◇第三十四話◇友人達の強さ
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
初日の巨人捕獲作戦は大成功だった。
リヴァイ兵長が誘導対象以外の巨人を半分以上討伐してくれたおかげで、私も思ったよりも危険は少なく任務を遂行出来たと思う。
荷馬車の上に拘束した4m級の巨人は、旧大聖堂のすぐ裏にある小さな森の入口に置かれている。
万が一、拘束がとれてしまったときの保険のためだ。きっと、そこも考慮に入れて、すぐ裏に森のあるこの旧大聖堂が拠点に選ばれたのだろう。
帰ってからずっと、ハンジさんは森の入口に留まって、ずーっと巨人に話しかけているらしい。
一応、ハンジさんの分隊に所属している数名の調査兵が見張りとしてついているのだけれど、本人がどうしても巨人から離れたくないと動いてくれないらしい。
モブリットさんが時々戻ってきては、エルヴィン団長への報告も兼ねて愚痴ってまた森に戻っていく。
不憫で仕方がない。
「今日は大活躍だったね。」
見張りの順番が回ってきた私は、ルルと一緒に大聖堂の屋根の上に来ていた。
今回の巨人捕獲作戦での一番の功労者は、全員一致でルルだ。
俊敏な動き、状況の把握能力、そのすべてがハンジさんを見ているみたいだと思ったのは、きっと私だけじゃないはずだ。
リヴァイ兵長の訓練のおかげだと本人は言っていたけれど、彼女の才能と努力の賜物以外のなにものでもないことを、私たちはみんな知っている。
ハンジさんが、ルルは訓練兵時代もギリギリ10番以内には入らなかっただけで、とても優秀な成績だったと言っていたから、元々の兵士としての才能もあったのだろう。
私も、頑張らないとー!
「ねぇ、みんなが私達のこと何て言ってるか、知ってる?」
「え?なになに?知らない!」
ルルが、素敵な宝箱を隠し持っているような顔で言うから、私もワクワクしてしまう。
「最恐コンビだって。」
「さい、きょう…?最高の美人コンビじゃなくて!?」
「そう、美人じゃなくて!」
「えーっ。」
ショックだ!なんて顔をしたけれど、本当はすごく嬉しかった。
2人でいることが多いことから、以前から異例の新兵コンビと呼ばれていたらしいが、昨日、壁外移動中に地面から現れた多数の巨人討伐の功績を称えて、異例から最恐に名称が変換されたということだった。
呼び名はとても安易だし、可愛くないし、褒められている気はしないけれど。
でも、ルルと2人で同じ呼び名をつけられたことが嬉しかった。
楽しそうに笑っているルルも同じなのかな。
「アイツらは2人になったら無敵になるから近づかないようにしようとか
ヘタれたこと言ってる調査兵がいたので、シメときました!」
「それ!それダメなやつだからっ!」
「えっ!マジ!?」
「よしっ!じゃあ、調査兵団の最恐コンビを極めよう!」
私の提案に、ルルから乗り気な返事が返ってくる。
「ルルが来てくれて、私はすごく楽しいよ。ありがとう。」
「な…、何言ってんの。急にっ。」
驚いた顔をしたルルは、照れたみたいで私から顔を反らしてツンとした態度をとる。
それが可愛くて、私は思わずルルを抱きしめた。
「死なないでね、ルル。」
ルルは、返事をしなかった。
頭に浮かぶのは、シガンシナ区までのルート模索から帰ってきた調査兵達の悲愴な姿。
馬に乗って行ったはずなのに、身体中を布で覆われ荷馬車の上で眠っていたのは、朝までは生きていたはずの仲間に違いなくてー。
それも、1人や2人ではなかった。
これが、調査兵団だけではなく、人類が抱える現実。
不安になって、抱きしめる腕に力が入る。
「今日の朝帰りは、何をしてたのかな?」
暗くなった雰囲気を変えようとしたのかもしれない。
ルルは、至極楽しそうに私の顔を覗き込んだ。
笑って誤魔化す私に、ルルは言った。
いつだって味方だって。
そういえば、前にもそんな風に言われたなー。
私もルルの味方だと言えば、ルルはすごく嬉しそうで。
「ねぇ、私達って親友かな?」
「今、私も同じこと思ってたの。」
ルルはすごく嬉しそうな顔をしてる。
きっと、私たちは今、同じ顔をしてる。
「でもね、親友よりもっとすごいよ!」
「もっと?」
首を傾げる私に、ルルは言った。
「みんなが私達をコンビっていうくらい、私達は2人で1つなんだよ。」
