を思い出した私は、たくさんの人の森で恐怖と孤独の濁流に飲み込まれていくようだった。
リヴァイ兵長の声にハッとして、私はようやくチークタイムを踊る貴族たちの中で呆然と立ち尽くしていることに気づく。
リヴァイ兵長の顔を見ると、私を襲っていた恐怖が幻だったように思えてきた。
そうだ、そうに違いない。
だって、どうして、ルーカスの笑みを見て怖くなるなんて、そんなのおかしい。
「…なんでも、ないです。」
私は首を横に振った。
ルーカスに感じた恐怖心が嘘だと、信じたかった。
今もなぜか消えない、得体の知れない不安も、嫌な予感も、ただの考え過ぎだとー。
でも、そんな願いはすぐに打ち砕かれることになる。
「逃げろ!」
唐突にリヴァイ兵長が鬼の形相で叫んだ。
わけもわからないまま、私はリヴァイ兵長に腕を引かれた。
それと同時に広い会場を揺らすほどの大きな爆発が起きた。
体勢を崩した私を抱きとめてくれたリヴァイ兵長の肩越しに、さっきまで私が居た場所に、天井で輝いていた巨大なシャンデリアが落ちたのが見えた。
ガシャーンッという大きな音と共に、中央のフロアで身体を寄せ合い踊っていた男女の姿が消え、シャンデリアの下に大きな赤い血だまりを作っていくー。
「キャーーーーーッ!!」
一瞬の沈黙の後、女性の悲鳴をきっかけに、会場がパニックに包まれる。
我先に逃げようとする人達が一度に、パーティー会場の入口へと押し寄せていく。
リヴァイ兵長はチッと舌打ちすると、私の手を握りしめた。
「来いっ!絶対に俺の手を離すなっ!!」
リヴァイ兵長は、私の手を引いて人の群れとは反対方向へと走り出した。
恐怖に振り乱して、入口へ向かう人達の身体が、リヴァイ兵長と私の行く手を阻む。
どんなに避けても、逃げようとする人達の身体が当たるから、ほんの少しの距離も前に進むのに時間がかかった。
少しすると、警備にあたっていた調査兵達が、必死に誘導しようとしている声がし始めた。
爆弾騒ぎが本当にパーティー会場で起こってしまうなんてー。
でも、念のためにと、調査兵団の兵士が警備をしてくれていてよかった。
よかったけれどー。
聞いていた爆弾騒ぎよりも大きな爆発、そして、血の海ー。
初めて、負傷者が出た。おそらく、犠牲者もー。
あのとき、リヴァイ兵長が手を引いてくれなかったら、私もあのシャンデリアの下敷きにー。
「リヴァイ兵長…っ。」
一気に不安に襲われた。
思わず名前を呼んでしまえば、リヴァイ兵長は握る手に力を込めた。
「大丈夫だ、心配するな。」
ただただ前を見て、振り返って顔を見てくれたわけじゃない。
でも、私の手を強く握って、逃がそうとしてくれているリヴァイ兵長のその声だけで、ほんの一瞬、ただそれだけで、私は大丈夫だと思えた。
それなのにー。
「あッ!!」
ドンッとぶつかってきた誰かの身体が、手を握り合う私とリヴァイ兵長の間に強引に割り込んできた。
離れるしかなかった手を、すぐに握り直そうとしたリヴァイ兵長の指が、一瞬だけ触れた気がした。
でも、人の波が私とリヴァイ兵長を引き離していく。
「リヴァイ兵長っ!!」
「なまえっ!!」
名前を呼び合って、お互いの場所を確認し合う。
人の波の中にリヴァイ兵長を見つけた。目が合った。
まだ、手を伸ばせば届く距離にいた。
でも、その距離はどんどん離れていく。
近づこうとしているはずなのに、逃げ惑うたくさんの人達が、私がリヴァイ兵長の元へ行くことを許してくれない。
「掴まれっ!!」
リヴァイ兵長が叫んだ。
必死に手を伸ばした。
リヴァイ兵長が伸ばす手を掴もうとした。
でもー、無情にも届かないまま、人の波がリヴァイ兵長を消していくー。
あの日、ルルに届かなかった手を思い出した私は、たくさんの人の森で恐怖と孤独の濁流に飲み込まれていくようだった。