I told you so
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でも、私は嬉しかった。
電話の向こうで、貴女が涙を流している。
その場しのぎでしかない適当なことを言っては愛しているフリをしてばかりの彼が、また貴女を傷つけたせいだ。
泣き喚きながら貴女が言っている散らかった話を整理すれば、数日前にも浮気が発覚した彼と今夜は仲直りのデートをするはずだったのに、待てど暮らせど肝心の恋人が約束の場所に現れなかったというのが始まりのようだった。
嫌な予感を覚えながら彼のSNSをチェックしてみれば、何度も浮気を許してくれた優しい恋人との約束もスッカリ忘れて、チャラついた仲間とクラブで楽しそうに遊んでいる動画を見つけたのだそう。
でも、私は嬉しかった。
電話の向こうで、貴女が泣いている。
いつもなら、その泣き声を聞いているのは、彼だったのでしょう。
そして、彼はまた耳心地の良いことを言っては、貴女の心を惑わしていた。
そうやっていつだって、私が貴女にした忠告はいとも容易く消し去られていたのだ。
けれど今、貴女は、彼ではなく私に電話をかけて来た。
私に助けを求めて来た。彼ではない。
それが、この上なく嬉しくて仕方がないのだ。
今夜の私は、貴女を守る為に何だってするでしょう。
けれど今夜、彼に出来るのは、貴女を泣かすことだけしかない。
もうひとつくらい足してやったとしても、せいぜい、貴女に〝捨てられる〟ことくらいしか出来ない不憫な男なのだ。
「今、何処にいるんですか。」
≪…っ、中目黒駅…っ。≫
名前の鼻声で聞こえてきたのは、彼の住むマンションの最寄り駅名だった。
毎回思うことだけれど、なんという男だろうか。
自分の浮気が発端の『仲直りデート』だと言うのに、彼は、自分から恋人の元へ会いに行くこともせずに横着をして、最寄り駅まで呼び寄せたのだ。さらには、自分はそんなこともスッカリ忘れて、クラブで遊び惚けているなんて、どうかしている。意味が分からない。一体、彼の脳みその中身はどうなっているのか。いや、そもそも、あの男が念入りに時間をかけてキメた髪の奥に、脳みそという高度なものが入っているとは思えない。アレは、外見だけそれなりに整えられたマネキンだ。そうだ、そうに違いない。
そうでなければ、自分の住む街に自分のことを想って泣いている恋人がいるというのに、貴女には到底及ばない見かけを着飾っただけのつまらない女の尻を追いかけられる神経が信じられない。
いや、そもそも彼が、貴女のことを恋人だと思っていたのかも怪しいところだ。
「分かりました。今すぐ迎えに行きますので、駅の中で待っていてください。
着いたら連絡します。」
≪え…っ、いいよ…っ。ただ…、いつもあんな男やめろって言ってくれたのに、
忠告無視してまた騙されてる自分が馬鹿過ぎて嫌になって…。
建人くんに叱ってもらいたくて…、電話しただけだから…っ。≫
漸く、自分が馬鹿だったということに気づいてくれたようで安心した。
けれど、自分の過ちに気付き、それを認めるのはとても難しいことだ。
今夜の貴女はとても賢明な判断が出来ている。
そんな女性を褒めることは出来ても、誰が叱るというのでしょう。
「ちょうど、貴女が好きそうなワインを頂いたんです。
一緒にどうですか?」
≪でも…。≫
「以前、五条さん達と私の家に押し掛けたときに
貴女が置いていったメイク落としや洗顔もそのままですし
サッパリしてから、飲み明かしましょう。
今夜の私は、幾らでも悪口を楽しめますよ。」
≪…じゃあ、駅のコンビニでおつまみ買っておく…。≫
「よろしくお願いします。」
電話を切った私は、鍵をひったくるようにして握りしめると、駆け足で部屋を飛び出した。
電話の向こうで、貴女が涙を流している。
その場しのぎでしかない適当なことを言っては愛しているフリをしてばかりの彼が、また貴女を傷つけたせいだ。
泣き喚きながら貴女が言っている散らかった話を整理すれば、数日前にも浮気が発覚した彼と今夜は仲直りのデートをするはずだったのに、待てど暮らせど肝心の恋人が約束の場所に現れなかったというのが始まりのようだった。
嫌な予感を覚えながら彼のSNSをチェックしてみれば、何度も浮気を許してくれた優しい恋人との約束もスッカリ忘れて、チャラついた仲間とクラブで楽しそうに遊んでいる動画を見つけたのだそう。
でも、私は嬉しかった。
電話の向こうで、貴女が泣いている。
いつもなら、その泣き声を聞いているのは、彼だったのでしょう。
そして、彼はまた耳心地の良いことを言っては、貴女の心を惑わしていた。
そうやっていつだって、私が貴女にした忠告はいとも容易く消し去られていたのだ。
けれど今、貴女は、彼ではなく私に電話をかけて来た。
私に助けを求めて来た。彼ではない。
それが、この上なく嬉しくて仕方がないのだ。
今夜の私は、貴女を守る為に何だってするでしょう。
けれど今夜、彼に出来るのは、貴女を泣かすことだけしかない。
もうひとつくらい足してやったとしても、せいぜい、貴女に〝捨てられる〟ことくらいしか出来ない不憫な男なのだ。
「今、何処にいるんですか。」
≪…っ、中目黒駅…っ。≫
名前の鼻声で聞こえてきたのは、彼の住むマンションの最寄り駅名だった。
毎回思うことだけれど、なんという男だろうか。
自分の浮気が発端の『仲直りデート』だと言うのに、彼は、自分から恋人の元へ会いに行くこともせずに横着をして、最寄り駅まで呼び寄せたのだ。さらには、自分はそんなこともスッカリ忘れて、クラブで遊び惚けているなんて、どうかしている。意味が分からない。一体、彼の脳みその中身はどうなっているのか。いや、そもそも、あの男が念入りに時間をかけてキメた髪の奥に、脳みそという高度なものが入っているとは思えない。アレは、外見だけそれなりに整えられたマネキンだ。そうだ、そうに違いない。
そうでなければ、自分の住む街に自分のことを想って泣いている恋人がいるというのに、貴女には到底及ばない見かけを着飾っただけのつまらない女の尻を追いかけられる神経が信じられない。
いや、そもそも彼が、貴女のことを恋人だと思っていたのかも怪しいところだ。
「分かりました。今すぐ迎えに行きますので、駅の中で待っていてください。
着いたら連絡します。」
≪え…っ、いいよ…っ。ただ…、いつもあんな男やめろって言ってくれたのに、
忠告無視してまた騙されてる自分が馬鹿過ぎて嫌になって…。
建人くんに叱ってもらいたくて…、電話しただけだから…っ。≫
漸く、自分が馬鹿だったということに気づいてくれたようで安心した。
けれど、自分の過ちに気付き、それを認めるのはとても難しいことだ。
今夜の貴女はとても賢明な判断が出来ている。
そんな女性を褒めることは出来ても、誰が叱るというのでしょう。
「ちょうど、貴女が好きそうなワインを頂いたんです。
一緒にどうですか?」
≪でも…。≫
「以前、五条さん達と私の家に押し掛けたときに
貴女が置いていったメイク落としや洗顔もそのままですし
サッパリしてから、飲み明かしましょう。
今夜の私は、幾らでも悪口を楽しめますよ。」
≪…じゃあ、駅のコンビニでおつまみ買っておく…。≫
「よろしくお願いします。」
電話を切った私は、鍵をひったくるようにして握りしめると、駆け足で部屋を飛び出した。
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