「そっか。親友よりすごいねっ。」
「だから、なまえになりたい兵士があるなら、私も一緒に目指すよ。」
「え。」
驚いた。
なりたい兵士の話なんて、ルルにしたことはなかったから。
でも、私の戦い方を見ていれば、何を考えているのかくらいわかると言われてしまった。
「でも!それはすごく難しくて、みんなが無謀だってー。」
「それでも、なまえは諦めてないんでしょ?」
「そうだけど、でもー」
「それなら、私も一緒に背負うよ。」
「ダメだよ、そんなの。勝手な私のワガママにルルを巻き込めない。」
一緒に背負う、ということは、自分の命を投げ捨てる覚悟で他人の命のために戦うということだ。
それは、人類のためではなく、すぐ目の前の命しか見えていない浅はかで、危険な思想だということくらい、私にももう嫌というほど分かってきている。
それでも、私は目の前の命を諦めたくない。
だから、今回のことでハンジさんやリヴァイ兵長だけではなく、エルヴィン団長にも実力を認められたルルが一緒にいれば、私にとってはとても力強いだろう。
でも、エルヴィン団長も言っていた通り、調査兵団にとってルルは若い希望であって、私のワガママでそんな大切な命を奪うことはできない。
それでも、ルルは私の手を握った。
「誰かを助けられない度に、なまえは星を見てるよね。
昨日も、どこかで星を見てたんでしょ。」
「…知ってたの?」
「知ってるよ、それくらい。
なまえは悪くないって言ってあげたかったけど、
きっとそういうことじゃないから、私は何も言えなかった。ごめんね。」
「…ううん、ありがとう。」
「だから、みんなが私達のことをコンビって呼んでるのを知って、思ったの。
2人で1つになればいいんだって。
だからね、なまえ。」
ルルはそう言って、私の頭を優しく撫でる。
「悲しいことがあったら、私も一緒に背負うから。
我慢しないで。1人で背負わないで。泣きたいときは、泣いていいんだよ。
私がいつも、一緒にいるからね。」
頭を撫でながらルルは、私に微笑んだ。
彼女の微笑みに、私の中にあった張りつめていたものが、優しく溶かされていく。
無理をしているつもりはなかった。
自分で決めて、自分でやりたいようにやらせてもらっていたから。
でも、うん、でもきっと、兵士はみんな無理をしている。
だからー。
「そうだね、一緒なら、きっとなんだって乗り越えられる。」
「うん、そうだよ。」
ルルが微笑む。
それは、私が生まれてきてから見てきた中で、最も優しい表情のひとつで。
これから、私が一生忘れることのできないものになった。
誰かの願いのために命を懸けるのがどれほどの覚悟が必要だったのかなんて、気づきもしないで。
その笑みに未来の自分が何度救われるかも知らないで。
私はその日、無邪気に笑ったんだ。
リヴァイ兵長が誘導対象以外の巨人を半分以上討伐してくれたおかげで、私も思ったよりも危険は少なく任務を遂行出来たと思う。
荷馬車の上に拘束した4m級の巨人は、旧大聖堂のすぐ裏にある小さな森の入口に置かれている。
万が一、拘束がとれてしまったときの保険のためだ。きっと、そこも考慮に入れて、すぐ裏に森のあるこの旧大聖堂が拠点に選ばれたのだろう。
帰ってからずっと、ハンジさんは森の入口に留まって、ずーっと巨人に話しかけているらしい。
一応、ハンジさんの分隊に所属している数名の調査兵が見張りとしてついているのだけれど、本人がどうしても巨人から離れたくないと動いてくれないらしい。
モブリットさんが時々戻ってきては、エルヴィン団長への報告も兼ねて愚痴ってまた森に戻っていく。
不憫で仕方がない。
「今日は大活躍だったね。」
見張りの順番が回ってきた私は、ルルと一緒に大聖堂の屋根の上に来ていた。
今回の巨人捕獲作戦での一番の功労者は、全員一致でルルだ。
俊敏な動き、状況の把握能力、そのすべてがハンジさんを見ているみたいだと思ったのは、きっと私だけじゃないはずだ。
リヴァイ兵長の訓練のおかげだと本人は言っていたけれど、彼女の才能と努力の賜物以外のなにものでもないことを、私たちはみんな知っている。
ハンジさんが、ルルは訓練兵時代もギリギリ10番以内には入らなかっただけで、とても優秀な成績だったと言っていたから、元々の兵士としての才能もあったのだろう。
私も、頑張らないとー!
