◇第六十七話◇シュトレンと恋心
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「あ~ぁ…、あのチーズ、美味しかったのになぁ。」
口いっぱいに広がる甘酸っぱいフルーツとチーズの味が忘れられず、私は不服気に口を尖らせた。
私の声なんて聞こえていないと言う顔のリヴァイ兵長が持ってくれている袋の中には、たんこぶを作ったゲルガーさんが真剣に選んだ美味しいお酒が入っている。
お使いで酒屋の店主と親しくなっていたことで、値段を安くしてもらえた私は、そのおかげで拳骨を貰うことはなかったけれど、ゲルガーさんは痛そうなのを一発頂いていた。
そして、たまたま酒屋で会って声をかけてきた知り合いの駐屯兵の元に逃げるように去っていった。
どうやら、以前から外門そばにいる巨人のことで相談を受けていたらしい。
「お菓子はどこで買いましょうね。まさかお休みなんて。」
酒屋に行く前、兵団ご用達の菓子店に寄ったのだけれど、今日から旅行で数日臨時休業をするという貼紙があったのだ。
お菓子とお酒を買ってくるようにとエルヴィン団長から指示されているし、どこか美味しいお菓子屋はないか通りを目を凝らしてみているのだけれど、そもそも巨人襲来によって崩壊したトロスト区では、営業している店を探す方が難しい。
「適当な店で適当に見繕え。」
またリヴァイ兵長は勝手なことを言っている。
見張りだけだから適当に言えるのだ。
リヴァイ兵長に気づかれないように、私は小さなため息をこぼした。
こうしてリヴァイ兵長と二人きりでトロスト区を歩くのは、2回目だ。
ハンジさんに親睦を深めろと言われて、初めてリヴァイ兵長と一緒にトロスト区に来たときは、人類最強の兵士との休日なんて最悪だと思った。
もう二度と御免だ、そう思っていたのにー。
横目でこっそり見たリヴァイ兵長の横顔は、いつもと何も変わらない。
適当なお菓子屋を探している気配すら、ない。
あのときは、私とリヴァイ兵長はまだお互いのことを何も知らなかった。
今だって、ほとんど知らないけれど、でも、リヴァイ兵長はとても優しい人だということを知ってる。
冷たい言葉の裏に、彼なりの想いがあることを知っている。
それに、手の大きさ、抱きしめる腕の力強さ、唇のー。
忘れたくても消えてくれない身体に残った感覚がある。あのときの私よりも、今の私の方が絶対にリヴァイ兵長を知っている。
でも、今の方が、リヴァイ兵長は遠い。
遠くて、遠くて、遠くて、絶対に届かない人だ。
隣を歩いているのに、私はどこか遠い場所から端正な横顔を眺めているような気分になる。
あのとき、リヴァイ兵長と一緒にトロスト区を歩くなんて二度と御免だと思った。
私は今、あの時よりも強く、そう願っているー。
「あ、」
ふと、思い出した。
リヴァイ兵長が連れて行ってくれた紅茶の葉を売っているあのお店。
あそこに、美味しそうなお菓子も置いてあったはずだ。
それに、家から持ってきていた紅茶の葉がなくなりかけていて、買い足さないといけないと思っていたのだ。
自分のお財布も持ってきているし、ついでに買って帰ればいい。
「リヴァイ兵長っ!あのお店に行きましょうっ!」
思いついたことが嬉しくて、駆け出しそうになる心のままリヴァイ兵長の手を掴もうとした私は、慌ててその手を引っ込めた。
急にテンションを上げた私に驚いたのか、訝しげな顔をするリヴァイ兵長に、誤魔化すように笑顔を作る。
「あの紅茶のお店に行きましょうよっ。
美味しそうなお菓子もありましたよねっ。」
「あぁ、そうだったか。」
「そうだったんですっ。」
ゆっくり歩くリヴァイ兵長を残して、私はスキップで紅茶の葉のお店に向かう。
楽しそうな背中を見せつけていないと、偽物のただの部下であることがバレてしまいそうだった。
避けられるのは、とても悲しかった。
そんなの、残酷な時間だと信じて疑わなかった。
でも、泣いてお願いして上司のフリをしてもらっている今、私は惨めで、やっぱり残酷な時間だと信じてしまいそうになる。
でも、それじゃダメだ。
自分の選択を、後悔していても、後悔したくない。
