◇第五十三話◇気づかれない思惑
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久しぶりの非番の日、私はトロスト区に買い物に出ていた。
「ごめんね、ベルトルトに荷物持ちさせちゃって。」
「いいですよ。トロスト区の見回りっていっても特にすることないですから。」
「そうだな。それに、女性に重たい荷物を持たせないのも兵士の仕事だ。
偶然、なまえの困ってるところに出くわせてよかったな。」
ライナーはそう言うけれど、その兵士である私が彼らに助けられているとは、申し訳ない気持ちになる。
でも、恐縮する私の隣で、林檎をこれでもかというほど詰め込んだ紙袋を涼しい顔で抱えるベルトルトが、優しく微笑む。
非番の前日、つまり昨日だが、待ちに待った給料日だった。
テュランとの約束を守るために林檎を買いに来た私が、フラフラと重たい紙袋を抱えていたところに、今日はトロスト区の見回り仕事だったらしいベルトルトとライナーが偶然現れたのだ。
そして、荷物持ちをかって出てくれたことで、こうして重たい紙袋がベルトルトの腕の中にあるというわけだ。
あの図書室で本を探してもらって以来、なぜかベルトルトに懐かれている気がする。
自意識過剰か、勘違いかとも思ったけれど、こういう偶然が最近すごく多いのは事実だ。
食事室でも必ずと言っていいほどベルトルトと同じテーブルになるし、訓練をしていたら指導してほしいとやってきたりもする。それだけじゃない。他にもちょっとした生活の一コマに、気づいたらベルトルトがいたりするのだ。
まぁ、必ずそこにはライナーも一緒にいるのだけれど。
(偶然でもいいから、これくらいリヴァイ兵長と会えたら嬉しいんだけどなぁ。)
せっかく手伝ってくれている彼らの隣で恋する人を思い出す私は、彼らと何でもない話をしながら兵舎を目指す。
「そういえば、なまえはハンジ分隊長のところで巨人の実験しているんだったな。
大変なんじゃないか?」
ライナーが思い出したように言った。
「ハンジさんが興奮しちゃって、それは鎮めるのは大変かな。」
痛覚実験のときに、泣きながら巨人に槍を刺していたハンジさんを思い出して苦笑する。
確かに、彼らはとても痛そうにしていた。
彼らには痛みというのがあるようだった。
でも、それは人間も同じだ。
彼らに命を踏みにじられた人間は、心も痛んでいるのだ。
理性のない、彼らと違ってー。
「なまえさん?どうかしました?」
「え?あ、ううん、何でもないよ。
巨人のことをもっとちゃんと知らなくちゃなって思って。」
「そうですね。」
「敵を倒すには、知るのが一番早ぇからな。」
笑顔で決意を語る私に、ライナーとベルトルトも頷いていた。
兵士はみんな、同じ目標に向かって命をかけて戦っている。
だからこそ、絆はあっという間に強くなり、それが死への恐怖さえも乗り越えるほどの強さになるのだと思う。
兵士に大切なのはきっと、信頼関係だ。
「それで、新しい情報は出たのか?」
「ううん、まだ反復実験までしか終わってないの。
だから、みんなが知ってることしか分かってないよ。」
「新しい実験はいつ開始するんだ?」
「どうなんだろうね~。ソニーとビーンが、あ、巨人の名前なんだけどね。
その巨人に休憩も必要だからって、今は実験は休止中で、
代わりに、1日中、ハンジさんが観察してるよ。」
「観察って何してるんですか?」
「ソニーとビーンの前に座って、話しかけたり
眠たそうにするタイミングとか、本当に食事が必要ないのかとか見てるみたい。」
「観察か。」
ライナーとベルトルトが目配せしていることに、私は気づくことが出来なかった。
「ごめんね、ベルトルトに荷物持ちさせちゃって。」
「いいですよ。トロスト区の見回りっていっても特にすることないですから。」
「そうだな。それに、女性に重たい荷物を持たせないのも兵士の仕事だ。
偶然、なまえの困ってるところに出くわせてよかったな。」
ライナーはそう言うけれど、その兵士である私が彼らに助けられているとは、申し訳ない気持ちになる。
でも、恐縮する私の隣で、林檎をこれでもかというほど詰め込んだ紙袋を涼しい顔で抱えるベルトルトが、優しく微笑む。
非番の前日、つまり昨日だが、待ちに待った給料日だった。
テュランとの約束を守るために林檎を買いに来た私が、フラフラと重たい紙袋を抱えていたところに、今日はトロスト区の見回り仕事だったらしいベルトルトとライナーが偶然現れたのだ。
そして、荷物持ちをかって出てくれたことで、こうして重たい紙袋がベルトルトの腕の中にあるというわけだ。
あの図書室で本を探してもらって以来、なぜかベルトルトに懐かれている気がする。
自意識過剰か、勘違いかとも思ったけれど、こういう偶然が最近すごく多いのは事実だ。
食事室でも必ずと言っていいほどベルトルトと同じテーブルになるし、訓練をしていたら指導してほしいとやってきたりもする。それだけじゃない。他にもちょっとした生活の一コマに、気づいたらベルトルトがいたりするのだ。
まぁ、必ずそこにはライナーも一緒にいるのだけれど。
(偶然でもいいから、これくらいリヴァイ兵長と会えたら嬉しいんだけどなぁ。)
せっかく手伝ってくれている彼らの隣で恋する人を思い出す私は、彼らと何でもない話をしながら兵舎を目指す。
「そういえば、なまえはハンジ分隊長のところで巨人の実験しているんだったな。
大変なんじゃないか?」
ライナーが思い出したように言った。
「ハンジさんが興奮しちゃって、それは鎮めるのは大変かな。」
痛覚実験のときに、泣きながら巨人に槍を刺していたハンジさんを思い出して苦笑する。
確かに、彼らはとても痛そうにしていた。
彼らには痛みというのがあるようだった。
でも、それは人間も同じだ。
彼らに命を踏みにじられた人間は、心も痛んでいるのだ。
理性のない、彼らと違ってー。
「なまえさん?どうかしました?」
「え?あ、ううん、何でもないよ。
巨人のことをもっとちゃんと知らなくちゃなって思って。」
「そうですね。」
「敵を倒すには、知るのが一番早ぇからな。」
笑顔で決意を語る私に、ライナーとベルトルトも頷いていた。
兵士はみんな、同じ目標に向かって命をかけて戦っている。
だからこそ、絆はあっという間に強くなり、それが死への恐怖さえも乗り越えるほどの強さになるのだと思う。
兵士に大切なのはきっと、信頼関係だ。
「それで、新しい情報は出たのか?」
「ううん、まだ反復実験までしか終わってないの。
だから、みんなが知ってることしか分かってないよ。」
「新しい実験はいつ開始するんだ?」
「どうなんだろうね~。ソニーとビーンが、あ、巨人の名前なんだけどね。
その巨人に休憩も必要だからって、今は実験は休止中で、
代わりに、1日中、ハンジさんが観察してるよ。」
「観察って何してるんですか?」
「ソニーとビーンの前に座って、話しかけたり
眠たそうにするタイミングとか、本当に食事が必要ないのかとか見てるみたい。」
「観察か。」
ライナーとベルトルトが目配せしていることに、私は気づくことが出来なかった。