◇第四十六話◇おかえり
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すっかり腰も落ち着いた私は、リヴァイ兵長と一緒に壁の上で夜の散歩をしていた。
相変わらず星は途方もなく遠いけれど、壁の上から眺めるトロスト区の夜の姿は、昼間のそれとは違っていて、私の親しむ良い故郷だった。
いつか、家族と一緒に戻ってきたいーそう思う。
「人類が巨人に勝ったら、この壁は壊されるんですかね。」
なんとなく歩き続けながら、私はふと疑問に思ったことを口にした。
「巨人が消えてもくせぇままの世界なら、壊しちまった方がせいせいするだろうな。」
星を見上げて歩きながら、リヴァイ兵長は答えた。
そうだ。壁はない方がいい。
だって、壁の外の空気はとても美味しいし、澄んでいて綺麗だ。
私達の自由を阻むのが壁なら、壊した方がいい。
「そしたら、こんなに近くで星を見上げることは、もう出来なくなりますね。」
立ち止まり、私は星空に手を伸ばす。
相変わらず、私と彼らの間には途方もないほどの距離があってー。
「でも、さっき、思ったんです。」
「なんだ。」
先を歩いていたリヴァイ兵長が立ち止まり、振り返った。
私は隣にいる誰かと手を繋ごうとしているみたいに、両手を広げた。
「私の大切な親友は、
ルルとヒルラは、ほら、ここにいる。」
私は、見えない彼女達の手をしっかり握りしめて、リヴァイ兵長に見せた。
リヴァイ兵長は面食らったようだったけれど、優しい声で「そうだな。」と言ってくれた。
彼にも彼女達が見えていたのなら、嬉しい。
そして、この壁がなくなって、自由な世界を人類が取り戻したとき、私の手を握ってくれるのがリヴァイ兵長だったならー。
言えないけれど、星を見上げる横顔を眺めながら、私はそんな勝手なことを願っていた。
私は、今度こそ、人類に心臓を捧げる覚悟で帰ってきたのだー。
短い人生を捧げる覚悟でー。
「夫婦喧嘩の仲直りごっこしましょうよっ。」
悪戯心と少しの期待を込めて、私は冗談っぽくリヴァイ兵長に提案した。
あからさまに嫌そうな顔をしたリヴァイ兵長は、返事すらする気がない様子でまた歩き出す。
「いいじゃないですか~っ。なかなかの演技力でしたよっ。」
リヴァイ兵長を追いかけて、隣に並ぶ。
言っておくが、これはお世辞でも嫌味でもなく、本心だ。
何て言ったって、私はまんまと騙された張本人だから。
「…お前もな。」
引くほど睨まれた。
やっぱり、心が折れそうだ。
この怖い顔に、練習の成果を見せろとせっつけたハンジさんを心から尊敬する。
でも、せっかく2人きりでチャンスなのだし、と少しの期待が私をそそのかす。
「ユミルが言ってましたよ。
フィナーレは、感動のキスシーンだったんだって。」
冗談めかして私が言うと、リヴァイ兵長が立ち止まってしまった。
調子に乗りすぎた。
本当に怒らせてしまったのかもしれない。
すぐに謝らないとー。
そう思って、開きかけた私の唇にリヴァイ兵長のそれが押し付けられた。
驚きすぎて、息が止まるどころか、心臓が止まった。
リヴァイ兵長が掴んでいる腕が熱を持って、身体中を痺れさせていく。
挑むような鋭い瞳が、目を見開く私が目を反らすのを許してくれない。
唇が重なっていたのは、ほんの1秒2秒とかそれくらいだったと思う。
掴んだ腕から突き放すように、リヴァイ兵長の唇は離れていった。
「これで満足か。クソ野郎。」
リヴァイ兵長はそう言って、私に背中を向けて、歩き出した。
でも、私はまだ動けなくて、死ぬほどツラいリヴァイ兵長の訓練が終わった後でもこんなことにはならないってくらいに心臓がバクバクいっていた。
やっぱり、私は調子に乗りすぎたようだ。
「あのっ、ごめんなさいっ。」
私はリヴァイ兵長の後ろ姿を追いかけた。
怒らせてしまった。
悪ふざけをしすぎて、嫌われてしまっていたらどうしよう。
好きな人とキスが出来たのに、ショックと不安で泣きそうだった。
「あぁ、確か、まだ続きがあったな。」
不意に、リヴァイ兵長が振り返る。
そして、不安で泣きそうな私に優しく言ったー。
「おかえり。」
私を見るリヴァイ兵長の目は優しくて、演技でも嘘でも何でもよくなった。
気づいたら、私はまた地面を蹴っていた。
「…っ!た、ただいま…!」
飛びつく私を、リヴァイ兵長は抱きしめ返してくれた。
私の心臓の鼓動は、きっと彼に伝わっている。
