◇第六十七話◇シュトレンと恋心
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以前来た時と変わらない店内には、紅茶の葉のいい匂いが漂っていた。
所狭しと並べられた瓶の中を覗き込んでは、さっきゲルガーさんがしていたように香りを嗅いで楽しむ。
さっきはつまらなそうにしていたリヴァイ兵長も、店内を歩き回っているようだった。
「リヴァイ兵長、これとかどうですか?
上品な包装だし、大きさもちょうどいいかなって。」
お菓子コーナーから早速良さそうなものを見つけた私は、小さな瓶を手に取って紅茶の銘柄と睨めっこしていたリヴァイ兵長に声をかけた。
持っていた瓶を棚に戻し、リヴァイ兵長が私の持っていたお菓子を手に取る。
「まぁ、いいんじゃねぇーのか。」
「よかった。それと、これもすごく美味しそうなんですっ。
予算よりもだいぶ安くなったし、お酒も値引きしてもらえたし、
お使い頑張った私達のご褒美にー。」
「要らねぇ。」
「…はい。」
バッサリと私の欲望だらけの提案は切り捨てられ、レジカウンターに向かったリヴァイ兵長の後ろをトボトボと歩く。
まぁ、自分用の紅茶の葉は買えるしいいかー、と私は両手に持った紅茶の葉の入った袋を見下ろす。
今度はいつ来れるか分からないので、少し多めに買っておくことにした。
「おー、リヴァイ。久しぶりじゃねぇか。
お?後ろにいるのは、いつぞやのべっぴんさんじゃねぇの。
なまえだったか?元気にやってたか?」
店主が、リヴァイ兵長の後ろに隠れていた私に気が付いて声をかけてきた。
私のことを覚えてくれていたことが嬉しくて、思わず顔が綻ぶ。
「今日はデートかい?」
「任務だ。」
ニヤニヤとからかう店主に、リヴァイ兵長は最も適当な答えを口にする。
自然と出てきたそれに胸がチクリと痛んだけれど、これが私の望んだ『ただの上司と部下』だと考え直す。
「なんだよ、つまんねぇーな。」
「てめぇを面白がらせるために来てんじゃねぇんだよ。
仕事しろ、仕事を。」
「へいへい。」
途端に店主は面白くなさそうになって、適当にお菓子を袋に詰め込もうとし始める。
慌てて、それはお偉い方への土産物にするつもりなので、贈り物用の袋に入れてほしいとお願いする。
「あぁ…そういえば、部下もどきだったな。」
店主は、私の顔とリヴァイ兵長の顔を交互に見ながら言った。
部下もどきとは何だろうー一瞬そう思ったが、すぐに意味を理解した。
初めてこの店に来たときは、私はまだ入団テスト前で仮調査兵のようなものだった。
だから、私のことを訊かれたリヴァイ兵長が適当に部下もどきとでも言ったのだろう。
的を得た言い方が少し可笑しくて、私はクスリと笑う。
「違いますよ~。もう部下もどきじゃなくて、
ただの部下に出世したんですよっ。」
「おぉっ、すげぇじゃねぇかっ。なまえも調査兵かっ。
頑張れよっ!」
敬礼で出世の報告をした私に、店主は祝いだと言って自分の分の紅茶の葉を割引きしてもらえた。
最高にラッキーだ。
贈り物用の綺麗な袋に入ったお菓子を受け取った私は、ご機嫌で店を出る。
「あれ?リヴァイ兵長?」
店を出たところで、リヴァイ兵長がついてきていなかったことに気がついた。
扉から一歩入って店内を覗くと、リヴァイ兵長がレジカウンターで何かを買っていた。
紅茶の銘柄と睨めっこしていたし、欲しい紅茶の葉でもあったのかもしれない。
私はまた店の外に出て、扉の近くで待つことにした。
少しすると、リヴァイ兵長が紙袋を下げて出てきた。
そして、紙袋の中から何かを取り出すと、それを私に投げてよこした。
「今日の褒美だ。やる。」
慌てて受け取った私は、リヴァイ兵長にそう言われて、改めて手の中にあるものを見た。
「あ。」
私が欲望だらけのおねだりをして失敗した美味しそうなお菓子だった。
兵団のお金ではダメだと断られたから、これはリヴァイ兵長自身が買ってくれたのだろう。
「ありがとうございます。」
私の小さな手の中におさまった小さな甘いお菓子が、急にとても愛おしくなる。
そして、憎らしくもなるー。
「でもー。
これからはもう、こういうことはしなくていいですよ。」
私の言葉に、リヴァイ兵長は訝し気に眉を顰めた。
せっかくの好意だというのは私も分かってる。
でも、リヴァイ兵長は女心を何も分かってない。
「リヴァイ兵長と私は、ただの上司と部下だから。」
私はそれで平気ですよーそんな気持ちを込めて、私は精一杯の笑顔を作った。
リヴァイ兵長の好きな紅茶の葉ばかりが入った紙袋を握る私の手に、力が入ってることにだって、きっと気づいてはもらえないのだろう。
でも、それでいい。
それが、いいー。
「あぁ、そうだな。」
リヴァイ兵長の呟くような声を聞いてから、私は1人で歩きだす。
甘いお菓子は紅茶の葉の入った紙袋に入れた。
きっと美味しいんだろう。
でも、私はリヴァイ兵長の前で、美味しいと笑える自信は、ないー。
所狭しと並べられた瓶の中を覗き込んでは、さっきゲルガーさんがしていたように香りを嗅いで楽しむ。
さっきはつまらなそうにしていたリヴァイ兵長も、店内を歩き回っているようだった。
「リヴァイ兵長、これとかどうですか?
