◇第十七話◇お嬢様への好き嫌い
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数日後、エルヴィンに呼び出されたリヴァイは、なまえを部屋に残し、団長室にやってきていた。
部屋に入ると、デスクで資料の確認をしていたらしいエルヴィンが顔を上げる。
読み物をしているときにだけかける眼鏡が、デスク奥の大きな窓から射す夕陽に反射して光り、眩しい。
「あぁ、待っていたよ。」
エルヴィンは、眼鏡をはずしながら言うと、資料をデスクの引き出しに片付ける。
「なんだ。」
リヴァイは、エルヴィンの方を見ようともせずに、短く言って、中央のソファにドカリと腰を降ろした。
すぐに、デスクの方からククッと喉を鳴らすような笑い声が届く。
「随分と機嫌が悪いようだな。」
セリフの割には、楽しそうにエルヴィンが言う。
「誰のせいだと思ってんだ。」
「私かな。」
ククッと笑いを堪えながら、エルヴィンが答える。
どうやら、自覚はあるらしい。
「それで?ここ数日、調査兵団の兵舎を隅々まで案内してみて
お嬢様の様子はどうだい?調査兵達とはうまくやってくれているかな?」
「あぁ。何も問題ねぇ。
順調に、調査兵達に嫌われていってるよ。」
「ハハ、それはよかった。」
エルヴィンが可笑しそうに言う。
何も面白くない———そう思いながら、リヴァイは、視線だけでエルヴィンの方を見る。
(…!)
リヴァイは、驚いた。
エルヴィンは、本当に『それはよかった。』という表情をしていたのだ。
いや、それとも少し違うかもしれない。
満足気とも違う。
誰かが見れば、温和で優しい笑みに見えただろう。
だが、リヴァイには、エルヴィンが悪い顔をしているように見えるのだ。
口の端はニヤリと上がり、瞳は獲物を狙うときの静かな猛獣のようにギラリと光っている。
長い付き合いのリヴァイにだからこそわかる。
彼は、何かを企んでいる。そしてそれは、今、とても順調にうまくいっているらしい。
「お前、何を考えてやがる。」
「私はただ、お嬢様にこのパラディ島にずっといたいと思って欲しいだけだよ。」
そんなのは死んでも御免だ———。
反射的にそう思ってしまったリヴァイの眉が思いきり顰められると、エルヴィンが笑いを吹き出した。
「そんなにお嬢様の相手は大変なのか?」
「分かってんなら、今すぐ俺を世話役から外せ。」
リヴァイにとっては、当然の主張だった。
工事中であるなまえの部屋が出来上がるまで、あと数日以上かかると聞いている。その間、自分の部屋ですら休めずに、お嬢様の面倒を見続けなければならないことになる。
気づけば周りに人が集まってしまうリヴァイは、一匹狼とも違うが、ひとりでいることを好む。誰にもペースを乱されずにいられるからだ。
だから、マイペースに我儘ばかりを繰り返すお嬢様の世話役として1日を潰されるなんて、正直地獄でしかないのだ。
だが、エルヴィンの目がすぅっと細くなると、ひどく満足気に微笑んだ。
それこそ、計画は順調だ———とでも言うように。
「だからこそ、リヴァイを世話役にしたんだ。」
「・・・あ?」
エルヴィンは、周りが見えているものよりももっと先が見えている。
今もきっと、この世界にとって、何かとてつもなく重要なことを考えているのだろう。
だが、リヴァイにとっては、全く意味の分からない見解だった。
どういうことか———知りたいとは思うが、聞いても無駄であることも分かっている。
最後の最後まで、計画を沈黙していることはないだろうから、いずれ話すつもりなのだろう。
そして、何も言わないということは、今はそのときではないということだ。
「まぁ、そうは言っても、この世界にとって大切な最強の兵士が
お嬢様にエネルギーを吸われて倒れてしまってはいけない。
明日からの出張の間は、モブリットになまえの世話役をお願いすることにしよう。」
「出張?」
さらりとエルヴィンが言ったが、出張の話なんか聞いていない。
「あぁ、実は、王都からなまえを連れてくるようにと指示が届いたんだ。」
「そういうことか。」
「その前に、ストヘス区の憲兵団本部にも寄って今後についての会議も行う。
ミケとハンジ、モブリットも同行予定だ。」
「あぁ…それでモブリットか。」
「あぁ。彼なら、大抵の奇行種はうまく扱えるからね。」
「アレは…奇行種の方がマシに思えるけどな。」
リヴァイが、ボソリと呟いたそれがよほど面白かったのか、エルヴィンが、楽しそうにククッと喉を鳴らす。
そして———。
「モブリットに頑張ってもらうしかない。」
エルヴィンが、とても楽しそうに口の端を上げた。
部屋に入ると、デスクで資料の確認をしていたらしいエルヴィンが顔を上げる。
読み物をしているときにだけかける眼鏡が、デスク奥の大きな窓から射す夕陽に反射して光り、眩しい。
「あぁ、待っていたよ。」
エルヴィンは、眼鏡をはずしながら言うと、資料をデスクの引き出しに片付ける。
「なんだ。」
リヴァイは、エルヴィンの方を見ようともせずに、短く言って、中央のソファにドカリと腰を降ろした。
すぐに、デスクの方からククッと喉を鳴らすような笑い声が届く。
「随分と機嫌が悪いようだな。」
セリフの割には、楽しそうにエルヴィンが言う。
「誰のせいだと思ってんだ。」
「私かな。」
ククッと笑いを堪えながら、エルヴィンが答える。
どうやら、自覚はあるらしい。
「それで?ここ数日、調査兵団の兵舎を隅々まで案内してみて
お嬢様の様子はどうだい?調査兵達とはうまくやってくれているかな?」
「あぁ。何も問題ねぇ。
順調に、調査兵達に嫌われていってるよ。」
「ハハ、それはよかった。」
エルヴィンが可笑しそうに言う。
何も面白くない———そう思いながら、リヴァイは、視線だけでエルヴィンの方を見る。
(…!)
