◇第六十六話◇ただの上司と部下
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「本当にそれでいいの?」
心配そうにペトラが言うそれが、厩舎で会ったジャンと重なった。
就寝前、今日は一緒に寝ようと私の部屋にやってきたペトラは、とても良い話が聞けるのだとワクワクしている様子だった。
そして、広いとはいえないベッドに2人で並んで入って、私の話を聞いた後、悲しい顔をした。
「ジャンにも言われた。」
ふふ、と思わず笑って、そして悲しい顔を誤魔化す。
どうしてジャンが知っているのかと訊ねるペトラに、さっき厩舎で偶然会ったことを教えてやる。
あの夜から、ジャンはまるで弟みたいに私の心配をしてくれていると思う。
変なことをしてしまって、怖い思いをさせたのにー。
「私は、間違ってると思う。」
ペトラは天井を見ながら言った。
「そう、かな?ずっと避けられてるより、全然いいよ。」
私はペトラを見ながら言う。
強がりかもしれなかった。
リヴァイ兵長が迷惑なら忘れるーとは言ったけれど、今すぐなんてやっぱり無理で、気持ちを誤魔化して、消したフリをするので精一杯だ。
それでも、あの冷たい背中を見せられるくらいなら、これくらいの胸の痛み、どうってことない。
それは、嘘じゃない。
「本当に、後悔しない?」
「え?」
「私達はいつ死ぬか分からない。だから、私は自分が後悔しない方を選んだ。
それで自分が傷ついても、自分が選択した結果だから受け入れられた。」
そこまで言うと、ペトラは、私の名前を呼んで、私の顔を見た。
真っすぐな瞳は、見覚えがあった。
リヴァイ兵長のことが好きだーそう言ったときと同じだ。
自分の気持ちを誤魔化すことばかり考えていた私が、真っすぐに見返すことが出来なかった強い瞳。
だから、今の私もー。
「本当にそれで後悔しないって言えるの?」
強い瞳が、私の意思を訊ねる。
ルルもこの強い瞳を持っていたっけ。
そして、私も欲しい―と思ったのだ。
強く行きたい、堂々と生きたい、そして、勇敢な兵士の隣に立てるようになりたい。
そう思って、私はここにいるはずなのにー。
「後悔…、するよ…っ。でも、じゃあ、どうしたらよかったの…?
無視されるよりツラいことなんて…っ、私は知らないのに…っ。」
震える声と頬を伝う涙を隠したくて、私は枕を顔に押し当てた。
分かっている。
自分でも分かっていた。
たぶん、私は間違ってる。
ペトラやルルみたいに強くありたいのなら、もっと堂々としてるべきだった。
そうしていればもしかしたら、時間はかかっても、ただの上司と部下に戻れたかもしれない。
でも、もうあんな残酷な時間が続くのは耐えられなかった。
逃げ出したくて仕方なかった。
だから、私はミケ分隊長からもらったチャンスを卑怯な手段に使った。
分かってる。私はきっと間違った。
だって、お願いして戻った『ただの上司と部下』なんて、偽物以外の何物でもない。
それはもう、私が戻りたかった私とリヴァイ兵長ではない。
知っている。そんなこと分かっていたけれど、でもー。
「ほんと、バカだよ。」
ペトラが私を抱きしめる。
優しくて柔らかい温もりが私を包み込んだ。
「なまえも、リヴァイ兵長も、バカだ。」
「リヴァイ兵長はバカじゃないでしょ、優しいだけだよ。」
困ったように私が言っても、ペトラは、私もリヴァイ兵長も2人してバカなのだと譲らない。
それに、そんなことを言うペトラの声まで震えていて、私は本当に素敵な友人を持ったのだなと嬉しくもなる。
「もう新しい恋をしちゃおうっ!それが一番いいよ!!」
ペトラが明るく言って、私の背中を一度軽く叩いた。
「私も思ったんだけどね、残念ながら相手がいないの。」
「あの子は?ジャンって子。」
「もうあの子って言ってる時点で、恋愛対象じゃないじゃん。」
「それは私にとってはそうだけど、なまえにとっては違うかもしれないでしょ?」
「一緒だよ~。だって、16だよ。犯罪だよ。」
「誘惑しようとしたくせに?」
「まぁ…、そうだけど。」
「そのとき分かったでしょ。16でも立派な男だって。」
「そうだね。男だった。喉仏が、すごく男だった。」
「…その感想はよくわからないけど。」
言った後、ペトラは、抱きしめていた私の身体を少し離した。
そして、私の顔を見てから続ける。
「私は、なまえを大切にしてくれる人なら、
それがリヴァイ兵長じゃなくてもいいと思ってる。
ジャンって子でもいいし、この際、ハンジさんでもいい。」
「ハンジさん?」
そこでなぜか突然現れた名前に思わず笑ってしまった私だったけれど、ペトラは真剣だった。
あの強い瞳で、私をまっすぐに見て、私のための言葉をくれた。
「なまえが本当に幸せだと思う選択をしてね。」
「ありがとう。」
ペトラの優しさは私の胸に届く。
でも、自信を持って頷けないから、下手くそな笑顔を隠すようにペトラを抱きしめ返した。
「それで、ペトラの新しい好きな人は誰なの?進展してるの?」
「あー…、それはまだ心の整理がついてないから、もうちょっと待って。
あー、もうほんと、自分でも信じられない。もうやだ。」
