◇第四十九話◇お手伝い
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休憩をもらえたのはいいけれど、話題がなかったらどうしよう。
紅茶を作りながらそんな不安もよぎりつつも、結局は、なんだかんだと話題は途切れることはなかった。
笑える話題を提供してくれるオルオに心から感謝だ。
まさか、彼がこんな形で私の恋を応援してくれているとは思わなかった。
「せっかくの休暇を俺の仕事で潰していいのか。
ここまで終われば、あとは俺一人で出来る。せっかくだ、明日からは休め。」
話題が途切れるのを待っていたように、リヴァイ兵長が言う。
「予定もないですし、兵舎に戻るまで好きなだけ家族の元で休みましたから、
私は大丈夫ですよ。リヴァイ兵長のご迷惑でなければ、
最後までお手伝いさせてください。」
私の返事を聞いたリヴァイ兵長は、少し考える素振りを見せたけれど、このまま最後まで仕事を手伝うことを許可してくれた。
本当に迷惑でなければいいのだけれどー。
「リヴァイ兵長の執務室に私がいると、他の仕事がしづらいでしょうし、
明日は1人で出来る書類仕事だけを私の部屋に持って行ってやりますよ。」
「必要ねぇ。隣で見てやった方が早ぇ。」
食い気味に拒否された。
リヴァイ兵長に書類を確認してもらいながらやった方が早いのは確かではある。
結局、明日も朝から書類仕事を一緒にするということに落ち着いた。
「リヴァイ兵長は、お休みの日にご実家に帰ったりするんですか?」
さっき、家族のことが少しだけ話題に出たことで、なんとなく思っただけだった。
リヴァイ兵長のことを少しでも知りたかった。
「帰れるような実家がねぇからなァ。強いて言うなら、地下街か。」
「それって、王都にある地下街のことですか?」
ウォール・シーナの地下には、遠い昔に巨人から逃れるために作った巨大な地下街があると聞いたことがある。結局、移住は中止されたため、残された廃墟はスラム化し王政からも見放された無法者たちの住処になっているらしいがー。
「街なんて呼べるような場所じゃねぇがな。」
リヴァイ兵長のそれは、冷たく突き放すような言い方だった。
そういえば、ペトラが、リヴァイ兵長は昔はゴロツキだったと言っていた。もしかしてー。
「もしかして、地下街で不良だったんですか?」
「あそこで不良なんて可愛いもんやってたら、生きていけねぇよ。」
「何をしてたかは聞かない方がいいですかね。」
「聞きてぇか?」
挑戦的な目でリヴァイ兵長が意地悪く言う。
「やめておきます。
でも、それがどうして、調査兵団の兵士長にー。」
兵士長になることになったのかー。
聞こうと思ったけれど、私はあえて口を噤んだ。
「やっぱり、言わなくていいです。」
「別に話せねぇようなことではねぇが?」
「でも、リヴァイ兵長がなんだか悲しそうな顔をしたから。」
言いながら、まるでリヴァイ兵長の悲しみがうつったみたいに、私の心の中も悲みが侵食していくようだった。
驚いた様子のリヴァイ兵長は、自分がどれだけ悲しそうな顔をしたのか自覚がなかったのだろう。
私が何を訊ねようとしているのか悟っただろう瞬間に、傷ついたような瞳でどこか遠くを見ていたなんて、気づいてもいないのだろう。
目の前にいる私じゃなくて、遠いどこを見ていたのだろう。
本当は知りたいけれど、私には、勝手にリヴァイ兵長の過去の扉を開ける権利なんかない。
でも、もしもー。
「悲しい想い出の中に、もし、リヴァイ兵長の大切な人がいるなら
いつか一緒に、優しい想い出に変えてくれる人に出逢ってくれたらいいな。」
心の中で思っていたつもりだった。
でも、声に出してしまっていたようだ。
リヴァイ兵長が驚きで目を見張っているのに気づいて、自分の失態を知った。
「えっと、紅茶のおかわり、要りますか?」
慌てて誤魔化したけれど、まだ入っているから必要ないと断られて撃沈してしまう。
勝手にリヴァイ兵長のこれからの出逢いにまで言及してしまうなんて、迷惑どころか、気持ちが悪いと思われてしまっただろうか。
恥ずかしいし、気まずいし、逃げたい。
私は紅茶を飲むふりをしてティーカップで顔を隠した。
「なまえは、」
リヴァイ兵長が口を開いたのに気づいて、ティーカップの陰からチラリと顔を見た。
