◇第六十二話◇夜明け前の事件
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
犯人探しが始まった巨人研究所は、あっちからこっちから怒号が飛び交い、まるで蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。
その騒ぎの中央では、なまえを犯人だと決めつけるジーニー派となまえが犯人だとは信じないなまえ派が、喧嘩腰の言い合いを続けている。
「なまえがどんな思いでこの巨人の実験に参加してたか、アンタらは分かんないわけっ!?」
「知らないわよっ!!親友見捨てて逃げたくせに、悲劇のヒロインぶって
兵団マントに勝手に変なものつけるような女の考えなんてっ!?」
「はァッ!!てめぇッ!!変なもんってなんだっ!!
なまえさんとルルさんに謝れっ!クソ女っ!!
なまえさんのことそんな風に言うのは許さねぇからなッ!!」
「うっさいわねっ!新兵は黙ってなさいよっ!!」
「そうよっ!!」
「大切な親友の紋章つけたマントで、親友が命懸けで捕まえた巨人を殺すわけないじゃんっ!!
それに、どうして被験体を殺さなきゃいけないわけ!?」
「どうせ、今度の壁外任務に行くのが嫌だったんでしょ!!
被験体がいなくなれば実験も中止になるから、壁外任務もなくなると思ったんでしょ!!」
「そんなわけないでしょっ!!なまえは壁外任務のために必死に訓練してたんだから!!」
血気盛んなジャンも混ざってはいるが、ほとんど女同士の言い争いは、今にも髪を掴んでの取っ組み合いに発展しそうで怖い。
ブルブルッと震えたアルミンの肩を守るように、ミカサの手がそっと触れた。
「とにかく、私は見たのよっ!!なまえのそのマントが逃げていくのをねっ!!
目撃者がいるんだから、あの女が犯人で決まりでしょうっ!!」
ジーニーが、なまえを指さして叫んだ。
全員の視線が、なまえがアルミン達に向けている背中に向く。
なまえは、争いには決して参加せず、巨人研究所にやってきて被験体が殺されたと知ったときから、ただただ呆然と今はもう何も残っていない被験体の跡を眺めている。
その背中では、ジーニーが見たという二つの自由の翼が風に揺れていた。
誰も犯人の背中すら見ていない中で、確かに、ジーニーの目撃情報は重要な手がかりだった。
さらに、巨人研究所にやってきたときからなまえは立体起動装置を装備していた。
巨人を殺してきた帰りだと思われても仕方がないかもしれない。
でも、なまえが立体起動装置を装備していたのには、ちゃんと理由がある。
今度の壁外任務のために夜明け前から訓練場で自主練をしていたのだ。
立体起動装置の扱いが上手いジャンが指導者になって、どう動けば一番効率的か、足りない腕力でも重たい刃を落とせるか、を実演して教えてあげていた。
腕力が足りないアルミンにとっても、とても勉強になった。
そんなことを考えながらジャンが立体起動装置を扱っていたのには驚いたけれどー。
とにかく、そのこともジャンとアルミンから説明したのだが、ジーニーとその取りまきや、もともとなまえのことをよく思っていなかった数名の調査兵達は、仲間内で口裏を合わせたアリバイ工作だと信じてはくれないのだ。
「おい、何か言え。犯人にされたままでいいのか。」
リヴァイ兵長がなまえに声をかけると、その背中がビクリと上下に動いた。
そして、ゆっくりと振り向いたなまえの目は、壁外調査から帰ってきたときのあの死んだ目に似ていた。
途端に、シンと静まり返る巨人研究所で、なまえが口を開く。
「ルルを殺した巨人は、私が殺したー。」
なまえはそう言って、立体起動装置に装備してある超硬質スチールを抜き出す。
「ルルが命を懸けて捕まえた巨人を殺したヤツも、私が、殺すッ!」
超硬質スチールを構えて、地を這うような低い声で叫んだなまえの目は、本気だった。
本気で、人を殺すことを厭わない目だ。
頭がガンガンするほどに叫び続けていた調査兵達が、一様に口を噤んだ。
シン、と静まり返った中で、女同士の言い争いで震えてしまっていたアルミンにとって、そんななまえの姿は恐怖でしかなくて、思わず一歩、二歩、後ずさる。
最近、なまえに懐いている様子だったジャンでさえ、引きつった顔でかたまっていた。
「で、誰がこの馬鹿野郎が犯人だと思うのか、俺に教えてくれ。」
リヴァイは、なまえの殺気に怯える調査兵達に問うた。
誰も、何も言わない。いや、言えないのだ。
犯人が誰なのかは分からない。
ジーニーが嘘をついているのかも分からない。
でも、ここで真実はただひとつ。
なまえは、被験体を殺した人間を殺したいほど憎んでいる。
「なまえ、殺されては困る。
我々は、こんなバカげたことをした理由を知らないといけない。」
エルヴィンがなまえに言った。
ピクリー、となまえの片眉が動く。
「…よかった。
私も…、殺すのはちょっと、怖いなって思っていたところです。」
怖い顔をしたまま真面目になまえが言うもんだから、さっきまで悲愴な顔をしていたハンジが、ブッと吹き出した。
その騒ぎの中央では、なまえを犯人だと決めつけるジーニー派となまえが犯人だとは信じないなまえ派が、喧嘩腰の言い合いを続けている。
「なまえがどんな思いでこの巨人の実験に参加してたか、アンタらは分かんないわけっ!?」
「知らないわよっ!!親友見捨てて逃げたくせに、悲劇のヒロインぶって
兵団マントに勝手に変なものつけるような女の考えなんてっ!?」
「はァッ!!てめぇッ!!変なもんってなんだっ!!
