◇第十五話◇我儘に安眠を奪われる
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シャワーを浴び終わったリヴァイは、普段なら裸のままで部屋を歩き回るところを、きちんと寝間着に着替えてから出てきた。
また、なまえに悲鳴を上げられるのが面倒だったからだ。
肩にかけたタオルで、髪を雑に拭きながら、部屋の中にいるはずのなまえを探す。
本来なら、今夜からは、綺麗に掃除をしたばかりのハンジの部屋を使う彼女は、ここにいるはずではない。
その為に、彼女がわざわざマーレからパラディ島まで持ってきて、第一会議室に収納しておいた家具や荷物を、部下に指示を出して、廊下に運ばせておいたのだ。
だが、クイーンサイズのベッドや鏡台を搬入するには、ハンジの部屋が狭すぎた。
部屋を広くするには、隣の部屋との壁を壊し、部屋同士を繋げるしかない。
ハンジの隣の部屋を使っているミケが、最後まで抵抗したものの、なまえの『こんな狭い豚小屋は私の部屋にはふさわしくない。』という宣言により、エルヴィンの許可が簡単に下りて、部屋の壁を壊し、隣の部屋と繋げる工事が決まってしまった。
工事は明日。終わるのは、一週間を目途に考えている。
それまでは、なまえはリヴァイの部屋に逆戻りというわけだ。
(また勝手に出歩いてんのか。)
小さく舌打ちをして、部屋を出ようとしたリヴァイは、バルコニーに続くカーテンがハラりと揺れたのに気が付いた。
よく見れば、カーテンの隙間から、なまえの背中が見える。
部屋を出ていたわけではなかったようだ。
邪魔なカーテンを軽く開ける。
なまえは、バルコニーの柵に両腕を乗せるようにして寄りかかり、裏庭を見下ろしていた。
「まだサクラは咲かねぇぞ。」
リヴァイも、バルコニーに一歩足を踏み入れる。
不意に声をかけられたはずのなまえに、驚いたような様子はなかった。
リヴァイがバスルームから出てきたことに気づいていたのかもしれない。
「当たり前でしょ。そんなこと考えもしなかったわ。
あなたって本当に脳みそが筋肉の馬鹿なのね。」
いちいち癇に障る女だ。
それに、いちいち反応するのも面倒である。
「なら、何を見てたんだ。」
リヴァイもなまえの隣に並び、裏庭を見下ろす。
でも、そこにあるのは、ところどころが禿げた芝生の中央に、ポツンと寂しそうに立っている桜の木だけだ。
調査兵達に対する嫌がらせだったのかは分からないが、それなりに育った苗木を持ってきたようだが、アズマビト家の屋敷で見たような立派な幹はまだなく、細く小さい。
「自分勝手な大人に振り回されて、死にそうになってる子供。」
「あ?」
本当に死にそうな子供がいるのなら、すぐに保護しなければならない。
だが、もちろん、調査兵団兵舎の裏庭には、子供どころか、人影すらない。
一体、何を言っているのか———リヴァイは、なまえの方を向く。
なまえは、相変わらず、裏庭を見下ろしていた。
大きめに縁取られた形の良い瞳は、今夜も人形のように生気がない。
だがそこに、悲しみが浮かんでいるように見えた。
でもそれも、なまえが、裏庭からすっと視線を逸らすようにバルコニーに背を向けたことで見えなくなる。
「この世界で、英雄と称されるあなたには見えないわ。」
なまえはそう言いながら、部屋へと戻っていく。
お嬢様を守るのに一番ふさわしい人物を選んだと信じてほしいエルヴィンが、リヴァイのことを〝この世界の英雄〟だと紹介したとき、全く興味なさそうに明後日の方向を見ていた割に、しっかりと覚えていたらしい。
「今日は俺がベッドで寝るからな。」
部屋に戻ったリヴァイは、バルコニーに続く窓とカーテンを閉める。
本当は、長旅で疲れた昨日こそ、ベッドで眠りたかったのだ。
だが、ぐっすりと眠っているお嬢様を起こして面倒なことになるよりは、ベッドを奪われた方がマシだと判断して、仕方なく譲った。
今日こそは、ベッドを取り返す———。
振り返り、部屋の中を見たリヴァイは、既にベッドの中で眠っているなまえを見つける。
「クソが。」
大きく舌打ちをこぼす。
こうなることは、なまえが今夜もリヴァイの部屋に泊まることが決まったときから分かっていた。
