◇第四十六話◇おかえり
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「本当にこの部屋を使っていいんですか?」
兵舎に戻ってきた私に用意されていたのは、申し訳ないほどに良い部屋だった。
驚いて尋ねる私に、ハンジさんは「もちろんだ。」と答える。
ここは宿舎の上階で、主に精鋭と呼ばれる兵士達が生活をしているフロアだ。
リヴァイ班のメンバーもこのフロアで、隣室はペトラの部屋だった。
この1つ上のフロアが最上階になり、エルヴィン団長やリヴァイ兵長、ハンジ分隊長らの幹部フロアになっている。
以前私が使っていたのは、主に新兵達が生活をしていた1階のフロアだった。
そこに比べて、だいぶ部屋が広くなって、窓からの景色も良くなった。
でも、元々の部屋で特に不便に思ったことはないし、新兵でしかも出戻りの私に、いきなりこんな良い部屋を用意されて恐縮しないわけがない。
「これからなまえには、精鋭と呼ばれる兵士達と一緒に
作戦に参加してもらうことも増えると思うから、
彼らと同じフロアに部屋を用意するようにってエルヴィンからの指示なんだよ。」
「…そういうことなら。」
仕方がないのだろう、私も受け入れる。
絶対に前の部屋がいいわけではないし、私だって広い部屋は嬉しい。
ベッドも前の部屋のものよりフカフカで気持ちよさそうだしー。
「それじゃ、私は今からエルヴィンに色々報告に行ってくるよ。」
「あ、じゃあ、私も一緒にー。」
「いいって、いいってっ。さっき、帰ってきたときに挨拶したわけだし。
なまえは部屋の片づけでもしてて。」
必要な説明を終え、欲しくもない大量の書類を渡した後、ハンジさんはそう言って、部屋を出て行った。
片付けといっても、初めて調査兵団の宿舎に来た時と同じで、洋服と少しの化粧品なんかがあるだけだった。
私の荷物よりも、強引に渡された書類の方が多いんじゃないかと思うくらいだ。
だから、片付けはすぐに終わってしまった。
(あのティーカップは、もう捨てられちゃったかな。)
最後まで悩んで、置いて出て行くと決めた天使の羽のティーカップ。
無人になった部屋に残っているだろうか。
捨てられているかもしれないが、もしかしたら、部屋には残っていなくても談話室のキッチンに誰かが持って行ってくれたかもしれない。
とにかく、まずは前の自分の部屋に行ってみようー。
そう決めて部屋を出て行こうとしたとき、誰かが扉をノックした。
「私、ペトラ。今いいかな?」
あとでちゃんと会わなくちゃーそう思っていた人物の訪問に、驚いた。
本当は、あのティーカップに勇気をもらってから会いに行くつもりだったから。
でも、それもきっと言い訳だ。
「どうぞ。ちょうど会いたいと思ってたの。」
ソファの上に散らばる書類を簡単に片づけてから扉を開けた私は、ペトラを部屋に招き入れる。
もっと早く来るつもりだったが、ハンジと今後のことにつて話しているのではないかと気を遣っていたらしい。
今後のことについての話もあったけれど、心が死んでいた私が結果的にサボってしまっていた壁外調査報告の書類の山が残っていて、その後始末の話が主だったと教えてやれば、可笑しそうに笑われた。
こっちは、笑いごとではないのだけれどー。
「これ、なまえの大切なものだと思って。
私が預かってたの。」
ソファに並んで座った後、ペトラが私に渡してきたのはあの天使の羽のティーカップだった。
以前、私の部屋で一緒に紅茶を飲んでいるとき、彼女にはこのティーカップがリヴァイ兵長からの入団祝いだということは話していた。
あのときは、私はまだリヴァイ兵長への気持ちがないのか、自覚していなかっただけなのか、特に何も思うことはなく紅茶の話題にした。
