◇第四十二話◇優しい声の使者
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私の身体は無意識に走って逃げだした。
どうしてなのかは分からない。
調査兵団から逃げておきながら今さら顔を合わせられないと思ったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
分からないけれど、私は必死に走って逃げた。
「待ってっ!待ってよ!なまえ!!」
後ろから、必死に私を追いかけるハンジさんの声が届く。
でも、振り返らなかった。
追いかけてくるハンジさんと同じくらい、私も必死に逃げた。
どうして会いに来たの。どうしてここにいるの。
頭の中はいろんな疑問が浮かんでは消えて、また浮かんで、私は困惑していた。
「待ってくれ!」
ハンジさんに腕を掴まれても、振り返る余裕もないくらいに、私は困惑している。
だって、どうして。どうして。
「お願いだ、私達の話を聞いてくれ。」
「…無理です。」
私は振り返らずに、掴まえられたときの格好のままで答えた。
だって、振り返れるわけがない。
意味が分からなかった。
だって、どうして。
ハンジさんに続いて馬車から出てきた人たちを、私は見てしまった。
どうして、ハンジさんはクリスタまで連れてこんなところまでやってきたのだろう。
どうして、クリスタと一緒に、ルルの両親が、クレーデル夫妻がいるのだ。
彼らは私の顔なんて、見たくないのに。二度と見たくないのにー。
「なまえさん!!」
クリスタに名前を呼ばれて、怯えるように肩が揺れた。
小さくて可愛くて、人懐っこいクリスタのことを妹のように思っていた。
だからこそ、こんな情けない姿、見せたくない。
私にもそんなつまらないプライドみたいなものがまだ残っていたことに気づいて、やるせない気持ちになる。
「私達、ルルさんの声を届けに来たんです。」
絶対に彼女達を見ようとしない私の背中に、クリスタはそう言った。
正直、彼女が何を言っているのか、分からなかった。
(ルルの、声…?)
クリスタは確かにそう言った。
ルルの声を届けに来た、と。
どうやって、声を届けると言うんだ。
ルルは、もう死んだ。もういない。
死んだ人間の声なんて、どんなにどんなに願ったって聞けない。
私だって必死に探した、必死に耳を澄ませてみた。
でも、ルルの声はしなかった。あの日からずっと、ヒルラの声もしない。
私の親友たちは消えた。遠い世界に消えた。もういない。
だから、思い出さないようにしていたのに。忘れようとしていたのに。
忘れたいのだ。
だから、もうやめて。やめてほしい。
「やめて…。」
耳を塞いだ。
誰かと親しくなるから、だから私はこんなに苦しくなる。息が出来なくなるのに、死ねない地獄に落ちてしまう。
いつかこの世界は、巨人に支配されるのだ。そして、また人が死んでいく。
そのとき、私はまた傷つくなんて御免だ。もういやだ。
だから、私は耳を塞ぐ。
誰も失いたくないから、私は心も閉ざした。
あの日、私は自分のために、自分の心を、壊したー。
どうしてなのかは分からない。
調査兵団から逃げておきながら今さら顔を合わせられないと思ったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
分からないけれど、私は必死に走って逃げた。
「待ってっ!待ってよ!なまえ!!」
後ろから、必死に私を追いかけるハンジさんの声が届く。
でも、振り返らなかった。
追いかけてくるハンジさんと同じくらい、私も必死に逃げた。
どうして会いに来たの。どうしてここにいるの。
頭の中はいろんな疑問が浮かんでは消えて、また浮かんで、私は困惑していた。
「待ってくれ!」
ハンジさんに腕を掴まれても、振り返る余裕もないくらいに、私は困惑している。
だって、どうして。どうして。
「お願いだ、私達の話を聞いてくれ。」
「…無理です。」
私は振り返らずに、掴まえられたときの格好のままで答えた。
だって、振り返れるわけがない。
意味が分からなかった。
だって、どうして。
ハンジさんに続いて馬車から出てきた人たちを、私は見てしまった。
どうして、ハンジさんはクリスタまで連れてこんなところまでやってきたのだろう。
どうして、クリスタと一緒に、ルルの両親が、クレーデル夫妻がいるのだ。
彼らは私の顔なんて、見たくないのに。二度と見たくないのにー。
「なまえさん!!」
クリスタに名前を呼ばれて、怯えるように肩が揺れた。
小さくて可愛くて、人懐っこいクリスタのことを妹のように思っていた。
だからこそ、こんな情けない姿、見せたくない。
私にもそんなつまらないプライドみたいなものがまだ残っていたことに気づいて、やるせない気持ちになる。
「私達、ルルさんの声を届けに来たんです。」
絶対に彼女達を見ようとしない私の背中に、クリスタはそう言った。
正直、彼女が何を言っているのか、分からなかった。
(ルルの、声…?)
クリスタは確かにそう言った。
ルルの声を届けに来た、と。
どうやって、声を届けると言うんだ。
ルルは、もう死んだ。もういない。
死んだ人間の声なんて、どんなにどんなに願ったって聞けない。
私だって必死に探した、必死に耳を澄ませてみた。
でも、ルルの声はしなかった。あの日からずっと、ヒルラの声もしない。
私の親友たちは消えた。遠い世界に消えた。もういない。
だから、思い出さないようにしていたのに。忘れようとしていたのに。
忘れたいのだ。
だから、もうやめて。やめてほしい。
「やめて…。」
耳を塞いだ。
誰かと親しくなるから、だから私はこんなに苦しくなる。息が出来なくなるのに、死ねない地獄に落ちてしまう。
いつかこの世界は、巨人に支配されるのだ。そして、また人が死んでいく。
そのとき、私はまた傷つくなんて御免だ。もういやだ。
だから、私は耳を塞ぐ。
誰も失いたくないから、私は心も閉ざした。
あの日、私は自分のために、自分の心を、壊したー。