◇第七話◇突然に空気を裂く拒絶
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「明日からは、うちの娘をよろしくお願いいたします。」
それは、パラディ島への帰国がもう明日に迫った日の夕食の席だった。
突然、キヨミが驚くことを言い出したのだ。
「よろしく?」
ハンジが大きく首を傾げる。
他の調査兵団のメンバーも、訝し気にキヨミに視線を送っていた。
その中で、リヴァイとアルミンは、エルヴィンだけが平然とした様子で、上手く箸を使いこなして食事を続けていることに気づいた。
「あら・・・、もしかして、スミスさん、
皆さんに娘のことを伝えてなかったのですか?」
キヨミが訊ねると、漸くエルヴィンが箸を止め顔を上げた。
「———あぁ、失念していました。」
一瞬の間の後、エルヴィンが柔らかい笑みを浮かべる。
飄々としたその態度から、敢えて、調査兵団のメンバーに伝えていなかったことがわかる。
「まぁ。」
キヨミが少し驚いたように目を見開き、口元を右手で覆った。
「ですが、ご心配はいりません。
大切なお嬢様は、我々が責任を持ってお預かりさせてください。
どんなときも、人類最強の兵士がおそばで命を懸けてお守り致します。」
「それならよかったわ。」
安心させるようにエルヴィンが微笑めば、キヨミもホッとしたように息を吐く。
だが、聞き捨てならないのは、リヴァイだ。
「どういうことだ、エルヴィン。」
リヴァイが眉を顰めて睨みつければ、やっとエルヴィンは調査兵達に説明を始めた。
彼女の母であるキヨミがいる前で気を遣っているのか、遠回しでオブラートに包んだ言い方ではあったが、簡単にまとめればこうだ。
〝調査兵団に協力する代わりに
うちの我儘娘の面倒はそっちが見ろ〟
それが、キヨミがエルヴィンに出した条件の中の一つ、ということのようだ。
ずっと屋敷の中で育ち、マーレに語り継がれてきた人類の歴史しか知らない世間知らずの娘に、広い世界を知って欲しいのだとかキヨミが言葉を続けたけれど、要するに、悪魔のような性格が故に外交の邪魔にもなりかねない娘を厄介払いのごとく調査兵団に押し付けたということなのだろう。
「は!?嫌ですよ!!
なんで、俺達が悪魔の主みたいなお姫様の面倒を見ないといけないんですか!?」
馬鹿みたいに正直に、調査兵達の心の声を代弁したのはエレンだ。
珍しく、エルヴィンが厳しい目でエレンを咎めるように睨んだ。
反対意見が出ることは当然分かっていたはずなのに、意外な反応だ。
だが、当然、その他の全員は、正直に言い過ぎだとしてもエレンに同意だった。
誰も、彼を咎めたりはしない。
その時だ———。
「こっちだって、悪魔にすらなりそこないの役立たず達に
世話をされるなんて心底御免よ。」
バンッと扉が開き、なまえが氷のように冷たい瞳で、調査兵達を見下ろす。
「やっとお食事の席に顔を出したかと思ったら
なまえ、お客様になんて失礼なことを言うんですか。」
「私の屋敷に勝手に上がりこんで、散々、甘い蜜を吸っておいて
悪魔呼ばわりする野蛮人とその仲間達のどこが、お客様なのかしら。」
あぁ言えばこう言うとは、彼女のことを言うのだろう。
確かに、なまえの言う通りではあるのだ。
幾ら、エルヴィン達がキヨミらに指示されてこの屋敷にやってきたのだとしても、彼女にとっては、調査兵団の彼らは、突然自分の城にやってきて我が物顔で歩き回る邪魔者に見えていただろう。
ただそれを、調査兵達の前で言うのは、なかなかの気の強さだ。
「本当に申し訳ございません。
娘にはしっかりと言い聞かせておきますから。」
ため息を吐いた後に、キヨミが頭を下げる。
なまえが綺麗に整えられている眉を思いきり歪めると、怒りのままに襖を閉めた。
空気を切り裂くような音が響く。
