◇第四十六話◇おかえり
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ハンジさん達が乗ってきた馬車で調査兵団の兵舎に帰った私を、リヴァイ班のみんなやナナバさん、ゲルガーさん、104期の新兵達が出迎えてくれた。
口々に「おかえり。」と声をかけてくれて、とても嬉しかった。
いろいろと手を回してくれていたらしいエルヴィン団長にも、感謝と迷惑をかけたことへの謝罪を伝えた。
それから、談話室で、出迎えてくれたみんなとの久々になる再会を喜び合いたかったのだけれどー。
「いや~~っ!ほんっとうに君たちの演技力には助かったよっ!!」
アッハッハ、と大きな口を開けてハンジさんは能天気に笑っている。
人の気持ちも知らないでー。
全ては、エルヴィン団長の掌の上だったのだと知ったのは、帰りの馬車の中だった。
彼は、いつか私が調査兵団に戻ってくると考えて、退団届を休暇届に書きかえていたのだ。
そして、その読み通り、私は調査兵団に戻りたくなり、そのタイミングを見計らってリヴァイ兵長とハンジさんに迎えに行かせたということらしかった。
ただ、調査兵団を辞めるつもりの私が、実家に帰る理由が必要になる。
私が調査兵だとは知らない両親に、まさか休暇を貰ったからとも言えない。
そこで、エルヴィン団長はー。
「夫婦喧嘩でなまえが兵舎を飛び出した、とは団長も面白いことを考えるな。」
ライナーが変なところで感心しているが、全く面白くない。
私はそのせいで、大恥をかいたのだ。
帰りの馬車の中で、ハンジさんからネタバラシしてもらってから、私はリヴァイ兵長の顔が見れずにいる。
夫婦喧嘩で実家に帰ってしまったと私の両親に連絡を入れていたエルヴィン団長は、とても傷ついているのでそっとしてあげてほしいとまで言っていたらしい。
道理で突然帰ってきた娘に両親が何も言ってこなかったわけだ。
調査兵であることが両親に知られ、せっかく調査兵団に戻ろうとした私が反対されて断念してしまっては元も子もない。
だから、リヴァイ兵長とハンジさんは、エルヴィン団長のシナリオに乗るカタチで迎えにやってきたということだったのだ。
リヴァイ兵長なんて演技指導までされていたらしく、それが今朝の信じられないほどの不機嫌につながっていたようだった。
だが、あのとき、そんなことつゆほども知らない私は思いっきり、盛大に、リヴァイ兵長に抱きついてしまったー。
『ただいま、戻りました…っ。』
思い出しても恥ずかしくて泣ける。
何が、ただいま戻りました、だ。勝手に辞めると言って出て行ったくせにー、とリヴァイ兵長は思ったに違いない。
あのリヴァイ兵長の歯の浮くような甘いセリフ、あんなことリヴァイ兵長が自ら言うわけはないと、気づくべきだったのにー。
あれがきっと、演技だというヒントだったのにー。
「そうだな。それなら、戻るときは仲直りしたってことにすればいいし、
まぁ、もし、戻らなければ離婚ってことにすりゃあいいしな。」
ジャンまで何を言っている。
勝手に私とリヴァイ兵長を離婚させるな。結婚もしていないのにー。
恥ずかしさと、悲しさ、虚しさで今からでも泣ける。
それなのに、まだハンジさんはー。
「離婚~っ!?それはないない!もうアッツーーーイ抱擁を交わしてきたから!!
なまえはずーっと調査兵団にいてくれるよーっ!ねっ!!」
無邪気な笑顔で「ね!」じゃない。
やめてくれ。
引きつり笑いで誤魔化す私をナナバさんが不憫そうに見ている。それが余計にツラい。
隣でゲラゲラ笑うゲルガーさんは、その向こうでリヴァイ兵長が悪魔みたいな顔で睨んでいることに気づいていないのだろう。
もしかしたら明日、彼が目を覚ました時に、彼のうなじはどこかへ消えているかもしれない。
「やっぱり、アレだろ?私が考えたセリフには震えただろ。」
お前だったのか、ユミル。
ニヤニヤと口元を歪める彼女は、絶対に確信犯だ。
もしかして、私の気持ちを知っているのだろうか。
彼女にだけは知られたくない。
弱みを握られたら、死ぬまでそれでゆすられそうな気がする。
「私はやりすぎだって言ったんだけど、夫婦の仲直りはこれくらいなくちゃダメだろうって。
大丈夫でした?」
無駄に勘の鋭そうなユミルをなんとか誤魔化す方法はないかと考えていると、クリスタが心配そうに訊ねてきた。
そんな大きな瞳で、不安そうに見上げられたらー。
「とても助かったよ。やりすぎなくらいのセリフのおかげで
演技だって気づけたからね。私、ちゃんと気づけたからね…!」
ついでに強がってみた。
ダメだ。
ナナバさんは不憫そうに私を見ているし、ユミルはニヤニヤしてる。
すっかり騙されたこと、しっかりバレているー!
