◇第五十一話◇アニと不思議な話
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夕日が出始めた頃、私とアニは憲兵団施設に戻ってきた。
だが、ザックレー総統の到着が遅れたとかでリヴァイ兵長の仕事が長引いているらしい。
一緒に来た上官を待つという私に付き合ってくれているアニと一緒に、ロビーのソファに並んで座った。
「楽しかったね。」
「アンタはね、私は疲れた。」
これ見よがしにため息を吐くアニを見て、クスリと笑う。
物欲はないのか、何も買わず私の買い物に付き合うだけだったけれど、一緒に買い物をしながら、アニの表情も少しずつ柔らかくなっていくのを感じていた。
「ストヘス区にある店のこと、よく知ってんだね。」
「あぁ…、昔の恋人がね、ストヘス区に住んでたの。
それで、時々、こっちでもデートさせてもらってたから。」
そこまで興味なさそうに訊ねたアニだったけれど、私の返答は意外だったのか少し驚いた様子で顔を見た。
「ここにいるのなんて、憲兵か貴族くらいじゃないの。」
「その貴族だったの。」
「へぇ~、アンタが貴族の恋人ね。」
「そんな感じするでしょ?」
「正直に言ってほしいの?」
「やめておく。」
顔の前で作ったバツに、アニが綺麗な形の唇で小さな笑みを作った。
少しずつだけれど、冗談を言い合えるようになってきた。
面倒くさいと言いながら、こうして一緒にいてくれるのが嬉しかった。
昔の恋の話や、アニの好きな人を聞き出そうとして失敗したりしたけれど、なかなかリヴァイ兵長の会議は終わらないようだった。
「アニのお父さんって素敵な話を知ってるんだね。
私、すごく嬉しかったよ。」
私は、カフェでの話を思い出して言った。
微笑む私を見て、アニはなぜかとても心苦しそうに目を反らした。
不思議に思った私に、アニは言う。
「そうかな。私は父親からその話を聞いた時、絶望したけどね。
私達はまた、同じ過ちを繰り返していくのかって。」
そう言ったアニの横顔は悲しそうで、私の心まで痛くなる。
この世に生を受けたものすべてが、何かしらの運命を背負って生まれてきているのなら、アニは一体、どんな運命を背負っているのだろう。
胸がギュッとされたみたいに苦しくなったから、私はアニをギュッと抱きしめた。
突然の私の行動に、驚いた顔をしたアニに私は言う。
「さっき、アニから話を聞いた時、私が嬉しかったのは、
死んでしまった友人にもう一度会えると思ったからだけじゃないよ。」
「他に嬉しいこと何かあった?」
「私達が何度も何度も命を繰り返している理由は、
もしかしたら、幸せになるためなんじゃないかって思ったからだよ。」
「…幸せに?」
生まれて、死んで、また生まれて、死んでー。
アニは、私達は同じ人生を何度も繰り返していると言った。
でも、なぜ私達はそんなことをしているのだろう。
何度生まれ変わっても、同じ過ちを繰り返し、傷つけあうばかりの争いをしてしまう愚かな人間は、本当に悲しい。
でも、人間は悲しいだけではないのだと、ルルが教えてくれた。
私達は、命がある限り、この世界を美しくしていく義務があるのだ。
でも、私達の一生では時間が足りない。
だから、何度も生まれ変わって、私達は世界を美しくするために戦う。
その度に、私達は間違ってしまって、過ちを犯してしまうけれど、今度こそは、今度こそはー、と。
「次、私達が新しい命をもらって生まれてくるときは、きっともっと美しい世界になっている。
そうなるように、同じ過ちを犯さないように、生きてる私達が精一杯頑張れば大丈夫。」
私はアニの髪を優しく撫でる。
そうだといいなー。
目を伏せたアニが、小さな声で漏らした心の声。
いつか、アニが心から笑える世界が来ますようにー。
それからも、思いついたことを話したり、今日の買い物で気になったもののことを話していると、ロビーの奥にある階段から降りてくるザックレー総統の姿を見つけた。
その後ろにリヴァイ兵長もいる。
そして、私に気づいたリヴァイ兵長が、小さく手を上げた。
