◇第三十一話◇壁外調査初日の洗礼
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カラネス区の外門前に、整然と並ぶ調査兵団の馬と兵士達。
この壁の向こうは巨人の住む世界。
恐ろしい世界へと飛び立とうとする調査兵達のために、たった今この時、援護班達が外門付近の巨人を討伐、もしくは遠ざけてくれている。
今回の壁外調査への参加が中止された新兵達は、トロスト区で待機命令が出ている。
数名の先輩兵士が残り、彼らに特訓等を教えることになっている。
調査兵団の隊列の先頭に陣取るのは、団長のエルヴィン・スミス。その後ろに分隊の隊長達が続く。
私はハンジさんとリヴァイ兵長の後ろにいた。
壁外任務に向かうときは、壁の上から降りていたからあまり感じなかったが、この扉の内と外では全く違う世界なのだと改めて実感した。
この扉を開いたら、もうそこは地獄なのだと、お前は今から走って死に向かうだけだと、この緊迫した空気が脅してくるようだった。
「どうしたの、なまえ?顔色が真っ青だよ?」
「クソでも我慢してんのか。」
ハンジさんとリヴァイ兵長が後ろを振り向き訊ねてくる。
私はむしろ、2人に問いたい。
なぜ、いつも通りの顔をしていられるのか。
「今朝、巨人に食べられる夢を見たそうです。」
私の隣に並ぶルルが言った。
「違う!食べられてないから!食べられそうになっただけ!
縁起の悪いこと言わないでよっ!」
「はいはい、私に叩き起こされて食べられずに済んだんだったね。」
ルルは、必死に否定する私を適当に受け流し、しかも、寝坊したことまでバラす。
リヴァイ兵長の目がギロッと光ったじゃないか。
今日は嫌な予感がする。
帰った方がいい気がする。
やめよう、壁外調査はやめよう。いい夢を見た日にしよう。
「昨日は心ここにあらずって感じだったんですけどね。
今朝、怖い夢を見てようやく現実に気づいたらしいです。」
「現実?」
「自分は巨人よりも背が小さすぎる。」
「アハハ、確かにそうだ。」
ハンジさんが可笑しそう笑った。
笑えるあなたが羨ましい。
帰りたい。
よく考えてみたらわかるだろう。身長差をー!
「付近の巨人はあらかた遠ざけた!!開門30秒前!!」
壁上の駐屯兵が叫ぶ。
どうやら、援護班はしっかりと仕事をこなしたらしい。
私が震える手で手綱を握ると、テュランが嬉しそうに鳴いた。
朝からウキウキ気分のテュランが羨ましい。
今からお散歩にでも出かけるつもりなんだろう。巨人のいる世界へー。
「いよいよだ!!これよりまた人類は一歩前進する!!
お前たちの訓練の成果を見せてくれ!!」
開門が始まった。
いよいよだ―。
「第57回壁外調査を開始する!前進せよ!!」
エルヴィン団長の号令の下、唸るような威勢を上げた兵士達が地獄の門をくぐり、死を覚悟して走り出す。
この中の何人が、帰ってこれるのだろう―。
「大丈夫だよ、なまえ。」
「分かんないよ、そんなの。」
調査兵団の大群に気づいて寄ってきた巨人達を援護班が討伐していく。
彼らの援護を受けられるのは、廃墟となった街を抜けるまで。
そこから先は、立体起動装置を使えない広い草原ー。
「大丈夫!夢みたいに、私がなまえを助けてあげるからっ!ね?」
力強い言葉をくれたルルを見てようやく、私は、彼女の瞳の中にも恐怖と不安が揺れていることに気がついた。
そうだ。
怖いのは、私だけじゃない。
生きて帰りたいのは、私だけじゃない。
「ハンジさん、一旦、離脱します。」
「はぁッ!?」
「ルル、テュランをよろしく…って言っても好き勝手行くと思うけど。」
驚くハンジさん達に告げて、私は、近くの建物にアンカーを飛ばした。
「ちょっとちょっと!なまえ!!どこに行くの!?」
「身長差なんかに負けないんだって気合入れてきます!!」
降りてきなさいとハンジさんが悲鳴みたいな声を上げているのが聞こえたけれど、私は振り向かずに巨人の元へ飛んだ。
だって、聞こえたから。
好きにさせてやれってリヴァイ兵長が言ってくれていたのが。
不思議だけれど、リヴァイ兵長が私の味方だってわかった途端に、目の前で恐ろしい笑顔を浮かべる大きな顔が、全く怖くなくなった。
「行ってきます!!」
巨人を討伐して、私は援護班に敬礼した。
誰よりも早く走って行っていたテュランをルルが連れてきてくれて、盛大に謝った。
この壁の向こうは巨人の住む世界。
恐ろしい世界へと飛び立とうとする調査兵達のために、たった今この時、援護班達が外門付近の巨人を討伐、もしくは遠ざけてくれている。
今回の壁外調査への参加が中止された新兵達は、トロスト区で待機命令が出ている。
数名の先輩兵士が残り、彼らに特訓等を教えることになっている。
調査兵団の隊列の先頭に陣取るのは、団長のエルヴィン・スミス。その後ろに分隊の隊長達が続く。
私はハンジさんとリヴァイ兵長の後ろにいた。
壁外任務に向かうときは、壁の上から降りていたからあまり感じなかったが、この扉の内と外では全く違う世界なのだと改めて実感した。
この扉を開いたら、もうそこは地獄なのだと、お前は今から走って死に向かうだけだと、この緊迫した空気が脅してくるようだった。
「どうしたの、なまえ?顔色が真っ青だよ?」
「クソでも我慢してんのか。」
ハンジさんとリヴァイ兵長が後ろを振り向き訊ねてくる。
私はむしろ、2人に問いたい。
なぜ、いつも通りの顔をしていられるのか。
「今朝、巨人に食べられる夢を見たそうです。」
私の隣に並ぶルルが言った。
「違う!食べられてないから!食べられそうになっただけ!
