◇第三十二話◇報告
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「移動中の犠牲は、右翼前方のコンラートの班だけか。」
今回の移動中のそれぞれの班の報告、明日の作戦の確認を終えた後、ハンジさんが呟くように言った。
被害は少ないうちに入るらしい。
でも、誰も良かったとは言わなかった。
沈痛な面持ちで、失った命の重さに胸を痛めている。
「でも、よくやったぜ。新兵2人で仲間の危機を救ったんだからなっ。」
暗い雰囲気を打破しようとしたらしいゲルガーさんは、なんとか口の端を上げて笑顔みたいなものを作って、私とルルを労ってくれた。
でも、悲しみの色をした瞳は、失った仲間の大きさを語っていた。
彼らは、ナナバさんとゲルガーさんの同期だった。
私を彼らに紹介してくれたのが、ゲルガーさんだった。
言葉は少し乱暴だったけれど、豪快に笑う気持ちのいい人達で、いつでも頼ってくれと独りぼっちだったときの私にも優しくしてくれた。
そういえば、壁外調査の後に、一緒にお酒を呑むのが恒例なのだと言っていたっけ。
この壁外調査が終わったら、ゲルガーさんは誰とお酒を呑めばいいのだろう。
誰とお酒を呑めば、また生きて帰ろう!と笑い合えるのだろう。
それは、彼らでなくちゃいけなかったのに。他の誰にも、彼らの命の代わりなんて出来やしないのにー。
助けられなかった自分が悔しくて、私は唇を噛んだ。
「違います…!マレーネ達を助けたのは、コンラートさん達です!
コンラートさん達が、必死に、最期に…っ、煙弾を撃ったかから、だから…!」
「そうですっ!最期のメッセージが、あったから…!
だから、私達もマレーネ達のところに行けたし、
ミケ分隊長も異常に気付いて、すぐに助けに来てくれた…!だから…!」
泣いたらダメだ、本当に泣きたいのは私じゃない。
必死に涙を堪えていたのは、私だけじゃなかったらしい。
彼らの最後の勇士を伝えられるのは自分達しかいないのだーと涙を流すまいと目を見開いたのは、ルルも同じだった。
「あぁ、そうだね。ありがとう。
でも、私達は本当に君達に感謝してるんだよ。
君たちが、コンラート達の最後の声を拾ってくれたことが、嬉しいんだ。」
ナナバさんの声は震えていて、私とルルを抱きしめた細い腕は力加減を忘れたみたいで、すごく痛かった。
でも、私もルルも、何も言わなかった。言えなかった。
私達の痛みよりも、ナナバさんの心の方がずっとずっと痛いことを知っていたから。
「ただー。」
エルヴィン団長が、私とルルの方を見た。
嫌な予感がするー。
「隊列を崩し、勝手な行動をすることは褒められたことではない。
今回はうまくいったが、それが次も続くとは限らない。」
「でも!」
言い返そうとした私の前にリヴァイ兵長の手が伸びてきて、制止される。
仕方なく口を噤んだ私を確認して、エルヴィン団長が続けた。
「確かに君達がいなければ、被害はさらに増えていたかもしれない。
思うこともあるだろう。だが、調査兵団には未来に繋がる兵士が必要なのだ。
君達は我々の希望だ、こんなところで失いたくはない。」
分かってくれー。
たくさんの苦悩を見てきても尚力強いその瞳に、否定の言葉は、もう出てこなかった。
今回の移動中のそれぞれの班の報告、明日の作戦の確認を終えた後、ハンジさんが呟くように言った。
被害は少ないうちに入るらしい。
でも、誰も良かったとは言わなかった。
沈痛な面持ちで、失った命の重さに胸を痛めている。
「でも、よくやったぜ。新兵2人で仲間の危機を救ったんだからなっ。」
暗い雰囲気を打破しようとしたらしいゲルガーさんは、なんとか口の端を上げて笑顔みたいなものを作って、私とルルを労ってくれた。
でも、悲しみの色をした瞳は、失った仲間の大きさを語っていた。
彼らは、ナナバさんとゲルガーさんの同期だった。
私を彼らに紹介してくれたのが、ゲルガーさんだった。
言葉は少し乱暴だったけれど、豪快に笑う気持ちのいい人達で、いつでも頼ってくれと独りぼっちだったときの私にも優しくしてくれた。
そういえば、壁外調査の後に、一緒にお酒を呑むのが恒例なのだと言っていたっけ。
この壁外調査が終わったら、ゲルガーさんは誰とお酒を呑めばいいのだろう。
誰とお酒を呑めば、また生きて帰ろう!と笑い合えるのだろう。
それは、彼らでなくちゃいけなかったのに。他の誰にも、彼らの命の代わりなんて出来やしないのにー。
助けられなかった自分が悔しくて、私は唇を噛んだ。
「違います…!マレーネ達を助けたのは、コンラートさん達です!
コンラートさん達が、必死に、最期に…っ、煙弾を撃ったかから、だから…!」
「そうですっ!最期のメッセージが、あったから…!
だから、私達もマレーネ達のところに行けたし、
ミケ分隊長も異常に気付いて、すぐに助けに来てくれた…!だから…!」
泣いたらダメだ、本当に泣きたいのは私じゃない。
必死に涙を堪えていたのは、私だけじゃなかったらしい。
彼らの最後の勇士を伝えられるのは自分達しかいないのだーと涙を流すまいと目を見開いたのは、ルルも同じだった。
「あぁ、そうだね。ありがとう。
でも、私達は本当に君達に感謝してるんだよ。
君たちが、コンラート達の最後の声を拾ってくれたことが、嬉しいんだ。」
ナナバさんの声は震えていて、私とルルを抱きしめた細い腕は力加減を忘れたみたいで、すごく痛かった。
でも、私もルルも、何も言わなかった。言えなかった。
私達の痛みよりも、ナナバさんの心の方がずっとずっと痛いことを知っていたから。
「ただー。」
エルヴィン団長が、私とルルの方を見た。
嫌な予感がするー。
「隊列を崩し、勝手な行動をすることは褒められたことではない。
今回はうまくいったが、それが次も続くとは限らない。」
「でも!」
言い返そうとした私の前にリヴァイ兵長の手が伸びてきて、制止される。
仕方なく口を噤んだ私を確認して、エルヴィン団長が続けた。
「確かに君達がいなければ、被害はさらに増えていたかもしれない。
思うこともあるだろう。だが、調査兵団には未来に繋がる兵士が必要なのだ。
君達は我々の希望だ、こんなところで失いたくはない。」
分かってくれー。
たくさんの苦悩を見てきても尚力強いその瞳に、否定の言葉は、もう出てこなかった。