Q5.私の仕事を理解ってますか?
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訓練や壁外調査で忙しいうえに自炊もしていた調査兵団が、栄養管理士や調理師を雇うのは初めての試みだった。
それまでは、数班のグループ毎にシフトを組んで、食事を作っていて、それは今も変わらない。
ひとりで数百名分の食事を用意することは出来ないので、私は、彼らと一緒に献立表を元に食事を作っている。料理長のような立場として厨房に立っているのだ。
食事の時間が始まる前にはすべて作り終え、後は、長台にスープの入った大きな鍋やおかずを入れたお皿やたくさんのパンを並べておけば、順次やってくる調査兵達が1人分の量をそれぞれトレイに乗せて、空いている席に着く。所謂、バイキング形式というやつだ。
時々、可愛らしい女の子がパンを数個トレイに乗せて、同期の男の子達に叱られている以外は、皆がひとり分の量というのをきちんと守っている。
でも、本当は、あの女の子が叱られているのを見るのはツラいし、みんなが食べたいものを好きなだけトレイに乗せて欲しいと思っている。
だって、勤務初日に、エルヴィン団長から彼らの1日のスケジュールを教えてもらったのだ。
だから私は、調査兵の人達が、どれほど身体を酷使しながら人類の為に戦っているのかを、知ってしまった。
そして彼らは、あれだけの体力を削りそうなスケジュールをこなしながら、書類仕事や雑務に加えて、自分達で食事まで用意しているのだ。
彼らには本当に頭が下がるし、食事くらいは栄養的にも量的にも満足したものを出してあげたいと思っている。
でも、調査兵団が食事に割ける財源は限られていて、決して多くはない。
私に出来るのは、出来る限り、彼らが腹を満たして食堂を出ていけるように、おかわりの分もプラスして作れるように努力することくらいしかない。
「おはよう、なまえちゃん。
今日も美味い飯をありがとうな!」
食堂のテーブルを縫うようにして歩いている途中に声をかけられて、立ち止まる。
入団して数年のまだ若い調査兵だった。
変わり者が多い———と聞いていた調査兵団だったけれど、実際は、確かに変わり者が多くて、気さくで温かい人達ばかりだった。
私のこともよく気にかけてくれて、こうして気軽に話しかけてくれるのだ。
そのおかげで、随分と早く調査兵団に馴染めてきたのではないかと思う。
「おはようございます。
ふふ、なんだか、今日はご機嫌ですね。いいことがありました?」
「コイツ、今日は好きなヤツと同じ班で訓練することになって——。」
「あ、おい!やめろよ、言うなよっ!」
顔を真っ赤にして怒る調査兵が可愛くて、思わずクスクスと笑ってしまう。
少しだけ世間話をした後、小さく会釈をして彼らから離れた。
それからすぐに見つけたのは、ゲルガーさんだった。
「あれ、どうしました、ゲルガーさん。
今朝のほうれん草パンはあまり好きじゃありませんでしたか?」
私が声をかけると、スープをちびちびと飲んでいたゲルガーさんが顔を上げた。
いつもは大きな声で喋っている彼の顔色は青白く、心なしか、自慢のリーゼントも萎れているように見える。
とても体調が良さそうには見えない。
こうして、食事の時間に食堂を歩き回っているのは、あまり食の進んでいない調査兵や、顔色の悪い調査兵に声をかけて、体調を見るようにしているためだ。
こうすることで、彼らが自分でも気づいていない体調の変化を見逃さないようにすることも出来るので、献立を作ったり、料理をするのと同じくらい、食堂を歩き回る時間はとても大切な仕事だ。
そして、栄養管理士として、食事面から彼らの健康を支えるのも仕事の私は、医療兵達と連携して、調査兵達の健康管理を共有するようにしている。
「あぁ…、なまえの作った料理は今日もうまいよ。」
そうは言うゲルガーさんだったけれど、声は弱弱しく、微笑みにも力がない。
すると、隣に座っているナナバさんが溜息を吐いた。
「酒の飲み過ぎて二日酔いなんだ。
本当に、馬鹿だよ。今日は、新兵の指導もあるっていうのに。」
「あぁ~…、そうだったんですね。」
「やべぇよ、マジで…。このまま立体起動なんかしたら、
新兵の頭にゲロの雨を降らせちまいそうだ。」
「そして、死ぬほど嫌われてしまえ、バカ。」
呆れるナナバさんの隣で、ゲルガーさんはテーブルに両肘をついて頭を抱えていた。
彼からは「あー…。」と死ぬ前のような気の毒にしか聞こえない声が漏れていて、とても辛そうだった。
「まだ、新兵指導までは時間はありますよね。」
「ん?あぁ、そうだけど。」
「少し待っていてください。
二日酔いに効く朝食をすぐに用意してきますから。」
「それは助かるよ。本当に、コイツの馬鹿さのせいで
仕事を増やしてでごめんな。」
「いいえ、忙しいお仕事終わりに、お酒を飲んで身体と心を甘やかすのも必要ですよ。
癖になりすぎないことと、飲みすぎには気を付けてほしいですけどね。」
「あぁ…、今度からはそうする…。
サンキューな、なまえ。」
ナナバさんとゲルガーさんに軽く会釈をしてから、私は厨房へと急ぐ。
途中、リヴァイ班のメンバーを引き連れて食堂へやってきたリヴァイさんに声をかけられたけれど、忙しいのでまた後でお願いしますとだけ伝えて会釈をして逃げた。
