Q.8 有難迷惑なお手伝いは断ってもいいですか?
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「それも俺が持ってやるよ!」
店内から出た途端、買ったばかりの野菜の入った紙袋をひったくるように奪われた。
目の前で、満足気な笑みを浮かべているのは、昨晩の慰労会で私に恋人がいるのかを聞いてきた調査兵だ。
「あ…、ありが、とう。」
なんとか作り笑いをして、心にもない感謝を述べる。
「いいって!いいって!持ちつ持たれつっていうだろ!」
アハハと爽やかに笑う彼は、私が買った食材の入った紙袋のほとんどを抱えてくれている。
きっと、彼なりの優しさなのだ。優しさだ。嫌がらせじゃない———必死に自分にそう言い聞かせて、モヤモヤする気持ちをなんとか抑える。
『ローゼ南商店街のセールに行くんだろ。
ひとりじゃ大変だろうから、俺が手伝ってやるよ!』
どこで聞きつけたのか、今朝、兵舎を出ようとしたところを彼に引き留められた。
そして私は、人懐っこい笑みで、嬉しい提案をしてくれた彼の優しさに甘えてしまったのだ。
確かに、彼は、私が買った食材の紙袋を代わりに持ってくれるし、〝手伝って〟くれてはいるのだと思う。
でもそれは、私が望んでいた〝手伝って〟とは違う。
私は、荷物持ちではなくて、一緒に食材を見て、調査兵の彼にどんなものがいいのかのアドバイスを聞きたかったのだ。
でも彼は、食べ物を見てても面白くないから、といつも店の外で荷物番をしてくれている。
でも、ローゼ南商店街のセール中は、遠方から来た客の為の配送サービスを実施している。
だから、買ったその場でお願いをすれば、無料でトロスト区の調査兵団兵舎まで配送してもらえるのだ。
一応、そのことはやんわりと伝えたのだけれど『それなら俺が来た意味がねぇじゃん。』と途端に不機嫌になってしまったので、利用しないことになった。
「ほんと、こんな荷物をひとりでどうするつもりだったんだよ。
早く俺を頼ればよかったのにさぁ。」
次はどこへ行こうかと、ローゼ南商店街のマップを確認していると、右斜め上から呆れたような声が落ちてくる。
(その為に、あなたが自分の存在意義の為に否定した配送サービスがあるんですよねぇ。)
思わず心の中で嫌味を呟いてしまった後、これ以上彼を相手にしていたら暴言を吐きそうなことに気づいて、聞こえなかったことにすることにした。
そうすれば、イラッとしたことに気づかないフリが出来る。
思わず手に力が入って、マップが載った紙に皴が寄ったことに意味もない。
「次は、果物屋さんに行ってもいいかな?」
「え~…、さっきも行ったじゃん。まだ行くの?」
彼が、すごく面倒くさそうに眉を顰めた。
あぁ、もう本当に。面倒くさいのは私の方だ。
どうして、どこに行くのかも彼にお伺いを立てなければならないのか。さらには、文句まで言われてしまう意味が分からない。
(これなら一人で来た方がマシだった…。)
ついそんなことを思ってしまったけれど、彼は彼で、私の為にと思ってくれたのだ。
そして、なんだかんだと付き合ってくれている。
感謝をしなきゃ。感謝をしなくちゃ。感謝を、しなきゃ———。
「なまえはさ、荷物持ってないから幾らでも買い物できるかもしれないけどさ。
俺を見てよ?これ、ずっと持ってんだよ。なまえの代わりにさ。
少しは、俺のことも考えてくれてもいいんじゃない?」
説教じみたため息とともに、至極真っ当に聞こえる主張をする。
頭の中で、何かが切れてしまいそうな音を聞いた。
だから、私は必死にそれを抑え込む。
ここで怒っても、いいことなんて何もない。無駄な時間が増えるだけだ。
感謝だ。私は、彼に感謝をしている———そう思い込め。
私は顔を上げて、なんとか笑みを作った。
「うん、そうだね。疲れちゃったよね。ごめんね。
どこかで休もうか。」
「分かってくれたらいいよ。さすが、なまえだな。
