◇第二十九話◇相応しいパートナー
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ペトラが部屋を訪れたのは、壁外調査の2日前だった。
外で話したいというペトラと訓練場近くにやってきて、ベンチに並んで座る。
あれから、ペトラは普通に声をかけてくれた。
少なくとも、私以外のみんなには、そう見えたようだった。
エルド達も仲直りしたと安心していたようだったから、私とペトラの間に出来てしまった壁に気づかなかったのだろう。
「明後日はいよいよ壁外調査だね。緊張してる?」
最初に口を開いたのは、ペトラだった。
「んー…、緊張してるのか分かんないくらい、
まだ自分の状況が呑み込めてないかな。」
私は、正直に今の気持ちを言葉にした。
壁外任務に出たことがあると言っても、それは壁のすぐそばで逃げ場ならたくさんあったし、ペトラらリヴァイ班やハンジ班が常に私のことを気に掛けてくれていた。
保証された安全はなかったかもしれないが、そこには確かに安全があったと思うし、私も、彼らがいるなら大丈夫だという安心感があった。
でも、今度の壁外調査はそうはいかない。自分の身は自分で守らないといけない場面なんて、たくさんあるだろう。
だから、ちゃんとやれるのか、生きて帰られるのか不安で緊張してるかと言えば、調査兵団に来てからいろんなことがありすぎて、頭がそこまでの思考に追いつけていない。
「私は緊張して眠れなかったけど、なまえの状況ならそうなのかもね。」
それから、ペトラは自分の初めての壁外調査のときのことを話しだした。
訓練兵時代を経て調査兵団を選んだ理由、初めての班やその時の仲間、掴んだ仲間との絆、失った仲間―。
「脅すわけじゃないけど、壁外に出る限り、次の日も命があるとは限らない。」
「うん。」
「だから、今思ってることはちゃんと言わないといけないと思って。
この前、ヒドイこと言ったのは、謝る。ごめん。
でも、私はなまえに負けたくないと思ってる。」
ペトラは意を決したようにそう言うと、まずは先日のことについて謝った。
そして、挑戦的な目で私を見た。
私は、たじろいだ。
どう反応すればいいのか分からない私にペトラは続ける。
「なまえがどんどん実力と技術を身に着けて、焦ってたの。
ハンジさんのお気に入りだからとか、そんなんじゃないって分かってる。
ただ私が…、弱かっただけ。性格悪いね、私。」
困ったように眉尻を下げるペトラは、自分を嫌っているように見えた。
「そんなことないっ!ペトラはいつも優しくて、まわりを見てて、
私がツラいときも、気に掛けてくれてたってハンジさんから聞いたよ。
今、一緒に頑張ろうって言い合える仲間が私にも出来たのは、ペトラがいたからだよ。」
私はペトラの手を握って、まっすぐに目を見つめた。
必死だった。
ペトラの姿が儚くて、いつもの彼女とは違っていて。
なんだか、ペトラが、死を予感しているような気がして。
まるで、こうして話せるのはもう最後みたいな気がして。
そう見えてしまったのは、なにもペトラの儚いオーラのせいだけではないのだろう。
なんだかんだ、私も、壁外調査に不安を感じていたのかもしれない。
必死な私にペトラは驚いたようだったけれど、小さく首を横に振ると弱弱しく言った。
「…違うよ。私はいつも臆病で、だから必死に訓練しただけ。
もっとすごい先輩達がいたのに、その人達を犠牲にして、こうして生き残っちゃってー。」
「生き残っちゃったんじゃない!」
思わず大きな声が出て、私も驚いた。
少しだけ、ううん、すごく怒ってるかもしれない。
ペトラもビックリしたようだった。
「私は経験なんて全くないかもしれないけど、これだけは分かるよ。
今、ペトラが生きてるのは、その勇敢な人達が、ペトラに生きててほしかったからだって。」
「…っ。」
「生き残った人が、それが悪かったみたいに言ったらダメだよ。
それに、なにより、私は、ペトラが生きててよかった。出会えてよかったと思ってる。」
「っ、あり…っ、ありがとうっ。」
ここ最近ずっと、自分のことが嫌いで嫌いで仕方がなかったのだとペトラは泣いた。
何があったか詳しくは言わなかったけれど、ツラいことがあってから、誰かを妬んだり、悔しがったり、自分の中の悪い感情がぷくりぷくりと生まれる度に、自分を嫌いになって行って、どうしようもなかったと言った。
その気持ちが、すごくわかる気がした。
だから、私はペトラを強く抱きしめた。
