◇第五十一話◇アニと不思議な話
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買い物を楽しんだ後は、カフェに入っていた。
紅茶はもちろん美味しいのだけれど、ホットミルクにフルーツを入れていたり、可愛くて美味しい飲み物が多くてお気に入りのカフェだ。
「なんか変な感じ。」
アニが、左手首を振って、つけたばかりの赤いブレスレットを揺らした。
注文した飲み物が来てからも、しきりに赤いブレスレットを気にしている。
あの雑貨屋で見つけた綺麗な赤いブレスレット。アニも綺麗だと思ってくれたそれを、お揃いでつけようと私がプレゼントさせてもらった。
なんだかんだ言いつつも、私が勝手にした約束を守ってくれたお礼と、私がただアニとの繋がりが欲しかったから。
今までアクセサリーを身に着けたことがないから、と困った顔をしたアニだけれど、ブレスレットを受け取ってすぐに手首につけてくれた。
やっぱり、アニは優しい娘だと思う。
「大丈夫、すぐにつけてることも忘れちゃうくらい慣れるよ。」
私も自分の左手首を振って、赤いブレスレットを振った。
「そうは思えないけど。」
アニは自分の左手首を飾る赤いブレスレットを真剣に眺めている。
思った通り、アニは赤が似合う。
十字架の飾りもアニのクールな雰囲気と合っていて、やっぱりこのブレスレットにしてよかったと思う。
しきりに腕を振って赤いブレスレットを揺らしたり、眺めたりした後、アニは紅茶の入ったティーカップを口に運びながら言った。
「調査兵団が帰還した後も、音沙汰ないから死んだのかと思ってたよ。」
アニの声は抑揚がなく、興味のない感想文を読んでいるようだった。
でも、憲兵団施設で私を見たときのアニは、死んだ人間を見たような顔で驚愕していた。
本当に、死んだと思っていたのだろう。
「死んだよ。一度、死んだの。」
私はティーカップに映る自分を眺める。
そこに映る私は、ティーカップに揺れてよく見えないけれど、でも、これだけは分かる。
今の私は、ルルが救ってくれた命で生きている。
これはそう、第二の人生なのだ。
もう二度と、後悔するような人生は送らない。絶対にー。
「…へぇ。」
アニはチラリと私を見た後にそう言って、紅茶を口に運んだ。
詳しく聞こうとしないところが、アニの優しさなのだろう。
それから、私達は他愛もない話をした。
主に104期の新兵達の話で、主にサシャとコニーの愉快な話だった。
訓練兵時代の彼らの様子を聞いたり、しばらく他愛もないというよりも、くだらない話を楽しんだ後、アニは不思議な話をし始めた。
「アンタさ、知ってる?」
「何を?」
「私達の世界は、これで終わりじゃないんだ。」
「終わりじゃない?」
「私達はみんな、死んだら最初からやり直してるんだよ。」
「生まれ変わるってこと?」
首を傾げる私に、アニは父親から聞いたという話を聞かせてくれた。
それはとても不思議な話。
私達は生まれたときから運命を背負っている。
それはみんなそれぞれ違うのだけれど、誰もがその運命と共に生まれ、戦い、そして死ぬ。
そうしたら、私達はまた、何もかもを忘れて生まれ直す。何度も、何度も、何度もー。
同じことを繰り返しているのだ、とアニは言った。
そしてー。
「だからさ、今私達が出逢ってる人ってのは、
生まれる前に会ったことがある人なんだ。
だから、アンタと私も知り合いだったかもしれないね。」
「そのときも私達は仲良しだったかな。」
「今だって、仲良しになったつもりはないんだけど。
アンタが勝手にそう呼んでたような気はするよ。」
素っ気なく言うアニがおかしくて、私はクスリと笑う。
「そうなると、私はあのバカ共に
何度もバカなことを見せられてるってことだね。最悪。」
「アハハ、それは良いねっ。」
面白そうに笑う私を呆れた顔で見ていたアニは、静かに、でも、私にちゃんと聞こえるように、言ってくれた。
「死んだ人にはさ、もう二度と会えなくなるわけじゃないんだ。
何度だって、嫌って程にまた会うんだよ。」
アニのまっすぐな瞳が、私を見つめる。
あぁ、私は気づいた。アニが本当に言いたかったこと。
突然、不思議な話をし始めた理由。
勘の鋭いアニは、私に詳しい話を聞かなくても、きっと分かったんだろう。
私の大切な人の命が、もうないこと。
その人に会いたくて、会いたくて、仕方がないこと。
「そっか。そうだといいな。」
すっかり冷めてしまったティーカップを両手で包む。
アニの優しさと親友たちへの恋しさに胸がつまりそうだった。
私達はまた、くだらないことで笑い合えるのだろうか。
たとえ、記憶がお互いにないのだとしても。
