◇第六十話◇星のない夜
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真夜中の談話室も慣れてしまった。
次第に弱まってきた雨は、夜の談話室を静かな場所に変えていく。
窓辺に置いてある背の低い本棚の上に座って、私は雨の夜を眺める。
今夜も星は見えない。
でもー。
(ねぇ、ルル。今夜は、一緒に泣いてくれる?)
私は、親友の生きた証とひとつになった兵団マントを抱きしめた。
リヴァイ兵長から避けられるようになってから、星を見ては慰められていた私は、ここ最近続いた雨のせいでとても孤独だった。
でも、もう大丈夫。
星は見えなくても、雨でも、昼でも、夜でも、私はいつもルルと一緒だ。
こうして、目に見えるカタチがあるというのは、こんなにも気持ちを落ち着かせてくれるものなのかー。
ミケ分隊長に感謝してもし足りないくらいだ。
私の涙で少し濡れた兵団マントを苦笑いで、膝元に置いて、私は窓に頭を預けた。
雨を受け止める窓はとても冷たくて、小さく身体が震えた。
なんとなく見上げた夜空は、相変わらず真っ黒で星ひとつ見えない。
(ねぇ、誤魔化しても知ってたんだよ。好きな人いたでしょ?)
私の恋の応援ばかりしてくれていたルル。
時々、頬を赤くして部屋にやってきたり、ソワソワしていたり、そうかと思ったらなんだか悲しそうにしているときもあった。
私も、同じ顔をしていたから、それがどういう感情からくるものなのかすぐにわかった。
でも、いつもルルははぐらかすばかりで、絶対に教えてはくれなかった。
だからいつからか、私も聞けなくなった。
心を開いてもらえていないみたいで、本当は少し、いや、とても寂しかったのだ。
いつだって私の味方だと笑ってくれるルルが、どうしてそれだけは私に嘘を吐くのだろうって、寂しくてたまらなかった。
でも、ルルの手紙を読んで、ハンジさんからルルの覚悟を聞いて、分かった気がする。
(強いね、ルルこそ優しすぎるよ。)
好きな人に気持ちを伝えないー、彼女はそう決めていたのだろう。
ペトラが前に言っていた。
重荷を背負わせてしまうから、と気持ちを胸にしまう兵士も少なくないのだと。
彼女もそんな兵士の中のひとりだったのだろう。
気持ちを言葉にしてしまったら溢れてしまいそうだったから、彼女はきっとひとりで大切な人を想う尊い気持ちを抱えて、ひとりで戦ってー。
(ルルに想われてる人はとても幸せだったと思うよ。)
もしもその気持ちが伝わっていなくても、私の知らないところでルルの恋物語があって、彼女ならきっとその人のために優しさを届け続けていたのだろう。
それなのに私は、勝手に傷ついて、あんな風に気持ちを伝えて、そして、優しいリヴァイ兵長を私の前から消してしまった。
(早く、早く…。)
早く忘れないといけない。
いつまでも引きずっていたら、リヴァイ兵長にとっても重たいだけだ。
勝手に好きになって、勝手に傷ついて、勝手に嫌われるようなことをしてしまった私に、最後に唯一好きな人に出来ることは、忘れてしまうこと。
それしか、ないのだからー。
「声が…、聞きたいなぁ…。」
ポツリ、と漏れた私の心の声。
呆れた声が、怒った声が、冗談だって真面目に言う声が、優しい、声が。
私の名前を呼ぶ、リヴァイ兵長の声が、聞きたいー。
次第に弱まってきた雨は、夜の談話室を静かな場所に変えていく。
窓辺に置いてある背の低い本棚の上に座って、私は雨の夜を眺める。
今夜も星は見えない。
でもー。
(ねぇ、ルル。今夜は、一緒に泣いてくれる?)
私は、親友の生きた証とひとつになった兵団マントを抱きしめた。
リヴァイ兵長から避けられるようになってから、星を見ては慰められていた私は、ここ最近続いた雨のせいでとても孤独だった。
でも、もう大丈夫。
星は見えなくても、雨でも、昼でも、夜でも、私はいつもルルと一緒だ。
こうして、目に見えるカタチがあるというのは、こんなにも気持ちを落ち着かせてくれるものなのかー。
ミケ分隊長に感謝してもし足りないくらいだ。
私の涙で少し濡れた兵団マントを苦笑いで、膝元に置いて、私は窓に頭を預けた。
雨を受け止める窓はとても冷たくて、小さく身体が震えた。
なんとなく見上げた夜空は、相変わらず真っ黒で星ひとつ見えない。
(ねぇ、誤魔化しても知ってたんだよ。好きな人いたでしょ?)
私の恋の応援ばかりしてくれていたルル。
時々、頬を赤くして部屋にやってきたり、ソワソワしていたり、そうかと思ったらなんだか悲しそうにしているときもあった。
私も、同じ顔をしていたから、それがどういう感情からくるものなのかすぐにわかった。
でも、いつもルルははぐらかすばかりで、絶対に教えてはくれなかった。
だからいつからか、私も聞けなくなった。
心を開いてもらえていないみたいで、本当は少し、いや、とても寂しかったのだ。
いつだって私の味方だと笑ってくれるルルが、どうしてそれだけは私に嘘を吐くのだろうって、寂しくてたまらなかった。
でも、ルルの手紙を読んで、ハンジさんからルルの覚悟を聞いて、分かった気がする。
(強いね、ルルこそ優しすぎるよ。)
好きな人に気持ちを伝えないー、彼女はそう決めていたのだろう。
ペトラが前に言っていた。
重荷を背負わせてしまうから、と気持ちを胸にしまう兵士も少なくないのだと。
彼女もそんな兵士の中のひとりだったのだろう。
気持ちを言葉にしてしまったら溢れてしまいそうだったから、彼女はきっとひとりで大切な人を想う尊い気持ちを抱えて、ひとりで戦ってー。
(ルルに想われてる人はとても幸せだったと思うよ。)
もしもその気持ちが伝わっていなくても、私の知らないところでルルの恋物語があって、彼女ならきっとその人のために優しさを届け続けていたのだろう。
それなのに私は、勝手に傷ついて、あんな風に気持ちを伝えて、そして、優しいリヴァイ兵長を私の前から消してしまった。
(早く、早く…。)
早く忘れないといけない。
いつまでも引きずっていたら、リヴァイ兵長にとっても重たいだけだ。
勝手に好きになって、勝手に傷ついて、勝手に嫌われるようなことをしてしまった私に、最後に唯一好きな人に出来ることは、忘れてしまうこと。
それしか、ないのだからー。
「声が…、聞きたいなぁ…。」
ポツリ、と漏れた私の心の声。
呆れた声が、怒った声が、冗談だって真面目に言う声が、優しい、声が。
私の名前を呼ぶ、リヴァイ兵長の声が、聞きたいー。