ep.14 君はただ彼に会いたかっただけ
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土砂降りの大雨のことを、バケツをひっくり返したような雨だと表現することがある。
それならば、海外アーティストのライブを見るために集まった大勢の人達もまさにそれだった。ひっくり返されたバケツから、とめどなく人がこぼれ落ちてきて、どんどん歩くスペースを奪われていく。
今はまだ、目当ての海外アーティストの2つ前のバンドがライブをしている。人気があるかどうかで言えば、まだ認知度の低いバンドだろう。でも、今、彼らが歌っているのは、月島も聞いたことのある曲だった。
ライブ会場の観覧スペースは、彼らのファンでいっぱいで入る隙はない。名前が言うには、この後に控えているアーティストが聴きたくて、早めに場所取りをして観覧席にいる人達もいるらしい。
おそらく、名前と月島は、出遅れたのだ。きっと、時間が来ても、観覧スペースには入れない。
「ベンチが空いててよかったー。
やっと座れる〜。」
海外アーティスト目当てにやってきたと言うのに、観覧スペースに入るのが絶望的だと分かっても、名前はあまり気にしていない様子だった。
それよりも、疲れたらしく、ベンチに座って大きく息を吐く。
途中で見つけた簡易カフェで、バーガーとポテトのランチセットを2人分買っておいた。ここで食べながら、お目当てのライブが始まるのを待とうということなのだろう。
一応、このベンチは小高い丘にあるから、ここに座っていればライブ会場全体を見渡すことが出来る。観覧スペースに比べれば距離はあるが、ここからなら海外アーティストのライブを見れなくもない。
子供の頃からこのイベントに来ていたという名前はきっと、最初から観覧スペースでライブに参加することは諦めていて、この場所を目指していたのだろう。
「飲み物忘れてたんで、買ってきます。
何かリクエストありますか?」
「え!いいよ、私も行くよ!」
「2人で行ってしまったら、誰がこの場所を取っておくんですか。」
「あ、そっか。じゃあ、私が買いにーー。」
「名前さんが1人で買いに行ったら、絶対にトラブルに巻き込まれて
もっと面倒なんで、僕が行きます。」
「ごめん、ありがとう。
リクエストはないから、月島くんチョイスで!」
「…それも面倒ですね。」
月島は小さく息を吐くと、手を振って見送る名前に背を向けて、簡易カフェのスペースへと向かう。
シガンシナ広場には、自販機も幾つか置いてあった。けれど、そのどれも、売り切れの表示だったのだ。
きっとみんな、カフェのドリンクよりも、安く手っ取り早い自販機のペットボトルを求めるのだろう。
ベンチから一番近い簡易カフェは、ちょうど名前が、新幹線から降りた時に「行ってみたい!」と言っていたシュークリーム専門のカフェだった。
ライブや演劇が活発に行われている時間だからなのか、店内はあまり混雑はしていなかった。
けれど、レジには数名が並んでいて、月島も最後尾に続く。
「ご注文はお決まりですか?」
それほど待たずに月島の順番がやってきて、小さな黄色い帽子をかぶった若い女店員が、にこやかな笑みを浮かべる。
カウンターには、メニュー表が広げられていた。
日差しもある今日は、気温も高く、汗もかく。ドリンクメニューのど真ん中にドンと鎮座しているレモンスカッシュは、今日の日にちょうど良さそうだ。
ひとつはシンプルなレモンスカッシュを、もうひとつは、生クリームがたっぷり乗っているタイプのものを選んだ。生クリームたっぷりのパンが気に入っていた名前がここにいたら、きっとこの贅沢なレモンスカッシュを選んだはずだ。
「他にご注文はございますか?」
「いえ、それで。
ーーーあ、やっぱり、シュークリームを2つください。」
月島は、一番人気という表示のあるシュークリームを指差した。
行ってみたいと言っていたし、どうせ名前に連れられてまたここに来ることになるかもしれないなら、買って行った方が手取り早い。