私に向けられたその仕草が嬉しくて、思わず綻ばせて手を振り返した。
「終わったみたい。アニ、一緒に待っててくれてありがとうね。」
アニを見ると、ただジーッとリヴァイ兵長を見ていた。
いや、睨みつけていた、という表現の方が正しいかもしれない。
ただジッと、自分の仇みたいにリヴァイ兵長を見ている。
「アニ?どうしたの?」
「え?あー、なんでもないよ。」
すぐにいつもの何もかもに無関心という様子のアニに戻った。
さっきのあれは、何だったのだろう。
気になったけれど、こっちへ来いとばかりにリヴァイ兵長が目で指示をしてくる。
「それじゃあ、また遊びに来るね。」
「ねぇ、アンタの言ってた上官って調査兵団の兵士長のことだったんだ。」
アニが私を見て言った。
知らない人、みたいに見えてドキリとしながら答える。
「うん、そうだよ。」
「親しいの?」
「リヴァイ班と一緒に行動させてもらうことはあるけど
特別親しいわけじゃないかな。
どうして?」
「いや、別に。調査兵団でも特に有名な兵士長が一緒だとは思わなかったから。」
アニの声に抑揚はなく、心がこもっているようには思えなかったけれど、嘘をついているようにも見えなかった。
本当に、私と一緒に来た上官がリヴァイ兵長だとは思わなかっただけなのだろうか。
それに、さっき、リヴァイ兵長のことを睨んでいるように見えたのはー。
「なまえ!いつまでそこにいる!
置いて行かれたくなけりゃ、来い!」
「はいっ!」
ついに待ちきれず、リヴァイ兵長に大声で呼ばれてしまった。
「それじゃ、またね!」
「うん、気を付けて。」
「ありがとう。」
アニに手を振って背を向けた後、私は伝えたいことを思いついて振り向いた。
「あともうひとつ、嬉しかったのは
何度生まれ変わっても、アニに会えると思ったからだよ。」
「…急に、なに。」
「言いたいと思ったときに、ちゃんと伝えるようにしてるだけ。」
「あっそ。」
素っ気ない回答のアニは、照れ臭そうに頬を染めていた。
さっきまでのアニは何だったのか、分からない。
でも、私は、今のアニを信じたい。
そう決めたー。
だが、ザックレー総統の到着が遅れたとかでリヴァイ兵長の仕事が長引いているらしい。
一緒に来た上官を待つという私に付き合ってくれているアニと一緒に、ロビーのソファに並んで座った。
「楽しかったね。」
「アンタはね、私は疲れた。」
これ見よがしにため息を吐くアニを見て、クスリと笑う。
物欲はないのか、何も買わず私の買い物に付き合うだけだったけれど、一緒に買い物をしながら、アニの表情も少しずつ柔らかくなっていくのを感じていた。
「ストヘス区にある店のこと、よく知ってんだね。」
「あぁ…、昔の恋人がね、ストヘス区に住んでたの。
それで、時々、こっちでもデートさせてもらってたから。」
そこまで興味なさそうに訊ねたアニだったけれど、私の返答は意外だったのか少し驚いた様子で顔を見た。
「ここにいるのなんて、憲兵か貴族くらいじゃないの。」
「その貴族だったの。」
「へぇ~、アンタが貴族の恋人ね。」
「そんな感じするでしょ?」
「正直に言ってほしいの?」
「やめておく。」
顔の前で作ったバツに、アニが綺麗な形の唇で小さな笑みを作った。
少しずつだけれど、冗談を言い合えるようになってきた。
面倒くさいと言いながら、こうして一緒にいてくれるのが嬉しかった。
昔の恋の話や、アニの好きな人を聞き出そうとして失敗したりしたけれど、なかなかリヴァイ兵長の会議は終わらないようだった。
「アニのお父さんって素敵な話を知ってるんだね。
私、すごく嬉しかったよ。」
私は、カフェでの話を思い出して言った。
微笑む私を見て、アニはなぜかとても心苦しそうに目を反らした。
不思議に思った私に、アニは言う。
「そうかな。私は父親からその話を聞いた時、絶望したけどね。
私達はまた、同じ過ちを繰り返していくのかって。」
そう言ったアニの横顔は悲しそうで、私の心まで痛くなる。