「さすが、リヴァイ兵長となまえさんですねっ!」
純粋が過ぎるエレンがキラキラした瞳で、私を見る。
眩しい、無駄に強がって嘘をついてしまった今、彼の純粋な瞳が眩しい。
いつの間にか、エルヴィン団長のアイディアがとても気に入ったらしい104期の新兵は、あーでもないこーでもないと盛り上がっている。
たぶん、エルヴィン団長のアイディアに感心しているのではなくて、面白がっているのだ。
ニヤニヤしながら私とリヴァイ兵長を見ているコニーとサシャがいい証拠だ。
そもそも、私が両親に内緒で調査兵をしていたことがどうして104期の新兵にまでバレているのか。
そのせいでさっき、ベルトルトに、不良娘なのかとすごく心配されてしまった。
「リヴァイ兵長となまえのアッツーーイ抱擁をおれ達で再現しようぜ!」
ユミルの悪乗りに、バカなコニーとサシャが乗っかる。
そして、本当に熱い抱擁を交わして、大爆笑を誘っている。
リヴァイ班まで口を開けて大笑いしているけれど、いいのだろうか。
明日からの訓練、彼らは生きていられるだろうか。
ペトラなんて、涙を流すほど笑っている。
演技だとしても、私とリヴァイ兵長の話を聞いて、平気なのだろうかー。
『私、リヴァイ兵長のこと諦めないから。』
ペトラの言葉が蘇る。
彼女は自分の気持ちに正直で、いつも強かった。
いつだってリヴァイ兵長のことを一途に思って、大切にしていた。
私はこれから、彼女の恋敵になってしまうのか。
ズキリ、胸が痛んだ。
リヴァイ兵長のことは何とも思っていないと嘘をついていた分だけ、私は彼女のことを傷つけてしまうかもしれない。
でも、もう逃げないと決めたー。
「おい、てめぇら。死ぬ覚悟はあってそんなくだらねぇことしてんだよな。」
ついに、じーっと耐えていた悪魔が動き始めた。
一目散に散っていくリヴァイ班を筆頭に、空気を読むというスキルを持っているものはスーッと存在感を消していく。
そんな中、サシャとコニーはリヴァイ兵長から飛び蹴りをくらって、どこか遠くへ吹っ飛んだ。
うまく避けて逃げて行ったずる賢いユミルと違って、本当に馬鹿な子達だ。
したくもない演技をさせられて、死ぬほどご立腹な上、空気の読まないハンジさんのせいで怒りを増幅しまくっている悪魔を、なぜわざわざ目覚めさせるようなことをするのだろう。
だから、諸悪の根源である私は、恥ずかしさと申し訳なさも手伝って、目も合わさないようにしているのにー。
吹っ飛んでいったサシャとコニーを、世話焼きのペトラが慌てて追いかけて行った。
口々に「おかえり。」と声をかけてくれて、とても嬉しかった。
いろいろと手を回してくれていたらしいエルヴィン団長にも、感謝と迷惑をかけたことへの謝罪を伝えた。
それから、談話室で、出迎えてくれたみんなとの久々になる再会を喜び合いたかったのだけれどー。
「いや~~っ!ほんっとうに君たちの演技力には助かったよっ!!」
アッハッハ、と大きな口を開けてハンジさんは能天気に笑っている。
人の気持ちも知らないでー。
全ては、エルヴィン団長の掌の上だったのだと知ったのは、帰りの馬車の中だった。
彼は、いつか私が調査兵団に戻ってくると考えて、退団届を休暇届に書きかえていたのだ。
そして、その読み通り、私は調査兵団に戻りたくなり、そのタイミングを見計らってリヴァイ兵長とハンジさんに迎えに行かせたということらしかった。
ただ、調査兵団を辞めるつもりの私が、実家に帰る理由が必要になる。
私が調査兵だとは知らない両親に、まさか休暇を貰ったからとも言えない。
そこで、エルヴィン団長はー。
「夫婦喧嘩でなまえが兵舎を飛び出した、とは団長も面白いことを考えるな。」
ライナーが変なところで感心しているが、全く面白くない。
私はそのせいで、大恥をかいたのだ。
帰りの馬車の中で、ハンジさんからネタバラシしてもらってから、私はリヴァイ兵長の顔が見れずにいる。
夫婦喧嘩で実家に帰ってしまったと私の両親に連絡を入れていたエルヴィン団長は、とても傷ついているのでそっとしてあげてほしいとまで言っていたらしい。
道理で突然帰ってきた娘に両親が何も言ってこなかったわけだ。
調査兵であることが両親に知られ、せっかく調査兵団に戻ろうとした私が反対されて断念してしまっては元も子もない。
だから、リヴァイ兵長とハンジさんは、エルヴィン団長のシナリオに乗るカタチで迎えにやってきたということだったのだ。
リヴァイ兵長なんて演技指導までされていたらしく、それが今朝の信じられないほどの不機嫌につながっていたようだった。
だが、あのとき、そんなことつゆほども知らない私は思いっきり、盛大に、リヴァイ兵長に抱きついてしまったー。
『ただいま、戻りました…っ。』
思い出しても恥ずかしくて泣ける。
何が、ただいま戻りました、だ。勝手に辞めると言って出て行ったくせにー、とリヴァイ兵長は思ったに違いない。
あのリヴァイ兵長の歯の浮くような甘いセリフ、あんなことリヴァイ兵長が自ら言うわけはないと、気づくべきだったのにー。
あれがきっと、演技だというヒントだったのにー。
「そうだな。それなら、戻るときは仲直りしたってことにすればいいし、
まぁ、もし、戻らなければ離婚ってことにすりゃあいいしな。」
ジャンまで何を言っている。
勝手に私とリヴァイ兵長を離婚させるな。結婚もしていないのにー。
恥ずかしさと、悲しさ、虚しさで今からでも泣ける。
それなのに、まだハンジさんはー。
「離婚~っ!?それはないない!もうアッツーーーイ抱擁を交わしてきたから!!