シュークリームが入っている紙袋を受け取った月島は、バッグの中に入れる。そして、空いた両手でレモンスカッシュのカップを持つと、カフェを出て名前の待つベンチへと急いだ。
それならば、海外アーティストのライブを見るために集まった大勢の人達もまさにそれだった。ひっくり返されたバケツから、とめどなく人がこぼれ落ちてきて、どんどん歩くスペースを奪われていく。
今はまだ、目当ての海外アーティストの2つ前のバンドがライブをしている。人気があるかどうかで言えば、まだ認知度の低いバンドだろう。でも、今、彼らが歌っているのは、月島も聞いたことのある曲だった。
ライブ会場の観覧スペースは、彼らのファンでいっぱいで入る隙はない。名前が言うには、この後に控えているアーティストが聴きたくて、早めに場所取りをして観覧席にいる人達もいるらしい。
おそらく、名前と月島は、出遅れたのだ。きっと、時間が来ても、観覧スペースには入れない。
「ベンチが空いててよかったー。
やっと座れる〜。」
海外アーティスト目当てにやってきたと言うのに、観覧スペースに入るのが絶望的だと分かっても、名前はあまり気にしていない様子だった。
それよりも、疲れたらしく、ベンチに座って大きく息を吐く。
途中で見つけた簡易カフェで、バーガーとポテトのランチセットを2人分買っておいた。ここで食べながら、お目当てのライブが始まるのを待とうということなのだろう。
一応、このベンチは小高い丘にあるから、ここに座っていればライブ会場全体を見渡すことが出来る。観覧スペースに比べれば距離はあるが、ここからなら海外アーティストのライブを見れなくもない。
子供の頃からこのイベントに来ていたという名前はきっと、最初から観覧スペースでライブに参加することは諦めていて、この場所を目指していたのだろう。
「飲み物忘れてたんで、買ってきます。
何かリクエストありますか?」
「え!いいよ、私も行くよ!」
「2人で行ってしまったら、誰がこの場所を取っておくんですか。」
「あ、そっか。じゃあ、私が買いにーー。」
「名前さんが1人で買いに行ったら、絶対にトラブルに巻き込まれて
もっと面倒なんで、僕が行きます。」
「ごめん、ありがとう。
リクエストはないから、月島くんチョイスで!」
「…それも面倒ですね。」
月島は小さく息を吐くと、手を振って見送る名前に背を向けて、簡易カフェのスペースへと向かう。
シガンシナ広場には、自販機も幾つか置いてあった。けれど、そのどれも、売り切れの表示だったのだ。
きっとみんな、カフェのドリンクよりも、安く手っ取り早い自販機のペットボトルを求めるのだろう。
ベンチから一番近い簡易カフェは、ちょうど名前が、新幹線から降りた時に「行ってみたい!」と言っていたシュークリーム専門のカフェだった。
ライブや演劇が活発に行われている時間だからなのか、店内はあまり混雑はしていなかった。
けれど、レジには数名が並んでいて、月島も最後尾に続く。
「ご注文はお決まりですか?」
それほど待たずに月島の順番がやってきて、小さな黄色い帽子をかぶった若い女店員が、にこやかな笑みを浮かべる。
カウンターには、メニュー表が広げられていた。
日差しもある今日は、気温も高く、汗もかく。ドリンクメニューのど真ん中にドンと鎮座しているレモンスカッシュは、今日の日にちょうど良さそうだ。
ひとつはシンプルなレモンスカッシュを、もうひとつは、生クリームがたっぷり乗っているタイプのものを選んだ。生クリームたっぷりのパンが気に入っていた名前がここにいたら、きっとこの贅沢なレモンスカッシュを選んだはずだ。
「他にご注文はございますか?」
「いえ、それで。
ーーーあ、やっぱり、シュークリームを2つください。」
月島は、一番人気という表示のあるシュークリームを指差した。
行ってみたいと言っていたし、どうせ名前に連れられてまたここに来ることになるかもしれないなら、買って行った方が手取り早い。
シュークリームが入っている紙袋を受け取った月島は、バッグの中に入れる。そして、空いた両手でレモンスカッシュのカップを持つと、カフェを出て名前の待つベンチへと急いだ。