「ねぇ、みんなが私達のこと何て言ってるか、知ってる?」
「え?なになに?知らない!」
ルルが、素敵な宝箱を隠し持っているような顔で言うから、私もワクワクしてしまう。
「最恐コンビだって。」
「さい、きょう…?最高の美人コンビじゃなくて!?」
「そう、美人じゃなくて!」
「えーっ。」
ショックだ!なんて顔をしたけれど、本当はすごく嬉しかった。
2人でいることが多いことから、以前から異例の新兵コンビと呼ばれていたらしいが、昨日、壁外移動中に地面から現れた多数の巨人討伐の功績を称えて、異例から最恐に名称が変換されたということだった。
呼び名はとても安易だし、可愛くないし、褒められている気はしないけれど。
でも、ルルと2人で同じ呼び名をつけられたことが嬉しかった。
楽しそうに笑っているルルも同じなのかな。
「アイツらは2人になったら無敵になるから近づかないようにしようとか
ヘタれたこと言ってる調査兵がいたので、シメときました!」
「それ!それダメなやつだからっ!」
「えっ!マジ!?」
「よしっ!じゃあ、調査兵団の最恐コンビを極めよう!」
私の提案に、ルルから乗り気な返事が返ってくる。
「ルルが来てくれて、私はすごく楽しいよ。ありがとう。」
「な…、何言ってんの。急にっ。」
驚いた顔をしたルルは、照れたみたいで私から顔を反らしてツンとした態度をとる。
それが可愛くて、私は思わずルルを抱きしめた。
「死なないでね、ルル。」
ルルは、返事をしなかった。
頭に浮かぶのは、シガンシナ区までのルート模索から帰ってきた調査兵達の悲愴な姿。
馬に乗って行ったはずなのに、身体中を布で覆われ荷馬車の上で眠っていたのは、朝までは生きていたはずの仲間に違いなくてー。
それも、1人や2人ではなかった。
これが、調査兵団だけではなく、人類が抱える現実。
不安になって、抱きしめる腕に力が入る。
「今日の朝帰りは、何をしてたのかな?」
暗くなった雰囲気を変えようとしたのかもしれない。
ルルは、至極楽しそうに私の顔を覗き込んだ。
笑って誤魔化す私に、ルルは言った。
いつだって味方だって。
そういえば、前にもそんな風に言われたなー。
私もルルの味方だと言えば、ルルはすごく嬉しそうで。
「ねぇ、私達って親友かな?」
「今、私も同じこと思ってたの。」
ルルはすごく嬉しそうな顔をしてる。
きっと、私たちは今、同じ顔をしてる。
「でもね、親友よりもっとすごいよ!」
「もっと?」
首を傾げる私に、ルルは言った。
「みんなが私達をコンビっていうくらい、私達は2人で1つなんだよ。」
「そっか。親友よりすごいねっ。」
「だから、なまえになりたい兵士があるなら、私も一緒に目指すよ。」
「え。」
驚いた。
なりたい兵士の話なんて、ルルにしたことはなかったから。
でも、私の戦い方を見ていれば、何を考えているのかくらいわかると言われてしまった。
「でも!それはすごく難しくて、みんなが無謀だってー。」
「それでも、なまえは諦めてないんでしょ?」
「そうだけど、でもー」
「それなら、私も一緒に背負うよ。」
「ダメだよ、そんなの。勝手な私のワガママにルルを巻き込めない。」
一緒に背負う、ということは、自分の命を投げ捨てる覚悟で他人の命のために戦うということだ。
それは、人類のためではなく、すぐ目の前の命しか見えていない浅はかで、危険な思想だということくらい、私にももう嫌というほど分かってきている。
それでも、私は目の前の命を諦めたくない。
だから、今回のことでハンジさんやリヴァイ兵長だけではなく、エルヴィン団長にも実力を認められたルルが一緒にいれば、私にとってはとても力強いだろう。
でも、エルヴィン団長も言っていた通り、調査兵団にとってルルは若い希望であって、私のワガママでそんな大切な命を奪うことはできない。
それでも、ルルは私の手を握った。
「誰かを助けられない度に、なまえは星を見てるよね。
昨日も、どこかで星を見てたんでしょ。」
「…知ってたの?」
「知ってるよ、それくらい。
なまえは悪くないって言ってあげたかったけど、
きっとそういうことじゃないから、私は何も言えなかった。ごめんね。」
「…ううん、ありがとう。」
「だから、みんなが私達のことをコンビって呼んでるのを知って、思ったの。
2人で1つになればいいんだって。
だからね、なまえ。」
ルルはそう言って、私の頭を優しく撫でる。
「悲しいことがあったら、私も一緒に背負うから。
我慢しないで。1人で背負わないで。泣きたいときは、泣いていいんだよ。
私がいつも、一緒にいるからね。」
頭を撫でながらルルは、私に微笑んだ。
彼女の微笑みに、私の中にあった張りつめていたものが、優しく溶かされていく。
無理をしているつもりはなかった。
自分で決めて、自分でやりたいようにやらせてもらっていたから。
でも、うん、でもきっと、兵士はみんな無理をしている。
だからー。
「そうだね、一緒なら、きっとなんだって乗り越えられる。」
「うん、そうだよ。」
ルルが微笑む。
それは、私が生まれてきてから見てきた中で、最も優しい表情のひとつで。
これから、私が一生忘れることのできないものになった。
誰かの願いのために命を懸けるのがどれほどの覚悟が必要だったのかなんて、気づきもしないで。
その笑みに未来の自分が何度救われるかも知らないで。
私はその日、無邪気に笑ったんだ。