なまえはずーっと調査兵団にいてくれるよーっ!ねっ!!」
無邪気な笑顔で「ね!」じゃない。
やめてくれ。
引きつり笑いで誤魔化す私をナナバさんが不憫そうに見ている。それが余計にツラい。
隣でゲラゲラ笑うゲルガーさんは、その向こうでリヴァイ兵長が悪魔みたいな顔で睨んでいることに気づいていないのだろう。
もしかしたら明日、彼が目を覚ました時に、彼のうなじはどこかへ消えているかもしれない。
「やっぱり、アレだろ?私が考えたセリフには震えただろ。」
お前だったのか、ユミル。
ニヤニヤと口元を歪める彼女は、絶対に確信犯だ。
もしかして、私の気持ちを知っているのだろうか。
彼女にだけは知られたくない。
弱みを握られたら、死ぬまでそれでゆすられそうな気がする。
「私はやりすぎだって言ったんだけど、夫婦の仲直りはこれくらいなくちゃダメだろうって。
大丈夫でした?」
無駄に勘の鋭そうなユミルをなんとか誤魔化す方法はないかと考えていると、クリスタが心配そうに訊ねてきた。
そんな大きな瞳で、不安そうに見上げられたらー。
「とても助かったよ。やりすぎなくらいのセリフのおかげで
演技だって気づけたからね。私、ちゃんと気づけたからね…!」
ついでに強がってみた。
ダメだ。
ナナバさんは不憫そうに私を見ているし、ユミルはニヤニヤしてる。
すっかり騙されたこと、しっかりバレているー!
「さすが、リヴァイ兵長となまえさんですねっ!」
純粋が過ぎるエレンがキラキラした瞳で、私を見る。
眩しい、無駄に強がって嘘をついてしまった今、彼の純粋な瞳が眩しい。
いつの間にか、エルヴィン団長のアイディアがとても気に入ったらしい104期の新兵は、あーでもないこーでもないと盛り上がっている。
たぶん、エルヴィン団長のアイディアに感心しているのではなくて、面白がっているのだ。
ニヤニヤしながら私とリヴァイ兵長を見ているコニーとサシャがいい証拠だ。
そもそも、私が両親に内緒で調査兵をしていたことがどうして104期の新兵にまでバレているのか。
そのせいでさっき、ベルトルトに、不良娘なのかとすごく心配されてしまった。
「リヴァイ兵長となまえのアッツーーイ抱擁をおれ達で再現しようぜ!」
ユミルの悪乗りに、バカなコニーとサシャが乗っかる。
そして、本当に熱い抱擁を交わして、大爆笑を誘っている。
リヴァイ班まで口を開けて大笑いしているけれど、いいのだろうか。
明日からの訓練、彼らは生きていられるだろうか。
ペトラなんて、涙を流すほど笑っている。
演技だとしても、私とリヴァイ兵長の話を聞いて、平気なのだろうかー。
『私、リヴァイ兵長のこと諦めないから。』
ペトラの言葉が蘇る。
彼女は自分の気持ちに正直で、いつも強かった。
いつだってリヴァイ兵長のことを一途に思って、大切にしていた。
私はこれから、彼女の恋敵になってしまうのか。
ズキリ、胸が痛んだ。
リヴァイ兵長のことは何とも思っていないと嘘をついていた分だけ、私は彼女のことを傷つけてしまうかもしれない。
でも、もう逃げないと決めたー。
「おい、てめぇら。死ぬ覚悟はあってそんなくだらねぇことしてんだよな。」
ついに、じーっと耐えていた悪魔が動き始めた。
一目散に散っていくリヴァイ班を筆頭に、空気を読むというスキルを持っているものはスーッと存在感を消していく。
そんな中、サシャとコニーはリヴァイ兵長から飛び蹴りをくらって、どこか遠くへ吹っ飛んだ。
うまく避けて逃げて行ったずる賢いユミルと違って、本当に馬鹿な子達だ。
したくもない演技をさせられて、死ぬほどご立腹な上、空気の読まないハンジさんのせいで怒りを増幅しまくっている悪魔を、なぜわざわざ目覚めさせるようなことをするのだろう。
だから、諸悪の根源である私は、恥ずかしさと申し訳なさも手伝って、目も合わさないようにしているのにー。
吹っ飛んでいったサシャとコニーを、世話焼きのペトラが慌てて追いかけて行った。