ルルが守って、リヴァイ兵長が繋いでくれた私の命の証だ。
綺麗な夜空の上から、ヒルラとルルがひやかして笑ってる声が、聞こえた。
相変わらず星は途方もなく遠いけれど、壁の上から眺めるトロスト区の夜の姿は、昼間のそれとは違っていて、私の親しむ良い故郷だった。
いつか、家族と一緒に戻ってきたいーそう思う。
「人類が巨人に勝ったら、この壁は壊されるんですかね。」
なんとなく歩き続けながら、私はふと疑問に思ったことを口にした。
「巨人が消えてもくせぇままの世界なら、壊しちまった方がせいせいするだろうな。」
星を見上げて歩きながら、リヴァイ兵長は答えた。
そうだ。壁はない方がいい。
だって、壁の外の空気はとても美味しいし、澄んでいて綺麗だ。
私達の自由を阻むのが壁なら、壊した方がいい。
「そしたら、こんなに近くで星を見上げることは、もう出来なくなりますね。」
立ち止まり、私は星空に手を伸ばす。
相変わらず、私と彼らの間には途方もないほどの距離があってー。
「でも、さっき、思ったんです。」
「なんだ。」
先を歩いていたリヴァイ兵長が立ち止まり、振り返った。
私は隣にいる誰かと手を繋ごうとしているみたいに、両手を広げた。
「私の大切な親友は、
ルルとヒルラは、ほら、ここにいる。」
私は、見えない彼女達の手をしっかり握りしめて、リヴァイ兵長に見せた。
リヴァイ兵長は面食らったようだったけれど、優しい声で「そうだな。」と言ってくれた。
彼にも彼女達が見えていたのなら、嬉しい。
そして、この壁がなくなって、自由な世界を人類が取り戻したとき、私の手を握ってくれるのがリヴァイ兵長だったならー。
言えないけれど、星を見上げる横顔を眺めながら、私はそんな勝手なことを願っていた。
私は、今度こそ、人類に心臓を捧げる覚悟で帰ってきたのだー。
短い人生を捧げる覚悟でー。
「夫婦喧嘩の仲直りごっこしましょうよっ。」
悪戯心と少しの期待を込めて、私は冗談っぽくリヴァイ兵長に提案した。
あからさまに嫌そうな顔をしたリヴァイ兵長は、返事すらする気がない様子でまた歩き出す。
「いいじゃないですか~っ。なかなかの演技力でしたよっ。」
リヴァイ兵長を追いかけて、隣に並ぶ。
言っておくが、これはお世辞でも嫌味でもなく、本心だ。
何て言ったって、私はまんまと騙された張本人だから。
「…お前もな。」
引くほど睨まれた。
やっぱり、心が折れそうだ。
この怖い顔に、練習の成果を見せろとせっつけたハンジさんを心から尊敬する。
でも、せっかく2人きりでチャンスなのだし、と少しの期待が私をそそのかす。
「ユミルが言ってましたよ。
フィナーレは、感動のキスシーンだったんだって。」
冗談めかして私が言うと、リヴァイ兵長が立ち止まってしまった。
調子に乗りすぎた。
本当に怒らせてしまったのかもしれない。
すぐに謝らないとー。
そう思って、開きかけた私の唇にリヴァイ兵長のそれが押し付けられた。
驚きすぎて、息が止まるどころか、心臓が止まった。
リヴァイ兵長が掴んでいる腕が熱を持って、身体中を痺れさせていく。
挑むような鋭い瞳が、目を見開く私が目を反らすのを許してくれない。
唇が重なっていたのは、ほんの1秒2秒とかそれくらいだったと思う。
掴んだ腕から突き放すように、リヴァイ兵長の唇は離れていった。
「これで満足か。クソ野郎。」
リヴァイ兵長はそう言って、私に背中を向けて、歩き出した。
でも、私はまだ動けなくて、死ぬほどツラいリヴァイ兵長の訓練が終わった後でもこんなことにはならないってくらいに心臓がバクバクいっていた。
やっぱり、私は調子に乗りすぎたようだ。
「あのっ、ごめんなさいっ。」
私はリヴァイ兵長の後ろ姿を追いかけた。
怒らせてしまった。
悪ふざけをしすぎて、嫌われてしまっていたらどうしよう。
好きな人とキスが出来たのに、ショックと不安で泣きそうだった。
「あぁ、確か、まだ続きがあったな。」
不意に、リヴァイ兵長が振り返る。
そして、不安で泣きそうな私に優しく言ったー。
「おかえり。」
私を見るリヴァイ兵長の目は優しくて、演技でも嘘でも何でもよくなった。
気づいたら、私はまた地面を蹴っていた。
「…っ!た、ただいま…!」
飛びつく私を、リヴァイ兵長は抱きしめ返してくれた。
私の心臓の鼓動は、きっと彼に伝わっている。
ルルが守って、リヴァイ兵長が繋いでくれた私の命の証だ。
綺麗な夜空の上から、ヒルラとルルがひやかして笑ってる声が、聞こえた。