◇第九話◇最悪な企みを乗せた船出
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長かったマーレへの滞在も終わり、パラディ島への帰国当日がやってきた。
自分の身体ほどある大きな荷物を抱える調査兵団の兵士達は、ふらつきそうになる足元をなんとか踏ん張りながら玄関へ向かう。
大きな屋敷の長い廊下、これほどまでに自分達の部屋から玄関までの距離の遠さを恨んだことはない。
それでも、調査兵団の兵士達は、これは、ずっと休んでいた訓練のひとつだ———と、そう思うしかなかったのだ。
だが、彼らは、玄関ホールに置かれた大きなソファに身体を沈めて、長い脚をくんで座るなまえの姿を見つけて、自分に言い聞かせていたそれが誤魔化しに過ぎなかったのだと思い知るしかなくなる。
「あら、さすが歴戦の勇者達っていう感じね。
今すぐにも倒れて、戦死してしまいそう。」
馬鹿にしたように鼻で笑ったなまえは、ソファにのんびりと座るどころか、右手には優雅にアイスティーの入ったグラスを持っていた。
「なん———。」
怒りのままに文句を叫ぼうとしたエレンの口を、ジャンがすぐに片肘で塞ぐ。
でも、腹が立ったのは、エレンだけではない。
涼しい顔で特に巨大な荷物を抱える幹部の3人以外の104期のメンバーは、唇を噛んで、悔し気に彼女を睨みつける。
大人の対応がまだ難しい彼らのあからさまな敵視を目の前にしても、なまえは意地悪な笑みを浮かべるだけだ。
むしろ、とても満足そうに口を開く。
「私の部屋にはまだ船まで運んでほしい荷物が残ってるんだけど、
体力が持たないっていうのなら、今回は行くのをやめましょうか。
私は、あなた達がどうしてもっていうから、荷物をまとめただけだから。」
なまえが勝ち誇ったように口の端を上げる。
今朝、帰りの支度を始めた調査兵団の元へ、とても申し訳なさそうな顔をした使用人がやってきたときから、嫌な予感はしていた。
そして、お嬢様の特別豪華で贅沢な部屋に案内され、大量の荷物を目の前にしたときに、彼女の魂胆を悟ったのだ。
御洒落が大好きだという彼女が世界中から集めたという大量の洋服だけではなく、沢山のバッグや化粧品、豪華なライトのついた鏡台、お気に入りのベッドまであった。
部屋にあるもの丸ごとほとんどすべてを船に乗せる気だ。
いや、そういうパフォーマンスをして、調査兵団の兵士達から『連れて行かない。』と言わせたいのだ。
だが———。
「ご心配、ありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ。
我々は、日頃から厳しい訓練を積んで、身体を鍛えていますから、
たったひとりのお嬢さんの荷物を運ぶくらい、なんてことありません。」
エルヴィンが柔らかく微笑む。
だからこれからもいつでも頼ってくださいね、なんて余計なことまで付け足すから、ギョッとしたのはエレン達だ。
その隣では、リヴァイが、諦めたように大きなため息を吐く。
そんな中、ハンジは、ボーッと巨人の数を頭の中で数えていた。無の境地で苛立ちを消化しようとしているのだ。
「あ、そう。
アンタ達って、バカ力だけしか能のない暇人なのね。」
あからさまに不機嫌な表情になったなまえが、口を尖らせて目を反らす。
それを可笑しいと思う余裕があるのは、クスリと笑うエルヴィンだけだった。
自分の身体ほどある大きな荷物を抱える調査兵団の兵士達は、ふらつきそうになる足元をなんとか踏ん張りながら玄関へ向かう。
大きな屋敷の長い廊下、これほどまでに自分達の部屋から玄関までの距離の遠さを恨んだことはない。
それでも、調査兵団の兵士達は、これは、ずっと休んでいた訓練のひとつだ———と、そう思うしかなかったのだ。
だが、彼らは、玄関ホールに置かれた大きなソファに身体を沈めて、長い脚をくんで座るなまえの姿を見つけて、自分に言い聞かせていたそれが誤魔化しに過ぎなかったのだと思い知るしかなくなる。
「あら、さすが歴戦の勇者達っていう感じね。
今すぐにも倒れて、戦死してしまいそう。」
馬鹿にしたように鼻で笑ったなまえは、ソファにのんびりと座るどころか、右手には優雅にアイスティーの入ったグラスを持っていた。
「なん———。」
怒りのままに文句を叫ぼうとしたエレンの口を、ジャンがすぐに片肘で塞ぐ。
でも、腹が立ったのは、エレンだけではない。
涼しい顔で特に巨大な荷物を抱える幹部の3人以外の104期のメンバーは、唇を噛んで、悔し気に彼女を睨みつける。
大人の対応がまだ難しい彼らのあからさまな敵視を目の前にしても、なまえは意地悪な笑みを浮かべるだけだ。
むしろ、とても満足そうに口を開く。
「私の部屋にはまだ船まで運んでほしい荷物が残ってるんだけど、
体力が持たないっていうのなら、今回は行くのをやめましょうか。
私は、あなた達がどうしてもっていうから、荷物をまとめただけだから。」
なまえが勝ち誇ったように口の端を上げる。
今朝、帰りの支度を始めた調査兵団の元へ、とても申し訳なさそうな顔をした使用人がやってきたときから、嫌な予感はしていた。
そして、お嬢様の特別豪華で贅沢な部屋に案内され、大量の荷物を目の前にしたときに、彼女の魂胆を悟ったのだ。
御洒落が大好きだという彼女が世界中から集めたという大量の洋服だけではなく、沢山のバッグや化粧品、豪華なライトのついた鏡台、お気に入りのベッドまであった。
部屋にあるもの丸ごとほとんどすべてを船に乗せる気だ。
いや、そういうパフォーマンスをして、調査兵団の兵士達から『連れて行かない。』と言わせたいのだ。
だが———。
「ご心配、ありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ。
我々は、日頃から厳しい訓練を積んで、身体を鍛えていますから、
たったひとりのお嬢さんの荷物を運ぶくらい、なんてことありません。」
エルヴィンが柔らかく微笑む。
だからこれからもいつでも頼ってくださいね、なんて余計なことまで付け足すから、ギョッとしたのはエレン達だ。
その隣では、リヴァイが、諦めたように大きなため息を吐く。
そんな中、ハンジは、ボーッと巨人の数を頭の中で数えていた。無の境地で苛立ちを消化しようとしているのだ。
「あ、そう。
アンタ達って、バカ力だけしか能のない暇人なのね。」
あからさまに不機嫌な表情になったなまえが、口を尖らせて目を反らす。
それを可笑しいと思う余裕があるのは、クスリと笑うエルヴィンだけだった。