縁起の悪いこと言わないでよっ!」
「はいはい、私に叩き起こされて食べられずに済んだんだったね。」
ルルは、必死に否定する私を適当に受け流し、しかも、寝坊したことまでバラす。
リヴァイ兵長の目がギロッと光ったじゃないか。
今日は嫌な予感がする。
帰った方がいい気がする。
やめよう、壁外調査はやめよう。いい夢を見た日にしよう。
「昨日は心ここにあらずって感じだったんですけどね。
今朝、怖い夢を見てようやく現実に気づいたらしいです。」
「現実?」
「自分は巨人よりも背が小さすぎる。」
「アハハ、確かにそうだ。」
ハンジさんが可笑しそう笑った。
笑えるあなたが羨ましい。
帰りたい。
よく考えてみたらわかるだろう。身長差をー!
「付近の巨人はあらかた遠ざけた!!開門30秒前!!」
壁上の駐屯兵が叫ぶ。
どうやら、援護班はしっかりと仕事をこなしたらしい。
私が震える手で手綱を握ると、テュランが嬉しそうに鳴いた。
朝からウキウキ気分のテュランが羨ましい。
今からお散歩にでも出かけるつもりなんだろう。巨人のいる世界へー。
「いよいよだ!!これよりまた人類は一歩前進する!!
お前たちの訓練の成果を見せてくれ!!」
開門が始まった。
いよいよだ―。
「第57回壁外調査を開始する!前進せよ!!」
エルヴィン団長の号令の下、唸るような威勢を上げた兵士達が地獄の門をくぐり、死を覚悟して走り出す。
この中の何人が、帰ってこれるのだろう―。
「大丈夫だよ、なまえ。」
「分かんないよ、そんなの。」
調査兵団の大群に気づいて寄ってきた巨人達を援護班が討伐していく。
彼らの援護を受けられるのは、廃墟となった街を抜けるまで。
そこから先は、立体起動装置を使えない広い草原ー。
「大丈夫!夢みたいに、私がなまえを助けてあげるからっ!ね?」
力強い言葉をくれたルルを見てようやく、私は、彼女の瞳の中にも恐怖と不安が揺れていることに気がついた。
そうだ。
怖いのは、私だけじゃない。
生きて帰りたいのは、私だけじゃない。
「ハンジさん、一旦、離脱します。」
「はぁッ!?」
「ルル、テュランをよろしく…って言っても好き勝手行くと思うけど。」
驚くハンジさん達に告げて、私は、近くの建物にアンカーを飛ばした。
「ちょっとちょっと!なまえ!!どこに行くの!?」
「身長差なんかに負けないんだって気合入れてきます!!」
降りてきなさいとハンジさんが悲鳴みたいな声を上げているのが聞こえたけれど、私は振り向かずに巨人の元へ飛んだ。
だって、聞こえたから。
好きにさせてやれってリヴァイ兵長が言ってくれていたのが。
不思議だけれど、リヴァイ兵長が私の味方だってわかった途端に、目の前で恐ろしい笑顔を浮かべる大きな顔が、全く怖くなくなった。
「行ってきます!!」
巨人を討伐して、私は援護班に敬礼した。
誰よりも早く走って行っていたテュランをルルが連れてきてくれて、盛大に謝った。