◇第十二話◇諦めを植えて、枯れるのを待つ
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カーテンを閉め切った部屋も、昼間の強い日差しには敵わず、明るさを零してしまっている。
窓の外からは、訓練や任務に励む仲間達の声も漏れて聞こえていたが、それらが、リヴァイの眠りを妨げることはなかった。
いつものリヴァイなら、明かりもない静かな部屋でなければ眠れなかったはずだ。
脚をくんで椅子に座り、テーブルに肘をつくような不安定な恰好なら、尚更だ。
長旅と慣れない屋敷での生活の疲れがたまっていた身体は、休息を欲していたようだ。
しばらくして、漸く、リヴァイが目を覚ました時にはもう、ベッドの上で眠っていたはずのなまえの姿が消えていたのだ。
空っぽのベッドを見つけたリヴァイは、ぼんやりとした頭で、なぜ自分がマズいと思っているのかと思考を巡らせ、なまえのことを思いだす。
「チッ。」
状況を理解した途端、無意識に、舌打ちが出る。
エルヴィンには、一時も目を離さずに見ておくようにと命令されている。
それなのに、ここが何処かもよく分かっていないはずのなまえは、一体、どこへ行ったのか。
すぐにリヴァイが向かったのは、部屋の外ではなく、窓だった。
リヴァイの部屋の窓の外は、裏庭になっている。
そして、アズマビト家の屋敷でも、なまえがよく部屋の外の裏庭にいた。
アズマビト家の屋敷の裏庭も、一本のサクラの木と朽ちたベンチが置いてあるだけの寂しい場所だったが、調査兵団の兵舎のそれは、そういう問題ですらない。
ところどころ剥げてかたくなった土が見えているくせに、気を抜くとすぐに伸び放題になる芝生が広がっているだけだ。
手入れをしているのは、リヴァイに命令されたリヴァイ班のメンバーだけで、普段は誰も立ち寄りもしない。
本当にただ、調査兵団兵舎の裏、というだけの場所だ。
そんな場所に、マーレでお姫様の様に振舞っていた女がいるとは、普通は思わないかもしれない。
でも、リヴァイの勘は当たっていた。
3階の窓から見下ろしたそこに、なまえはいた。
何もない裏庭を、ただぼんやりと眺めている。
きっと、目が覚めた後に、この窓から裏庭を見つけて、すぐに降りて向かったのだろう。
「何をやってやがる。勝手に動き回るんじゃねぇ。」
リヴァイは、裏庭にいるなまえに声をかけた。
普段からあまり大きな声を出す方ではない。
だが、3階の窓から裏庭にいるなまえに聞こえる為に、いつもよりも声を張った。
そのおかげか、なまえはすぐに気が付いて、顔を上げた。
驚いたような表情も、不機嫌な表情もない。
そもそも、表情がないのだ。
欠点なんてひとつもなさそうな綺麗な顔は、表情に生気がないせいで、人形を見ているような錯覚に陥ってしまいそうになる。
「ちょうどよかったわ。桜の苗木を持ってきて。」
「あ?」
「ここに植えなさいって言ってるの。」
「なんで俺が———。」
「早くして。今すぐ。」
「チッ。
———すぐに行くからそこから動くんじゃねぇぞ。」
覗き込んでいた窓から背を向けながら言ったリヴァイは、すぐに部屋を出た。
好きで、若い女ひとりの言いなりになっているわけではない。
出来るなら、声も聞こえない場所にいたいくらいだ。
でも、残念ながら、リヴァイは、なまえの機嫌を損ねないようにとエルヴィンから言われている。
彼が何を考えているのかは、まだ話してはくれていないが、おそらく、今後の為になまえは必要な人間なのだろう。
(仕方ねぇ。これも任務だ。)
リヴァイは、自分にそう言い聞かせることで、苛立ちを抑え込んだ。
窓の外からは、訓練や任務に励む仲間達の声も漏れて聞こえていたが、それらが、リヴァイの眠りを妨げることはなかった。
いつものリヴァイなら、明かりもない静かな部屋でなければ眠れなかったはずだ。
脚をくんで椅子に座り、テーブルに肘をつくような不安定な恰好なら、尚更だ。
長旅と慣れない屋敷での生活の疲れがたまっていた身体は、休息を欲していたようだ。
しばらくして、漸く、リヴァイが目を覚ました時にはもう、ベッドの上で眠っていたはずのなまえの姿が消えていたのだ。
空っぽのベッドを見つけたリヴァイは、ぼんやりとした頭で、なぜ自分がマズいと思っているのかと思考を巡らせ、なまえのことを思いだす。
「チッ。」
状況を理解した途端、無意識に、舌打ちが出る。
エルヴィンには、一時も目を離さずに見ておくようにと命令されている。
それなのに、ここが何処かもよく分かっていないはずのなまえは、一体、どこへ行ったのか。
すぐにリヴァイが向かったのは、部屋の外ではなく、窓だった。
リヴァイの部屋の窓の外は、裏庭になっている。
そして、アズマビト家の屋敷でも、なまえがよく部屋の外の裏庭にいた。
アズマビト家の屋敷の裏庭も、一本のサクラの木と朽ちたベンチが置いてあるだけの寂しい場所だったが、調査兵団の兵舎のそれは、そういう問題ですらない。
ところどころ剥げてかたくなった土が見えているくせに、気を抜くとすぐに伸び放題になる芝生が広がっているだけだ。
手入れをしているのは、リヴァイに命令されたリヴァイ班のメンバーだけで、普段は誰も立ち寄りもしない。
本当にただ、調査兵団兵舎の裏、というだけの場所だ。
そんな場所に、マーレでお姫様の様に振舞っていた女がいるとは、普通は思わないかもしれない。
でも、リヴァイの勘は当たっていた。
3階の窓から見下ろしたそこに、なまえはいた。
何もない裏庭を、ただぼんやりと眺めている。
きっと、目が覚めた後に、この窓から裏庭を見つけて、すぐに降りて向かったのだろう。
「何をやってやがる。勝手に動き回るんじゃねぇ。」
リヴァイは、裏庭にいるなまえに声をかけた。
普段からあまり大きな声を出す方ではない。
だが、3階の窓から裏庭にいるなまえに聞こえる為に、いつもよりも声を張った。
そのおかげか、なまえはすぐに気が付いて、顔を上げた。
驚いたような表情も、不機嫌な表情もない。
そもそも、表情がないのだ。
欠点なんてひとつもなさそうな綺麗な顔は、表情に生気がないせいで、人形を見ているような錯覚に陥ってしまいそうになる。
「ちょうどよかったわ。桜の苗木を持ってきて。」
「あ?」
「ここに植えなさいって言ってるの。」
「なんで俺が———。」
「早くして。今すぐ。」
「チッ。
———すぐに行くからそこから動くんじゃねぇぞ。」
覗き込んでいた窓から背を向けながら言ったリヴァイは、すぐに部屋を出た。
好きで、若い女ひとりの言いなりになっているわけではない。
出来るなら、声も聞こえない場所にいたいくらいだ。
でも、残念ながら、リヴァイは、なまえの機嫌を損ねないようにとエルヴィンから言われている。
彼が何を考えているのかは、まだ話してはくれていないが、おそらく、今後の為になまえは必要な人間なのだろう。
(仕方ねぇ。これも任務だ。)
リヴァイは、自分にそう言い聞かせることで、苛立ちを抑え込んだ。