この世に生を受けたものすべてが、何かしらの運命を背負って生まれてきているのなら、アニは一体、どんな運命を背負っているのだろう。
胸がギュッとされたみたいに苦しくなったから、私はアニをギュッと抱きしめた。
突然の私の行動に、驚いた顔をしたアニに私は言う。
「さっき、アニから話を聞いた時、私が嬉しかったのは、
死んでしまった友人にもう一度会えると思ったからだけじゃないよ。」
「他に嬉しいこと何かあった?」
「私達が何度も何度も命を繰り返している理由は、
もしかしたら、幸せになるためなんじゃないかって思ったからだよ。」
「…幸せに?」
生まれて、死んで、また生まれて、死んでー。
アニは、私達は同じ人生を何度も繰り返していると言った。
でも、なぜ私達はそんなことをしているのだろう。
何度生まれ変わっても、同じ過ちを繰り返し、傷つけあうばかりの争いをしてしまう愚かな人間は、本当に悲しい。
でも、人間は悲しいだけではないのだと、ルルが教えてくれた。
私達は、命がある限り、この世界を美しくしていく義務があるのだ。
でも、私達の一生では時間が足りない。
だから、何度も生まれ変わって、私達は世界を美しくするために戦う。
その度に、私達は間違ってしまって、過ちを犯してしまうけれど、今度こそは、今度こそはー、と。
「次、私達が新しい命をもらって生まれてくるときは、きっともっと美しい世界になっている。
そうなるように、同じ過ちを犯さないように、生きてる私達が精一杯頑張れば大丈夫。」
私はアニの髪を優しく撫でる。
そうだといいなー。
目を伏せたアニが、小さな声で漏らした心の声。
いつか、アニが心から笑える世界が来ますようにー。
それからも、思いついたことを話したり、今日の買い物で気になったもののことを話していると、ロビーの奥にある階段から降りてくるザックレー総統の姿を見つけた。
その後ろにリヴァイ兵長もいる。
そして、私に気づいたリヴァイ兵長が、小さく手を上げた。
私に向けられたその仕草が嬉しくて、思わず綻ばせて手を振り返した。
「終わったみたい。アニ、一緒に待っててくれてありがとうね。」
アニを見ると、ただジーッとリヴァイ兵長を見ていた。
いや、睨みつけていた、という表現の方が正しいかもしれない。
ただジッと、自分の仇みたいにリヴァイ兵長を見ている。
「アニ?どうしたの?」
「え?あー、なんでもないよ。」
すぐにいつもの何もかもに無関心という様子のアニに戻った。
さっきのあれは、何だったのだろう。
気になったけれど、こっちへ来いとばかりにリヴァイ兵長が目で指示をしてくる。
「それじゃあ、また遊びに来るね。」
「ねぇ、アンタの言ってた上官って調査兵団の兵士長のことだったんだ。」
アニが私を見て言った。
知らない人、みたいに見えてドキリとしながら答える。
「うん、そうだよ。」
「親しいの?」
「リヴァイ班と一緒に行動させてもらうことはあるけど
特別親しいわけじゃないかな。
どうして?」
「いや、別に。調査兵団でも特に有名な兵士長が一緒だとは思わなかったから。」
アニの声に抑揚はなく、心がこもっているようには思えなかったけれど、嘘をついているようにも見えなかった。
本当に、私と一緒に来た上官がリヴァイ兵長だとは思わなかっただけなのだろうか。
それに、さっき、リヴァイ兵長のことを睨んでいるように見えたのはー。
「なまえ!いつまでそこにいる!
置いて行かれたくなけりゃ、来い!」
「はいっ!」
ついに待ちきれず、リヴァイ兵長に大声で呼ばれてしまった。
「それじゃ、またね!」
「うん、気を付けて。」
「ありがとう。」
アニに手を振って背を向けた後、私は伝えたいことを思いついて振り向いた。
「あともうひとつ、嬉しかったのは
何度生まれ変わっても、アニに会えると思ったからだよ。」
「…急に、なに。」
「言いたいと思ったときに、ちゃんと伝えるようにしてるだけ。」
「あっそ。」
素っ気ない回答のアニは、照れ臭そうに頬を染めていた。
さっきまでのアニは何だったのか、分からない。
でも、私は、今のアニを信じたい。
そう決めたー。