ベッドでの安眠を取り返すためにも、リヴァイは、工事を任された不憫な部下達に、急ピッチで進めさせることを心に誓った。
また、なまえに悲鳴を上げられるのが面倒だったからだ。
肩にかけたタオルで、髪を雑に拭きながら、部屋の中にいるはずのなまえを探す。
本来なら、今夜からは、綺麗に掃除をしたばかりのハンジの部屋を使う彼女は、ここにいるはずではない。
その為に、彼女がわざわざマーレからパラディ島まで持ってきて、第一会議室に収納しておいた家具や荷物を、部下に指示を出して、廊下に運ばせておいたのだ。
だが、クイーンサイズのベッドや鏡台を搬入するには、ハンジの部屋が狭すぎた。
部屋を広くするには、隣の部屋との壁を壊し、部屋同士を繋げるしかない。
ハンジの隣の部屋を使っているミケが、最後まで抵抗したものの、なまえの『こんな狭い豚小屋は私の部屋にはふさわしくない。』という宣言により、エルヴィンの許可が簡単に下りて、部屋の壁を壊し、隣の部屋と繋げる工事が決まってしまった。
工事は明日。終わるのは、一週間を目途に考えている。
それまでは、なまえはリヴァイの部屋に逆戻りというわけだ。
(また勝手に出歩いてんのか。)
小さく舌打ちをして、部屋を出ようとしたリヴァイは、バルコニーに続くカーテンがハラりと揺れたのに気が付いた。
よく見れば、カーテンの隙間から、なまえの背中が見える。
部屋を出ていたわけではなかったようだ。
邪魔なカーテンを軽く開ける。
なまえは、バルコニーの柵に両腕を乗せるようにして寄りかかり、裏庭を見下ろしていた。
「まだサクラは咲かねぇぞ。」
リヴァイも、バルコニーに一歩足を踏み入れる。
不意に声をかけられたはずのなまえに、驚いたような様子はなかった。
リヴァイがバスルームから出てきたことに気づいていたのかもしれない。
「当たり前でしょ。そんなこと考えもしなかったわ。
あなたって本当に脳みそが筋肉の馬鹿なのね。」
いちいち癇に障る女だ。
それに、いちいち反応するのも面倒である。
「なら、何を見てたんだ。」
リヴァイもなまえの隣に並び、裏庭を見下ろす。
でも、そこにあるのは、ところどころが禿げた芝生の中央に、ポツンと寂しそうに立っている桜の木だけだ。
調査兵達に対する嫌がらせだったのかは分からないが、それなりに育った苗木を持ってきたようだが、アズマビト家の屋敷で見たような立派な幹はまだなく、細く小さい。
「自分勝手な大人に振り回されて、死にそうになってる子供。」
「あ?」
本当に死にそうな子供がいるのなら、すぐに保護しなければならない。
だが、もちろん、調査兵団兵舎の裏庭には、子供どころか、人影すらない。
一体、何を言っているのか———リヴァイは、なまえの方を向く。
なまえは、相変わらず、裏庭を見下ろしていた。
大きめに縁取られた形の良い瞳は、今夜も人形のように生気がない。
だがそこに、悲しみが浮かんでいるように見えた。
でもそれも、なまえが、裏庭からすっと視線を逸らすようにバルコニーに背を向けたことで見えなくなる。
「この世界で、英雄と称されるあなたには見えないわ。」
なまえはそう言いながら、部屋へと戻っていく。
お嬢様を守るのに一番ふさわしい人物を選んだと信じてほしいエルヴィンが、リヴァイのことを〝この世界の英雄〟だと紹介したとき、全く興味なさそうに明後日の方向を見ていた割に、しっかりと覚えていたらしい。
「今日は俺がベッドで寝るからな。」
部屋に戻ったリヴァイは、バルコニーに続く窓とカーテンを閉める。
本当は、長旅で疲れた昨日こそ、ベッドで眠りたかったのだ。
だが、ぐっすりと眠っているお嬢様を起こして面倒なことになるよりは、ベッドを奪われた方がマシだと判断して、仕方なく譲った。
今日こそは、ベッドを取り返す———。
振り返り、部屋の中を見たリヴァイは、既にベッドの中で眠っているなまえを見つける。
「クソが。」
大きく舌打ちをこぼす。
こうなることは、なまえが今夜もリヴァイの部屋に泊まることが決まったときから分かっていた。
ベッドでの安眠を取り返すためにも、リヴァイは、工事を任された不憫な部下達に、急ピッチで進めさせることを心に誓った。