最初から、お前が他人の気持ちも分からないダメな女だとは思ってなかったよ。」
彼が口の端を上げた。
店内から出た途端、買ったばかりの野菜の入った紙袋をひったくるように奪われた。
目の前で、満足気な笑みを浮かべているのは、昨晩の慰労会で私に恋人がいるのかを聞いてきた調査兵だ。
「あ…、ありが、とう。」
なんとか作り笑いをして、心にもない感謝を述べる。
「いいって!いいって!持ちつ持たれつっていうだろ!」
アハハと爽やかに笑う彼は、私が買った食材の入った紙袋のほとんどを抱えてくれている。
きっと、彼なりの優しさなのだ。優しさだ。嫌がらせじゃない———必死に自分にそう言い聞かせて、モヤモヤする気持ちをなんとか抑える。
『ローゼ南商店街のセールに行くんだろ。
ひとりじゃ大変だろうから、俺が手伝ってやるよ!』
どこで聞きつけたのか、今朝、兵舎を出ようとしたところを彼に引き留められた。
そして私は、人懐っこい笑みで、嬉しい提案をしてくれた彼の優しさに甘えてしまったのだ。
確かに、彼は、私が買った食材の紙袋を代わりに持ってくれるし、〝手伝って〟くれてはいるのだと思う。
でもそれは、私が望んでいた〝手伝って〟とは違う。
私は、荷物持ちではなくて、一緒に食材を見て、調査兵の彼にどんなものがいいのかのアドバイスを聞きたかったのだ。
でも彼は、食べ物を見てても面白くないから、といつも店の外で荷物番をしてくれている。
でも、ローゼ南商店街のセール中は、遠方から来た客の為の配送サービスを実施している。
だから、買ったその場でお願いをすれば、無料でトロスト区の調査兵団兵舎まで配送してもらえるのだ。
一応、そのことはやんわりと伝えたのだけれど『それなら俺が来た意味がねぇじゃん。』と途端に不機嫌になってしまったので、利用しないことになった。
「ほんと、こんな荷物をひとりでどうするつもりだったんだよ。
早く俺を頼ればよかったのにさぁ。」
次はどこへ行こうかと、ローゼ南商店街のマップを確認していると、右斜め上から呆れたような声が落ちてくる。
(その為に、あなたが自分の存在意義の為に否定した配送サービスがあるんですよねぇ。)
思わず心の中で嫌味を呟いてしまった後、これ以上彼を相手にしていたら暴言を吐きそうなことに気づいて、聞こえなかったことにすることにした。
そうすれば、イラッとしたことに気づかないフリが出来る。
思わず手に力が入って、マップが載った紙に皴が寄ったことに意味もない。
「次は、果物屋さんに行ってもいいかな?」
「え~…、さっきも行ったじゃん。まだ行くの?」
彼が、すごく面倒くさそうに眉を顰めた。
あぁ、もう本当に。面倒くさいのは私の方だ。
どうして、どこに行くのかも彼にお伺いを立てなければならないのか。さらには、文句まで言われてしまう意味が分からない。
(これなら一人で来た方がマシだった…。)
ついそんなことを思ってしまったけれど、彼は彼で、私の為にと思ってくれたのだ。
そして、なんだかんだと付き合ってくれている。
感謝をしなきゃ。感謝をしなくちゃ。感謝を、しなきゃ———。
「なまえはさ、荷物持ってないから幾らでも買い物できるかもしれないけどさ。
俺を見てよ?これ、ずっと持ってんだよ。なまえの代わりにさ。
少しは、俺のことも考えてくれてもいいんじゃない?」
説教じみたため息とともに、至極真っ当に聞こえる主張をする。
頭の中で、何かが切れてしまいそうな音を聞いた。
だから、私は必死にそれを抑え込む。
ここで怒っても、いいことなんて何もない。無駄な時間が増えるだけだ。
感謝だ。私は、彼に感謝をしている———そう思い込め。
私は顔を上げて、なんとか笑みを作った。
「うん、そうだね。疲れちゃったよね。ごめんね。
どこかで休もうか。」
「分かってくれたらいいよ。さすが、なまえだな。
最初から、お前が他人の気持ちも分からないダメな女だとは思ってなかったよ。」
彼が口の端を上げた。