◇第五十六話◇不穏のはじまり(上)
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ここ最近の私は、夕食の後は図書室にこもって巨人についての資料と睨めっこしながら、巨人についての知識を増やすことに時間を費やしていた。
ハンジ班による巨人実験が再開したからその予習と、何もすることもなく部屋にいると余計なことを考えてしまうから、勉強でもしている方が気が楽でいいのだ。
「今晩は。」
「今夜も勉強か?熱心だな。」
ノートにペンを走らせている私に声をかけてきたのは、今夜もベルトルトとライナーだった。
「明日からはいよいよ新しい実験が始まるからね。」
「新しい実験?」
「どんなことするんだ?」
ライナーとベルトルトは、興味を持ったのかテーブルを挟んで椅子に腰をおろした。
この2人は、巨人という怪物について本当に勉強熱心だと思う。それこそ、失恋の痛手を忘れるためなんて不謹慎な理由の綿際なんかよりよっぽどしっかりしている。
「私もよくわからないんだけど、
イルゼ・ラングナーって調査兵が遺した戦記にー。」
「なまえーーっ!いるーーっ?!
ちょっと今から手伝ってもらいたいことがあるんだけど、来てくれないかー?」
図書室の入口から、大きな声でハンジさんが叫ぶ。
一応、入口の扉を開けて一番最初に見える壁の貼紙に『静かにしましょう。』と書いているのだけれど、分隊長が堂々と無視らしい。
「はーいっ!今行きますっ!!
-ごめん、また続きは今度ね。」
私は、テーブルに散らばる資料やノート、ペンを適当にまとめると入口に走った。
貼紙には私語についての文面の他に『走らないようにしましょう。』とまるで子供に言うような文字まであって、よく調査兵達が図書室で走るバカはいないと言っているのだが、ここにいたらしい。
私もハンジさんのことをとやかく言う権利はないようだ。
「どうする、ライナー。新しい実験が始まってしまうよ。」
「あぁ…、ハンジ分隊長のことだ。エレンの巨人化と無垢の巨人の共通点に気づき始めるはずだ。
それに、イルゼ・ラングナーという調査兵が遺した戦記も気になるな。」
「ハンジ分隊長が持ってるのかな?」
「さぁな。とりあえず、俺達はもう調査兵だ。下手に動いて怪しまれてもマズい。
アニがなまえに会いに来る日まで待つしかねぇ。」
「そうだね…!」
誰もいなくなった図書室で、難しい顔のベルトルトとライナーが不穏な会話を繰り返していたことを、調査兵団の兵士達はまだ誰も知らない。
ハンジ班による巨人実験が再開したからその予習と、何もすることもなく部屋にいると余計なことを考えてしまうから、勉強でもしている方が気が楽でいいのだ。
「今晩は。」
「今夜も勉強か?熱心だな。」
ノートにペンを走らせている私に声をかけてきたのは、今夜もベルトルトとライナーだった。
「明日からはいよいよ新しい実験が始まるからね。」
「新しい実験?」
「どんなことするんだ?」
ライナーとベルトルトは、興味を持ったのかテーブルを挟んで椅子に腰をおろした。
この2人は、巨人という怪物について本当に勉強熱心だと思う。それこそ、失恋の痛手を忘れるためなんて不謹慎な理由の綿際なんかよりよっぽどしっかりしている。
「私もよくわからないんだけど、
イルゼ・ラングナーって調査兵が遺した戦記にー。」
「なまえーーっ!いるーーっ?!
ちょっと今から手伝ってもらいたいことがあるんだけど、来てくれないかー?」
図書室の入口から、大きな声でハンジさんが叫ぶ。
一応、入口の扉を開けて一番最初に見える壁の貼紙に『静かにしましょう。』と書いているのだけれど、分隊長が堂々と無視らしい。
「はーいっ!今行きますっ!!
-ごめん、また続きは今度ね。」
私は、テーブルに散らばる資料やノート、ペンを適当にまとめると入口に走った。
貼紙には私語についての文面の他に『走らないようにしましょう。』とまるで子供に言うような文字まであって、よく調査兵達が図書室で走るバカはいないと言っているのだが、ここにいたらしい。
私もハンジさんのことをとやかく言う権利はないようだ。
「どうする、ライナー。新しい実験が始まってしまうよ。」
「あぁ…、ハンジ分隊長のことだ。エレンの巨人化と無垢の巨人の共通点に気づき始めるはずだ。
それに、イルゼ・ラングナーという調査兵が遺した戦記も気になるな。」
「ハンジ分隊長が持ってるのかな?」
「さぁな。とりあえず、俺達はもう調査兵だ。下手に動いて怪しまれてもマズい。
アニがなまえに会いに来る日まで待つしかねぇ。」
「そうだね…!」
誰もいなくなった図書室で、難しい顔のベルトルトとライナーが不穏な会話を繰り返していたことを、調査兵団の兵士達はまだ誰も知らない。