◇第六十六話◇ただの上司と部下
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なんだかんだとハンジさんの仕事の手伝いをしていたら夜になっていて、今日は一度もテュランの顔を見ていないことを思い出した私は、夕食の後、厩舎に来ていた。
一日一回は必ず会って、ブラッシングをしたり、話をしたりー、そうして愛馬と心を通わせるのはとても大切なことだとナナバさんも言っていた。
それに、今では一日一回会うのが日課になっていて、会えないとなんだか寂しいのだ。
思い上がりかもしれないけれど、テュランも私の姿を見つけると嬉しそうな顔をしてくれる気がする。
「今度のお休みは散歩にでも行こうか。」
テュランの鼻のあたりを撫でてやれば、嬉しそうに目を細めた。
気持ちがいいらしい。
今日は寝るまでテュランのそばにいてやろうかなー。
そんなことを思って、近くに椅子を引いて持ってきて腰をおろした。
今夜も月が出ていて、夜空が明るい。
幾千の星達は、とても気持ちが良さそうに空を飛んでいるように見える。
「あれ?なまえさん、何してるんすか?」
後ろから声をかけられて振り返ると、馬の餌を入れた麻袋を持ったジャンがいた。
明日の朝の分の餌を今のうちに持っていくように先輩兵士に頼まれたらしい。
簡単に言えば、使われた、ということだろう。
面倒くさそうな顔で教えてくれた。
「わざわざ、こんな時間に馬に会いに来てやるなんて、優しいっすね。」
麻袋を餌庫に持って行ったあと、ジャンは私の隣に椅子を持ってきて座った。
ジャンの愛馬が、テュランの隣にいるスマートな顔をしたこげ茶色の馬なのだそうだ。
「テュランね。一日一回は会わないとなんだか寂しくて。」
「へぇ~、そんなもんですかねぇ。」
「ジャンもあんまり放っておくと、壁外で置いてきぼりにされちゃうよ。」
「それは勘弁です。」
ジャンは苦笑すると、立ち上がって自分の愛馬の首のあたりを撫で始めた。
ちゃっかりしているところがジャンらしくて、私は心の中でこっそりと笑う。
「リヴァイ兵長と話してるところ、久しぶりに見ました。」
ジャンが愛馬の首辺りを撫でながら言う。
私に背中を向けたジャンは、ただひたすら愛馬を撫でている。
壁外で置いてきぼりにされるのは確かに怖いけれど、そんなに本気にされるとは思わなかった。
「今日、ハンジさんとモブリットさんにも言われた。
あと、ナナバさんもだ。」
私は苦笑しながら答える。
彼らの目には、私はどれだけ惨めに映っていたのだろう。
リヴァイ兵長に告白をしたーと私から聞いていたジャンの目には、本当に哀れな女に見えていたに違いない。
「リヴァイ兵長と付き合うことになったんですか?」
ジャンは、私に背を向けたまま訊ねた。
彼がこっちを向いていなくて、よかった。
私の顔は、笑えるくらいに悲しみに歪んでいただろうから。
「まさかっ!
私なんかと付き合うくらいなら、掃除禁止令出された方がマシだって言うよ、きっと。」
私から自嘲気味な笑いがこぼれる。
でもこれは、冗談ではない。
昨日までの冷たい背中は、ハッキリと私を拒絶していた。
「なんすか、それ。」
ようやく振り向いたジャンは、苦笑しながら言って、また私の隣に腰をおろした。
「でも、何かはあったんですよね?