上品な包装だし、大きさもちょうどいいかなって。」
お菓子コーナーから早速良さそうなものを見つけた私は、小さな瓶を手に取って紅茶の銘柄と睨めっこしていたリヴァイ兵長に声をかけた。
持っていた瓶を棚に戻し、リヴァイ兵長が私の持っていたお菓子を手に取る。
「まぁ、いいんじゃねぇーのか。」
「よかった。それと、これもすごく美味しそうなんですっ。
予算よりもだいぶ安くなったし、お酒も値引きしてもらえたし、
お使い頑張った私達のご褒美にー。」
「要らねぇ。」
「…はい。」
バッサリと私の欲望だらけの提案は切り捨てられ、レジカウンターに向かったリヴァイ兵長の後ろをトボトボと歩く。
まぁ、自分用の紅茶の葉は買えるしいいかー、と私は両手に持った紅茶の葉の入った袋を見下ろす。
今度はいつ来れるか分からないので、少し多めに買っておくことにした。
「おー、リヴァイ。久しぶりじゃねぇか。
お?後ろにいるのは、いつぞやのべっぴんさんじゃねぇの。
なまえだったか?元気にやってたか?」
店主が、リヴァイ兵長の後ろに隠れていた私に気が付いて声をかけてきた。
私のことを覚えてくれていたことが嬉しくて、思わず顔が綻ぶ。
「今日はデートかい?」
「任務だ。」
ニヤニヤとからかう店主に、リヴァイ兵長は最も適当な答えを口にする。
自然と出てきたそれに胸がチクリと痛んだけれど、これが私の望んだ『ただの上司と部下』だと考え直す。
「なんだよ、つまんねぇーな。」
「てめぇを面白がらせるために来てんじゃねぇんだよ。
仕事しろ、仕事を。」
「へいへい。」
途端に店主は面白くなさそうになって、適当にお菓子を袋に詰め込もうとし始める。
慌てて、それはお偉い方への土産物にするつもりなので、贈り物用の袋に入れてほしいとお願いする。
「あぁ…そういえば、部下もどきだったな。」
店主は、私の顔とリヴァイ兵長の顔を交互に見ながら言った。
部下もどきとは何だろうー一瞬そう思ったが、すぐに意味を理解した。
初めてこの店に来たときは、私はまだ入団テスト前で仮調査兵のようなものだった。
だから、私のことを訊かれたリヴァイ兵長が適当に部下もどきとでも言ったのだろう。
的を得た言い方が少し可笑しくて、私はクスリと笑う。
「違いますよ~。もう部下もどきじゃなくて、
ただの部下に出世したんですよっ。」
「おぉっ、すげぇじゃねぇかっ。なまえも調査兵かっ。
頑張れよっ!」
敬礼で出世の報告をした私に、店主は祝いだと言って自分の分の紅茶の葉を割引きしてもらえた。
最高にラッキーだ。
贈り物用の綺麗な袋に入ったお菓子を受け取った私は、ご機嫌で店を出る。
「あれ?リヴァイ兵長?」
店を出たところで、リヴァイ兵長がついてきていなかったことに気がついた。
扉から一歩入って店内を覗くと、リヴァイ兵長がレジカウンターで何かを買っていた。
紅茶の銘柄と睨めっこしていたし、欲しい紅茶の葉でもあったのかもしれない。
私はまた店の外に出て、扉の近くで待つことにした。
少しすると、リヴァイ兵長が紙袋を下げて出てきた。
そして、紙袋の中から何かを取り出すと、それを私に投げてよこした。
「今日の褒美だ。やる。」
慌てて受け取った私は、リヴァイ兵長にそう言われて、改めて手の中にあるものを見た。
「あ。」
私が欲望だらけのおねだりをして失敗した美味しそうなお菓子だった。
兵団のお金ではダメだと断られたから、これはリヴァイ兵長自身が買ってくれたのだろう。
「ありがとうございます。」
私の小さな手の中におさまった小さな甘いお菓子が、急にとても愛おしくなる。
そして、憎らしくもなるー。
「でもー。
これからはもう、こういうことはしなくていいですよ。」
私の言葉に、リヴァイ兵長は訝し気に眉を顰めた。
せっかくの好意だというのは私も分かってる。
でも、リヴァイ兵長は女心を何も分かってない。
「リヴァイ兵長と私は、ただの上司と部下だから。」
私はそれで平気ですよーそんな気持ちを込めて、私は精一杯の笑顔を作った。
リヴァイ兵長の好きな紅茶の葉ばかりが入った紙袋を握る私の手に、力が入ってることにだって、きっと気づいてはもらえないのだろう。
でも、それでいい。
それが、いいー。
「あぁ、そうだな。」
リヴァイ兵長の呟くような声を聞いてから、私は1人で歩きだす。
甘いお菓子は紅茶の葉の入った紙袋に入れた。
きっと美味しいんだろう。
でも、私はリヴァイ兵長の前で、美味しいと笑える自信は、ないー。