リヴァイは、驚いた。
エルヴィンは、本当に『それはよかった。』という表情をしていたのだ。
いや、それとも少し違うかもしれない。
満足気とも違う。
誰かが見れば、温和で優しい笑みに見えただろう。
だが、リヴァイには、エルヴィンが悪い顔をしているように見えるのだ。
口の端はニヤリと上がり、瞳は獲物を狙うときの静かな猛獣のようにギラリと光っている。
長い付き合いのリヴァイにだからこそわかる。
彼は、何かを企んでいる。そしてそれは、今、とても順調にうまくいっているらしい。
「お前、何を考えてやがる。」
「私はただ、お嬢様にこのパラディ島にずっといたいと思って欲しいだけだよ。」
そんなのは死んでも御免だ———。
反射的にそう思ってしまったリヴァイの眉が思いきり顰められると、エルヴィンが笑いを吹き出した。
「そんなにお嬢様の相手は大変なのか?」
「分かってんなら、今すぐ俺を世話役から外せ。」
リヴァイにとっては、当然の主張だった。
工事中であるなまえの部屋が出来上がるまで、あと数日以上かかると聞いている。その間、自分の部屋ですら休めずに、お嬢様の面倒を見続けなければならないことになる。
気づけば周りに人が集まってしまうリヴァイは、一匹狼とも違うが、ひとりでいることを好む。誰にもペースを乱されずにいられるからだ。
だから、マイペースに我儘ばかりを繰り返すお嬢様の世話役として1日を潰されるなんて、正直地獄でしかないのだ。
だが、エルヴィンの目がすぅっと細くなると、ひどく満足気に微笑んだ。
それこそ、計画は順調だ———とでも言うように。
「だからこそ、リヴァイを世話役にしたんだ。」
「・・・あ?」
エルヴィンは、周りが見えているものよりももっと先が見えている。
今もきっと、この世界にとって、何かとてつもなく重要なことを考えているのだろう。
だが、リヴァイにとっては、全く意味の分からない見解だった。
どういうことか———知りたいとは思うが、聞いても無駄であることも分かっている。
最後の最後まで、計画を沈黙していることはないだろうから、いずれ話すつもりなのだろう。
そして、何も言わないということは、今はそのときではないということだ。
「まぁ、そうは言っても、この世界にとって大切な最強の兵士が
お嬢様にエネルギーを吸われて倒れてしまってはいけない。
明日からの出張の間は、モブリットになまえの世話役をお願いすることにしよう。」
「出張?」
さらりとエルヴィンが言ったが、出張の話なんか聞いていない。
「あぁ、実は、王都からなまえを連れてくるようにと指示が届いたんだ。」
「そういうことか。」
「その前に、ストヘス区の憲兵団本部にも寄って今後についての会議も行う。
ミケとハンジ、モブリットも同行予定だ。」
「あぁ…それでモブリットか。」
「あぁ。彼なら、大抵の奇行種はうまく扱えるからね。」
「アレは…奇行種の方がマシに思えるけどな。」
リヴァイが、ボソリと呟いたそれがよほど面白かったのか、エルヴィンが、楽しそうにククッと喉を鳴らす。
そして———。
「モブリットに頑張ってもらうしかない。」
エルヴィンが、とても楽しそうに口の端を上げた。