あなたをロミオと呼んだのは
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久しぶりの休暇だった。
リゾート地として有名な島へのひとり旅。
仕事が嫌いなわけではない。誇りも持って仕事をしているけれど、たまには心も身体も休ませないとやっていけないのだ。
昼間はショッピングと甘いもの食べ放題でストレス発散して、夜は高級ホテルで豪華なディナー。
私はそのときまで、最高の休暇を満喫していたのだ。
「いいことでもあったのかい?」
高級ホテルの最上階にある落ち着いたバー。
甘いカクテルをまったりとのんでいると、隣に若い男が座った。
淡い照明よりも明るい金髪。男はこちらを見ながら頬杖をついて、クスリと笑い首を傾げる。
女慣れした所作に生理的な拒絶を感じる。
「久しぶりの休暇を楽しんでるところなのよ。」
だから放っておいてーそんな気持ちを込めてニコリと微笑む。
だが、男は気づいてないのか、気づかないフリをしてるのか嬉しそうに口角を上げた。
「そりゃ、よかった。」
「とっても嬉しそうね。」
「そりゃあね、時間を気にせず君を口説けるんだから。」
甘い言葉と妖艶な笑み。
その台詞で、一体何人の女を落としてきたのだろう。
とにかく、せっかくの休暇をこんな男に邪魔されるつもりはない。
それなのに、軽くあしらう私の嫌味を、男は嬉しそうに受け入れる。
変態だとしか思えない。
「ーアハハ、おかしな人ね。」
「君に笑ってもらえるのなら、いくらでもおかしな人になってもいいなぁ。」
いつの間にか、私は男のペースに飲み込まれていた。
少しずつ解きほぐされていく私の心。
私が笑えば、男は本当に嬉しそうに笑った。
そして気づけば、ラストオーダーの時間になってしまっていた。
そろそろ店を出ようと立ち上がれば、男が私の腕を掴んだ。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。
おれの名前はー、・・・っ!?」
私はお喋りなその口に自分の唇を重ね、言葉を遮った。
唇が離れても、男は驚き放心したままだった。
「名前を決めるのは、私。
今夜のあなたは、ロミオよ。」
「…へぇ。いいね。君はおれのジュリエットかな?」
「それもいいわね。さよなら、私のロミオ。」
「またね。」
「また会いたいの?」
「もちろん。」
「バカな人ね。」
「君も相当だと思うよ。」
お互いに可笑しそうに笑い、そして、もう一度、今度はお互いの意思で唇を重ねた。
時間をかけてゆっくりと口説き落とすと言っていた男は、名前を告げることもせずに店を出る私を追いかけてはこなかった。
だって、私たちはお互いに、名前を知る必要性を感じなかった。
私は数日後、あなたに会うことを知っていたし、あなたも私が背中に何を背負っているのか、知っていただろうから。
あなたをロミオと呼んだのは、
この恋は悲劇で終わるくらいがちょうどいいって自分に言い聞かせなきゃ、あなたに落ちてしまいそうだったから
リゾート地として有名な島へのひとり旅。
仕事が嫌いなわけではない。誇りも持って仕事をしているけれど、たまには心も身体も休ませないとやっていけないのだ。
昼間はショッピングと甘いもの食べ放題でストレス発散して、夜は高級ホテルで豪華なディナー。
私はそのときまで、最高の休暇を満喫していたのだ。
「いいことでもあったのかい?」
高級ホテルの最上階にある落ち着いたバー。
甘いカクテルをまったりとのんでいると、隣に若い男が座った。
淡い照明よりも明るい金髪。男はこちらを見ながら頬杖をついて、クスリと笑い首を傾げる。
女慣れした所作に生理的な拒絶を感じる。
「久しぶりの休暇を楽しんでるところなのよ。」
だから放っておいてーそんな気持ちを込めてニコリと微笑む。
だが、男は気づいてないのか、気づかないフリをしてるのか嬉しそうに口角を上げた。
「そりゃ、よかった。」
「とっても嬉しそうね。」
「そりゃあね、時間を気にせず君を口説けるんだから。」
甘い言葉と妖艶な笑み。
その台詞で、一体何人の女を落としてきたのだろう。
とにかく、せっかくの休暇をこんな男に邪魔されるつもりはない。
それなのに、軽くあしらう私の嫌味を、男は嬉しそうに受け入れる。
変態だとしか思えない。
「ーアハハ、おかしな人ね。」
「君に笑ってもらえるのなら、いくらでもおかしな人になってもいいなぁ。」
いつの間にか、私は男のペースに飲み込まれていた。
少しずつ解きほぐされていく私の心。
私が笑えば、男は本当に嬉しそうに笑った。
そして気づけば、ラストオーダーの時間になってしまっていた。
そろそろ店を出ようと立ち上がれば、男が私の腕を掴んだ。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。
おれの名前はー、・・・っ!?」
私はお喋りなその口に自分の唇を重ね、言葉を遮った。
唇が離れても、男は驚き放心したままだった。
「名前を決めるのは、私。
今夜のあなたは、ロミオよ。」
「…へぇ。いいね。君はおれのジュリエットかな?」
「それもいいわね。さよなら、私のロミオ。」
「またね。」
「また会いたいの?」
「もちろん。」
「バカな人ね。」
「君も相当だと思うよ。」
お互いに可笑しそうに笑い、そして、もう一度、今度はお互いの意思で唇を重ねた。
時間をかけてゆっくりと口説き落とすと言っていた男は、名前を告げることもせずに店を出る私を追いかけてはこなかった。
だって、私たちはお互いに、名前を知る必要性を感じなかった。
私は数日後、あなたに会うことを知っていたし、あなたも私が背中に何を背負っているのか、知っていただろうから。
あなたをロミオと呼んだのは、
この恋は悲劇で終わるくらいがちょうどいいって自分に言い聞かせなきゃ、あなたに落ちてしまいそうだったから
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