ペトラは、さっきまでの力強い声とはまるで別人のように言って、大きなため息を吐いた。
心配そうにペトラが言うそれが、厩舎で会ったジャンと重なった。
就寝前、今日は一緒に寝ようと私の部屋にやってきたペトラは、とても良い話が聞けるのだとワクワクしている様子だった。
そして、広いとはいえないベッドに2人で並んで入って、私の話を聞いた後、悲しい顔をした。
「ジャンにも言われた。」
ふふ、と思わず笑って、そして悲しい顔を誤魔化す。
どうしてジャンが知っているのかと訊ねるペトラに、さっき厩舎で偶然会ったことを教えてやる。
あの夜から、ジャンはまるで弟みたいに私の心配をしてくれていると思う。
変なことをしてしまって、怖い思いをさせたのにー。
「私は、間違ってると思う。」
ペトラは天井を見ながら言った。
「そう、かな?ずっと避けられてるより、全然いいよ。」
私はペトラを見ながら言う。
強がりかもしれなかった。
リヴァイ兵長が迷惑なら忘れるーとは言ったけれど、今すぐなんてやっぱり無理で、気持ちを誤魔化して、消したフリをするので精一杯だ。
それでも、あの冷たい背中を見せられるくらいなら、これくらいの胸の痛み、どうってことない。
それは、嘘じゃない。
「本当に、後悔しない?」
「え?」
「私達はいつ死ぬか分からない。だから、私は自分が後悔しない方を選んだ。
それで自分が傷ついても、自分が選択した結果だから受け入れられた。」
そこまで言うと、ペトラは、私の名前を呼んで、私の顔を見た。
真っすぐな瞳は、見覚えがあった。
リヴァイ兵長のことが好きだーそう言ったときと同じだ。
自分の気持ちを誤魔化すことばかり考えていた私が、真っすぐに見返すことが出来なかった強い瞳。
だから、今の私もー。
「本当にそれで後悔しないって言えるの?」
強い瞳が、私の意思を訊ねる。
ルルもこの強い瞳を持っていたっけ。
そして、私も欲しい―と思ったのだ。
強く行きたい、堂々と生きたい、そして、勇敢な兵士の隣に立てるようになりたい。
そう思って、私はここにいるはずなのにー。
「後悔…、するよ…っ。でも、じゃあ、どうしたらよかったの…?
無視されるよりツラいことなんて…っ、私は知らないのに…っ。」
震える声と頬を伝う涙を隠したくて、私は枕を顔に押し当てた。
分かっている。
自分でも分かっていた。
たぶん、私は間違ってる。
ペトラやルルみたいに強くありたいのなら、もっと堂々としてるべきだった。
そうしていればもしかしたら、時間はかかっても、ただの上司と部下に戻れたかもしれない。
でも、もうあんな残酷な時間が続くのは耐えられなかった。
逃げ出したくて仕方なかった。
だから、私はミケ分隊長からもらったチャンスを卑怯な手段に使った。
分かってる。私はきっと間違った。
だって、お願いして戻った『ただの上司と部下』なんて、偽物以外の何物でもない。
それはもう、私が戻りたかった私とリヴァイ兵長ではない。
知っている。そんなこと分かっていたけれど、でもー。
「ほんと、バカだよ。」
ペトラが私を抱きしめる。
優しくて柔らかい温もりが私を包み込んだ。
「なまえも、リヴァイ兵長も、バカだ。」
「リヴァイ兵長はバカじゃないでしょ、優しいだけだよ。」
困ったように私が言っても、ペトラは、私もリヴァイ兵長も2人してバカなのだと譲らない。
それに、そんなことを言うペトラの声まで震えていて、私は本当に素敵な友人を持ったのだなと嬉しくもなる。
「もう新しい恋をしちゃおうっ!それが一番いいよ!!」
ペトラが明るく言って、私の背中を一度軽く叩いた。
「私も思ったんだけどね、残念ながら相手がいないの。」
「あの子は?ジャンって子。」
「もうあの子って言ってる時点で、恋愛対象じゃないじゃん。」
「それは私にとってはそうだけど、なまえにとっては違うかもしれないでしょ?」
「一緒だよ~。だって、16だよ。犯罪だよ。」
「誘惑しようとしたくせに?」
「まぁ…、そうだけど。」
「そのとき分かったでしょ。16でも立派な男だって。」
「そうだね。男だった。喉仏が、すごく男だった。」
「…その感想はよくわからないけど。」
言った後、ペトラは、抱きしめていた私の身体を少し離した。
そして、私の顔を見てから続ける。
「私は、なまえを大切にしてくれる人なら、
それがリヴァイ兵長じゃなくてもいいと思ってる。
ジャンって子でもいいし、この際、ハンジさんでもいい。」
「ハンジさん?」
そこでなぜか突然現れた名前に思わず笑ってしまった私だったけれど、ペトラは真剣だった。
あの強い瞳で、私をまっすぐに見て、私のための言葉をくれた。
「なまえが本当に幸せだと思う選択をしてね。」
「ありがとう。」
ペトラの優しさは私の胸に届く。
でも、自信を持って頷けないから、下手くそな笑顔を隠すようにペトラを抱きしめ返した。
「それで、ペトラの新しい好きな人は誰なの?進展してるの?」
「あー…、それはまだ心の整理がついてないから、もうちょっと待って。
あー、もうほんと、自分でも信じられない。もうやだ。」
ペトラは、さっきまでの力強い声とはまるで別人のように言って、大きなため息を吐いた。