ep.03 俺の知らない「2人」
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梟谷学園の男子バレー部員達は、音駒高校での合宿初日、昼休憩を終え、食堂から体育館に戻る途中だった。
エースの木兎光太郎だけは、ひと足先に黒尾と一緒に体育館に戻っている。どうしてもやりたい自主練があるそうだ。
バレー馬鹿にバレー馬鹿をかけたら、それはただの馬鹿じゃないかと辛辣なことを木葉秋紀が語っていると、何かに気づいたマネージャーの白福雪絵が、窓のそばで立ち止まった。
「ねぇ、あれ、烏野のえーっと、背の高いMBの子だよね〜?」
白福が、窓の向こうを指差して言う。
赤葦京治は、彼女の指差す先に視線を向けた。
窓の向こうは、中庭になっていた。綺麗に手入れされた花壇前に置かれたベンチには、確かに烏野高校の部活着を着ている長身の男子生徒が座っている。
「あぁ、月島ですね。」
「そうそう、月島君だ!」
確か、名前は、月島蛍と言ったか。ポジションは、MBだった。それ以外には特に印象は残っていない。
今日は、黒尾と研磨から聞いていた変人速攻の烏野1年生コンビのことを楽しみにしていた(主に木兎が)。だが、彼らは期末テストの補習とかで朝からは参加出来ず、後から合流することになっている。
その変人コンビの1人がMBだと聞いていたから、同じMBの月島のことも少し警戒していたのだけれど、肩透かしだった。
背が高い分、ブロッカーとしてはそれなりに面倒な選手ではあるけれど、特別目立つようなところもないし、闘志というものも感じられなかった。
普段、赤葦がトスを上げているのが、闘志とバレーへのやる気に満ち満ちている木兎だから余計に、月島が冷めているように見えてしまったのもあるかもしれない。
でも今、視線の先にいる月島は、隣に座る女性とお喋りを楽しんでいる。
笑っているとかではないのだけれど、月島を包む空気感がすごく柔らかいのだ。
彼女は自分達と同年代のようだったが、音駒高校の生徒ではないのか、女性は制服は着ていなかった。淡いミントグリーンのワンピースだ。
「彼女?もしかして、合宿に彼女連れ込んだ?」
最近の1年はすごいことをやるなーーーーと猿杙が変なところで感心している。
確かに、彼女は私服だし、そもそも、初めて音駒高校に来たはずの月島が、この学校の女子生徒に知り合いがいるとは考えにくい。
やっぱり、彼女なのだろうか。
そんなことを考えていると、木葉がなぜかすごく怒り出した。
「はぁああ!?烏野には、合宿に女連れ込むバカなんかがいんのかよ!
しかも………!可愛い!超絶に可愛い!!なんだあれは!俺はあんな可愛い娘を見たことねぇ!」
狡い、狡い、狡い、と木葉が騒いで煩い。
でも、距離があるからか、月島と彼女は気づく様子はなく、楽しそうなおしゃべりを続けている。
烏野高校の美人な女子マネージャーにも騒がしいほどに反応していた面食いの木葉が、めちゃくちゃ可愛いと断言する月島の彼女をもっとちゃんと見ようと、猿杙や雀田達だけではなく、2年、1年のメンバー達も窓の向こうに身を乗り出し始めた。
赤葦もそれなりに気になって、月島の向こうにいる彼女をもっとしっかりと見るためにわずかに目を細めた。
すると、彼女が突然立ち上がり、月島に手を差し伸べた。
ニカっと笑った明るい笑顔は、確かにとても可愛らしい。そして、美人だった。
赤葦の片眉がピクリと上がる。
月島の彼女が美人だったからではない。
彼女に見覚えがある気がしたからだ。
どこかで、見たことがある気がする。でも、思い出せない。
そもそも、月島は、宮城にある烏野高校の生徒だ。その彼女ということなら、宮城の人だろう。
もちろん、赤葦には、宮城に知り合いなんていない。
それでは、勘違いか。もしくは、知り合いの誰かに似ているということか。
普段から考えることで忙しい頭の中でフルスピードで思考していると、いきなり、雀田かおりが「あ!」と叫んだ。
「月バリ!!」
「月バリ?」
猿杙が首を傾げる。
「朝、月島君見た時から言ってたじゃん。月バリに絶対載ってるの見たって!」
雀田が興奮気味に言う。
赤葦は、烏野高校男子バレー部の紹介が終わった後から、月島のことを月バリで見たことがあるはずだと騒いでいた女子マネージャー達を思い出す。
だが、毎月欠かさず月バリを愛読していて、一言一句漏らさずチェックしている赤葦達には、月島に見覚えはなかった。
とうとう月島本人にまでそれを訊ねて、完全に否定されている。
結局、雀田達の勘違いだったと言うことだと思っていたが、違ったのだろうか。
「アンタ達が朝から月バリ見てるから、そっちだと思ってただけだった!」
「そっちじゃない方ってなんーーーー」
「来て!」
訊ねるよりも先に、雀田が赤葦の腕を掴んだ。
白福も何かに気づいた様子で「あー、そう言うことかー。すっきりしたーーー。」と言いながら、木葉の首根っこを捕まえて引っ張っていく。
よく分からないまま、猿杙達も引っ張られていく赤葦達を追いかけた。
一体、何だというのだーーーー。