惨めでも、可哀そうでも、ただの部下でもなんでもいいから、好きな人のそばにいたいーそう決めたのだから。
口いっぱいに広がる甘酸っぱいフルーツとチーズの味が忘れられず、私は不服気に口を尖らせた。
私の声なんて聞こえていないと言う顔のリヴァイ兵長が持ってくれている袋の中には、たんこぶを作ったゲルガーさんが真剣に選んだ美味しいお酒が入っている。
お使いで酒屋の店主と親しくなっていたことで、値段を安くしてもらえた私は、そのおかげで拳骨を貰うことはなかったけれど、ゲルガーさんは痛そうなのを一発頂いていた。
そして、たまたま酒屋で会って声をかけてきた知り合いの駐屯兵の元に逃げるように去っていった。
どうやら、以前から外門そばにいる巨人のことで相談を受けていたらしい。
「お菓子はどこで買いましょうね。まさかお休みなんて。」
酒屋に行く前、兵団ご用達の菓子店に寄ったのだけれど、今日から旅行で数日臨時休業をするという貼紙があったのだ。
お菓子とお酒を買ってくるようにとエルヴィン団長から指示されているし、どこか美味しいお菓子屋はないか通りを目を凝らしてみているのだけれど、そもそも巨人襲来によって崩壊したトロスト区では、営業している店を探す方が難しい。
「適当な店で適当に見繕え。」
またリヴァイ兵長は勝手なことを言っている。
見張りだけだから適当に言えるのだ。
リヴァイ兵長に気づかれないように、私は小さなため息をこぼした。
こうしてリヴァイ兵長と二人きりでトロスト区を歩くのは、2回目だ。
ハンジさんに親睦を深めろと言われて、初めてリヴァイ兵長と一緒にトロスト区に来たときは、人類最強の兵士との休日なんて最悪だと思った。
もう二度と御免だ、そう思っていたのにー。
横目でこっそり見たリヴァイ兵長の横顔は、いつもと何も変わらない。
適当なお菓子屋を探している気配すら、ない。
あのときは、私とリヴァイ兵長はまだお互いのことを何も知らなかった。
今だって、ほとんど知らないけれど、でも、リヴァイ兵長はとても優しい人だということを知ってる。
冷たい言葉の裏に、彼なりの想いがあることを知っている。
それに、手の大きさ、抱きしめる腕の力強さ、唇のー。
忘れたくても消えてくれない身体に残った感覚がある。あのときの私よりも、今の私の方が絶対にリヴァイ兵長を知っている。
でも、今の方が、リヴァイ兵長は遠い。
遠くて、遠くて、遠くて、絶対に届かない人だ。
隣を歩いているのに、私はどこか遠い場所から端正な横顔を眺めているような気分になる。
あのとき、リヴァイ兵長と一緒にトロスト区を歩くなんて二度と御免だと思った。
私は今、あの時よりも強く、そう願っているー。
「あ、」
ふと、思い出した。
リヴァイ兵長が連れて行ってくれた紅茶の葉を売っているあのお店。
あそこに、美味しそうなお菓子も置いてあったはずだ。
それに、家から持ってきていた紅茶の葉がなくなりかけていて、買い足さないといけないと思っていたのだ。
自分のお財布も持ってきているし、ついでに買って帰ればいい。
「リヴァイ兵長っ!あのお店に行きましょうっ!」
思いついたことが嬉しくて、駆け出しそうになる心のままリヴァイ兵長の手を掴もうとした私は、慌ててその手を引っ込めた。
急にテンションを上げた私に驚いたのか、訝しげな顔をするリヴァイ兵長に、誤魔化すように笑顔を作る。
「あの紅茶のお店に行きましょうよっ。
美味しそうなお菓子もありましたよねっ。」
「あぁ、そうだったか。」
「そうだったんですっ。」
ゆっくり歩くリヴァイ兵長を残して、私はスキップで紅茶の葉のお店に向かう。
楽しそうな背中を見せつけていないと、偽物のただの部下であることがバレてしまいそうだった。
避けられるのは、とても悲しかった。
そんなの、残酷な時間だと信じて疑わなかった。
でも、泣いてお願いして上司のフリをしてもらっている今、私は惨めで、やっぱり残酷な時間だと信じてしまいそうになる。
でも、それじゃダメだ。
自分の選択を、後悔していても、後悔したくない。
惨めでも、可哀そうでも、ただの部下でもなんでもいいから、好きな人のそばにいたいーそう決めたのだから。