嫌われたって、落ち込んでたから…。
いやっ、言いたくなかったらいいんすけど、どうしたのかなぁ~って気になって。」
ジャンが自分の首の後ろを触る。
私の顔を見づらいのか、ジャンは自分の靴の先を見つめていた。
そのおかげで、私も彼の顔を見て話さなくて良くて都合がいい。
真似をするわけではないけれど、両膝の上で結んだ自分の両手を眺めながら口を開いた。
「昨日の夜、お願いをしたの。」
「お願い、すか?」
「私の気持ちは忘れてください。リヴァイ兵長が迷惑なら私も忘れます。
だから、ただの上司と部下に戻りたいです。
それも無理なら、私はもう貴方の前から消えます。」
「…そう、言ったんですか?」
「そしたら、上司と部下に戻ってくれた。
本当に、私の気持ちが迷惑だったんだね。」
結んだ両手が滲んできそうになって、私は唇を噛んだ。
リヴァイ兵長に恋人がいるとかいないとか、そんなの関係なかった。
そもそも、好きになったらいけない人だったんだ。
だって、リヴァイ兵長がそれを望まないから。想うことすら、迷惑だと拒絶されてしまうくらいにー。
ジャンが、私の顔を覗き込む。
そして、心配そうにー。
一日一回は必ず会って、ブラッシングをしたり、話をしたりー、そうして愛馬と心を通わせるのはとても大切なことだとナナバさんも言っていた。
それに、今では一日一回会うのが日課になっていて、会えないとなんだか寂しいのだ。
思い上がりかもしれないけれど、テュランも私の姿を見つけると嬉しそうな顔をしてくれる気がする。
「今度のお休みは散歩にでも行こうか。」
テュランの鼻のあたりを撫でてやれば、嬉しそうに目を細めた。
気持ちがいいらしい。
今日は寝るまでテュランのそばにいてやろうかなー。
そんなことを思って、近くに椅子を引いて持ってきて腰をおろした。
今夜も月が出ていて、夜空が明るい。
幾千の星達は、とても気持ちが良さそうに空を飛んでいるように見える。
「あれ?なまえさん、何してるんすか?」
後ろから声をかけられて振り返ると、馬の餌を入れた麻袋を持ったジャンがいた。
明日の朝の分の餌を今のうちに持っていくように先輩兵士に頼まれたらしい。
簡単に言えば、使われた、ということだろう。
面倒くさそうな顔で教えてくれた。
「わざわざ、こんな時間に馬に会いに来てやるなんて、優しいっすね。」
麻袋を餌庫に持って行ったあと、ジャンは私の隣に椅子を持ってきて座った。
ジャンの愛馬が、テュランの隣にいるスマートな顔をしたこげ茶色の馬なのだそうだ。
「テュランね。一日一回は会わないとなんだか寂しくて。」
「へぇ~、そんなもんですかねぇ。」
「ジャンもあんまり放っておくと、壁外で置いてきぼりにされちゃうよ。」
「それは勘弁です。」
ジャンは苦笑すると、立ち上がって自分の愛馬の首のあたりを撫で始めた。
ちゃっかりしているところがジャンらしくて、私は心の中でこっそりと笑う。
「リヴァイ兵長と話してるところ、久しぶりに見ました。」
ジャンが愛馬の首辺りを撫でながら言う。
私に背中を向けたジャンは、ただひたすら愛馬を撫でている。
壁外で置いてきぼりにされるのは確かに怖いけれど、そんなに本気にされるとは思わなかった。
「今日、ハンジさんとモブリットさんにも言われた。
あと、ナナバさんもだ。」
私は苦笑しながら答える。
彼らの目には、私はどれだけ惨めに映っていたのだろう。
リヴァイ兵長に告白をしたーと私から聞いていたジャンの目には、本当に哀れな女に見えていたに違いない。
「リヴァイ兵長と付き合うことになったんですか?」
ジャンは、私に背を向けたまま訊ねた。
彼がこっちを向いていなくて、よかった。
私の顔は、笑えるくらいに悲しみに歪んでいただろうから。
「まさかっ!
私なんかと付き合うくらいなら、掃除禁止令出された方がマシだって言うよ、きっと。」
私から自嘲気味な笑いがこぼれる。
でもこれは、冗談ではない。
昨日までの冷たい背中は、ハッキリと私を拒絶していた。
「なんすか、それ。」
ようやく振り向いたジャンは、苦笑しながら言って、また私の隣に腰をおろした。
「でも、何かはあったんですよね?
嫌われたって、落ち込んでたから…。
いやっ、言いたくなかったらいいんすけど、どうしたのかなぁ~って気になって。」
ジャンが自分の首の後ろを触る。
私の顔を見づらいのか、ジャンは自分の靴の先を見つめていた。
そのおかげで、私も彼の顔を見て話さなくて良くて都合がいい。
真似をするわけではないけれど、両膝の上で結んだ自分の両手を眺めながら口を開いた。
「昨日の夜、お願いをしたの。」
「お願い、すか?」
「私の気持ちは忘れてください。リヴァイ兵長が迷惑なら私も忘れます。
だから、ただの上司と部下に戻りたいです。
それも無理なら、私はもう貴方の前から消えます。」
「…そう、言ったんですか?」
「そしたら、上司と部下に戻ってくれた。
本当に、私の気持ちが迷惑だったんだね。」
結んだ両手が滲んできそうになって、私は唇を噛んだ。
リヴァイ兵長に恋人がいるとかいないとか、そんなの関係なかった。
そもそも、好きになったらいけない人だったんだ。
だって、リヴァイ兵長がそれを望まないから。想うことすら、迷惑だと拒絶されてしまうくらいにー。
ジャンが、私の顔を覗き込む。
そして、心配そうにー。