この忙しいときに、また成り立たない会話で潰せる時間なんてなかったのだ。
それまでは、数班のグループ毎にシフトを組んで、食事を作っていて、それは今も変わらない。
ひとりで数百名分の食事を用意することは出来ないので、私は、彼らと一緒に献立表を元に食事を作っている。料理長のような立場として厨房に立っているのだ。
食事の時間が始まる前にはすべて作り終え、後は、長台にスープの入った大きな鍋やおかずを入れたお皿やたくさんのパンを並べておけば、順次やってくる調査兵達が1人分の量をそれぞれトレイに乗せて、空いている席に着く。所謂、バイキング形式というやつだ。
時々、可愛らしい女の子がパンを数個トレイに乗せて、同期の男の子達に叱られている以外は、皆がひとり分の量というのをきちんと守っている。
でも、本当は、あの女の子が叱られているのを見るのはツラいし、みんなが食べたいものを好きなだけトレイに乗せて欲しいと思っている。
だって、勤務初日に、エルヴィン団長から彼らの1日のスケジュールを教えてもらったのだ。
だから私は、調査兵の人達が、どれほど身体を酷使しながら人類の為に戦っているのかを、知ってしまった。
そして彼らは、あれだけの体力を削りそうなスケジュールをこなしながら、書類仕事や雑務に加えて、自分達で食事まで用意しているのだ。
彼らには本当に頭が下がるし、食事くらいは栄養的にも量的にも満足したものを出してあげたいと思っている。
でも、調査兵団が食事に割ける財源は限られていて、決して多くはない。
私に出来るのは、出来る限り、彼らが腹を満たして食堂を出ていけるように、おかわりの分もプラスして作れるように努力することくらいしかない。
「おはよう、なまえちゃん。
今日も美味い飯をありがとうな!」
食堂のテーブルを縫うようにして歩いている途中に声をかけられて、立ち止まる。
入団して数年のまだ若い調査兵だった。
変わり者が多い———と聞いていた調査兵団だったけれど、実際は、確かに変わり者が多くて、気さくで温かい人達ばかりだった。
私のこともよく気にかけてくれて、こうして気軽に話しかけてくれるのだ。
そのおかげで、随分と早く調査兵団に馴染めてきたのではないかと思う。
「おはようございます。
ふふ、なんだか、今日はご機嫌ですね。いいことがありました?」
「コイツ、今日は好きなヤツと同じ班で訓練することになって——。」
「あ、おい!やめろよ、言うなよっ!」
顔を真っ赤にして怒る調査兵が可愛くて、思わずクスクスと笑ってしまう。
少しだけ世間話をした後、小さく会釈をして彼らから離れた。
それからすぐに見つけたのは、ゲルガーさんだった。
「あれ、どうしました、ゲルガーさん。
今朝のほうれん草パンはあまり好きじゃありませんでしたか?」
私が声をかけると、スープをちびちびと飲んでいたゲルガーさんが顔を上げた。
いつもは大きな声で喋っている彼の顔色は青白く、心なしか、自慢のリーゼントも萎れているように見える。
とても体調が良さそうには見えない。
こうして、食事の時間に食堂を歩き回っているのは、あまり食の進んでいない調査兵や、顔色の悪い調査兵に声をかけて、体調を見るようにしているためだ。
こうすることで、彼らが自分でも気づいていない体調の変化を見逃さないようにすることも出来るので、献立を作ったり、料理をするのと同じくらい、食堂を歩き回る時間はとても大切な仕事だ。
そして、栄養管理士として、食事面から彼らの健康を支えるのも仕事の私は、医療兵達と連携して、調査兵達の健康管理を共有するようにしている。
「あぁ…、なまえの作った料理は今日もうまいよ。」
そうは言うゲルガーさんだったけれど、声は弱弱しく、微笑みにも力がない。
すると、隣に座っているナナバさんが溜息を吐いた。
「酒の飲み過ぎて二日酔いなんだ。
本当に、馬鹿だよ。今日は、新兵の指導もあるっていうのに。」
「あぁ~…、そうだったんですね。」
「やべぇよ、マジで…。このまま立体起動なんかしたら、
新兵の頭にゲロの雨を降らせちまいそうだ。」
「そして、死ぬほど嫌われてしまえ、バカ。」
呆れるナナバさんの隣で、ゲルガーさんはテーブルに両肘をついて頭を抱えていた。
彼からは「あー…。」と死ぬ前のような気の毒にしか聞こえない声が漏れていて、とても辛そうだった。
「まだ、新兵指導までは時間はありますよね。」
「ん?あぁ、そうだけど。」
「少し待っていてください。
二日酔いに効く朝食をすぐに用意してきますから。」
「それは助かるよ。本当に、コイツの馬鹿さのせいで
仕事を増やしてでごめんな。」
「いいえ、忙しいお仕事終わりに、お酒を飲んで身体と心を甘やかすのも必要ですよ。
癖になりすぎないことと、飲みすぎには気を付けてほしいですけどね。」
「あぁ…、今度からはそうする…。
サンキューな、なまえ。」
ナナバさんとゲルガーさんに軽く会釈をしてから、私は厨房へと急ぐ。
途中、リヴァイ班のメンバーを引き連れて食堂へやってきたリヴァイさんに声をかけられたけれど、忙しいのでまた後でお願いしますとだけ伝えて会釈をして逃げた。
この忙しいときに、また成り立たない会話で潰せる時間なんてなかったのだ。