◇第六十話◇星のない夜
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なまえ!!起きて!!ー。
私の耳元で、ルルの声が聞こえた気がした。
そういえば、壁外調査当日の朝もルルがそうやって起こしてくれて、私を悪夢から救ってくれたなー。
そっと目を開けたら、ぼんやりとした視界の中で談話室を出て行く兵団服がチラリと見えた。
「んー…。」
窓にもたれかかっていた身体をゆっくりと起こした私は、肩から掛けられているブランケットに両手が隠れていることに気が付いた。
眠ってしまう前に私が握りしめていた兵団マントは、座っている本棚の上に綺麗に畳んでおいてある。
(…ルル?)
起きる前に聞こえてきた気がするルルの仕業かと思った。
でも、まさか、もし本当に隣にいつも彼女がいてくれるのだとしても、ブランケットをかけたり、兵団マントを畳んだりできるわけない。
「紅茶?」
兵団マントの隣にティーカップが置いてあることに気が付いた。
持ってみるとまだ温かくて、僅かに湯気が出ている。
ふわりと私の鼻に届く甘い香り。
私は、この紅茶の香りを知っていたー。
「…!」
本棚から飛び降りて、走った。
寝起きに見た気がする、談話室から出て行く兵団服の後ろ姿。
ジャケットがチラリと見えただけだけれど、もしかしたらー。
もしかしたらー。
それは、希望的観測なのかもしれない。
でも、違うかもしれない。違うかもしれないからー。
「リヴァイ兵長っ!」
談話室から出てすぐ、私は名前を叫んだ。
まだいるのなら、聞こえるかもしれないと思って。
でも、私の声が響いた静かな廊下で、驚いた顔をしてこちらを見たのはナナバさんだった。
「どうした、そんなに慌てて?」
「いえ…、あの…っ。リヴァイ兵長、見てないですか?
談話室から出てきませんでしたかっ?」
ナナバさんに、必死に訊ねた。
そうであってくれーと願っていただけなのだと思う。
私は、いまだに、何を期待しているのだろう。
馬鹿だな。
だから、「見てないよ。」というナナバさんの言葉に、余計に傷つくことになるのだ。
本当に、馬鹿だ。
「そう、ですか…。」
「何か用だったの?
リヴァイなら、明日は朝からストヘス区で会議だから
もう兵舎は出てると思うけど。」
「…いえ、何でもないんです。
あの、他に誰かとすれ違ったりしませんでした?」
「誰かと?うーん、さっき、ミケになら会ったけど。」
「そうですか。分かりました。ありがとうございます。」
ナナバさんは不思議そうに首を傾げていたけれど、頭を下げた私は、また談話室に戻った。
そして、さっきまでそうしていたみたいに、また本棚の上に座る。
いつの間にか、窓を濡らす雨は止んでいたようだ。
愚かな期待をしてしまった自分に思わず苦笑する。
でも、ナナバさんからミケ分隊長を見たと聞いて、少しスッキリした。
最近、何かと気に掛けてくれている気がするし、ミケ分隊長ならなんとなくわかる気がする。
周りをよく見ている人だからー。
まだほんのり温かいティーカップを両手でそっと持って、窓に寄り掛かる。
紅茶を口に運ぶと、甘くて苦い味が喉の奥から身体中に広がっていった。
「ルル、やっと星が見えたよ。」
夜空を覆っていた分厚い雲の切れ間に、小さな星がいくつか輝いているのが見えている。
私のこの想いも悲しみの雲が晴れて、いつか、ほんの小さくても光が見える日は来るのだろうかー。
私の耳元で、ルルの声が聞こえた気がした。
そういえば、壁外調査当日の朝もルルがそうやって起こしてくれて、私を悪夢から救ってくれたなー。
そっと目を開けたら、ぼんやりとした視界の中で談話室を出て行く兵団服がチラリと見えた。
「んー…。」
窓にもたれかかっていた身体をゆっくりと起こした私は、肩から掛けられているブランケットに両手が隠れていることに気が付いた。
眠ってしまう前に私が握りしめていた兵団マントは、座っている本棚の上に綺麗に畳んでおいてある。
(…ルル?)
起きる前に聞こえてきた気がするルルの仕業かと思った。
でも、まさか、もし本当に隣にいつも彼女がいてくれるのだとしても、ブランケットをかけたり、兵団マントを畳んだりできるわけない。
「紅茶?」
兵団マントの隣にティーカップが置いてあることに気が付いた。
持ってみるとまだ温かくて、僅かに湯気が出ている。
ふわりと私の鼻に届く甘い香り。
私は、この紅茶の香りを知っていたー。
「…!」
本棚から飛び降りて、走った。
寝起きに見た気がする、談話室から出て行く兵団服の後ろ姿。
ジャケットがチラリと見えただけだけれど、もしかしたらー。
もしかしたらー。
それは、希望的観測なのかもしれない。
でも、違うかもしれない。違うかもしれないからー。
「リヴァイ兵長っ!」
談話室から出てすぐ、私は名前を叫んだ。
まだいるのなら、聞こえるかもしれないと思って。
でも、私の声が響いた静かな廊下で、驚いた顔をしてこちらを見たのはナナバさんだった。
「どうした、そんなに慌てて?」
「いえ…、あの…っ。リヴァイ兵長、見てないですか?
談話室から出てきませんでしたかっ?」
ナナバさんに、必死に訊ねた。
そうであってくれーと願っていただけなのだと思う。
私は、いまだに、何を期待しているのだろう。
馬鹿だな。
だから、「見てないよ。」というナナバさんの言葉に、余計に傷つくことになるのだ。
本当に、馬鹿だ。
「そう、ですか…。」
「何か用だったの?
リヴァイなら、明日は朝からストヘス区で会議だから
もう兵舎は出てると思うけど。」
「…いえ、何でもないんです。
あの、他に誰かとすれ違ったりしませんでした?」
「誰かと?うーん、さっき、ミケになら会ったけど。」
「そうですか。分かりました。ありがとうございます。」
ナナバさんは不思議そうに首を傾げていたけれど、頭を下げた私は、また談話室に戻った。
そして、さっきまでそうしていたみたいに、また本棚の上に座る。
いつの間にか、窓を濡らす雨は止んでいたようだ。
愚かな期待をしてしまった自分に思わず苦笑する。
でも、ナナバさんからミケ分隊長を見たと聞いて、少しスッキリした。
最近、何かと気に掛けてくれている気がするし、ミケ分隊長ならなんとなくわかる気がする。
周りをよく見ている人だからー。
まだほんのり温かいティーカップを両手でそっと持って、窓に寄り掛かる。
紅茶を口に運ぶと、甘くて苦い味が喉の奥から身体中に広がっていった。
「ルル、やっと星が見えたよ。」
夜空を覆っていた分厚い雲の切れ間に、小さな星がいくつか輝いているのが見えている。
私のこの想いも悲しみの雲が晴れて、いつか、ほんの小さくても光が見える日は来るのだろうかー。