ペトラがどう思うのかなんて、考えもしないでー。
「ありがとう。なくなってたらどうしようと思ってたから、すごく嬉しい。
これは…、これは、私の大切な宝物だから。」
私の発言に、テーブルの上の書類に伸ばしていたペトラの手が、一瞬だけ動きを止めたように見えた。
でも、まるで何もなかったかのように書類を手にしたペトラは「それならよかった。」と微笑んだ。
「書類の内容は、私達リヴァイ班とあんまり変わらないんだね。
してたこともほとんど同じだもんね。
これなら、手伝ってあげられるよ。」
書類を見ながら話すペトラは、まるで、それ以上、ティーカップの話は聞きたくないと言っているように見えた。
私が緊張しているから、そう見えるだけかもしれない。
でも、今がチャンスだ。
ちゃんと言わないといけない。
ペトラは気持ちを教えてくれたのに、私だけ嘘をついたままなんてフェアじゃない。
それに、このままじゃ、私はリヴァイ兵長をまっすぐ好きでいられないー。
「私、ペトラに話したいことがあるの。」
ティーカップをテーブルの上に置いて、私は言った。
「ん~?なに?書類の分からないところなら、私がいつでもー。」
「書類の話じゃないの。それは…後で聞くかもしれないけど、
今はそうじゃなくて、どうしてもペトラに話さなくちゃいけないことがあるの。」
少しだけ、沈黙があった。
ペトラは、何か言うわけでも、私を見るわけでもなく、書類をただじーっと見ている。
でも、少し待っていれば、ペトラは書類をテーブルの上に置いた。
「改まっちゃって、どうしたの?
なんか、ビックリしちゃった。」
私を見たペトラは、いつもの優しい笑みを浮かべていた。
リヴァイ兵長への気持ちを話したら、この笑みは消えてしまうのだろうか。
嘘吐きーそう言って、冷たい瞳を向けられたらどうしよう。
怖くなって、無意識に握りしめていたスカートに皴が出来る。
「私…、リヴァイ兵長のことが好き、なの…。」
勇気を出して、告げた。
兵舎に戻ってきた私に用意されていたのは、申し訳ないほどに良い部屋だった。
驚いて尋ねる私に、ハンジさんは「もちろんだ。」と答える。
ここは宿舎の上階で、主に精鋭と呼ばれる兵士達が生活をしているフロアだ。
リヴァイ班のメンバーもこのフロアで、隣室はペトラの部屋だった。
この1つ上のフロアが最上階になり、エルヴィン団長やリヴァイ兵長、ハンジ分隊長らの幹部フロアになっている。
以前私が使っていたのは、主に新兵達が生活をしていた1階のフロアだった。
そこに比べて、だいぶ部屋が広くなって、窓からの景色も良くなった。
でも、元々の部屋で特に不便に思ったことはないし、新兵でしかも出戻りの私に、いきなりこんな良い部屋を用意されて恐縮しないわけがない。
「これからなまえには、精鋭と呼ばれる兵士達と一緒に
作戦に参加してもらうことも増えると思うから、
彼らと同じフロアに部屋を用意するようにってエルヴィンからの指示なんだよ。」
「…そういうことなら。」
仕方がないのだろう、私も受け入れる。
絶対に前の部屋がいいわけではないし、私だって広い部屋は嬉しい。
ベッドも前の部屋のものよりフカフカで気持ちよさそうだしー。
「それじゃ、私は今からエルヴィンに色々報告に行ってくるよ。」
「あ、じゃあ、私も一緒にー。」
「いいって、いいってっ。さっき、帰ってきたときに挨拶したわけだし。
なまえは部屋の片づけでもしてて。」
必要な説明を終え、欲しくもない大量の書類を渡した後、ハンジさんはそう言って、部屋を出て行った。
片付けといっても、初めて調査兵団の宿舎に来た時と同じで、洋服と少しの化粧品なんかがあるだけだった。
私の荷物よりも、強引に渡された書類の方が多いんじゃないかと思うくらいだ。
