◇第四十二話◇優しい声の使者
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場所を変えようとハンジさんに言われて、戸惑いながらも私は彼らに従った。
いや、心は怖がって逃げようとしていたのに、身体が勝手に彼らに従ったというのが正しいと思う。
とにかく、心と身体の気持ちがバラバラのまま、馬車に乗せられてやってきたのは、数年前まで憲兵団が使用していたという古い施設だった。
憲兵団のものだっただけあって、もう数年使っていないにもかかわらず綺麗な施設で、案内された部屋も高価そうなソファやテーブルが置きっぱなしになっていた。
「これを、読んでやってほしい。」
ルルの父親はジャケットの内ポケットから1通の手紙を取り出した。
戸惑いながら、手紙を受け取る。
既に封は切られていて、誰かが読んだあとの手紙のようだった。
ルルの父親が持っていたから、彼が読んでから私に渡したのか。
彼の手に渡った手紙をどうして私に読んでほしいというのか分からず、困惑しつつも、彼に促されるまま、中に入っている便箋を取り出した。
(これ…。)
見覚えのある便箋だった。
壁外調査の前日、ルルがクリスタから貰ったと喜んでいた便箋。
右下に描かれている天使の羽が、リヴァイ兵長からもらったティーカップの天使の羽に似ていて綺麗だと思った。
ということは、これはルルが両親に宛てた手紙ということか。
そう思いながら、クリスタの顔を見ると、まるでその合図を待っていたかのように彼女が口を開いた。
「壁外調査に出る前に、
便箋を持ってないかってルルさんに聞かれたんです。
-なまえさんに似合うような綺麗な便箋がいいって。」
「私に?」
首を傾げ、私は封筒を裏返した。
そこには、送り主であるルルの名前の他にもう一人の名前が記してあった。
それは、この手紙の宛名で、私が一番見慣れた名前ー。
(どうして、ルルが私に手紙を?
それに、ルルは家族に手紙を書いていたんじゃなかったの?)
頭の中に浮かぶ私の疑問が見えているみたいに、クリスタはあの日のことを話してくれた。
「どうしてなまえさんに手紙を書くのか不思議に思って聞いてみたら、
自分に何かあったら、それをなまえさんに渡してほしいと頼まれました。」
「え…?」
どういうことだ。
ルルはどうしてそんなことをクリスタに頼んだのだ。
いや、違う。
どうして、まるで死ぬのが分かっていたみたいに、そんなことをー。
「私達も気づかないで、彼女の遺品としてすべてをご両親に渡していたんだ。
クリスタからその話を聞いたのが、君が調査兵団を出て行く当日で、
慌ててご両親に連絡をとって、その手紙を見つけてもらったんだ。」
「娘が残した遺品の中に、君の名前が書かれた手紙があることは、私達も気づいていた。
私達に宛てたルルの手紙と一緒にあったからね。でも…、私達は読めなかった。
だから、娘の残した思いに気づけず、こんなに遅くなってしまって悪いことをしたよ。」
ルルの父親は悲しそうにそう言うと、目を伏せて目頭を押さえる母親の肩を抱き寄せた。
彼女の思いというのは、一体何のことを言っているのだろう。
それが手紙に書かれているということなのか。
どうして、彼女は手紙に気持ちを書いた。
それじゃまるでー。
「自分がいなくなったときに、この手紙がなまえさんを救う助けになるはずだって言ってました。
ルルさん、いつまでもなまえさんには笑っていてほしいってー。」
「どうしてよっ!」
私は手紙を片手に持ったまま、クリスタの両腕を握って彼女の身体を揺らした。
意味が分からない。
どういうことだ。これじゃまるでー。
ー遺書だ。
遺書じゃないか、そんなの。
「どうしてルルがそんなこと言うの!?
あのときルルは…っ!生きようとしてたっ!そんな…、死んじゃう前みたいな手紙っ!
