◇第二話◇異文化の屋敷と女帝
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
すれ違った彼女が、協力者なのかどうか、そもそも、この屋敷の住人なのかどうかも分からない調査兵団一行が、彼女達に声をかけることも出来ない。
マーレに住む人類とパラディ島のエルディア人が恋に落ちたらどうなるのだろうかとしきりに訊ねてくるハンジを、エルヴィンがなだめているうちに、漸く玄関ホールに辿り着いた。
護衛兵からいつの間にか連絡が届いていたのか、ホール前で侍女が待っていた。
丁寧な挨拶の後、彼女に案内されて、リヴァイ達はいよいよ屋敷の中へと入っていく。
「すげぇ…。」
思わず、感嘆の声を上げたのはコニーだった。
大きな窓からの彩光により明るい玄関は、ここでパーティーを開催できそうなほどに広い。
「どうぞ、こちらです。」
侍女に続き、エルヴィンを先頭にしてリヴァイ達も屋敷の奥へと向かう。
敵陣に乗り込むような緊張感が漂う幹部の3人とは対照的に、104期調査兵のエレン達は、見たこともない豪華な屋敷の内装に興味津々にあちこちに視線を彷徨わせていた。
「この長い部屋は、何のための部屋ですか?」
不思議そうに辺りを見渡していたサシャが、前を歩く侍女に訊ねた。
「…こちらはお部屋ではありません。廊下でございます。」
一瞬の躊躇いの後、侍女がとても丁寧に答えた。
その途端に、ハンジがブッと笑いを噴き出した。
エルヴィンは苦笑を漏らし、リヴァイがため息を吐く。
「サシャ、マジでお願いだから黙っててくれ。」
恥ずかしい、恥ずかしい——とジャンが繰り返す。
彼の注意は聞き流したサシャだったが、リヴァイに命の危機を感じるほどに睨まれて、漸く静かになった。
だが、確かに、サシャが、部屋だと間違えてしまうのも仕方がなかったかもしれない。
幅は、調査兵団一行が横に並んで歩いてもあまりがあるほどで、壁には、凄いのかどうかも分からない絵画が幾つも飾られている。
それは、向こうの壁が小さく見えてしまう程に長く続いていた。
その為、廊下の途中で、使用人と思われる男女と何度もすれ違った。
彼らにもリヴァイ達のことが伝わっているのだろう。
この屋敷の主人の友人家族ということになっているリヴァイ達を見つけると、どの使用人も立ち止まり、深々と頭を下げた。
そして、リヴァイ達が通り過ぎるまで、絶対に頭を上げないのだ。
思わず、恐縮してしまうほどのお辞儀だったが、侍女は当然のことのように受け入れていたから、これがこの屋敷での決まりなのだろう。
しばらく歩いた後、階段を上がった一番奥の部屋に案内された。
侍女により、ゆっくりと扉が開かれる。
応接室のような部屋だった。
でも、広さが調査兵団の兵舎のそれとは全く違う。
ソファもテーブルも、大きさだけではなく質も違う。
そのソファのそばに立っているのは、見たことのない洋服を着ている女性だった。
若くはないが、あまり見たことのない顔立ちをしている彼女は、実年齢よりもだいぶ若く見えている気がした。
恐らく、彼女がこの屋敷の主人なのだろう———。
彼女から放たれるピリリと肌を刺すような緊張感とオーラから、リヴァイ達も感じ取る。
彼女が目配せをすると、侍女は頭を下げて部屋を出ていく。
扉が閉まったのを確認して、漸く、彼女が口を開いた。
「遠いところから遥々、ようこそいらっしゃいました。」
スッと通る声は、自信に満ち溢れている。
腹の前で両手を重ね、しゃんと背筋を伸ばして立つ彼女の堂々とした振る舞いが、余計にそう思わせたのかもしれない。
彼女が、新しい協力者。ヒイズル国の一族であるアズマビト家の当主、キヨミ・アズマビトである。
外交官として各国に顔が利く名士であり、その際に、反マーレ派のイェレナ達とも交流を持つようになったのが、今回の協力へと繋がったようだ。
「長旅でお疲れでしょう。お座りになってください。」
キヨミに促され、リヴァイ達はソファへ腰を降ろす。
全員が座ったのを確認し、自らも向かいのソファへ腰を降ろした後、もう一度、キヨミが口を開いた。
「さぁ、我々の輝かしい未来についてお話をしましょうか。」