赤葦が、チラリと窓の向こうに視線を向けると、月島が呆れたように笑いながら、差し出された手に自分の手を重ねていた。
エースの木兎光太郎だけは、ひと足先に黒尾と一緒に体育館に戻っている。どうしてもやりたい自主練があるそうだ。
バレー馬鹿にバレー馬鹿をかけたら、それはただの馬鹿じゃないかと辛辣なことを木葉秋紀が語っていると、何かに気づいたマネージャーの白福雪絵が、窓のそばで立ち止まった。
「ねぇ、あれ、烏野のえーっと、背の高いMBの子だよね〜?」
白福が、窓の向こうを指差して言う。
赤葦京治は、彼女の指差す先に視線を向けた。
窓の向こうは、中庭になっていた。綺麗に手入れされた花壇前に置かれたベンチには、確かに烏野高校の部活着を着ている長身の男子生徒が座っている。
「あぁ、月島ですね。」
「そうそう、月島君だ!」
確か、名前は、月島蛍と言ったか。ポジションは、MBだった。それ以外には特に印象は残っていない。
今日は、黒尾と研磨から聞いていた変人速攻の烏野1年生コンビのことを楽しみにしていた(主に木兎が)。だが、彼らは期末テストの補習とかで朝からは参加出来ず、後から合流することになっている。
その変人コンビの1人がMBだと聞いていたから、同じMBの月島のことも少し警戒していたのだけれど、肩透かしだった。
背が高い分、ブロッカーとしてはそれなりに面倒な選手ではあるけれど、特別目立つようなところもないし、闘志というものも感じられなかった。
普段、赤葦がトスを上げているのが、闘志とバレーへのやる気に満ち満ちている木兎だから余計に、月島が冷めているように見えてしまったのもあるかもしれない。
でも今、視線の先にいる月島は、隣に座る女性とお喋りを楽しんでいる。
笑っているとかではないのだけれど、月島を包む空気感がすごく柔らかいのだ。
彼女は自分達と同年代のようだったが、音駒高校の生徒ではないのか、女性は制服は着ていなかった。淡いミントグリーンのワンピースだ。
「彼女?もしかして、合宿に彼女連れ込んだ?」
最近の1年はすごいことをやるなーーーーと猿杙が変なところで感心している。
確かに、彼女は私服だし、そもそも、初めて音駒高校に来たはずの月島が、この学校の女子生徒に知り合いがいるとは考えにくい。
やっぱり、彼女なのだろうか。
そんなことを考えていると、木葉がなぜかすごく怒り出した。
「はぁああ!?烏野には、合宿に女連れ込むバカなんかがいんのかよ!
しかも………!可愛い!超絶に可愛い!!なんだあれは!俺はあんな可愛い娘を見たことねぇ!」
狡い、狡い、狡い、と木葉が騒いで煩い。
でも、距離があるからか、月島と彼女は気づく様子はなく、楽しそうなおしゃべりを続けている。
烏野高校の美人な女子マネージャーにも騒がしいほどに反応していた面食いの木葉が、めちゃくちゃ可愛いと断言する月島の彼女をもっとちゃんと見ようと、猿杙や雀田達だけではなく、2年、1年のメンバー達も窓の向こうに身を乗り出し始めた。
赤葦もそれなりに気になって、月島の向こうにいる彼女をもっとしっかりと見るためにわずかに目を細めた。
すると、彼女が突然立ち上がり、月島に手を差し伸べた。
ニカっと笑った明るい笑顔は、確かにとても可愛らしい。そして、美人だった。
赤葦の片眉がピクリと上がる。
月島の彼女が美人だったからではない。
彼女に見覚えがある気がしたからだ。
どこかで、見たことがある気がする。でも、思い出せない。
そもそも、月島は、宮城にある烏野高校の生徒だ。その彼女ということなら、宮城の人だろう。
もちろん、赤葦には、宮城に知り合いなんていない。
それでは、勘違いか。もしくは、知り合いの誰かに似ているということか。
普段から考えることで忙しい頭の中でフルスピードで思考していると、いきなり、雀田かおりが「あ!」と叫んだ。
「月バリ!!」
「月バリ?」
猿杙が首を傾げる。
「朝、月島君見た時から言ってたじゃん。月バリに絶対載ってるの見たって!」
雀田が興奮気味に言う。
赤葦は、烏野高校男子バレー部の紹介が終わった後から、月島のことを月バリで見たことがあるはずだと騒いでいた女子マネージャー達を思い出す。
だが、毎月欠かさず月バリを愛読していて、一言一句漏らさずチェックしている赤葦達には、月島に見覚えはなかった。
とうとう月島本人にまでそれを訊ねて、完全に否定されている。
結局、雀田達の勘違いだったと言うことだと思っていたが、違ったのだろうか。
「アンタ達が朝から月バリ見てるから、そっちだと思ってただけだった!」
「そっちじゃない方ってなんーーーー」
「来て!」
訊ねるよりも先に、雀田が赤葦の腕を掴んだ。
白福も何かに気づいた様子で「あー、そう言うことかー。すっきりしたーーー。」と言いながら、木葉の首根っこを捕まえて引っ張っていく。
よく分からないまま、猿杙達も引っ張られていく赤葦達を追いかけた。
一体、何だというのだーーーー。
赤葦が、チラリと窓の向こうに視線を向けると、月島が呆れたように笑いながら、差し出された手に自分の手を重ねていた。