しばらくして、ペトラは口を開いた。
もう、そこに涙はなくて、意志の強い瞳だけが、私を見ていた。
外で話したいというペトラと訓練場近くにやってきて、ベンチに並んで座る。
あれから、ペトラは普通に声をかけてくれた。
少なくとも、私以外のみんなには、そう見えたようだった。
エルド達も仲直りしたと安心していたようだったから、私とペトラの間に出来てしまった壁に気づかなかったのだろう。
「明後日はいよいよ壁外調査だね。緊張してる?」
最初に口を開いたのは、ペトラだった。
「んー…、緊張してるのか分かんないくらい、
まだ自分の状況が呑み込めてないかな。」
私は、正直に今の気持ちを言葉にした。
壁外任務に出たことがあると言っても、それは壁のすぐそばで逃げ場ならたくさんあったし、ペトラらリヴァイ班やハンジ班が常に私のことを気に掛けてくれていた。
保証された安全はなかったかもしれないが、そこには確かに安全があったと思うし、私も、彼らがいるなら大丈夫だという安心感があった。
でも、今度の壁外調査はそうはいかない。自分の身は自分で守らないといけない場面なんて、たくさんあるだろう。
だから、ちゃんとやれるのか、生きて帰られるのか不安で緊張してるかと言えば、調査兵団に来てからいろんなことがありすぎて、頭がそこまでの思考に追いつけていない。
「私は緊張して眠れなかったけど、なまえの状況ならそうなのかもね。」
それから、ペトラは自分の初めての壁外調査のときのことを話しだした。
訓練兵時代を経て調査兵団を選んだ理由、初めての班やその時の仲間、掴んだ仲間との絆、失った仲間―。
「脅すわけじゃないけど、壁外に出る限り、次の日も命があるとは限らない。」
「うん。」
「だから、今思ってることはちゃんと言わないといけないと思って。
この前、ヒドイこと言ったのは、謝る。ごめん。
でも、私はなまえに負けたくないと思ってる。」
ペトラは意を決したようにそう言うと、まずは先日のことについて謝った。
そして、挑戦的な目で私を見た。
私は、たじろいだ。
どう反応すればいいのか分からない私にペトラは続ける。
「なまえがどんどん実力と技術を身に着けて、焦ってたの。
ハンジさんのお気に入りだからとか、そんなんじゃないって分かってる。
ただ私が…、弱かっただけ。性格悪いね、私。」
困ったように眉尻を下げるペトラは、自分を嫌っているように見えた。
「そんなことないっ!ペトラはいつも優しくて、まわりを見てて、
私がツラいときも、気に掛けてくれてたってハンジさんから聞いたよ。
今、一緒に頑張ろうって言い合える仲間が私にも出来たのは、ペトラがいたからだよ。」
私はペトラの手を握って、まっすぐに目を見つめた。
必死だった。
ペトラの姿が儚くて、いつもの彼女とは違っていて。
なんだか、ペトラが、死を予感しているような気がして。
まるで、こうして話せるのはもう最後みたいな気がして。
そう見えてしまったのは、なにもペトラの儚いオーラのせいだけではないのだろう。
なんだかんだ、私も、壁外調査に不安を感じていたのかもしれない。
必死な私にペトラは驚いたようだったけれど、小さく首を横に振ると弱弱しく言った。
「…違うよ。私はいつも臆病で、だから必死に訓練しただけ。
もっとすごい先輩達がいたのに、その人達を犠牲にして、こうして生き残っちゃってー。」
「生き残っちゃったんじゃない!」
思わず大きな声が出て、私も驚いた。
少しだけ、ううん、すごく怒ってるかもしれない。
ペトラもビックリしたようだった。
「私は経験なんて全くないかもしれないけど、これだけは分かるよ。
今、ペトラが生きてるのは、その勇敢な人達が、ペトラに生きててほしかったからだって。」
「…っ。」
「生き残った人が、それが悪かったみたいに言ったらダメだよ。
それに、なにより、私は、ペトラが生きててよかった。出会えてよかったと思ってる。」
「っ、あり…っ、ありがとうっ。」
ここ最近ずっと、自分のことが嫌いで嫌いで仕方がなかったのだとペトラは泣いた。
何があったか詳しくは言わなかったけれど、ツラいことがあってから、誰かを妬んだり、悔しがったり、自分の中の悪い感情がぷくりぷくりと生まれる度に、自分を嫌いになって行って、どうしようもなかったと言った。
その気持ちが、すごくわかる気がした。
だから、私はペトラを強く抱きしめた。
しばらくして、ペトラは口を開いた。
もう、そこに涙はなくて、意志の強い瞳だけが、私を見ていた。