◇第六十七話◇シュトレンと恋心
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灯りもつけていない薄暗い部屋で、ローテ―ブルに肘をつきもたれ掛かって、リヴァイ兵長が買ってくれた菓子を眺め出してから、しばらく経った気がする。
1人前サイズにカットされたシュトレンは、簡易的な透明のビニールで包装されていた。
ドライフルーツが練り込んである生地はとても美味しそうだ。
そうは思うのだけれど、眺めるばかりで食べる気にはならない。
そうしていると、誰かが部屋を訪ねてきたようで、扉をノックする音が静かな部屋に響いた。
「私、ペトラ。入ってもいい?」
「ど~ぞ~。」
ローテーブルにだらしなく寄り掛かったまま、私は気の抜けた返事を返した。
すぐに開いた扉から、ペトラが入ってくる。
「さっき、ハンジさんに会って、明日は104期の座学指導を私達でしてってー。
あれ?そのお菓子、どうしたの?」
ローテーブルの上で、人差し指で適当にお菓子を転がして遊んでいると、ペトラにとられてしまった。
なんとなく下を向いていた私の視線がようやく上がって、ペトラの手の中にあるお菓子を映す。
「今日のお使いのご褒美だって。リヴァイ兵長がくれた。」
「食べないの?」
「…分かんない。」
「食べないなら、私が食べていい?」
「…食べる。ちょうだい。」
「はいはい。」
苦笑いを浮かべながら、ペトラは私の手の中にお菓子を戻した。
やっぱり、とても愛おしくて、憎らしい。
なんとなく、ペトラにあげてもいいかな、なんて思いながら、私は透明なビニールを剥がした。
途端に甘い匂いが鼻を刺激して、お腹が空いてきた。
ひとりで全部食べたい。誰にも、あげたくない。
「甘い…。」
一口齧ると、甘さが口の中いっぱいに広がった。
砂糖で出来てるんじゃないかというくらい甘すぎる。
ドライフルーツの必要以上に弾力のある食感と甘酸っぱさがなければ、いくら甘いものが好きでも一個をひとりで完食することは出来なかったかもしれない。
「ねぇ。」
ソファに腰をおろしたペトラに、私は声をかけた。
「ん?」
「ただの上司と部下って、何だろう。」
訊ねてから、私はまた一口シュトレンを頬張る。
やっぱり、甘すぎる。
今日、買ったお菓子ももしかして、こんなに必要以上に甘いのだろうか。
もし、そうだったらどうしよう。
「リヴァイ兵長と何かあったの?」
「ううん、何もないよ。普通におつかいに行って、リヴァイ兵長に
変なものを買わないか監視されて、ちゃんと出来たからって
ご褒美貰っただけ。」
「じゃあ、それがただの上司と部下なんじゃない?」
「そう、なのかな…?もう、分かんなくなっちゃった…。」
食べかけのシュトレンを見つめながら、私は呟くように気持ちを吐き出した。
何とも思っていない私は、リヴァイ兵長とどんな風に話していたんだっけ。
どんな風に触れていたんだっけ。
どんな風に、私はリヴァイ兵長に恋をしてしまったんだっけー。
「ひとつ言えるのはさ。」
「うん。」
「普通のただの上司と部下は、
自分達のことを、ただの上司と部下とは言わないってことかな。」
「ハハ、それもそうだね。」
私の渇いた笑いが、床に吸い込まれていった。
1人前サイズにカットされたシュトレンは、簡易的な透明のビニールで包装されていた。
ドライフルーツが練り込んである生地はとても美味しそうだ。
そうは思うのだけれど、眺めるばかりで食べる気にはならない。
そうしていると、誰かが部屋を訪ねてきたようで、扉をノックする音が静かな部屋に響いた。
「私、ペトラ。入ってもいい?」
「ど~ぞ~。」
ローテーブルにだらしなく寄り掛かったまま、私は気の抜けた返事を返した。
すぐに開いた扉から、ペトラが入ってくる。
「さっき、ハンジさんに会って、明日は104期の座学指導を私達でしてってー。
あれ?そのお菓子、どうしたの?」
ローテーブルの上で、人差し指で適当にお菓子を転がして遊んでいると、ペトラにとられてしまった。
なんとなく下を向いていた私の視線がようやく上がって、ペトラの手の中にあるお菓子を映す。
「今日のお使いのご褒美だって。リヴァイ兵長がくれた。」
「食べないの?」
「…分かんない。」
「食べないなら、私が食べていい?」
「…食べる。ちょうだい。」
「はいはい。」
苦笑いを浮かべながら、ペトラは私の手の中にお菓子を戻した。
やっぱり、とても愛おしくて、憎らしい。
なんとなく、ペトラにあげてもいいかな、なんて思いながら、私は透明なビニールを剥がした。
途端に甘い匂いが鼻を刺激して、お腹が空いてきた。
ひとりで全部食べたい。誰にも、あげたくない。
「甘い…。」
一口齧ると、甘さが口の中いっぱいに広がった。
砂糖で出来てるんじゃないかというくらい甘すぎる。
ドライフルーツの必要以上に弾力のある食感と甘酸っぱさがなければ、いくら甘いものが好きでも一個をひとりで完食することは出来なかったかもしれない。
「ねぇ。」
ソファに腰をおろしたペトラに、私は声をかけた。
「ん?」
「ただの上司と部下って、何だろう。」
訊ねてから、私はまた一口シュトレンを頬張る。
やっぱり、甘すぎる。
今日、買ったお菓子ももしかして、こんなに必要以上に甘いのだろうか。
もし、そうだったらどうしよう。
「リヴァイ兵長と何かあったの?」
「ううん、何もないよ。普通におつかいに行って、リヴァイ兵長に
変なものを買わないか監視されて、ちゃんと出来たからって
ご褒美貰っただけ。」
「じゃあ、それがただの上司と部下なんじゃない?」
「そう、なのかな…?もう、分かんなくなっちゃった…。」
食べかけのシュトレンを見つめながら、私は呟くように気持ちを吐き出した。
何とも思っていない私は、リヴァイ兵長とどんな風に話していたんだっけ。
どんな風に触れていたんだっけ。
どんな風に、私はリヴァイ兵長に恋をしてしまったんだっけー。
「ひとつ言えるのはさ。」
「うん。」
「普通のただの上司と部下は、
自分達のことを、ただの上司と部下とは言わないってことかな。」
「ハハ、それもそうだね。」
私の渇いた笑いが、床に吸い込まれていった。