◇第十一話◇お嬢様連れの帰還
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壁外の港からトロスト区にある調査兵団兵舎までは、馬車で数日かかる。
その為、初めての馬車での長旅に疲労困憊してしまった様子のなまえは、初めこそ『お腹が空いたわ。』『喉が渇いたわ。』『甘いものが食べたいんだけど。』と要求していたものの、次第に憎まれ口をたたく元気もなくしてしまっていた。
疲れで機嫌の悪いお嬢様を連れている為、駆逐漏れした巨人に遭遇しまうことを普段よりも強く危惧していた調査兵団一行だったが、特に大きな問題が起こることもなく、穏やかな旅路を続け、港を出て数日後の真夜中に差し掛かる頃には、全員が無事で、ウォール・マリアの外門をくぐることが出来た。
「なまえさん、あと少しですよ。
———あ。」
気を遣ってか、アルミンが馬を荷馬車に並走させて声をかけた。
だが、相当お疲れの様子のなまえは、あれほど触れるのを嫌ったリヴァイの膝を枕にして、熟睡していた。
それならば———と、今のうちに急いで調査兵団兵舎を目指そうとスピードを上げた途端、即席の客車を引く荷馬車の車輪が大きめの石を踏んで、跳ねるように激しく揺れる。
「あ…!」
どうしてもお嬢様に起きてほしくない調査兵達は、慌てて、眠る彼女へと視線を向ける。
なまえは、数秒前までと同じように、胡坐をかくリヴァイの膝の上で、ぐっすりと眠っていた。
荷馬車が揺れたときに、当然、なまえにも衝撃がいったはずだが、そこは、リヴァイが彼女の肩をつかんで、なんとかたえてくれていたようだった。
調査兵達が、心底ホッとして息を吐く中、リヴァイは、滑り落ちていたブランケットを、彼女の肩にかけてやる。
「…ん…、マ、マ…。」
リヴァイの耳に届いたのは、一瞬、小さな子供の声かと勘違いしてしまうほどの、幼い声だった。
でも、すぐに、それがなまえの寝言だったことに気づく。
ママ———、彼女は、そう言った。
キヨミのことなのだろう。
いきなり、母親から突き放されるようなかたちで、よく知りもしない違う世界の人間の元に押し付けられたのだ。
それは、きっと、ショックで、悲しくて、寂しいことなのだろう。
幼い頃に母親を病死で亡くしたリヴァイには、眠りながらも母親を恋しく想い、その名を呼んでしまうなまえの気持ちを心底理解してやることは出来ない。
それでも、なんとなく想像することは出来た。
それきり、なまえは、寝言を呟くどころか、生きているのか不安になるほどに静かに眠り続けた。
その為、初めての馬車での長旅に疲労困憊してしまった様子のなまえは、初めこそ『お腹が空いたわ。』『喉が渇いたわ。』『甘いものが食べたいんだけど。』と要求していたものの、次第に憎まれ口をたたく元気もなくしてしまっていた。
疲れで機嫌の悪いお嬢様を連れている為、駆逐漏れした巨人に遭遇しまうことを普段よりも強く危惧していた調査兵団一行だったが、特に大きな問題が起こることもなく、穏やかな旅路を続け、港を出て数日後の真夜中に差し掛かる頃には、全員が無事で、ウォール・マリアの外門をくぐることが出来た。
「なまえさん、あと少しですよ。
———あ。」
気を遣ってか、アルミンが馬を荷馬車に並走させて声をかけた。
だが、相当お疲れの様子のなまえは、あれほど触れるのを嫌ったリヴァイの膝を枕にして、熟睡していた。
それならば———と、今のうちに急いで調査兵団兵舎を目指そうとスピードを上げた途端、即席の客車を引く荷馬車の車輪が大きめの石を踏んで、跳ねるように激しく揺れる。
「あ…!」
どうしてもお嬢様に起きてほしくない調査兵達は、慌てて、眠る彼女へと視線を向ける。
なまえは、数秒前までと同じように、胡坐をかくリヴァイの膝の上で、ぐっすりと眠っていた。
荷馬車が揺れたときに、当然、なまえにも衝撃がいったはずだが、そこは、リヴァイが彼女の肩をつかんで、なんとかたえてくれていたようだった。
調査兵達が、心底ホッとして息を吐く中、リヴァイは、滑り落ちていたブランケットを、彼女の肩にかけてやる。
「…ん…、マ、マ…。」
リヴァイの耳に届いたのは、一瞬、小さな子供の声かと勘違いしてしまうほどの、幼い声だった。
でも、すぐに、それがなまえの寝言だったことに気づく。
ママ———、彼女は、そう言った。
キヨミのことなのだろう。
いきなり、母親から突き放されるようなかたちで、よく知りもしない違う世界の人間の元に押し付けられたのだ。
それは、きっと、ショックで、悲しくて、寂しいことなのだろう。
幼い頃に母親を病死で亡くしたリヴァイには、眠りながらも母親を恋しく想い、その名を呼んでしまうなまえの気持ちを心底理解してやることは出来ない。
それでも、なんとなく想像することは出来た。
それきり、なまえは、寝言を呟くどころか、生きているのか不安になるほどに静かに眠り続けた。