◇第七十六話◇因縁のドレス
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騙されたー。
そう気づいた時には、私は藍色のドレスを着るどころか、メイクも髪のセットも終えて、エルヴィン団長の執務室兼自室へやって来ていた。
エルヴィン団長が呼んでますーハンジさんの部屋にやってきたモブリットさんに、大切な話があるらしいからと言われたときに、何かおかしいと気づくべきだったのだろう。そして、逃げるべきだったのだ。
でも、友人の彼女へのサプライズのための身体測定だと信じて疑わなかった私は、何も考えずにエルヴィン団長のところへ来てしまってー。
「お願いだ、今日まで!今日までだから、パーティーに参加してくれっ。」
このとーりっ!とハンジさんが頭を下げて、両手を合わせた。
モブリットさんの説明によると、今朝になって、またあのシャイセの息子がドレスを着てパーティーに来いと言い出したらしい。
しかも、私の名ざし付きでー。
この前のパーティーで変な言いがかりをつけてきた息子の顔が思い浮かんで嫌な気分になる。
もう二度と会いたくなかった。
でも、そのパーティーに私がドレスで参加するだけで、壁外調査禁止令を出している貴族に取り合ってくれると言っているらしい。
そんなのー、断れるわけがない。
「分かりました…。」
「よかった~っ。ありがとうっ!!」
ハンジさんは私の両手を握って、飛び跳ねて喜んだ。
「ナナバさんは、まだ着替えないんですか?」
ハンジさんの後ろで、成り行きを見守っていたナナバさんに訊ねた。
外にはもう馬車が待っているという話なのに、まだ兵団服を着ている。
そろそろ着替えの準備は初めてもいいと思うのだがー。
「今日のエスコート役は私じゃないから。」
「え?じゃあ、誰ですか?モブリットさん?」
「僕はハンジさんのお世話で忙しいよ。」
「じゃあ…、ゲルガーさん?」
「アレは役に立たない。」
ナナバさんが手で振り払うような仕草をする。
では、誰だろうか。
他にエスコート役をする兵士の顔が思い浮かばなかった。
「そろそろ来るはずだ。」
エルヴィン団長がそう言って、すぐだった。
部屋の扉が開いて、タキシード姿のリヴァイ兵長が入ってきた。
私服でも、兵団服でもない。
初めて見るリヴァイ兵長の正装姿だった。
スラリと背の高いナナバさんの方が、タキシード姿は様になっていたかもしれない。
でも、私には、いつもとは違うその姿がとても魅力的に見えて、素敵で、凛々しくて、だからー。
思わず立ち尽くしてしまった私の手を、リヴァイ兵長が掴んだ。
驚いた時には、もう引っ張られていてー。
「来い。馬車が待ってる。」
私の手を引っ張りながら、リヴァイ兵長が言った。
背中しか見えないのに、タキシード姿が男らしく見えて、胸がきゅっと締め付けられる。
このまま、私をどこかへ連れ去ってくれればいいのにー。
ジーニーも、誰もいないところへー。
「…っ。ひとりで、歩けます。」
私は、リヴァイ兵長の手を振りほどいた。
一瞬、立ち止まりかけたリヴァイ兵長は「そうか。」とだけ言って、振り返りもせずに歩いていく。
だから、私はその背中を追いかけた。
たったの数日振りなのに、すごく会いたかった人の背中だ。
でも、一番会いたくなかった人だー。
そう気づいた時には、私は藍色のドレスを着るどころか、メイクも髪のセットも終えて、エルヴィン団長の執務室兼自室へやって来ていた。
エルヴィン団長が呼んでますーハンジさんの部屋にやってきたモブリットさんに、大切な話があるらしいからと言われたときに、何かおかしいと気づくべきだったのだろう。そして、逃げるべきだったのだ。
でも、友人の彼女へのサプライズのための身体測定だと信じて疑わなかった私は、何も考えずにエルヴィン団長のところへ来てしまってー。
「お願いだ、今日まで!今日までだから、パーティーに参加してくれっ。」
このとーりっ!とハンジさんが頭を下げて、両手を合わせた。
モブリットさんの説明によると、今朝になって、またあのシャイセの息子がドレスを着てパーティーに来いと言い出したらしい。
しかも、私の名ざし付きでー。
この前のパーティーで変な言いがかりをつけてきた息子の顔が思い浮かんで嫌な気分になる。
もう二度と会いたくなかった。
でも、そのパーティーに私がドレスで参加するだけで、壁外調査禁止令を出している貴族に取り合ってくれると言っているらしい。
そんなのー、断れるわけがない。
「分かりました…。」
「よかった~っ。ありがとうっ!!」
ハンジさんは私の両手を握って、飛び跳ねて喜んだ。
「ナナバさんは、まだ着替えないんですか?」
ハンジさんの後ろで、成り行きを見守っていたナナバさんに訊ねた。
外にはもう馬車が待っているという話なのに、まだ兵団服を着ている。
そろそろ着替えの準備は初めてもいいと思うのだがー。
「今日のエスコート役は私じゃないから。」
「え?じゃあ、誰ですか?モブリットさん?」
「僕はハンジさんのお世話で忙しいよ。」
「じゃあ…、ゲルガーさん?」
「アレは役に立たない。」
ナナバさんが手で振り払うような仕草をする。
では、誰だろうか。
他にエスコート役をする兵士の顔が思い浮かばなかった。
「そろそろ来るはずだ。」
エルヴィン団長がそう言って、すぐだった。
部屋の扉が開いて、タキシード姿のリヴァイ兵長が入ってきた。
私服でも、兵団服でもない。
初めて見るリヴァイ兵長の正装姿だった。
スラリと背の高いナナバさんの方が、タキシード姿は様になっていたかもしれない。
でも、私には、いつもとは違うその姿がとても魅力的に見えて、素敵で、凛々しくて、だからー。
思わず立ち尽くしてしまった私の手を、リヴァイ兵長が掴んだ。
驚いた時には、もう引っ張られていてー。
「来い。馬車が待ってる。」
私の手を引っ張りながら、リヴァイ兵長が言った。
背中しか見えないのに、タキシード姿が男らしく見えて、胸がきゅっと締め付けられる。
このまま、私をどこかへ連れ去ってくれればいいのにー。
ジーニーも、誰もいないところへー。
「…っ。ひとりで、歩けます。」
私は、リヴァイ兵長の手を振りほどいた。
一瞬、立ち止まりかけたリヴァイ兵長は「そうか。」とだけ言って、振り返りもせずに歩いていく。
だから、私はその背中を追いかけた。
たったの数日振りなのに、すごく会いたかった人の背中だ。
でも、一番会いたくなかった人だー。