だから、片付けはすぐに終わってしまった。
(あのティーカップは、もう捨てられちゃったかな。)
最後まで悩んで、置いて出て行くと決めた天使の羽のティーカップ。
無人になった部屋に残っているだろうか。
捨てられているかもしれないが、もしかしたら、部屋には残っていなくても談話室のキッチンに誰かが持って行ってくれたかもしれない。
とにかく、まずは前の自分の部屋に行ってみようー。
そう決めて部屋を出て行こうとしたとき、誰かが扉をノックした。
「私、ペトラ。今いいかな?」
あとでちゃんと会わなくちゃーそう思っていた人物の訪問に、驚いた。
本当は、あのティーカップに勇気をもらってから会いに行くつもりだったから。
でも、それもきっと言い訳だ。
「どうぞ。ちょうど会いたいと思ってたの。」
ソファの上に散らばる書類を簡単に片づけてから扉を開けた私は、ペトラを部屋に招き入れる。
もっと早く来るつもりだったが、ハンジと今後のことにつて話しているのではないかと気を遣っていたらしい。
今後のことについての話もあったけれど、心が死んでいた私が結果的にサボってしまっていた壁外調査報告の書類の山が残っていて、その後始末の話が主だったと教えてやれば、可笑しそうに笑われた。
こっちは、笑いごとではないのだけれどー。
「これ、なまえの大切なものだと思って。
私が預かってたの。」
ソファに並んで座った後、ペトラが私に渡してきたのはあの天使の羽のティーカップだった。
以前、私の部屋で一緒に紅茶を飲んでいるとき、彼女にはこのティーカップがリヴァイ兵長からの入団祝いだということは話していた。
あのときは、私はまだリヴァイ兵長への気持ちがないのか、自覚していなかっただけなのか、特に何も思うことはなく紅茶の話題にした。
ペトラがどう思うのかなんて、考えもしないでー。
「ありがとう。なくなってたらどうしようと思ってたから、すごく嬉しい。
これは…、これは、私の大切な宝物だから。」
私の発言に、テーブルの上の書類に伸ばしていたペトラの手が、一瞬だけ動きを止めたように見えた。
でも、まるで何もなかったかのように書類を手にしたペトラは「それならよかった。」と微笑んだ。
「書類の内容は、私達リヴァイ班とあんまり変わらないんだね。
してたこともほとんど同じだもんね。
これなら、手伝ってあげられるよ。」
書類を見ながら話すペトラは、まるで、それ以上、ティーカップの話は聞きたくないと言っているように見えた。
私が緊張しているから、そう見えるだけかもしれない。
でも、今がチャンスだ。
ちゃんと言わないといけない。
ペトラは気持ちを教えてくれたのに、私だけ嘘をついたままなんてフェアじゃない。
それに、このままじゃ、私はリヴァイ兵長をまっすぐ好きでいられないー。
「私、ペトラに話したいことがあるの。」
ティーカップをテーブルの上に置いて、私は言った。
「ん~?なに?書類の分からないところなら、私がいつでもー。」
「書類の話じゃないの。それは…後で聞くかもしれないけど、
今はそうじゃなくて、どうしてもペトラに話さなくちゃいけないことがあるの。」
少しだけ、沈黙があった。
ペトラは、何か言うわけでも、私を見るわけでもなく、書類をただじーっと見ている。
でも、少し待っていれば、ペトラは書類をテーブルの上に置いた。
「改まっちゃって、どうしたの?
なんか、ビックリしちゃった。」
私を見たペトラは、いつもの優しい笑みを浮かべていた。
リヴァイ兵長への気持ちを話したら、この笑みは消えてしまうのだろうか。
嘘吐きーそう言って、冷たい瞳を向けられたらどうしよう。
怖くなって、無意識に握りしめていたスカートに皴が出来る。
「私…、リヴァイ兵長のことが好き、なの…。」
勇気を出して、告げた。