ルルが、書くはずないっ!!」
何を否定しているのか、何を否定したいのか、自分でも分からなかった。
でも、悲しい顔をしているクリスタの身体を私は痛いくらいに揺さぶった。
許せなかった。
そんなことを今さら言ってくるクリスタも。
そんな意味の分からない手紙を残したルルも。
何も知らなかった、自分もー。
「その答えは、ルルが教えてくれるよ。」
ハンジさんは、クリスタから私を引き離すと、手紙をもう一度しっかりと私の手におさめた。
私は、両手の上に乗った1通の手紙を見つめる。
ここに、ルルからの答えが書いてある。
壁外調査前日、ルルが何を想っていたのか、私に何を伝えようとしていたのか。
これを見たら、私はー。
震える手で、私は便箋を開いた。
書き出しから、まるで、ルルが今の私に話しかけているようだったー。
いや、心は怖がって逃げようとしていたのに、身体が勝手に彼らに従ったというのが正しいと思う。
とにかく、心と身体の気持ちがバラバラのまま、馬車に乗せられてやってきたのは、数年前まで憲兵団が使用していたという古い施設だった。
憲兵団のものだっただけあって、もう数年使っていないにもかかわらず綺麗な施設で、案内された部屋も高価そうなソファやテーブルが置きっぱなしになっていた。
「これを、読んでやってほしい。」
ルルの父親はジャケットの内ポケットから1通の手紙を取り出した。
戸惑いながら、手紙を受け取る。
既に封は切られていて、誰かが読んだあとの手紙のようだった。
ルルの父親が持っていたから、彼が読んでから私に渡したのか。
彼の手に渡った手紙をどうして私に読んでほしいというのか分からず、困惑しつつも、彼に促されるまま、中に入っている便箋を取り出した。
(これ…。)
見覚えのある便箋だった。
壁外調査の前日、ルルがクリスタから貰ったと喜んでいた便箋。
右下に描かれている天使の羽が、リヴァイ兵長からもらったティーカップの天使の羽に似ていて綺麗だと思った。
ということは、これはルルが両親に宛てた手紙ということか。
そう思いながら、クリスタの顔を見ると、まるでその合図を待っていたかのように彼女が口を開いた。
「壁外調査に出る前に、
便箋を持ってないかってルルさんに聞かれたんです。
-なまえさんに似合うような綺麗な便箋がいいって。」
「私に?」
首を傾げ、私は封筒を裏返した。
そこには、送り主であるルルの名前の他にもう一人の名前が記してあった。
それは、この手紙の宛名で、私が一番見慣れた名前ー。
(どうして、ルルが私に手紙を?
それに、ルルは家族に手紙を書いていたんじゃなかったの?)
頭の中に浮かぶ私の疑問が見えているみたいに、クリスタはあの日のことを話してくれた。
「どうしてなまえさんに手紙を書くのか不思議に思って聞いてみたら、
自分に何かあったら、それをなまえさんに渡してほしいと頼まれました。」
「え…?」
どういうことだ。
ルルはどうしてそんなことをクリスタに頼んだのだ。
いや、違う。
どうして、まるで死ぬのが分かっていたみたいに、そんなことをー。
「私達も気づかないで、彼女の遺品としてすべてをご両親に渡していたんだ。
クリスタからその話を聞いたのが、君が調査兵団を出て行く当日で、
慌ててご両親に連絡をとって、その手紙を見つけてもらったんだ。」
「娘が残した遺品の中に、君の名前が書かれた手紙があることは、私達も気づいていた。
私達に宛てたルルの手紙と一緒にあったからね。でも…、私達は読めなかった。
だから、娘の残した思いに気づけず、こんなに遅くなってしまって悪いことをしたよ。」
ルルの父親は悲しそうにそう言うと、目を伏せて目頭を押さえる母親の肩を抱き寄せた。
彼女の思いというのは、一体何のことを言っているのだろう。
それが手紙に書かれているということなのか。
どうして、彼女は手紙に気持ちを書いた。
それじゃまるでー。
「自分がいなくなったときに、この手紙がなまえさんを救う助けになるはずだって言ってました。
ルルさん、いつまでもなまえさんには笑っていてほしいってー。」
「どうしてよっ!」
私は手紙を片手に持ったまま、クリスタの両腕を握って彼女の身体を揺らした。
意味が分からない。
どういうことだ。これじゃまるでー。
ー遺書だ。
遺書じゃないか、そんなの。
「どうしてルルがそんなこと言うの!?
あのときルルは…っ!生きようとしてたっ!そんな…、死んじゃう前みたいな手紙っ!
ルルが、書くはずないっ!!」
何を否定しているのか、何を否定したいのか、自分でも分からなかった。
でも、悲しい顔をしているクリスタの身体を私は痛いくらいに揺さぶった。
許せなかった。
そんなことを今さら言ってくるクリスタも。
そんな意味の分からない手紙を残したルルも。
何も知らなかった、自分もー。
「その答えは、ルルが教えてくれるよ。」
ハンジさんは、クリスタから私を引き離すと、手紙をもう一度しっかりと私の手におさめた。
私は、両手の上に乗った1通の手紙を見つめる。
ここに、ルルからの答えが書いてある。
壁外調査前日、ルルが何を想っていたのか、私に何を伝えようとしていたのか。
これを見たら、私はー。
震える手で、私は便箋を開いた。
書き出しから、まるで、ルルが今の私に話しかけているようだったー。