なまえさんとルルさんに謝れっ!クソ女っ!!
なまえさんのことそんな風に言うのは許さねぇからなッ!!」
「うっさいわねっ!新兵は黙ってなさいよっ!!」
「そうよっ!!」
「大切な親友の紋章つけたマントで、親友が命懸けで捕まえた巨人を殺すわけないじゃんっ!!
それに、どうして被験体を殺さなきゃいけないわけ!?」
「どうせ、今度の壁外任務に行くのが嫌だったんでしょ!!
被験体がいなくなれば実験も中止になるから、壁外任務もなくなると思ったんでしょ!!」
「そんなわけないでしょっ!!なまえは壁外任務のために必死に訓練してたんだから!!」
血気盛んなジャンも混ざってはいるが、ほとんど女同士の言い争いは、今にも髪を掴んでの取っ組み合いに発展しそうで怖い。
ブルブルッと震えたアルミンの肩を守るように、ミカサの手がそっと触れた。
「とにかく、私は見たのよっ!!なまえのそのマントが逃げていくのをねっ!!
目撃者がいるんだから、あの女が犯人で決まりでしょうっ!!」
ジーニーが、なまえを指さして叫んだ。
全員の視線が、なまえがアルミン達に向けている背中に向く。
なまえは、争いには決して参加せず、巨人研究所にやってきて被験体が殺されたと知ったときから、ただただ呆然と今はもう何も残っていない被験体の跡を眺めている。
その背中では、ジーニーが見たという二つの自由の翼が風に揺れていた。
誰も犯人の背中すら見ていない中で、確かに、ジーニーの目撃情報は重要な手がかりだった。
さらに、巨人研究所にやってきたときからなまえは立体起動装置を装備していた。
巨人を殺してきた帰りだと思われても仕方がないかもしれない。
でも、なまえが立体起動装置を装備していたのには、ちゃんと理由がある。
今度の壁外任務のために夜明け前から訓練場で自主練をしていたのだ。
立体起動装置の扱いが上手いジャンが指導者になって、どう動けば一番効率的か、足りない腕力でも重たい刃を落とせるか、を実演して教えてあげていた。
腕力が足りないアルミンにとっても、とても勉強になった。
そんなことを考えながらジャンが立体起動装置を扱っていたのには驚いたけれどー。
とにかく、そのこともジャンとアルミンから説明したのだが、ジーニーとその取りまきや、もともとなまえのことをよく思っていなかった数名の調査兵達は、仲間内で口裏を合わせたアリバイ工作だと信じてはくれないのだ。
「おい、何か言え。犯人にされたままでいいのか。」
リヴァイ兵長がなまえに声をかけると、その背中がビクリと上下に動いた。
そして、ゆっくりと振り向いたなまえの目は、壁外調査から帰ってきたときのあの死んだ目に似ていた。
途端に、シンと静まり返る巨人研究所で、なまえが口を開く。
「ルルを殺した巨人は、私が殺したー。」
なまえはそう言って、立体起動装置に装備してある超硬質スチールを抜き出す。
「ルルが命を懸けて捕まえた巨人を殺したヤツも、私が、殺すッ!」
超硬質スチールを構えて、地を這うような低い声で叫んだなまえの目は、本気だった。
本気で、人を殺すことを厭わない目だ。
頭がガンガンするほどに叫び続けていた調査兵達が、一様に口を噤んだ。
シン、と静まり返った中で、女同士の言い争いで震えてしまっていたアルミンにとって、そんななまえの姿は恐怖でしかなくて、思わず一歩、二歩、後ずさる。
最近、なまえに懐いている様子だったジャンでさえ、引きつった顔でかたまっていた。
「で、誰がこの馬鹿野郎が犯人だと思うのか、俺に教えてくれ。」
リヴァイは、なまえの殺気に怯える調査兵達に問うた。
誰も、何も言わない。いや、言えないのだ。
犯人が誰なのかは分からない。
ジーニーが嘘をついているのかも分からない。
でも、ここで真実はただひとつ。
なまえは、被験体を殺した人間を殺したいほど憎んでいる。
「なまえ、殺されては困る。
我々は、こんなバカげたことをした理由を知らないといけない。」
エルヴィンがなまえに言った。
ピクリー、となまえの片眉が動く。
「…よかった。
私も…、殺すのはちょっと、怖いなって思っていたところです。」
怖い顔をしたまま真面目になまえが言うもんだから、さっきまで悲愴な顔をしていたハンジが、ブッと吹き出した。