そのまま切られた空気が戻ることはなく、最後の夕食の席は、誰にも少しの笑みもないまま終わった。
それは、パラディ島への帰国がもう明日に迫った日の夕食の席だった。
突然、キヨミが驚くことを言い出したのだ。
「よろしく?」
ハンジが大きく首を傾げる。
他の調査兵団のメンバーも、訝し気にキヨミに視線を送っていた。
その中で、リヴァイとアルミンは、エルヴィンだけが平然とした様子で、上手く箸を使いこなして食事を続けていることに気づいた。
「あら・・・、もしかして、スミスさん、
皆さんに娘のことを伝えてなかったのですか?」
キヨミが訊ねると、漸くエルヴィンが箸を止め顔を上げた。
「———あぁ、失念していました。」
一瞬の間の後、エルヴィンが柔らかい笑みを浮かべる。
飄々としたその態度から、敢えて、調査兵団のメンバーに伝えていなかったことがわかる。
「まぁ。」
キヨミが少し驚いたように目を見開き、口元を右手で覆った。
「ですが、ご心配はいりません。
大切なお嬢様は、我々が責任を持ってお預かりさせてください。
どんなときも、人類最強の兵士がおそばで命を懸けてお守り致します。」
「それならよかったわ。」
安心させるようにエルヴィンが微笑めば、キヨミもホッとしたように息を吐く。
だが、聞き捨てならないのは、リヴァイだ。
「どういうことだ、エルヴィン。」
リヴァイが眉を顰めて睨みつければ、やっとエルヴィンは調査兵達に説明を始めた。
彼女の母であるキヨミがいる前で気を遣っているのか、遠回しでオブラートに包んだ言い方ではあったが、簡単にまとめればこうだ。
〝調査兵団に協力する代わりに
うちの我儘娘の面倒はそっちが見ろ〟
それが、キヨミがエルヴィンに出した条件の中の一つ、ということのようだ。
ずっと屋敷の中で育ち、マーレに語り継がれてきた人類の歴史しか知らない世間知らずの娘に、広い世界を知って欲しいのだとかキヨミが言葉を続けたけれど、要するに、悪魔のような性格が故に外交の邪魔にもなりかねない娘を厄介払いのごとく調査兵団に押し付けたということなのだろう。
「は!?嫌ですよ!!
なんで、俺達が悪魔の主みたいなお姫様の面倒を見ないといけないんですか!?」
馬鹿みたいに正直に、調査兵達の心の声を代弁したのはエレンだ。
珍しく、エルヴィンが厳しい目でエレンを咎めるように睨んだ。
反対意見が出ることは当然分かっていたはずなのに、意外な反応だ。
だが、当然、その他の全員は、正直に言い過ぎだとしてもエレンに同意だった。
誰も、彼を咎めたりはしない。
その時だ———。
「こっちだって、悪魔にすらなりそこないの役立たず達に
世話をされるなんて心底御免よ。」
バンッと扉が開き、なまえが氷のように冷たい瞳で、調査兵達を見下ろす。
「やっとお食事の席に顔を出したかと思ったら
なまえ、お客様になんて失礼なことを言うんですか。」
「私の屋敷に勝手に上がりこんで、散々、甘い蜜を吸っておいて
悪魔呼ばわりする野蛮人とその仲間達のどこが、お客様なのかしら。」
あぁ言えばこう言うとは、彼女のことを言うのだろう。
確かに、なまえの言う通りではあるのだ。
幾ら、エルヴィン達がキヨミらに指示されてこの屋敷にやってきたのだとしても、彼女にとっては、調査兵団の彼らは、突然自分の城にやってきて我が物顔で歩き回る邪魔者に見えていただろう。
ただそれを、調査兵達の前で言うのは、なかなかの気の強さだ。
「本当に申し訳ございません。
娘にはしっかりと言い聞かせておきますから。」
ため息を吐いた後に、キヨミが頭を下げる。
なまえが綺麗に整えられている眉を思いきり歪めると、怒りのままに襖を閉めた。
空気を切り裂くような音が響く。
そのまま切られた空気が戻ることはなく、最後の夕食の席は、誰にも少しの笑みもないまま終わった。