私の名前を口にしたと思ったのだけれど、リヴァイ兵長は自分が持っているカップをジーッと見下ろしていて、これ以上口を開くような気配はなかった。
紅茶を作りながらそんな不安もよぎりつつも、結局は、なんだかんだと話題は途切れることはなかった。
笑える話題を提供してくれるオルオに心から感謝だ。
まさか、彼がこんな形で私の恋を応援してくれているとは思わなかった。
「せっかくの休暇を俺の仕事で潰していいのか。
ここまで終われば、あとは俺一人で出来る。せっかくだ、明日からは休め。」
話題が途切れるのを待っていたように、リヴァイ兵長が言う。
「予定もないですし、兵舎に戻るまで好きなだけ家族の元で休みましたから、
私は大丈夫ですよ。リヴァイ兵長のご迷惑でなければ、
最後までお手伝いさせてください。」
私の返事を聞いたリヴァイ兵長は、少し考える素振りを見せたけれど、このまま最後まで仕事を手伝うことを許可してくれた。
本当に迷惑でなければいいのだけれどー。
「リヴァイ兵長の執務室に私がいると、他の仕事がしづらいでしょうし、
明日は1人で出来る書類仕事だけを私の部屋に持って行ってやりますよ。」
「必要ねぇ。隣で見てやった方が早ぇ。」
食い気味に拒否された。
リヴァイ兵長に書類を確認してもらいながらやった方が早いのは確かではある。
結局、明日も朝から書類仕事を一緒にするということに落ち着いた。
「リヴァイ兵長は、お休みの日にご実家に帰ったりするんですか?」
さっき、家族のことが少しだけ話題に出たことで、なんとなく思っただけだった。
リヴァイ兵長のことを少しでも知りたかった。
「帰れるような実家がねぇからなァ。強いて言うなら、地下街か。」
「それって、王都にある地下街のことですか?」
ウォール・シーナの地下には、遠い昔に巨人から逃れるために作った巨大な地下街があると聞いたことがある。結局、移住は中止されたため、残された廃墟はスラム化し王政からも見放された無法者たちの住処になっているらしいがー。
「街なんて呼べるような場所じゃねぇがな。」
リヴァイ兵長のそれは、冷たく突き放すような言い方だった。
そういえば、ペトラが、リヴァイ兵長は昔はゴロツキだったと言っていた。もしかしてー。
「もしかして、地下街で不良だったんですか?」
「あそこで不良なんて可愛いもんやってたら、生きていけねぇよ。」
「何をしてたかは聞かない方がいいですかね。」
「聞きてぇか?」
挑戦的な目でリヴァイ兵長が意地悪く言う。
「やめておきます。
でも、それがどうして、調査兵団の兵士長にー。」
兵士長になることになったのかー。
聞こうと思ったけれど、私はあえて口を噤んだ。
「やっぱり、言わなくていいです。」
「別に話せねぇようなことではねぇが?」
「でも、リヴァイ兵長がなんだか悲しそうな顔をしたから。」
言いながら、まるでリヴァイ兵長の悲しみがうつったみたいに、私の心の中も悲みが侵食していくようだった。
驚いた様子のリヴァイ兵長は、自分がどれだけ悲しそうな顔をしたのか自覚がなかったのだろう。
私が何を訊ねようとしているのか悟っただろう瞬間に、傷ついたような瞳でどこか遠くを見ていたなんて、気づいてもいないのだろう。
目の前にいる私じゃなくて、遠いどこを見ていたのだろう。
本当は知りたいけれど、私には、勝手にリヴァイ兵長の過去の扉を開ける権利なんかない。
でも、もしもー。
「悲しい想い出の中に、もし、リヴァイ兵長の大切な人がいるなら
いつか一緒に、優しい想い出に変えてくれる人に出逢ってくれたらいいな。」
心の中で思っていたつもりだった。
でも、声に出してしまっていたようだ。
リヴァイ兵長が驚きで目を見張っているのに気づいて、自分の失態を知った。
「えっと、紅茶のおかわり、要りますか?」
慌てて誤魔化したけれど、まだ入っているから必要ないと断られて撃沈してしまう。
勝手にリヴァイ兵長のこれからの出逢いにまで言及してしまうなんて、迷惑どころか、気持ちが悪いと思われてしまっただろうか。
恥ずかしいし、気まずいし、逃げたい。
私は紅茶を飲むふりをしてティーカップで顔を隠した。
「なまえは、」
リヴァイ兵長が口を開いたのに気づいて、ティーカップの陰からチラリと顔を見た。
私の名前を口にしたと思ったのだけれど、リヴァイ兵長は自分が持っているカップをジーッと見下ろしていて、これ以上口を開くような気配はなかった。