キヨミが、物腰柔らかく微笑んだ。
優しい眼差しの奥が、鋭く光る。まるで、狙いを定めた獲物を決して逃がしはしない鷹のように————。
マーレに住む人類とパラディ島のエルディア人が恋に落ちたらどうなるのだろうかとしきりに訊ねてくるハンジを、エルヴィンがなだめているうちに、漸く玄関ホールに辿り着いた。
護衛兵からいつの間にか連絡が届いていたのか、ホール前で侍女が待っていた。
丁寧な挨拶の後、彼女に案内されて、リヴァイ達はいよいよ屋敷の中へと入っていく。
「すげぇ…。」
思わず、感嘆の声を上げたのはコニーだった。
大きな窓からの彩光により明るい玄関は、ここでパーティーを開催できそうなほどに広い。
「どうぞ、こちらです。」
侍女に続き、エルヴィンを先頭にしてリヴァイ達も屋敷の奥へと向かう。
敵陣に乗り込むような緊張感が漂う幹部の3人とは対照的に、104期調査兵のエレン達は、見たこともない豪華な屋敷の内装に興味津々にあちこちに視線を彷徨わせていた。
「この長い部屋は、何のための部屋ですか?」
不思議そうに辺りを見渡していたサシャが、前を歩く侍女に訊ねた。
「…こちらはお部屋ではありません。廊下でございます。」
一瞬の躊躇いの後、侍女がとても丁寧に答えた。
その途端に、ハンジがブッと笑いを噴き出した。
エルヴィンは苦笑を漏らし、リヴァイがため息を吐く。
「サシャ、マジでお願いだから黙っててくれ。」
恥ずかしい、恥ずかしい——とジャンが繰り返す。
彼の注意は聞き流したサシャだったが、リヴァイに命の危機を感じるほどに睨まれて、漸く静かになった。
だが、確かに、サシャが、部屋だと間違えてしまうのも仕方がなかったかもしれない。
幅は、調査兵団一行が横に並んで歩いてもあまりがあるほどで、壁には、凄いのかどうかも分からない絵画が幾つも飾られている。
それは、向こうの壁が小さく見えてしまう程に長く続いていた。
その為、廊下の途中で、使用人と思われる男女と何度もすれ違った。
彼らにもリヴァイ達のことが伝わっているのだろう。
この屋敷の主人の友人家族ということになっているリヴァイ達を見つけると、どの使用人も立ち止まり、深々と頭を下げた。
そして、リヴァイ達が通り過ぎるまで、絶対に頭を上げないのだ。
思わず、恐縮してしまうほどのお辞儀だったが、侍女は当然のことのように受け入れていたから、これがこの屋敷での決まりなのだろう。
しばらく歩いた後、階段を上がった一番奥の部屋に案内された。
侍女により、ゆっくりと扉が開かれる。
応接室のような部屋だった。
でも、広さが調査兵団の兵舎のそれとは全く違う。
ソファもテーブルも、大きさだけではなく質も違う。
そのソファのそばに立っているのは、見たことのない洋服を着ている女性だった。
若くはないが、あまり見たことのない顔立ちをしている彼女は、実年齢よりもだいぶ若く見えている気がした。
恐らく、彼女がこの屋敷の主人なのだろう———。
彼女から放たれるピリリと肌を刺すような緊張感とオーラから、リヴァイ達も感じ取る。
彼女が目配せをすると、侍女は頭を下げて部屋を出ていく。
扉が閉まったのを確認して、漸く、彼女が口を開いた。
「遠いところから遥々、ようこそいらっしゃいました。」
スッと通る声は、自信に満ち溢れている。
腹の前で両手を重ね、しゃんと背筋を伸ばして立つ彼女の堂々とした振る舞いが、余計にそう思わせたのかもしれない。
彼女が、新しい協力者。ヒイズル国の一族であるアズマビト家の当主、キヨミ・アズマビトである。
外交官として各国に顔が利く名士であり、その際に、反マーレ派のイェレナ達とも交流を持つようになったのが、今回の協力へと繋がったようだ。
「長旅でお疲れでしょう。お座りになってください。」
キヨミに促され、リヴァイ達はソファへ腰を降ろす。
全員が座ったのを確認し、自らも向かいのソファへ腰を降ろした後、もう一度、キヨミが口を開いた。
「さぁ、我々の輝かしい未来についてお話をしましょうか。」
キヨミが、物腰柔らかく微笑んだ。
優しい眼差しの奥が、鋭く光る。まるで、狙いを定めた獲物を決して逃がしはしない鷹のように————。