今まさに、私とアニが、こうしてお揃いのブレスレットを左腕に飾っているみたいに。
紅茶はもちろん美味しいのだけれど、ホットミルクにフルーツを入れていたり、可愛くて美味しい飲み物が多くてお気に入りのカフェだ。
「なんか変な感じ。」
アニが、左手首を振って、つけたばかりの赤いブレスレットを揺らした。
注文した飲み物が来てからも、しきりに赤いブレスレットを気にしている。
あの雑貨屋で見つけた綺麗な赤いブレスレット。アニも綺麗だと思ってくれたそれを、お揃いでつけようと私がプレゼントさせてもらった。
なんだかんだ言いつつも、私が勝手にした約束を守ってくれたお礼と、私がただアニとの繋がりが欲しかったから。
今までアクセサリーを身に着けたことがないから、と困った顔をしたアニだけれど、ブレスレットを受け取ってすぐに手首につけてくれた。
やっぱり、アニは優しい娘だと思う。
「大丈夫、すぐにつけてることも忘れちゃうくらい慣れるよ。」
私も自分の左手首を振って、赤いブレスレットを振った。
「そうは思えないけど。」
アニは自分の左手首を飾る赤いブレスレットを真剣に眺めている。
思った通り、アニは赤が似合う。
十字架の飾りもアニのクールな雰囲気と合っていて、やっぱりこのブレスレットにしてよかったと思う。
しきりに腕を振って赤いブレスレットを揺らしたり、眺めたりした後、アニは紅茶の入ったティーカップを口に運びながら言った。
「調査兵団が帰還した後も、音沙汰ないから死んだのかと思ってたよ。」
アニの声は抑揚がなく、興味のない感想文を読んでいるようだった。
でも、憲兵団施設で私を見たときのアニは、死んだ人間を見たような顔で驚愕していた。
本当に、死んだと思っていたのだろう。
「死んだよ。一度、死んだの。」
私はティーカップに映る自分を眺める。
そこに映る私は、ティーカップに揺れてよく見えないけれど、でも、これだけは分かる。
今の私は、ルルが救ってくれた命で生きている。
これはそう、第二の人生なのだ。
もう二度と、後悔するような人生は送らない。絶対にー。
「…へぇ。」
アニはチラリと私を見た後にそう言って、紅茶を口に運んだ。
詳しく聞こうとしないところが、アニの優しさなのだろう。
それから、私達は他愛もない話をした。
主に104期の新兵達の話で、主にサシャとコニーの愉快な話だった。
訓練兵時代の彼らの様子を聞いたり、しばらく他愛もないというよりも、くだらない話を楽しんだ後、アニは不思議な話をし始めた。
「アンタさ、知ってる?」
「何を?」
「私達の世界は、これで終わりじゃないんだ。」
「終わりじゃない?」
「私達はみんな、死んだら最初からやり直してるんだよ。」
「生まれ変わるってこと?」
首を傾げる私に、アニは父親から聞いたという話を聞かせてくれた。
それはとても不思議な話。
私達は生まれたときから運命を背負っている。
それはみんなそれぞれ違うのだけれど、誰もがその運命と共に生まれ、戦い、そして死ぬ。
そうしたら、私達はまた、何もかもを忘れて生まれ直す。何度も、何度も、何度もー。
同じことを繰り返しているのだ、とアニは言った。
そしてー。
「だからさ、今私達が出逢ってる人ってのは、
生まれる前に会ったことがある人なんだ。
だから、アンタと私も知り合いだったかもしれないね。」
「そのときも私達は仲良しだったかな。」
「今だって、仲良しになったつもりはないんだけど。
アンタが勝手にそう呼んでたような気はするよ。」
素っ気なく言うアニがおかしくて、私はクスリと笑う。
「そうなると、私はあのバカ共に
何度もバカなことを見せられてるってことだね。最悪。」
「アハハ、それは良いねっ。」
面白そうに笑う私を呆れた顔で見ていたアニは、静かに、でも、私にちゃんと聞こえるように、言ってくれた。
「死んだ人にはさ、もう二度と会えなくなるわけじゃないんだ。
何度だって、嫌って程にまた会うんだよ。」
アニのまっすぐな瞳が、私を見つめる。
あぁ、私は気づいた。アニが本当に言いたかったこと。
突然、不思議な話をし始めた理由。
勘の鋭いアニは、私に詳しい話を聞かなくても、きっと分かったんだろう。
私の大切な人の命が、もうないこと。
その人に会いたくて、会いたくて、仕方がないこと。
「そっか。そうだといいな。」
すっかり冷めてしまったティーカップを両手で包む。
アニの優しさと親友たちへの恋しさに胸がつまりそうだった。
私達はまた、くだらないことで笑い合えるのだろうか。
たとえ、記憶がお互いにないのだとしても。
今まさに、私とアニが、こうしてお揃いのブレスレットを左腕に飾っているみたいに。